‘国際協力の経営学’ カテゴリーのアーカイブ

チリと日本

2010 年 3 月 1 日 月曜日

第二次世界大戦後、「腹を空かせ、病に苦しむ日本の子供たちを救おう」と、食料品、医薬品、日用品などの膨大な救援物資が海外のNGOから届けられました。

昭和21年から27年にかけ、日本人の6人に1人がその恩恵を受けました。

代表的な民間援助は「ララ物資」でした。

ララ(LARA)はLicenced Agencies for Reilief in Asiaの略で、対日本援助物資の窓口を一本化するために組織された団体です。

ララ物資やユニセフによる緊急援助は、敗戦後の日本社会の混乱に歯止めをかけ、戦後復興を支えました。

ララ物資は「多数の国にまたがり、多くの民間人、民間団体からの資金や物資の提供であったため、その救援総額は不明であるが、膨大な額であったと思われる」(外務省)と、日本人として、その善意への感謝を忘れてはなりません。

ララの日本援助の運動は南北アメリカ大陸に広がりました。

チリの人々も日本の復興を支援しました。

海外滞在経験者の献血

2010 年 2 月 9 日 火曜日

献血制限は1980年から1996年の間の英国滞在歴だけではありません。

(1) 英国に昭和55年(1980年)から平成8年(1996年)までに通算1か月(31日)以上の滞在歴のある方。

(2) 英国に平成9年(1997年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(3)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)

(3) アイルランド、イタリア、オランダ、サウジアラビア、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、ポルトガルに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)

(4) スイスに、昭和55年(1980年)から今日までに通算6か月以上の滞在(居住)歴がある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(3)の滞在(居住)歴も含みます。)

(5) オーストリア、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ルクセンブルグに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算5年以上の滞在(居住)歴のある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(6)の滞在(居住)歴も含みます。)

(6) アイスランド、アルバニア、アンドラ、クロアチア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、バチカン、ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、マルタ、モナコ、モンテネグロ、ノルウェー、リヒテンシュタイン、ルーマニアに昭和55年(1980年)から今日までに通算5年以上の滞在(居住)歴がある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(5)の滞在(居住)歴も含みます。)

○どこの国からであれ、帰国日(入国日)当日から4週間以内の方

○マラリア流行地を旅行したことのある方(帰国後1年間)

○マラリア流行地に居住したことがある方(帰国後3年間)

私自身は、海外に通算3年近い滞在経験がありますが、上述の国々の中ではサウジアラビアが最長で1週間程度です。

サウジアラビアは今回の改正時に追加されました。

なお、「海外で医療行為、研究などで患者等と接する機会があったり、野外調査研究に従事する機会があった場合にも献血をご遠慮いただく場合があります」というルールがありますので、開発途上国援助に携わった経験がある人は、献血制限される可能性があります。

血液を通じた感染リスクのある病気は途上国に数多くあります。

インフルエンザも血液を通じた感染リスクがあります。

英国旅行経験者の献血

2010 年 2 月 8 日 月曜日

先日(1月26日)まで、1980年から1996年までの間に英国に1日(1泊)でも滞在したことがある人は献血ができませんでしたが、制限が緩和されました。

この期間中の英国滞在が通算1か月未満であれば献血ができます。

そもそもこの制限は、2005年2月に我が国第1例として確認された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の方が1990年に24日程度の英国滞在歴を有していたことから、実施されていたものです。

