‘国際協力’ カテゴリーのアーカイブ

英語圏の国々

2011 年 2 月 5 日 土曜日

第二次世界大戦後に独立したアフリカ諸国はフランス語圏か英語圏かに大別できます。

宗主国(そうしゅこく)がフランスであったかイギリスであったかによりますが、それぞれの国の文化(特に食文化)は宗主国の影響を色濃く受けています。

宗主国は教育へも大きく関与してそれぞれの言語を広めていますので、思考傾向もおのずと宗主国に似てくるはずですが、自由や自立を重んじる宗主国の価値観に関しては、植民地の独立運動に火を付けないよう、民主主義教育が歪められていた可能性があります。

わが国は、アフリカ諸国が自立発展することを願って国際協力活動を展開していますが、援助国への依存心の強さ、オーナーシップの希薄さが難点となっています。

アフリカ諸国の人々は、こと自立の気概において、旧宗主国の人々の思考軸とはかけ離れているように感じます。

アフリカ諸国で腐敗した政権が長期化しがちなのも、「民主」思考が長く抑圧されてきたためでしょう。

近年の政変は、インターネット時代の到来により、旧宗主国の価値観が部分的抑圧なしに自由に流入できるようになったことのあらわれかもしれません。

英語圏の国(英語が広く使われている国)は80か国以上ありますが、多くはイギリスの旧植民地です。

英語圏であると同時に仏語圏でもある国もありますが、植民地支配の歴史を反映しています。

<ヨーロッパ>

イギリス、アイルランド、キプロス、マルタ

(イギリス自治領)

ガーンジー、ジブラルタル、ジャージー、マン島

<北米>

アメリカ合衆国、カナダ

<中南米>

アンティグア・バーブーダ、グレナダ、ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、トリニダード・トバゴ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ガイアナ

(アメリカ自治領)

アメリカ領ヴァージン諸島

(イギリス自治領)

アンギラ、イギリス領ヴァージン諸島、ケイマン諸島、タークス・カイコス諸島、モントセラト、フォークランド諸島

<アジア>

インド、シンガポール、スリランカ、パキスタン、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、レバノン、ドバイ(アラブ首長国連邦首長国)、香港(中国特別行政区)

(アメリカ自治領)

北マリアナ諸島、グアム

(オーストラリア自治領)

クリスマス島、ココス諸島

<アフリカ>

ウガンダ、ガーナ、カメルーン、ガンビア、ケニア、ザンビア、シエラレオネ、ジンバブエ、スーダン、スワジランド、セーシェル、タンザニア、ナイジェリア、ナミビア、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、南アフリカ共和国、モーリシャス、リベリア、ルワンダ、レソト

<オセアニア>

オーストラリア、キリバス、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニュージーランド、バヌアツ、パプアニューギニア、パラオ、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦

(アメリカ自治領)

アメリカ領サモア

(イギリス自治領)

ピトケアン諸島、セントヘレナ、バミューダ諸島

(オーストラリア自治領)

ノーフォーク島

(ニュージーランド自治領)

クック諸島、トケラウ、ニウエ

アフリカの政変

2011 年 2 月 4 日 金曜日

マダガスカル、チュニジア、エジプトと、アフリカ諸国の中では比較的安定していた国々で政変が連鎖しています。

マダガスカルでは、2009年3月のクーデターで34歳(憲法上の大統領の被選挙権は40歳以上)の主導者が暫定政府大統領となり今日に至っています。

暫定政府に対する抗議集会が断続的に行われ、死傷者が出る衝突が発生しています。

アフリカ連合(AU)は「暫定政府大統領」と「暫定政府」関係者に対する制裁(渡航制限、資産凍結等)を発動しています。

国際機関と主要援助国は、人道・緊急支援と民主化プロセスへの支援を除き、新規の援助を停止しました。

日本政府も新規の援助は停止していますが、現在、技術協力プロジェクトとして、エイズ予防対策プロジェクト、ティラピア養殖普及を通じた村落開発プロジェクト、中央高地コメ生産性向上プロジェクトを実施しています。

チュニジアでは、若者の焼身自殺に端を発した反政府デモが大統領を亡命に追い込みました。

エジプトでも生活苦などへの抗議の焼身自殺が続き、反政府デモが大きなうねりとなっています。

マダガスカル、チュニジア、エジプトは、地図上では遠く離れた3国ですが、イスラム国であるということと、フランス語が広く使用されているという共通点があります。

カンボジアやベトナムなど、過去の大きな政変を経験した国もフランス語圏に多いようです。

フランコフォニー国際機関(Organisation Internationale de la Francophonie; OIF)という、フランスの価値観とフランス語とを共有する国が加盟する国際機関がありますが、渦中の政変3国はいずこもOIFのメンバー国です。

OIF加盟国は以下の通りです(必ずしもフランス語が公用語の国というわけではありません)。

<西欧>

フランス、ベルギー、ルクセンブルク、モナコ、スイス、アンドラ(準加盟国)、ギリシャ(準加盟国)、キプロス(準加盟国)

<東欧>

ブルガリア、モルドバ、ルーマニア、アルバニア(準加盟国)、マケドニア共和国(準加盟国)

<アフリカ>

ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カーボヴェルデ、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ、ガボン、ガーナ(準加盟国)、ギニア、ギニアビサウ、赤道ギニア、サントメ・プリンシペ、セネガル、セーシェル、チャド、トーゴ、チュニジア、マダガスカル、マリ共和国、モロッコ、モーリシャス、モーリタニア、ニジェール、中央アフリカ共和国、ルワンダ、エジプト、

<アジア>

カンボジア、ラオス、レバノン、バヌアツ、ベトナム

<北米>

カナダ、ドミニカ国、ハイチ、セントルシア

 

アフリカの国が多いのは、過去の植民地支配の名残です。

アルジェリアもフランス語圏ですが、植民地支配への歴史的反発からか、OIFには非加盟です。

そのアルジェリアでも、先月、焼身自殺が相次ぎ、反政府デモの鎮圧が行われています。

現在はフランスの旧植民地はほとんど独立していますが、まだ、海外県や海外領土などがあります。

<海外県>

マルティニク、グアドループ、レユニオン、フランス領ギアナ

<海外領土>

フランス領ポリネシア、ニューカレドニア、ウォリス・フツナ

<その他>

マイヨット島(インド洋)、サン・ピエール島(北大西洋)、ミクロン島(北大西洋)、サンマルタン島(カリブ海)、サン・バルテルミー島(カリブ海)

国際化と感染症拡大

2011 年 2 月 3 日 木曜日

国際化が進むと、国境という人工的な線引きが強く意識されることなく人や物が往来するようになります。
感染症の拡がりについても、国境の壁は低くなり、距離が近いか遠いかのほうが重要となってきます。
福岡市は人口145万人ですが、福岡市より人口が多い都市を近い順に並べてみます。

1 釜山市 (352万人) 217km(韓国)
2 大邱市 (246万人) 303km(韓国)
3 神戸市 (154万人) 464km
4 大阪市 (266万人) 491km
5 京都市 (147万人) 522km
6 ソウル市(982万人) 539km(韓国)
7 仁川市 (253万人) 580km(韓国)
8 名古屋市(226万人) 629km
9 平壌市 (326万人) 724km(北朝鮮)
10威海市 (248万人) 864km(中国)
11上海市 (949万人) 874km(中国)
12横浜市 (367万人) 877km
13東京都区部(874万人)889km
(※上海周辺や沿岸部の中国の市は除く)

東京より近い距離に、韓国の4都市と中国の2都市があり、併せて3千万人の人口を擁しています。
この人口が、旧正月の期間中、広域に移動し、日本へも多数が訪れています。
韓国の口蹄疫の殺処分対象家畜は300万頭を超えました。
2月1日までの口蹄疫の殺処分対象は 5,387農場、3,020,505頭(8市道、66市郡)、鳥インフルエンザの殺処分対象は、243農場、5,411,483羽です。

国際協力論講義(70)

2011 年 1 月 31 日 月曜日

例5)タイ国外傷センタープロジェクト(2000/72005/6

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601119_3_s.pdf

協力金額:約32,611万円

先方関係機関:コンケン病院外傷センター(TCC)他

日本側協力機関:警察庁、消防庁、大阪市消防局、大阪市立大学、大阪市立総合医療センター、聖マリア病院、他

協力の背景と協力内容:

タイ国では都市化に伴い交通事故による死傷者数が急激に増加しており、事故は2番目の死亡原因となっていました。わが国は1991年から1996年までタイ国コンケン県において公衆衛生プロジェクトを実施しましたが、これは、従来からの保健医療サービスシステムの問題点を分析し、計画立案と解決案を実施するという一連の活動を通し、地方都市の現実に即した保健医療システムをつくることを目指すものでした。このプロジェクトの成果のひとつとして、交通事故防止と救急医療サービスの分野が強化され、タイ国政府は国立コンケン病院内に外傷センターを設立しました。

1)上位目標

交通事故による外傷ケアおよび予防のモデルが他県に広がる。

タイの交通事故外傷による死亡率が低下する。

2)プロジェクト目標

コンケン県において交通事故外傷による死亡率が低下する。

3)成果

1. 病院における外傷患者ケアが改善する。

2. 外傷のプレホスピタルケアが効果的になる。

3. 交通外傷予防の活動が促進される。

4. コンケン病院に研修・研究センターが設置される。

5. プロジェクトの活動がモデルとして一般化される。

4)投入(評価時点)

日本側:長期専門家派遣 4人  短期専門家派遣 30

研修員受入 29人(うち15人は保健省とコストシェア)

機材供与 13,293万円  現地業務費 4,615万円

相手国側:カウンターパート配置 26

土地・施設(プロジェクト事務室、外傷センター施設)提供

機材購入 8,478万円  ローカルコスト負担 5,361万円

 

<終了時評価結果>

妥当性:交通事故防止と質の高い救急医療サービスの提供は、第9次国家社会経済計画や保健医療セクターの戦略プランの重要項目であり、タイ国のニーズと合致すること、日本政府のタイに対する技術支援は、「社会の成熟化に伴う問題」で「人間の安全保障を担保するため政府部門での対応が必要な分野」を対象としており、本プロジェクトはこの重点分野に合致すること、タイ国における社会的なニーズが高いにも関わらずこの分野を支援しているドナーはWHOJICAのみであり、二者の支援には不必要な重複はないことから本プロジェクトの妥当性は高いと評価されました。

有効性:本プロジェクトが全国に先駆けて地域の救急医療サービスシステム(救急車を呼ぶ電話番号の普及、救急指令センターと医療施設・救急車などを結ぶ無線通信システム)を構築したことやヘルメットやシートベルトの着用率が改善していること、本プロジェクトで訓練された救急医療や応急処置に関するコースの受講生はコンケン病院だけでなく、県内の郡病院・慈善団体で知識・技術を活用し、郡部の地域医療の改善につながっていることなどから。よって本プロジェクトの有効性は高いと評価されました。

効率性:コンケン病院は独自予算で外傷センター施設を建設し、現地業務費もタイ保健省とのコストシェアが進んだため、活動規模に比べてJICAの経費負担は少なかったことなど、本プロジェクトは効率的だったと評価されました。

インパクト:本プロジェクトが本格的に訓練し採用した救急救命士が国家資格として認められ、公衆衛生・看護学校でコースが設けられたという制度的インパクトや、本プロジェクトで行った交通事故防止活動が他県で実施された結果、警察の取締りが強化されたというインパクトが発現している。

自立発展性:保健省からの歳入に加えてコンケン病院が独自予算をもっていること、保健省によってTCCがエクセレントセンターに指定されたため特別予算が附与されること、救急医療サービスを実施するため国民一人当たり10バーツの予算が県保健局に割り当てられること、国家保健促進財団からの財政支援が期待できることなどから判断し、財政的な自立発展性は問題ない。技術的自立発展性も高い。

提言:コンケン病院や外傷センターでの活動はタイ国内の他県のみならず、他の国々にとっても有用な教訓を含む。保健省がこれらの経験をさらに研究し、他の国々に対する技術協力を行うことは価値がある。

教訓:プロジェクト実施の初期段階では、救急患者を受け入れる病院がプレホスピタルケアや交通事故予防活動を行う関係団体間でリーダーシップを取ることは有効である。このアプローチによって様々な関係者が協力しやすくなりうる。

プロジェクト実施に様々な活動や関係者が含まれる場合、協力者・団体間で共通の目標を持つ必要がある。スタッフが高いモチベーションを維持するには「外傷登録」のような実証データを活用して、活動の結果を共有することが大変有効である。

国際協力論講義(69)

2011 年 1 月 30 日 日曜日

例4)ケニア共和国感染症及び寄生虫症研究対策プロジェクト(2001/5/12003/3/31

国際寄生虫対策プロジェクト(2003/4/12006/4/30

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0604721_3_s.pdf

協力金額:7.23億円

先方関係機関:ケニア中央医学研究所(KEMRI)、保健省、教育省

日本側協力機関:慶應義塾大学、長崎大学、東京医科歯科大学、厚生労働省、国立国際医療センター、日本寄生虫予防会

協力の背景と協力内容

ケニア中央医学研究所(Kenya Medical Research InstituteKEMRI)は、ケニアの中心的な医学研究所です。わが国は、1990年から2001年4月まで感染症対策プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)により、肝炎、下痢症、エイズ、急性呼吸器感染症等の対策について協力を行ってきました。その後、引き続きHIV/エイズとウィルス性肝炎について、血液安全性の観点から協力するほか、日和見感染症分野への協力と国際寄生虫対策イニシアティブの一環としてケニアと東南アフリカ周辺国における寄生虫対策の人材育成と情報ネットワークの構築を行うことを目的に、2001年5月より「感染症及び寄生虫症研究対策プロジェクト」を開始しました。

国際寄生虫対策イニシアティブは、人材育成と国際的ネットワークの拠点をアジア(タイ)とアフリカ(ケニア、ガーナ)に設置するもので、学校における児童への保健教育を通して寄生虫症の再感染予防を推進することを目指し、タイ、ケニア、ガーナにおいてそれぞれ技術協力プロジェクトを実施しました。ケニアではKEMRI内に東南アフリカ国際寄生虫対策センター(Eastern and Southern Africa Centre of International Parasite ControlESACIPAC)を設置しました。本案件は、より効果的な協力を実施するため、2003年4月より、「国際寄生虫対策プロジェクト」と、HIV/エイズ及びウイルス性肝炎、日和見感染症分野への協力を行う「ケニア中央医学研究所感染症研究対策プロジェクト」の2プロジェクトに分離されました。

(1)上位目標

ケニア及び周辺国において寄生虫対策及びフィールドリサーチが、人材育成と研究能力の向上を通して強化される。

(2)プロジェクト目標

対象寄生虫疾患(マラリア、土壌伝播寄生虫症、フィラリア症、住血吸虫症)の効果的な対策を強化するため、ESACIPACがケニア及び周辺国の人材育成及び人材・情報ネットワークの構築において地域拠点としての機能を発揮する。

(3)成果(アウトプット)

1.ESACIPACがその任務を効果的に遂行するために国際センターとして強化される。

2.ケニアにおいて学校保健に基づいたモデルを構築することで、対象寄生虫疾患に対する適切な戦略が開発される。

3.周辺国の政策決定者及び関係者が啓発され、プロジェクトにコミットする。

4.能力向上のための適切な研修が実施される。

5.周辺国、ACIPACWACIPAC、国際機関および国際機関の間で寄生虫対策に関する人材・情報ネットワークが開発される。

6.応用フィールドリサーチが適切なツールの応用及び開発と共に実施される。

(4)投入

日本側:長期専門家派遣 9名  短期専門家派遣 14

研修員受入れ 5名

機材供与 62,040千円  ローカルコスト負担 121,929千円

相手国側:カウンターパート(C/P)配置 36

土地・施設提供  ローカルコスト負担 Ksh.15,983,56625,573千円相当)

 

<終了時評価結果>

実施プロセスについては、プロジェクト分離前の2年間は慎重に進められました(研修のロジを担当するケニア側C/Pの配置に数か月を要し、専属のESACIPACセンター長も配属されませんでした)。プロジェクト分離後は専属のセンター長が任命され、プロジェクト活動が加速しました。本プロジェクトについては、プロジェクト分離の際にプロジェクトの方向性について検討したため、中間評価は実施しませんでした。

有効性については、6つの成果の達成は、プロジェクト目標の達成に有効でした。ケニア国内への貢献に関する有効性が高かったのですが、周辺国への貢献についての有効性については国際研修の運営に更なる努力が必要です。国際寄生虫イニシアティブのコンセプトが反映された研修モジュールが未完成で、今後の課題とされました。

効率性についても改善の余地がありました。本邦研修の研修内容とプロジェクト活動の関連性が明確でなく、研修成果をプロジェクト活動へ還元することが難しかったケース等があり、研修参加者のプロジェクト活動への貢献は限定的なものにとどまりました。

インパクトについては、国家保健セクター戦略計画への駆虫活動の取り入れや国家教育セクター支援プログラムに学校保健プログラムが取り入れられたこと、全国の学校に環境衛生の改善を目的として年間Ksh. 55,000の補助金が割り当てられることになったことなど、ケニア国内において多くの影響を与えましたが、周辺諸国におけるインパクトは限定的なものでした。

自立発展性については期待できます。寄生虫対策はKEMRIのマスタープランに記されている目標の1つとして財政的な支援が期待され、ESACIPAC専属スタッフが増員されKEMRI内に地域研修委員会が設置されたこと等、KEMRIとしての組織能力強化の取り組みも加速しています。2006年3月に日本の無償資金協力によってKEMRIに研修センターが開設されるので、ESACIPACが今後、ケニア国内だけでなく周辺国に対して、地域センターとしての存在が強化される可能性が高まります。

国際協力論講義(68)

2011 年 1 月 29 日 土曜日

例3)タイ国際寄生虫対策アジアセンタープロジェクト

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601121_3_s.pdf
協力金額:388,000千円
協力期間:200.3.23-2005.3.22
先方関係機関:マヒドン大学、保健省、教育省
日本側協力機関:日本寄生虫学会、厚生労働省、国立国際医療センター、等
協力の背景と協力内容:
1997年のデンバー・サミットにおいて橋本首相(当時)により国際寄生虫対策(橋本)イニシアティブ(人材育成のための拠点と国際的ネットワークの構築)が提唱されました。
国際寄生虫対策アジアセンター(ACIPAC)プロジェクトは、同イニシアティブを具体化する案件として、タイ及び日本政府の合意に基づき、タイ及び周辺国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の寄生虫対策に係る国際研修の実施、情報ネットワークの構築等を目的とした広域技術協力プロジェクトとして開始されました。
(1)スーパーゴール
東南アジアにおいて、公衆保健上の問題である寄生虫疾患が減少する
(2)上位目標
保健人材の育成によって東南アジアにおける寄生虫対策が強化される
(3)プロジェクト目標
国際寄生虫対策アジアセンター(ACIPAC)が、東南アジア地域の寄生虫対策のための国際人材育成センターとして機能する
(4)成果
1.カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム(CLMTV)を中心とする地域
で、ACIPACの提唱する学校を基盤とするアプローチが寄生虫対策に有効な手段として、受け入れられる
2.ACIPACの国際研修(フィールド実習含む)によって、東南アジア地域で寄生虫対策に
携わる人材が養成される
3.学校保健を基盤とするマラリア及び腸管寄生虫対策のための小規模パイロットプロジェクトが、人材養成研修の一環として、CLMTV各国で実施される
4.域内の関係者間のコミュニケーションを向上させるため、ACIPACが人的・情報ネット
ワークセンターとしての機能を果たす
(5)投入
日本側:
長期専門家派遣 7名
短期専門家派遣 23名
研修員受入 9名
機材供与 31.603千バーツ
ローカルコスト負担 37,596千バーツ
SSPPコスト負担 123,852USドル
相手国側:
カウンターパート配置 52名
土地・施設提供
ローカルコスト負担 1,027千バーツ