病原物質(異常プリオン蛋白)混入の可能性が大きい肉骨粉が英国で使用され始めた時期が1980年で、英国での牛の危険部位の流通規制が徹底されたのが1996年です。

1980年から1996年までの英国は、それ以外の時期、国よりも感染リスクが高いといえます。

我が国の献血制限は世界でもっとも厳しいのですが、それは血液製剤によるHIV感染の経験を行政が重く受け止めている証左でもあります。

それにしても、1日でも英国に滞在していたら牛の危険部位を口にした可能性があるので献血ができない、というのは厳しすぎる制限かもしれません。

献血希望者のうち約4%が、かつての英国旅行を理由に門前払いされています。

感染リスクがある献血者の排除は重要ですが、一方、献血者の確保も重要です。

毎年冬には血液の供給量が厳しくなります。

血液の供給が途絶えると、命を失う人が生じます。

今冬は新型インフルエンザの流行と相まって、血液の安定供給に支障が生じる恐れが例年以上に高くなったことが、献血制限の見直しの背景にあります。

リスクが完全にゼロであるとは言い切れないなかでの制限緩和です。

行政的には厳しい決断であったろうと慮ります。

ハイチ地震

2010 年 1 月 15 日 金曜日

阪神淡路大震災から15年目の祈念日を目前に、ハイチで大地震が発生しました。

十数万人の犠牲者が発生している模様で、医療機能も崩壊しているようです。

国際的な支援がなければ自力では被災者を救援できない最貧国で起きた災害です。

日本は地震や台風などの自然災害に対処する豊富な経験と技術的なノウハウを有しています。

被災国の要請に応じ国際緊急援助を行う体制が日本にはあります。

「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(通称JDR法)に基づき国際緊急援助隊が派遣されます。

国際緊急援助隊には次の4つのチームがあります。

<救助チーム>

 被災地での被災者の捜索、発見、救出、応急処置、安全な場所への移送を主な任務としています。チームは、警察庁、消防庁、海上保安庁の救助隊員から構成され、被災国の要請を受理してから24時間以内に日本を出発することを目標としています。

(登録者数:都道府県警察の機動隊約440人、自治体消防本部の救助隊600人、海上保安庁特殊救難隊員など約600人、合計約1640名)

<医療チーム>

 被災者の診療または診療の補助を行い、必要に応じて疾病の感染予防や蔓延防止のための活動を行います。メンバーは、自発的な意志にもとづいてあらかじめ登録された医師、看護師、薬剤師、調整員などから編成されます。被災国の要請を受理してから48時間以内に日本を出発することを目標としています。

(登録者数:医師216人、看護師363人、薬剤師40人、レントゲン撮影、受付などを行う医療調整員181人、合計800人)

<専門家チーム>

 災害に対する応急対策と復旧活動の指導を行います。たとえば、地震の被災国において建物の耐震性診断を行ったり、噴火の恐れがある火山を調査し、噴火予測や被害予測を行うなどの活動が含まれます。また新しい感染症に対して、被害の拡大を食い止めるため助言を行うこともあります。チームは、災害の種類に応じて、関係省庁や地方自治体から推薦された技術者や研究者などで構成されます。

<自衛隊部隊>

 大規模な災害が発生し、特に必要があると認められるとき、自衛隊部隊を派遣します。自衛隊部隊は、緊急援助活動(医療・防疫)や船舶・航空機を用いた輸送活動、ヘリコプターによる空輸活動を行います。

次のサイトで国際緊急援助隊医療チームの参加シミュレーションができます。

http://www.apic.or.jp/plaza/resque1/index.html

出生と死亡の国際化

2009 年 12 月 29 日 火曜日

人口動態統計調査では、日本居住の外国人の人口動態と外国居住の日本人の人口動態も調査されています。

平成20年に日本で生まれた外国人は1万4千人で出生数の1%以上となっています。

国際結婚が18組に1組であることもあわせ、日本の母子保健は国際化への対応が必要となってきています。

日本で死亡した外国人は6千人で出生数の半分以下ですので、日本居住の外国人人口は8千人の自然増ということになります。

日本人人口の自然減が外国人人口の自然増で補われる構図で、日本社会の国際化は急速に進展しています。

国別内訳(出生は母の国籍別)は次の通りです。

        出生数  死亡数

中国    3670  514

ブラジル  3463  184

韓国・朝鮮 1734 4679

フィリピン 1523  129

ペルー    768   49

米国     255  140

タイ     121   42

英国      46   19

日本との人的交流が反映する統計ですが、これらの国々は国際結婚の相手の国籍としても多い国々です。

「韓国・朝鮮」の自然減が特異的です。

日本定住の歴史の長さのあらわれかもしれません。

外国における日本人の出生数は15563人、死亡数は1596人でした。

出生数は日本における外国人の出生数相当ですが、外国で死亡する人は少なく、若い企業戦士の国際進出のあらわれでしょう。

幼児死亡

2009 年 12 月 17 日 木曜日

日本の幼児死亡率の高さが話題になっています。

私も、日本国際保健医療学会の学会誌に、「アンバランスな発展」と題してこの問題を発表したことがあります。

http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jaih/-char/ja

全文はこのページで著者名検索か、巻号検索(Vol.20 No.1 2005)をしていただければ読めますが、要約すると次の通りです。

 