<終了時評価結果>
本プロジェクトの有効性については、ACIPACがタイ周辺地域の寄生虫対策活動において国際人材育成センターとしての役割を果たし、国際会議などを通じて関係者の間で明確に認識されるようになったこと、ACIPAC国際研修に100人以上の研修員が受講し人材育成に貢献をしてきたことが高く評価されました。
コミュニケーション・ネットワークの構築については、帰国研修員、周辺国関係省庁、国際機関、ドナー、NGOなどの関係者をカバーしているものの、人的、組織的なネットワークと情報ネットワークのさらなる強化が必要とされました。

効率性の観点でも、ワークショップや研修等を通じて人的・情報ネットワークの構築や強化に貢献してきたものの、ほとんどが国内でのコミュニケーションに限られ、周辺国間、ドナー間でのコミュニケーション・ネットワーク構築についての達成度が低いことが指摘されました。

自立発展性の観点でも、技術的、財政的な懸念は少ないものの、情報ネットワークの自立発展性についての懸念が指摘されました。

人的・情報ネットワークに関する問題点を惹起した要因は次の4点です。
・政策決定者のワークショップの未実施
・限定的な帰国研修員への情報伝達・普及
・ウェブサイトへのアクセスの技術的問題
・情報ネットワーク構築の目的・方向性に関する不十分な共有

終了時評価調査団は、人的・情報ネットワークの維持・強化のためのシステム確立を提言しました。
具体的には、人的・情報ネットワーク担当のスタッフを任命すべきこと、IT委員会を再設置し、実施すべき業務を明確にすること、各国でのフォローアップ活動を検討すべきことです。

本プロジェクトの実施を通じ、広域技術協力プロジェクトでは、計画・実施段階において、関係者間、特にJICA本部、在外事務所、カウンターパート機関、専門家との間の密な意思疎通及び相互理解が重要であることが教訓とされました。
このような意思疎通・相互理解が欠ければ、先方関係機関の主体性を低める可能性があります。
また、ターゲット・グループの状況に応じて適切な通信手段を適用すべきであることも教訓となりました。

国際協力論講義(67)

2011 年 1 月 28 日 金曜日

例2)ベトナム社会主義共和国バックマイ病院プロジェクト
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601683_3_s.pdf
協力金額:11億5000万円
協力期間:2000年1月10日~2005年1月9日
先方関係機関:保健省、バックマイ病院
我が方協力機関:国立国際医療センター
協力の背景と協力内容:
ベトナムでは、保健医療の質及び保健医療ネットワークの改善が重要課題で、地方への裨益効果を前提とした基幹病院の整備が重視されています。
バックマイ病院は1911年にフランス国により設立された北部地域における第三次医療機関です。
ベトナム政府は、バックマイ病院の機能を向上させ同国全体のトップリフェラル病院の一つとして十分な機能を果たせるようになることを目的とした無償資金協力と技術協力を我が国に要請しました。
(1)上位目標
ベトナム北部の医療サービスが改善する
(2)プロジェクト目標
トータル・ケアを通して2005年までにバックマイ病院の医療サービスの質が向上する
(3)期待される成果
1)2004年末までに病院管理が改善される
2)パイロット科において病院情報システムが改善される
3)パイロット科において研修システムが改善される
4)機材の中央管理システムが改善される
5)財務・会計システムが改善されるる
6)パイロット科において薬剤システムが改善す
7)パイロット科において臨床技術が向上する
8)看護管理・看護ケアが向上する
9)看護学校と協力して看護の研修システムが改善される
10)パイロット科において臨床検査の質が向上する
11)省病院へのDOHAのサポート機能が向上する
(4)日本側投入
長期専門家派遣:10名
短期専門家派遣:95名
機材供与:US$2,783,026
現地業務費:US$1,731,195
研修員受入れ:30名

 

 
<終了時評価結果>
本プロジェクトの妥当性については、上位目標を「ベトナム北部の医療サービスが向上する」としていることは、単にバックマイ病院の診療機能の改善にとどまらせず、トップリフェラル病院として機能させ、研修活動を充実させる方向性を示すものとして、ベトナムの保健医療政策(第一次医療から第三次医療に至るすべてのレベルにおける医療サービスの質を改善させる)に合致し、整合性は高いと評価されました。

効率性の評価については、長期専門家10名、短期専門家95名、カウンターパート研修30名、機材供与総額約3億円、現地業務費約2億円の投入規模は、いずれも技術協力プロジェクトの投入の平均より抜きん出ており、単に病院の改善だけの成果しか得られなかったのであれば効率性が高いとは言えません。
効率性が高いか否かは、今後、バックマイ病院が、いかにこれらの投入を上位目標「北部地域の医療サービスの向上」の達成に活用し、最終受益者である北部地域住民がその成果を裨益できるかどうかにかかっています。

本プロジェクトは次のインパクトを生みました。
○2003年3月に流行したSARSについて、バックマイ病院が本プロジェクトによる感染症対策の指導及びその他の日本や海外の支援によってSARS制圧に成功した。
○内外からバックマイ病院への訪問者が増加し、日本からの要人のほとんどがバックマイ病院プロジェクトを訪問した。

本プロジェクトの問題点のひとつとして、患者満足度調査結果のスコアの低下がありました。バックマイ病院の患者数は1999年から2003年までに1.5倍に急増しており、増加した患者数に医療サービスが追いついていなかったようです。リファラル・システム機能の適正化が望まれました。

プロジェクトへは、終了時評価調査団から、バックマイ病院研修センターが省レベルの技術移転に活用されるためのPO(Plan of Operation)の作成と、標準化されたカリキュラムとマニュアルの作成、プロジェクトの成果を地方各省及び各機関に広めるためのセミナーの開催が提言されました。

本プロジェクトでは、関係者がPDMやPCM手法を十分に理解していたわけではありませんでした。PDMを活用した定期的なモニタリングが実施されていればプロジェクトをより参加型ですすめてゆくことができたであろうことが、プロジェクト実施上の教訓となりました。投入が大きくなったのも、プロジェクトの成果や目標の具体的な認識の欠如が一因であったろうと思われます。

国際協力論講義(66)

2011 年 1 月 25 日 火曜日

技術協力プロジェクトの実例を紹介します。
例1)ラオス国セタティラート病院改善プロジェクト
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601463_3_s.pdf
協力金額:総額5億3000万円
協力期間:1999年10月1日~2004年9月30日
先方関係機関:ラオス保健省、ヴィエンチャン特別市保健局、セタティラート病院
日本側協力機関:琉球大学医学部、沖縄県医師会、沖縄県
協力の背景と協力内容:
セタティラート病院は病床数175床、医師数75名を含む290名の医療従事者を擁する総合病院です。ラオス国北部地域における中核的医療機関であるとともに、医科大学生の臨床教育、医師の卒後教育を担う医育機関でもあります。
ラオス政府は、セタティラート病院の医療水準と卒後研修機能等のレベルアップを実現し、もってラオス国全体の医療水準の底上げを図るべく、我が国に対し技術協力を要請しました。
我が国ではこれを受けて、無償資金協力による新病院建設を実施し、2000年11月に新病院が完工しました。
新病院の完工に先立ち、1999年10月1日より本プロジェクトが開始されました。
(1)上位目標
1.カルテシステム、患者データのコンピュータ化、治療食、郡病院に対する研修などの、
セタティラート病院における成果が、ラオスの他病院で採用される。
2.ラオス国内で診断・治療を受ける患者が増加する。
3.他の医療施設からの検査依頼が増加する。
4.周辺国の病院との技術交換が行われる。
(2)プロジェクト目標
セタティラート病院の医療サービス及び研修機能が向上する。
(3)成果
1.セタティラート病院の臨床各部門の臨床技術と知識が向上する。
2.セタティラート病院の検査部門の技術と知識が向上する。
3.セタティラート病院の薬剤部門の技術と知識が向上する。
4.セタティラート病院の看護部門の技能と知識が向上する。
5.セタティラート病院の病院管理部門の機能が向上する。
6.セタティラート病院の院内設備・機器が必要なときに使用可能な状態に維持される。
7.セタティラート病院の病院食提供サービスが改善される。
8.医師の卒後研修機能が向上する。
9.地域病院(ヴィエンチャン特別市各郡病院および周辺2県の中心郡病院)と、セタティ
ラート病院との間のリファラルシステムが改善される。
(4)日本側投入
長期専門家派遣 延べ 15名
短期専門家派遣 延べ 31名
研修員受入 18名
機材供与 約146,000千円
ローカルコスト負担 約3,000万円

<終了時評価結果>
9つの成果について、A、B、Cの3段階の有効性の評価が行われました。
B、Cの評価は成果達成度が十分ではなかったということになります。
A評価は「1.臨床部門」「2.検査部門」「3.薬剤部門」「6.設備・機器維持」
B評価は「4.看護部門」「5.病院管理部門」「9.リファラルシステム」
C評価は「7.病院食提供」及び「8.卒後研修機能」

また、本プロジェクトは次のインパクトを生みました。
○病院関係者を始め、患者や一般市民から、最新医療機材を整えたラオスで誇るべき病院との評判を得た。
○本プロジェクトの実施によって、他の病院分の政府予算が削られるといった状況を作り出していない。
○CTスキャンなどの検査のためタイに流れていた患者がセタティラート病院で同検査を受けるようになった。
○検査部門は他病院や民間企業からの受注・委託が増大し、ヴィエンチャン市におけるリ
ファレンスセンターとしての機能を持ちつつある。
○郡病院スタッフへの継続的な研修は効果が高く、リファラル強化のモデルとなった。
○看護部門の2交代制は定着の途上ではあるが、近代的病院としての標準を示すことが出来た。
○病院を訪れる数多い患者を効率的に診察できる病院体制が、ある程度整いつつある。

自立発展性の評価では、財務面において、コストシェアリングの意識の徹底やリボルビングファンドの創設などが高く評価されました。
技術面においても、高度で高額な精密機器についてメンテナンス会社との契約による維持管理体制が整っているなどが高く評価されました。
また、カウンターパートの離職がほとんどないことも評価されました。

プロジェクトへは、終了時評価調査団から以下のような提言が行われました。
○若手看護師へのOnthe Job Training(OJT)プログラムを策定すべきであること。
○管理部門のスタッフを増やすこと。
○定期点検シートのような自己評価体制を整える必要があること。
○病院食提供サービスに代わる食事指導体制を充実すべきこと。
○医師の卒後研修を体系的に行うこと。その前提条件として、まず患者データを記録し、データの利用を容易にすること。
○郡病院から紹介された患者の診断・治療方針の紹介元への返答率が低かった原因を追究し、改善すべきこと。

本プロジェクトからは教訓として、周辺国での研修を含む技術協力が有効であったこと、英語学習が効果的であったこと、モニタリングシートは柔軟な改変が行われるべきであること、琉球大学とのパートナーシップが強まったことは有意義であったことなどが得られました。

国際協力論講義(65)

2011 年 1 月 15 日 土曜日

国際協力の評価

ODAは政府活動の一つです。

従って、政府には、ODAの透明性を高め、ODAに関する情報を納税者である国民に提供するため、ODAの実施について評価し、公表することが求められています。

評価結果は外務省のホームページなどを通じて一般に公表されています。

ODAの評価は、国民に対する説明責任を果たすためだけではなく、ODA活動を検証し、その結果得られた教訓をODA政策策定や実施プロセスにフィードバックすることにより、ODAの質の向上にも役立ちます。

ODA評価には、政策レベル(ODA大綱、ODA中期政策、国別援助政策、重点課題別政策)の評価、プログラムレベル(共通の目的を持つ複数のプロジェクトを援助分野別あるいは援助形態別にまとめたもの)の評価、個別のプロジェクトレベルの評価の各段階があります。

評価は、Plan→Do→Check→Actのサイクル中に位置づけられていますが、技術協力プロジェクトの場合は、他国の援助機関の多くが採用しているPDM(Project Design Matrix)という共通のログフレームを用いたPCM(Project Cycle Management)という、PDCAサイクルの管理をさらに論理化したマネジメント手法がとられており、評価はPCMに則って行われています。

国際協力論講義(64)

2011 年 1 月 12 日 水曜日

国際協力の案件形成

援助を効果的・効率的に実施するためには、妥当な援助案件の形成と、援助の事前評価が肝要となります。

案件形成のためには、相手国ごとに経済・社会状況や開発上の課題を把握することが不可欠です。

そのため、国別に調査を行い、国別に援助計画が策定されています。

他の援助国や国際機関との競合調整も必要です。

他の援助諸機関との援助協調により援助効果を高めることもできます。

援助のスピーディな実施も重要です。

実施が遅延する原因として、相手国側に問題があることも少なくありません。

相手国がわが国ODAに関する基本政策およびその手続きなどについて十分に理解していることが不可欠です。

これらのため、在外公館、JICA現地事務所が努力していますが、必要に応じ、日本から案件形成のための調査団を派遣したり、援助受入れ機関の責任者を日本に招いて説明したりもしています。

<国別援助計画>

国別援助計画は、被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえ、開発計画や開発上の課題を勘案した上で、策定後5年間程度を目途としてわが国の援助計画を示すものです。

計画の策定にあたっては、現地事情に通じた現地ODAタスクフォース(在外公館、JICA現地事務所等)の意見を十分考慮し、相手国政府、有識者、NGO、経済界などとの意見交換を踏まえることとされています。

計画の策定と公表により、日本の援助計画が国内のみならず、国際社会にも広く発信されることになります。

主要な被援助国について、援助計画は策定、公表済みです。

<案件形成調査>

援助の効果的・効率的な実施のため、JICAにより各種調査が行われています。

開発途上国が協力を要請するプロジェクトに対し、具体的な協力案件に関する協議だけではなく、JICAの事業実施方針や援助に関するわが国の基本方針、あるいは相手国の開発計画等に関する対話を進めることが必要で、これを目的とした調査が行われています。

わが国の援助は要請主義(相手国の要請に基づき援助を実施)を原則として実施していますが、行政的能力等が不足した国では案件の発掘が十分に行われない場合も多く、案件形成自体に対する支援を行うことも重要です。

国別、分野別援助計画を充実させ、国別・分野別援助研究を踏まえたプロジェクトの形成に役立てるため、企画調査員の派遣などが行われています。

また、相手国から提出される要請案件の周辺情報を収集・分析するため、在外専門調整員をJICA現地事務所に配置しています。

有償資金協力については、プロジェクト形成段階から様々な専門能力が必要とされ、資金や専門技術等の制約から開発途上国側で十分な事業計画の形成作業を行うことが困難な場合があるため、コンサルタントなどを雇用して案件形成促進調査(SAPROFSpecial Assistance for Project Formation)が行われています。

国際協力論講義(63)

2011 年 1 月 5 日 水曜日

<留学生交流>

1954年に国費留学生の受入れが開始されました。

1983年には「留学生受入れ10万人計画」が策定され、国費留学生受入れの整備、私費留学生等への援助、留学生に対する教育、研究指導の充実等の施策を講じられ、2008年には12万人に達しました。

現在は「留学生30万人計画」のもと、2020年までに30万人の留学生を受け入れるため、留学前から卒業後まで体系的な施策の展開が図られています。

留学生交流の推進は、開発途上国の人材養成への貢献、日本と諸外国との友好親善関係の増進を図るだけでなく、日本の高等教育機関の教育・研究の高度化、国際化にも貢献します。

国費留学生は、開発途上国を中心に、世界各国から前途有望な青年を日本に招へいし、高等教育機関で教育や研究を行わせる事業です。

研究留学生、教員研修留学生、ヤング・リーダース・プログラム(いずれも大学院レベル)、学部留学生、日本語・日本文化研修留学生、高等専門学校留学生、専修学校留学生(いずれも学部レベル)の7つのプログラムから構成されています。

2008年度は157か国から5412人を新規に受け入れています。

私費留学生等に対しても支援が行われています。

日本の高等教育機関に在籍する私費外国人留学生、日本語教育機関に在籍する就学生の修学を支援するために学習奨励費の給付が行われたり、私費外国人留学生に対して授業料の減免を行う学校法人に対する補助が行われています。

また、国際的に魅力のある留学生受入れプログラムを実施する大学に対する国費外国人留学生(研究留学生)の優先配置、日本企業への就職意志のある優秀な留学生に対し支援を行うアジア人財資金構想の実施、地域社会・日本人学生との交流事業の実施、帰国留学生のフォローアップを含めた卒業後の活躍の場の拡大が図られています。

さらに、日本留学希望者に最新で的確な情報を提供し、日本への留学の促進を図るため、日本留学フェア・セミナーが海外で開催されています。

留学生宿舎については、良質で低廉な宿舎を確保するため、(独)日本学生

支援機構による留学生宿舎の運営(全国16か所2,772戸)、大学等が建設する留学生宿舎のための建設奨励金の交付(整備戸数1,974戸)等により宿舎の確保が図られています。

日本のODA対象国からの留学生受入れ実績(2008年度)は次の通りです。

 

(国費留学生制度)

中国              1,794

韓国                     930

インドネシア       690

ベトナム              574

タイ                     564

バングラデシュ    466

モンゴル              279

フィリピン           276

マレーシア           238

ブラジル              218

 

(学習奨励費)

中国              9,054

ベトナム              224

ネパール              115

バングラデシュ    113

タイ                     110

インドネシア       89

マレーシア           79

モンゴル              69

スリランカ           59

ミャンマー           56

国際協力論講義(62)

2011 年 1 月 4 日 火曜日

<NGOの支援2>

草の根技術協力事業のようなNGOの直接支援のほか、政府等による次のようなNGO支援が行われています。

・リサイクル物質輸送

日本の地方自治体や医療機関、教育機関などが提供する優良な中古物質等(消防車、救急車、病院用ベッド、車椅子、学校用机・椅子、仮説プレハブ住宅等)を、開発途上国において日本のNGOが引き受け、当該途上国NGO、地方公共団体等に配布・贈与する事業について、その輸送費等について資金面での協力を行っています。

・NGO緊急人道支援活動

海外で発生する大規模な武力紛争や自然災害に伴う難民・避難民に対し、日本のNGOが実施する緊急人道支援活動に資金面で協力しています。

・対人地雷関係事業

日本のNGOが行う地雷・不発弾除去、犠牲者支援、地雷回避教育などの対人地雷関連の活動について資金面での協力を行っています。

・マイクロクレジット原資事業

マイクロクレジットは、担保手段を持たないために民間銀行等からは融資対象として不適格と見なされる貧困層、特に女性に対し、生産手段の確保・拡充、所得向上のために少額・無担保の資金を供与するものです。

現地でマイクロクレジットの実績をもつ日本のNGOに対し原資となる資金を提供し、団体は供与された資金を使用し、貧困層の人々に少額・無担保の貸付を行います。

・国際ボランティア貯金

郵便貯金預金者による受け取り利子からの寄付を、海外で活動するNGOを通じて、開発途上地域の国民の福祉向上のために活用しています。

国際協力論講義(61)

2011 年 1 月 3 日 月曜日

<NGOの支援1>

・草の根技術協力事業

草の根技術協力事業には、団体の規模や種類に応じて、次の3つのメニューがあります。

イ 草の根パートナー型

開発途上国への支援について、一定の実績があるNGOや大学などの団体が、これまでの活動を通じて蓄積した経験や技術に基づいて提案する国際協力活動を支援するもの。

事業規模は3年間で5,000万円以内。

2008年度は、66件実施(うち新規案件23件)。

選考については、55件の応募があり、22件が採択内定。

ロ 草の根協力支援型

開発途上国の支援実績が少ないものの、団体のアイデアや国内での活動実績を活かしてNGO等の団体が行う国際協力活動を支援するもの。

事業規模は3年間で1,000万円以内。

2008年度は、31件実施(うち新規案件12件)。

採択内定は16件。

ハ 地域提案型

地方自治体からの事業提案によって、日本の地域社会が持つノウハウ・経験を活かしながら、開発途上国での技術指導や現地からの研修員の受入れを通して、開発途上国の人々や地域の発展に貢献する協力活動を支援するもの。

実施可能期間は3年以内(事業規模に上限あり)。

2008年度は、地方自治体等の提案の中から、専門家168名の派遣、研修員164名の受入を実施。

国際協力論講義(60)

2010 年 12 月 31 日 金曜日

<主なNGO>

国際協力活動を行っているNGOは数多くありますが、主なものを紹介します。

・開発協力型

母子保健活動を中心に数多くの事業を展開している「(財)家族計画国際協力財団」、世界の結核対策をリードしている「(財)結核予防会」、バングラデシュ、ネパール等で農村開発、教育、女性支援などの援助を行っている「(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会」の他、「(財)オイスカ」、「(社)日本国際民間協力会」、「(社)シャンティ国際ボランティア会」、「(特活)日本国際ボランティアセンター」、「(特活)幼い難民を考える会」、「(社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」、「(特活)ワールド・ビジョン・ジャパン」などがあります。

アフガニスタン開発支援では「カレーズの会」、「ペシャワール会」が有名です。

・緊急人道支援型

自然災害や紛争等の緊急事態により発生した国内避難民や難民支援等を得意とする団体として「(特活)ピースウィンズ・ジャパン」、「(特活)日本緊急救援NGOグループ(JEN)」、「(特活)AMDA」、「国境なき子どもたち」などがあります。

国際NGOでは「国境なき医師団」が有名で、ノーベル平和賞を受賞しています。

なお、2000年に多くのNGO、経済界、政府が協力して設立したNPO法人に「ジャパン・プラットフォーム(JPF)」があります。

http://www.japanplatform.org/

大規模自然災害及び紛争の際に、迅速、効果的な緊急人道支援を行うため、NGOが事前拠出された資金を活用して迅速に支援を行います。

政府からの年間十数億円規模の資金、民間からの寄付金、民間企業の物的貢献などによりJPFは活動しています。

・提言型・ネットワーク型

政策提言やアドボカシー、各団体間の連絡調整やネットワーキングを主な目的とする団体には「(特活)国際協力NGOセンター」、「(特活)関西NGO協議会」、「(特活)名古屋NGOセンター」などがあります。

国際協力論講義(59)

2010 年 12 月 30 日 木曜日

<国民参加型協力>

国際協力への理解と参加を促し、地域の持つ経験やノウハウを活かした国際協力を拡充するため、市民参加協力支援事業として、様々な情報提供と啓発活動が実施されています。

特にNGOの活動は、草の根レベルで地域社会に密着したきめの細かい援助ができること、災害や紛争等の緊急事態が発生した際に柔軟かつ迅速に対応できること、途上国国民の自助努力を促し、自立を助けるような開発アプローチに参加、あるいは、地域社会を活性化する援助に取り組むことが比較的容易であること、市民レベルの援助活動を通じて国民の国際協力に対する理解と参加が深まること、相手国国民との相互理解の増進となることなどの特徴があり、効率的・効果的な援助の実施に不可欠な存在となりつつあります。

NGOの主な協力分野は人材育成(教育)、農漁村等の開発、保健・医療で、生活環境等の改善や人道支援を中心に行われています。

・開発教育支援

これまで国際協力の経験がなかった団体・個人に対して、国際協力への参加を支援し、また国際協力に参加しやすい環境を整備することに主眼を置いて、国際協力経験者による体験談を含むセミナー・ワークショップなどを通じた情報提供や啓発が行われています。

具体的には、国際協力出前講座、開発教育/国際理解教育コンクール、中学生・高校生エッセイコンテスト、教師海外研修、開発教育指導者研修、修学旅行生のJICA訪問、国際協力(ODA)実体験プログラム、開発教育教材の作成と配布、市民向けイベントセミナーなどが行われています。

2008年度の活動実績は次の通りでした。

国際協力出前講座:2,062件/202,947

中学生・高校生エッセイコンテスト:応募総数7万5,010

教師海外研修: 高校34名、中学校53名、小学校54名、特殊学級1名、その他7名

開発教育指導者研修:104件/7,276

修学旅行生のJICA訪問:1,048

国際協力(ODA)実体験プログラム:40件/1,171

開発教育教材の作成と配布:全国小・中学校 約1万6,000校等に配布

・連携・研修

草の根レベルに届く協力を実施するため、ODAにおいても自治体、NGO等の人材や知見を活かすことの重要性が認識されており、相互の連携を深めるための取組が行われています。

組織的、技術的な基盤が弱い団体などに対しては、研修により実施能力を強化しています。

具体的には、NGOJICA定期協議会、NGO人材育成研修、PCM研修、NGO技術者派遣、NGO組織強化のためのアドバイザー派遣、地方自治体職員への国際協力実務研修などが行われています。

2008年度の活動実績は次の通りでした。

NGOJICA定期協議会:3

NGOJICA連携事業検討会:2

NGO人材育成研修:25

PCM研修:128

NGO海外プロジェクト強化のためのアドバイザー派遣:10

NGO組織強化のためのアドバイザー派遣:17

地方自治体職員など国際協力実務研修:1件/22

・国際協力推進員

自治体の国際交流協会などに配置され、国際協力に関心を持つ、地域の自治体、NGO、市民からの様々な相談に応じています。

たとえば福岡県では、(財)福岡県国際交流センター http://www.kokusaihiroba.or.jp/)、北九州市では(財)北九州国際交流協会 http://www.kitaq-koryu.jp/jp_new/)、福岡市では(財)福岡国際交流協会 http://www.rainbowfia.or.jp/)が相談窓口です。

国際協力論講義(58)

2010 年 12 月 29 日 水曜日

<国際基金等への出資>
日本は、国際基金等へも多額を出資しています。
・国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発銀行(IDA)
IBRD資本金の8.1%、IDA資本金の19.4%を出資し、第2位
専門職以上の邦人職員は68名(1.9%)
・国際通貨基金(IMF)
出資率は6.1%で米国に告ぐ第2位
専門職以上の邦人職員は36名(2%)
・アジア開発銀行(ADB)、アジア開発基金(ADF)
ADBの出資率は15.6%で米国と並び第1位、ADFの出資率は36.9%で第1位
専門職以上の邦人職員は124名(14.5%)
・アフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ開発基金(AfDF)
AfDBの出資率は5.5%で域外国中第2位、AfDFの出資率は12.7%で第2位
専門職以上の邦人職員は3名(0.3%)
・米州開発銀行(IDB)
通常資本金の出資率は5%で域外国中第1位、特別業務基金の拠出率は5.9%で域外国中第1位
専門職以上の邦人職員は20名(1.3%)
・欧州復興開発銀行(EBRD)
出資率は8.5%で、米国に次ぎ、仏・独・英・伊と並び第2位
専門職以上の邦人職員は18名(2.3%)
・国際移住機関(IOM)
分担率は17.8328%で第2位
邦人職員は24名
・世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFFATM)
2000年の九州・沖縄サミットで、サミット史上初めて、感染症対策を主要議題として取り上げたことが契機となり、2002年に設立しました。
これまでの主な成果は、HIV/エイズ対策については200万人に抗レトロウィルス薬治療の実施、結核対策については460万人への直接監視下短期化学療法(DOTS)治療の実施、マラリア対策については7000万張りの殺虫剤浸漬蚊帳配布などです。
拠出額は累計10.4億ドルで第4位です。

国際協力論講義(57)

2010 年 12 月 27 日 月曜日

<国際機関等への拠出金>
日本から国際機関等への拠出金は、平成22年度は889億円で、ODAの1割強を占めています。
国際機関を通じた援助(マルチ援助)は、各機関の高度な専門性や経験を利用することができること、世界的援助ネットワークを活用できること、政治的中立性を活かした援助ができることなどの利点があります。
二国間援助(バイ援助)にも、援助努力が相手国に直接に印象付けられて友好親善関係が深められるなどの利点がありますので、国際機関を通じた援助と二国間援助それぞれの長所を活かして有機的に情報、技術、人材、資金などを補完し合う「マルチ・バイ援助」で援助効率が高まります。
国際機関等への拠出金の多くは、各加盟国に支払い義務がある分担金で、国際機関の設立協定等に分担金(分担率)に関する規定があります。
分担率に比して日本人職員数が少ないことが積年の課題でしたが、近年は幾分改善されてきています。
・国際連合(UN)
分担率は16.624%で米国(22%)に告ぐ第2位
専門職以上の邦人職員は111名(10%)
・国連食料農業機関(FAO)
分担率は16.706%で米国(22%)に告ぐ第2位
専門職以上の邦人職員は24名(2.6%)
・国連世界食料計画(WFP)
分担率は3.53%で第6位
専門職以上の邦人職員は50名(3.6%)
・国連教育科学文化機関(UNESCO)
分担率は16.624%で米国(22%)に告ぐ第2位
専門職以上の邦人職員は68名(3%)
・国連工業開発機関(UNIDO)
分担率は22%で第1位
専門職以上の邦人職員は13名(4.9%)
・国連児童基金(UNICEF)
分担率は7.5%で第6位
邦人職員は68名
・国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
分担率は6.9%で第3位
邦人職員は71名(3.7%)
・国連人口基金(UNFPA)
分担率は6.9%で第6位
専門職以上の邦人職員は15名
・国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)
分担率は1.9%で第13位
邦人職員は5名(2.6%)
・国連環境計画(UNEP)
分担率は3.36%で第12位
専門職以上の邦人職員は15名(2.8%)
・国連開発計画(UNDP)
分担率は6.7%で第6位
専門職以上の邦人職員は76名
・世界保健機関(WHO)
分担率は16.6253%で米国(22%)に告ぐ第2位
邦人職員は32名(1%)
・国連大学(UNU)・・・東京に本部
分担率は27.4%で第1位
邦人職員は19名
・国際労働機関(ILO)
分担率は16.632%で米国(22%)に告ぐ第2位
邦人職員は39名(2.2%)
・国際原子力機関(IAEA)
分担率は16%で米国(25%)に告ぐ第2位
邦人職員は50名
・国連薬物犯罪事務所(UNODC)
分担率は2.3%で第12位
専門職以上の邦人職員は7名
・国際農業開発基金(IFAD)
総額3.1億ドルを拠出し第4位
邦人職員は4名
・国連合同エイズ計画(UNAIDS)
2008年度は269万ドルを拠出し第15位
専門職以上の邦人職員は3名
・国連ボランティア計画(UNV)
拠出率は9.6%で第4位
専門職以上の邦人職員は1名
・国連人間居住計画(UN-HABITAT)
拠出率は10%で第3位
専門職以上の邦人職員は4名
・赤十字国際委員会(ICRC)
拠出率は1.7%で第13位
邦人職員は8名
・地球環境ファシリティ(GEF)
直近の拠出率は12.4%で米国に次ぎ第2位
邦人職員は3名(4%)
・国際農業研究協議グループ(CGIAR)
拠出率は2.3%で第11位
邦人職員は36名
・国際獣疫事務局(OIE)
口蹄疫や牛海綿状脳症(BSE)など動物の感染症対策の専門機関です。
専門職以上の邦人職員は2名(3%)
・国際熱帯木材機関(ITTO)
2008年は558万ドルを拠出し第1位
邦人職員は16名(40%)

国際協力論講義(56)

2010 年 12 月 25 日 土曜日

ボランティア派遣(ボランティアの待遇)
<青年海外協力隊>
ボランティア精神に基づいて参加することが原則であるため、給料は支給されませんが、青年海外協力隊員には規定によって、次のような待遇または身分措置が講じられています。
(a)現地生活費
隊員が海外で協力活動中は、1カ月280~700ドル(派遣国の生活実態により支給額に差があります)の現地生活費が支給されます。
この手当は、現地生活に最低必要な日常生活費であり、経歴・年齢の差に関係なく、同一任地であれば同額です。
(b)住居手当
隊員の現地での住居は、受入国が提供することとなっていますが、受入国の住宅事情で、隊員の活動に相応した住居が提供されない場合には、わが国より住居費の一部あるいは全部の補助が行われます。
(c)国内積立金
隊員の中には、現在の勤務先を退職して参加する者、就職しないまま参加する者があります。
これらの隊員については、帰国後の社会復帰資金として、派遣前の訓練中から任期満了に至るまでの期間、国内積立金が積み立てられ、支給されます。
この資金は、帰国後における生活基盤の再構築資金です。
所属先から有給休暇の措置を受けて参加した隊員にはこの資金の適用はありません。
この資金の任期中における引出はできません。
(d)現職参加
現に勤務先を有する者が、勤務先での身分を有したまま協力隊へ参加することを、協力隊への現職参加と呼んでいます。
開発途上国において効果的な協力活動を行うためには、隊員が実務経験、社会経験を有することは重要な要素です。
地方公務員については「地方公務員派遣法」の制定にともない、地方公共団体における条例等制度の整備が行われており、身分措置を行って協力隊に参加する人が増えています。
民間企業においても独自の休職措置の制度化が行われており現職のまま参加する人が増えています。
この場合、雇用者側の負担を軽減する所属先補填制度が設けられています。
「現職教員特別参加制度」により教員が協力隊に参加しやすいような環境づくりも行われています。
(e)福利厚生
隊員に対する福利厚生面への配慮として、国際協力共済会への加入、海外労災特別加入、災害補償等が制度化されているほか、雇用保険の受給資格を有する者が隊員に参加した場合には、受給期間の延長が認められ帰国後における受給が可能となっています。
農協の職員や農業後継者等が隊員として派遣された場合、海外派遣期間中についてもその期間を耕作または養畜の事業に従事したものとして取扱われることになっています。
(f)健康管理・安全対策
健康管理については、年1回、JICAの費用負担で健康診断が受けられ、在外事務所常備医薬品を利用できます。
重症患者へは、現地顧問医や日本の事務局が対処します。
安全対策については、専門家の派遣による現地での巡回指導が行われています。
通信網が未整備な地域での連絡手段の確保や、安全対策専門クラークの配置などの危機管理対策も行われています。
<シニア海外ボランティア>
シニア海外ボランティアについても、青年海外協力隊員と同様です。
青年海外協力隊員との違いは、家族を随伴する場合には家族の渡航費や家族手当が支給されること、現地で住居、ホテルなどを借り上げる場合に、上限額まで実費が支給されることなどがあります。
無職または無給休職で参加し、出発時に65歳未満の人には、派遣期間中、国内積立金が支給されます。
有給休職で参加する人には、所属先に対して派遣期間中の人件費が上限額内で補てんされます。
民間企業に対しては間接経費をあわせて支給する制度もあります。
また、自営者に対する補てん金の支給制度もあります。
福利厚生制度としては、労働者災害補償保険特別加入制度に基づく補償や、「国際協力機構国際協力共済会」による療養費等の給付が行われます。

国際協力論講義(55)

2010 年 12 月 23 日 木曜日

ボランティア派遣(シニア海外ボランティア派遣事業)

シニア海外ボランティア派遣事業は、開発途上国での技術協力活動に関心を持つ中高年層の人々を対象として1990年に創設されました。

青年海外協力隊のシニア版として位置付けられており、派遣形態などは青年海外協力隊事業とほぼ同様です。

日本国内でのボランティアに対する関心が高まり、幅広い技術や豊かな経験を有する中高年

者で、ボランティア精神に基づき開発途上国の発展のために貢献したい方々の活動をJICAが支援する国民参加型事業です。

シニア海外ボランティア派遣事業は、対象国からの要請に基づき国内で募集・選考した技術技能を有する中高年者(派遣時に40歳から69歳まで)を、訓練の上、相手国に派遣する事業です。

長期派遣ボランティアは、面接、健康診断、語学試験などの2回の選考を経て合否が判定され、その後、国際協力、任国事情、語学等を内容とする65日の長期青年海外協力隊との派遣前合同訓練を受けた上で1年または2年間の任期で派遣されます。

短期派遣ボランティアは、長期派遣ボランティアと同様に面接、健康診断、語学試験などの2回の選考を経て合否が判定され、2日間の研修を受けた上で、年6回に分けて1か月から1年未満の任期で派遣されます。

2008年度には、55か国で969名のボランティアが協力活動を行いました。

2009年7月末現在の派遣中ボランティアは62か国に580名で、2008年度末までの累計派遣人数は3,808名です。

2008年度に活動をしたボランティア(新規)の年齢別人数の比率は、6064歳が32%と最も多く、次いで、5559歳の23%6569歳の15%となっています。

分野別では、人的資源(教育)の22%が最も多く、次いで、鉱工業の15%、商業・観光の14%の順になっています。

保健医療分野は少ないようです。

派遣先はアジア、中南米、中東、大洋州の順に多く、アフリカは少なくなっています。

青年海外協力隊とは派遣分野も派遣先も分布が大きく異なっています。

国際協力論講義(54)

2010 年 12 月 21 日 火曜日

ボランティア派遣(青年海外協力隊派遣事業)

ボランティア派遣には青年海外協力隊派遣事業とシニア海外ボランティア派遣事業とがあります。

青年海外協力隊派遣事業は1965年に始まりました。

1961年にケネディ大統領が提唱して創設された米国の平和部隊に倣い、日本もアジア諸国に対し青年技術者を派遣することになりました。

「日本青年の自発的意志に基づく対外協力活動の実現に対する声の高まりを背景に、開発途上の国々に技術を有する青年を派遣し、相手国の人々と生活と労働を共にしながら相手国の社会的、経済的発展に協力することにより、これら諸国との親善と相互理解を深めるとともに、日本青年の広い国際的視野のかん養に資すること」を目的として青年海外協力隊が創設されました。

青年海外協力隊事業は、相手国の要請に基づき、国内で募集選考した技術・技能を有する20歳~39歳までの日本の青年男女を訓練の上、相手国に派遣する事業です。

1965年の発足以来、2008年度末までに83か国に累計32,738名を派遣しています。

1965年度の発足後最初に隊員が派遣されたのは、ラオス、カンボジア、マレイシア、フィリピン、ケニアの5力国で、計29名が派遣されました。

2008年度には、75か国において3,906名の隊員が協力活動を行いました。

2009年7月末現在の派遣中隊員は、75か国に2,479名です。

現在、派遣地域はアフリカが多く、中南米、アジア、大洋州、中東と続きます。

この事業は、国民参加型の「顔の見える協力」の代表例として、内外から高い評価を得ています。

青年海外協力隊員は、相手国からの具体的な要請書に基づいて募集・選考が行われます。

派遣される隊員には長期隊員、短期隊員の2種類がありますが、主体は長期隊員です。

派遣された協力隊員は、相手国の政府機関等に配属され、当該機関の一員として協力活動を行います。

現地での協力活動の形態は次のように大別されます。

(イ)村落の一員として農村社会の中に融け込み普及活動を進めていく「村落型」(例えば、村落開発普及員、稲作、家畜飼育)

(ロ)職業訓練や理数科教育のように実習、授業を担当する「教室型」(例えば日本語教育、自動車整備)

(ハ)土木建築、通信関係の現場工事に従事する「現場勤務型」(例えば土木設計、測量、電話架設)

(二)設計や試験研究を任務とする「オフィス・試験場勤務型」(例えば栽培実験、都市計画)

長期隊員は、面接、健康診断、語学試験などの2回の選考を経て合否が判定され、その後合格者は国際協力、任国事情、語学等を内容とする65日の長期シニア海外ボランティアとの派遣前合同訓練を受けた上で、年4回に分けて協力隊員として原則2年間の任期で派遣されます。

訓練は、協力隊事業の概念・異文化理解などの講座、赴任国事情講座、外国語学習、体育、保健衛生講座、安全管理講座などが集中的に行われます。

職種は8分野で約195種と多岐にわたります。

教育、保健医療、農林水産、スポーツに関する派遣が多くなっています。

短期隊員は、長期隊員と同様に面接、健康診断、語学試験などの2回の選考を経て合否が判定され、2日間の研修を受けた後、年6回に分けて1か月から1年未満の任期で派遣されます。

短期隊員には次の2つのタイプがあります。

Aタイプ:

JICAボランティア等経験者のみを対象とし、長期ボランティアの活動の中継ぎや活動環境の確認、整備等を主に行うことを目的とした派遣です。

Bタイプ:

派遣者にボランティア経験は問わず、活動中の長期ボランティアの補完、支援をすることを目的とした派遣です。

国際協力論講義(53)

2010 年 12 月 18 日 土曜日

技術協力の(6)

開発計画調査型技術協力

開発計画調査型技術協力には次の3つがあります。

 ① 政策立案または公共事業計画策定支援(日本の資金協力を必ずしも想定しない)を目的とした「開発計画調査型技術協力」

 ② キャパシティ・ディベロップメントを目的とした「技術協力プロジェクト」

 ③ 将来の協力案件形成(主に資金協力)あるいは事前準備を目的とした「協力準備調査」

開発途上国の政策立案や公共事業計画策定の支援を目的としたものですが、調査の実施過程を通じ、相手国のカウンターパートに対し調査・分析手法や計画策定手法等の技術移転を図ります。

開発途上国の開発計画に対し、学識経験者やコンサルタント等からなる調査団を派遣して現地協議/調査(データ収集等)と現地/国内での分析作業の上、計画の策定・提言を行います。

開発途上国は、開発計画調査型技術協力の結果に基づき、①提言内容を活用してセクター・地域開発、復旧・復興計画を策定する、②国際機関等からの資金調達により計画(プロジェクト)を実施する、③提言された組織改革、制度改革を行うこと等が期待されています。

主な事業の種類と内容は次のとおりです。

 政策立案または公共事業計画策定支援を目的としたマスタープラン調査(M/P)および政策支援調査

マスタープラン調査では、通常、1520年後を目標年次として国全体または特定地域に関するセクター別の長期開発計画や特定地域の総合的な開発基本戦略を策定します。

政策支援調査では、金融・財政改革、法制度整備、国営企業民営化等、市場経済化政策等の計画策定を支援します。

⑵ 緊急支援調査

自然災害発生等に対して基礎インフラの復興等の迅速な支援を行います。

 先方政府ないし他のドナー(世界銀行・ADB他)による事業化を想定したフィージビリティ調査(F/S

個々のプロジェクトが技術的、経済的、社会的に、さらには環境等の側面から見て実行可能であるか否かを検証し、最適な事業計画を策定します。

⑷ その他(地形図作成、地下水調査等)の調査

2008年度は112件の開発調査が実施されました。

国際協力論講義(52)

2010 年 12 月 16 日 木曜日

技術協力の(5)
技術協力プロジェクト
技術協力プロジェクトとは、「一定の成果を一定の期限内に達成することを目的として、その成果と投入・活動の関係を論理的に整理した協力計画」であり、予め相手国と合意した同計画に基づいて、一体的に実施、運営される技術協力事業のことです。
技術協力プロジェクトを構成する投入要素(専門家、第三国専門家、本邦研修、在外研修、機材供与等)とその組み合わせ方法、投入規模、協力期間は、事業の目標と内容に応じて最適なものを選択します。
2008年度の技術協力プロジェクトの実績は91か国、734件でした。
プロジェクトは、事業計画の立案から実施、評価までが一貫して運営されます。
期間中の技術指導のみならず、技術が確実に定着して、日本の協力終了後の自立的発展のための必要な組織、制度づくりも行われます。
プロジェクトが達成すべき目標や成果、達成度合を測る指標を明確にするため、具体的な活動と投入を整理した計画概要表(PDM:Project Design Matrix)が作成され、関係者の共通の認識として共有されます。
プロジェクトの運営はこのPDMを基本としており、モニタリングや評価にも活用されます。
技術協力プロジェクトの運営は、日本側の負担だけではなく、相手国もプロジェクト活動に必要な施設やスタッフ、運営経費(ローカルコスト)を負担します。
技術協力プロジェクトは長期間にわたる総合的な協力形態なので、現場での活動を継続的にバックアップする支援体制が設けられます。

国際協力論講義(51)

2010 年 12 月 14 日 火曜日

技術協力の(4)
技術協力専門家派遣
1955年度に東南アジア地域5か国へ専門家28名を派遣したのが始まりです。
その後、1957年度には中東・アフリカ地域へ、1958年度には中南米地域へ、1960年度には北東アジア地域へと派遣先は順次拡大されてゆきました。
2008年度は、104か国に4,471名の専門家が派遣されました。
専門家派遣は技術協力プロジェクト(後述)の専門家と個別案件の専門家に大別されます。
個別案件の専門家は、相手国政府に対する高度な政策提言を随時行う政策アドバイザー等の専門家、特定分野の技術移転を行う専門家等が派遣されています。
技術協力専門家は、開発途上国の受入機関(主として中央政府または政府関係機関)に所属し、専門家が有する知識・技術や日本での経験の蓄積を活かし、相手国のカウンターパートに対し政策助言や技術移転を行っています。
また、カウンターパートとともに現地の実情に合った技術を開発・普及し、開発途上国の経済社会開発(国づくり)、開発の担い手となる人材の育成(人づくり)に貢献しています。
国際機関を通じた国際機関専門家の派遣も行っています。
また、日本人の専門家派遣だけでなく、開発途上国(第三国)の人材を専門家として、他の開発途上国へ派遣することも行っています(第三国専門家派遣)。
日本が実施した技術協力の成果を周辺国に普及させ、南南協力を支援することが目的です。
専門家がある国に赴任した場合、技術指導の対象となる現地技術者(カウンターパート)の信頼を得ることが大切です。
専門家としての資格要件としては、専門技術、指導能力、語学力、健康の四つが最も重要です。

国際協力論講義(50)

2010 年 12 月 11 日 土曜日

技術協力の(3)
青年研修事業
中曽根総理大臣(当時)がASEAN諸国を公式訪問した際、将来の国づくりを担う青年を日本に招へいし、友好・協力関係を培うことを目的とした「21世紀のための友情計画」を提唱しました。
その翌年、1984年度から、青年招へい事業(後に青年研修事業に改称)が始まりました。
開発途上国から将来のリーダー的役割を担う青年層(20歳~35歳)を、専門分野別に日本に約18日間受け入れ、専門分野ごとに日本の有する基礎的な技術・知識の習得と日本の発展の経緯・背景を学ぶ研修を実施しています。
また、同世代の日本青年との交流を通じ、相互理解を深め友情と信頼を培います。
2008年度は106か国、1,464名の実績でした。

国際協力論講義(49)

2010 年 12 月 8 日 水曜日

技術協力の(2)
研修員受入事業
1954年、日本最初の政府開発援助としてアジアからの研修員16名を受入れました。
これが研修員受入事業の始まりです。
研修員受入事業には、日本国内で研修を実施する「本邦研修」、技術協力の成果の普及を目的として当該開発途上国内で行う「現地国内研修(第二国研修)」、周辺諸国の研修員を招いて開発途上国で行う「第三国研修」があります。
本邦研修は、2008年度実績では、141か国・地域から10,083名の研修員を新規に受け入れました。
現地国内研修は、22,417名、第三国研修は3,819名の実績でした。
第三国研修とは、自然的、社会的、文化的に共通の基盤を持つ一定の開発途上地域で、ある程度の技術水準に達した研修実施国を選定し、近隣諸国から研修員を招請して実施するもので、研修を実施する途上国に資金的、技術的支援を行うものです。
現地事情により適合した形で途上国同士の技術協力を促進することが、第三国研修の目的です。
研修には、グループごとに共通のカリキュラムで行われるもの(集団型研修)、個々の研修要望に応じてそれぞれの研修内容を策定するもの(個別型研修)など、様々な実施形態があります。
集団型研修にも、基本的な共通ニーズに対応する複数国向けの「集団研修」、地域の共通課題に対応する「地域別研修」、対象国毎のニーズに応じて研修カリキュラムを設定する「国別研修」があります。
研修員には宿泊費のほか、往復の航空賃、仕度料、食費、雑費、書籍費、国内旅費等が支給されます。
また、研修実施機関に対しては、受入れに関わる諸経費が支払われます。
本邦研修は、省庁、地方自治体、大学、民間企業、NGO等の協力・連携により行われます。
研修の本来の成果に加え、日本の産業・文化に触れ、お互いの考え方や行動様式を理解し合うことにより、国民相互の友好親善にも貢献します。
研修員は帰国後も知日家あるいは親日家として両国の架け橋となっています。
本邦研修を終了して帰国した研修員に対するフォローアップとして、現地セミナーの開催、同窓会支援、文献の供与などが行われています。
同窓会支援は、帰国研修員が同窓会を結成した場合に、その活動に対して資金面の補助を行うものです。
文献供与は、帰国研修員に対し定期刊行物や技術図書を送付して、日本の最新情報を知らせるものです。

国際協力論講義(48)

2010 年 12 月 5 日 日曜日

技術協力の(1)
技術協力は、開発途上国の指導的役割を担う人々(技術協力の“カウンターパート”といいます)へ日本の技術やノウハウを伝え、あるいは、その国の実情にあった適切な技術の開発や改良を支援し、技術水準の向上、制度の確立などに寄与しようとするものです。
カウンターパートが習得した技術が相手国の人々に広く伝われば、国の開発に寄与します。
技術協力は、所得水準が比較的高いために無償資金協力・有償資金協力の対象とならない国に対しても行われます。
また技術協力は、人と人との接触が基本となる援助形態なので、国民レベルでの相互理解に果たす役割も大です。
具体的には、開発途上国の技術者や行政官等に対する技術研修の実施、専門的な技術や知識をもつ専門家やボランティアの派遣、開発計画の作成を支援する開発調査などがあります。
わが国の技術協力の規模は、金額ベースでODA全体の約3分の1を占めています。
なお、技術協力の一環として、海外移住者・日系人への支援も行われています。
海外で生活する日本人移住者・日系人は260万人ほどに達しており、国際協力の重要な対象として位置づけられています。

国際協力論講義(47)

2010 年 12 月 2 日 木曜日

国際緊急援助
開発途上国において大規模な災害が発生した場合、緊急無償資金の供与による援助を行っていますが、そのほか、救助活動、医療活動、災害応急対策・災害復旧活動を行う国際緊急援助隊の派遣や、テント、毛布、医薬品などの緊急援助物資の供与を行っています。
国際緊急援助隊は、被災者の救出、捜索・救助活動を行う救助チーム、被災者に対する診察、防疫活動等の医療活動を行う医療チーム、災害応急対策、災害復旧について被災国関係者に助言等を行う専門家チームが個別に、または組み合わせて派遣されます。
特に必要がある場合には、輸送を行う自衛隊の部隊が国際緊急援助隊として派遣されることもあります。
国際緊急援助調査チームも派遣されます。
調査チームは、初動段階で必要な災害情報や援助ニーズの把握、被災国政府や他の国際機関等との連絡・調整、わが国の国際緊急援助の現地における受け入れサポート等を任務とするものです。
緊急援助物資の供与については、被災直後の生活に必要な物資を迅速かつ確実に被災地に届けるため、被災地に近く、かつ航空便の連絡がよい海外の4か所(シンガポール、フランクフルト、マイアミ、ヨハネルブルグ(南アフリカ))に備蓄倉庫が設けられています。
国際緊急援助隊は、迅速かつ機動的に派遣することが不可欠であるため、被災国政府等から要請があった場合、救助チームは24時間以内、また医療チームは48時間以内に派遣できるよう、救助チーム要員の待機体制、医療チーム要員の登録制度等、派遣体制が整備されています。
(救助チーム)
外務大臣からの協議を受け、警察庁、消防庁、海上保安庁の国家公務員、地方自治体の警察、消防の救助隊員、JICAその他の民間人から災害の規模に応じ要員登録を受けたもの中からアドホックに編成されます。
20~100名(67名が標準編成)で編成されるチームです。
団長(外務省)、副団長(警察庁、消防庁、海上保安庁、JICA)の指揮の下、中隊、小隊が編成され、救助活動を行う他、業務調整員、広報、通信担当、医療班、ロジ支援班が構成されます。
救助犬とそのハンドラーが派遣されるケースもあります。
地震等により生じた倒壊建物から被災者の捜索・発見、救出、安全な場所への搬送を含む救助活動を行います。
派遣期間は1週間程度です。
災害発生より72時間以上経過すると生存者救出の可能性は低くなります。
(医療チーム)
JICAに登録され、必要な研修を受けた医師、看護師、薬剤師と、外務省(団長)、JI
CA(業務調整)による21名程度で編成されるチームです。
診療所を開設し、被災者に対する応急診療活動、公衆衛生指導を行います。
派遣期間は2週間程度です。
災害発生後10日程度経過すれば被災地での急性患者の数は減少します。
引き続きニーズがある場合は二次チームが派遣されます。
(専門家チーム)
関係省庁(14省庁)等の専門家3~10名で編成されるチームです。
災害発生の制御、災害の拡大防止のために専門的な助言・指導等を行います。
派遣期間は2週間程度です。
過去に派遣された専門家チームの活動として、地震後の耐震診断、津波災害後の捜索救助技術指導、火山噴火の予測及び退避計画に関する助言、SARS禍拡大防止のための助言・指導、油流出事故に関する助言・指導、ヘリによる森林火災モニタリング及び消火に関する助言・指導などがあります。
(自衛隊部隊)
陸、海、空の自衛隊から自己完結的な機能を備えた部隊、50~1000名を派遣します。
これまでに救助、医療活動、緊急援助物資、仮設住宅の輸送等の実績があります。
派遣期間は2週間から2か月程度です。

国際協力論講義(46)

2010 年 11 月 29 日 月曜日

貧困農民支援

従前より食糧援助による供与品目の一つとして農業資機材を供与していましたが、1977年度に、食糧増産援助としての特別の予算措置を講じて、農業資機材の供与が始まりました。

2005年度からは食糧増産援助を「貧困農民支援」に名称変更し、裨益対象を貧困農民・小農とすることを一層明確化し、食糧生産の向上に向けた自助努力への支援を目指しています。

開発途上国からの要請に基づき、当該国の農業・食糧事情、経済社会情勢、対外債務残高、日本との関係、援助受入れ体制等を総合的に勘案し、農業機械(耕耘機、トラクター、脱穀機、小型農機具等)、肥料などの農業資機材や、役務等を調達するための資金を供与します。

なお、2003年以降は、それまで供与品目の一つであった農薬について、適正使用と環境配慮の観点から原則として供与しない等の抜本的な見直しが行われています。

食料援助と同様、被援助国政府は、日本が援助資金(外貨)を供与する際に、援助資金で調達した資機材の本船渡し価格(FOB)の2分の1以上を内貨立てで銀行口座に積み立てることとしています(見返り資金)。

この見返り資金については、被援助国政府は日本と協議の上、貧困農民が裨益する経済社会開発に資する事業や物資の調達等に使用することができます。

FAOを通じた貧困農民支援の場合は被援助国に見返り資金の積み立て義務はありません。

2008年度は、二国間援助として14か国の開発途上国に対し572,000万円、国際機関経由の援助として2億円、総額592,000万円の貧困農民支援が実施されました。

この援助は、一般無償の範囲内で実施される各種農業プロジェクト援助とともに、農業開発に重点を置いている開発途上国に大きく貢献しています。

国際協力論講義(45)

2010 年 11 月 27 日 土曜日

食糧援助(通称KR援助)

1964年に開始された関税引下げに関する多国間交渉(ケネディ・ラウンド交渉)の結果、穀物による食糧援助に関する国際的な枠組を定めるため、「食糧援助規約(Food Aid Convention)」が作成されました。

この規約は、食糧不足に直面する開発途上国に対し、加盟国が国際協調の下、援助として拠出する穀物の量等を規定しています。

現行規約で規定されている拠出国は、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、日本、ノルウェー、スイス、米国、欧州共同体(EU)およびその構成国です。

日本の年間最小拠出量は小麦換算で30万トンです。

日本は、1968年度から一貫して食糧援助規約に基づいて食糧援助を実施しています。

食糧不足に直面している開発途上国からの要請に基づき、当該国の食糧不足状況、経済社会情勢、対外債務残高、日本との関係、援助受入れ体制等を総合的に勘案し、米、小麦、トウモロコシ等の穀物を購入するための資金を供与します。

また、自然災害や紛争により発生した難民や国内被災民等の社会的弱者の食糧不足に対処するため、食糧不足状況等を踏まえつつ、WFP等の国際機関を通じてこれら社会的弱者に対する食糧援助も実施しています。

1996年度以降は、日本政府米の需給状況の緩和にかんがみ、政府米を食糧援助に活用しています。

被援助国政府は、日本が援助資金(外貨)を供与する際に、援助資金で調達した穀物等の本船渡し価格(FOB)の3分の2以上を内貨立てで銀行口座に積み立てることとしています(見返り資金)。

被援助国政府は、日本と使途につき協議の上、見返り資金を経済・社会開発に資する事業や物資の調達等に使用することができます。

 WFP等の国際機関経由での食糧援助の場合は、被援助国に見返り資金の積み立て義務はありません。

2008年度の実績は、二国間援助として21か国の開発途上国に対し157億円、国際機関経由の難民・国内被災民等への援助として106億円、総額263億円です。

最大の対象地域は、昨今の食糧価格高騰問題を受け、食糧不足が深刻な問題となっているアフリカです。

国際協力論講義(44)

2010 年 11 月 25 日 木曜日

緊急無償

緊急無償には次の3つがあります。

・災害緊急援助:自然災害および紛争等の被災者や難民、避難民等を救済する目的で1973年度に始まりました。

・民主化支援:民主化推進のために重要な意義を持つ選挙等に係る支援を行う目的で1995年度に始まりました。

有権者登録投票箱、投票ブース、投票用紙、啓蒙活動等にかかる費用につき、途上国政府あるいは選挙等を実施監理している国際機関を通じて支援するものです。

・復興開発支援:紛争・災害直後の人道的支援と本格的な開発援助との間をつなぐ期間に緊急性の高い案件を対象に行われ、復興・再建プロセスをスムーズに移行させるための支援として、1996年度に始まりました。

緊急性を要するこの援助の特殊性から、他の無償資金協力と比較して、資金供与がなされるまでの手続が簡素化されていることが特徴です。

2008年度は、ミャンマーにおけるサイクロン災害に対する緊急支援、中国四川省における地震災害に対する緊急支援、グルジアにおける国内避難民に対する緊急支援、ハイチにおけるハリケーン災害に対する緊急支援、パキスタンにおける国内避難民等に対する緊急支援、キューバにおけるハリケーン災害に対する緊急支援、コンゴ民主共和国における国内避難民に対する緊急支援、イエメンにおける洪水被害に対する緊急支援、ジンバブエにおけるコレラ流行対策に対する緊急支援、パレスチナ(ガザ地区)に対する緊急支援を行い、総額約70億円の災害緊急援助が実施されました。

また、ザンビアの大統領補欠選挙の実施に対する総額約1.4億円の民主化支援が実施されました。