国の発展度を測る指標として乳児(0歳児)死亡率が多用されているが、乳児死亡は闇に葬られがちなので、予防接種プログラムの対象児でもあり行政的に捕捉されやすい1~4歳児死亡率を用いたほうが合理的であろう。

ユニセフは乳児死亡率と5歳未満児死亡率の国別一覧を発表しており、わが国は、いずれの指標についても世界トップクラスの低率を誇っている。

5歳未満児死亡率から乳児死亡率を減ずると、1~4歳児死亡率を算出することができる。

多くの先進国において1~4歳児死亡率が(出生児千人あたり)1未満に改善してしまっている中、わが国のそれは1.08と高い。(注:平成20年統計では、0.87に改善していますが、それでも他の先進国より劣っています。)

 

わが国は世界の中で20~30位に位置している。

わが国の1~4歳児の主要死因は事故とりわけ交通事故と溺水であるが、十大死因には(予防接種での)予防可能感染症や他殺も登場する。

わが国の援助対象国の中には、1~4歳児死亡率においてわが国と争うところに位置しているところさえ出てきている。

政権交代と医療(58)

2009 年 11 月 12 日 木曜日

事業仕分け作業が始まりました。

進め方は具体的には次の通りです。

1.事業説明(5~7分)

各省担当職員が事業シートに基づいて当該事業の要点やシートの補足説明を行います。

2.査定担当より考え方の表明(3~5分)

財務省主計局より、当該事業の論点や主計局としての考え方を説明します。

3.当該事業の主な論点を発表(2分程度)

とりまとめ役より、事業を選定した背景や主な論点等を提示します。

4.質疑・議論(40分程度)

5.各評価者が「評価シート」へ記入(3分程度)

評価シートに評決内容とその理由を記載します。

6.WGとして評決結果を発表(2分程度)

各評価者の評価シートをとりまとめ役が集約し、WGとしての評決結果を公表します。

 

議事は一般公開されていますので傍聴できます。

事前登録は不要で入退室自由ですが、会場の都合(座席数300名程度)上、入場制限がされる場合があります。

11 11 日、12 日、13 日、16 日、17 日、24 日、25 日、26 日、27 日の9:3018:30です。 (14 日、28 日、29 日にも開催の可能性があります)

開催場所は独立行政法人国立印刷局市ヶ谷センターです。

http://www.npb.go.jp/ja/guide/soshiki/ichigaya/index.html

なお、議事はインターネットでも同時中継されます。

http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/live.html 

指名された仕分け人は必ずしも国民の意思の代表者ではなく、また、公開であるか否かは結論の妥当性を支持するものでもありませんので、評決結果は政治判断の参考意見にすぎないはずですが、このように公開の場で評決がなされますと、その結論の妥当性の如何を問わず、評決結果には従わざるを得ないような無言の圧力が醸し出されます。

劇場扇動型プロパガンダの誤謬に陥りがちな危険性を孕む手法ですので、国民としては、個々の評決結果が民主主義のフィルターを通るのを見届けるまでは安心できません。

 

たとえば、行政刷新会議メンバーがODA事業を槍玉に挙げ、国際協力機構(JICA)の「渡航費が高すぎる」と批判していることが報道されましたが、第2WGでもその通りの評決になる可能性が高いと思われます。

JICA事業でしばしば海外出張していた私自身でさえ、JICA本部勤務を経験するまでは経費削減のために格安チケットを活用しないことに疑問を持っていたくらいですので、国際協力の実務に明るくない方々であれば口を揃えて「渡航費が高すぎる」と評決するであろうことは容易に予想できます。

しかし、今回の外務大臣の渡米スケジュールの不確定性にも覗えるように、交渉相手の都合や突発的な事件への対処で、予約チケットの変更(ドタキャンや搭乗者変更、旅程変更など)が日常的に行われ、格安チケットの条件に最もそぐわないオペレーションを余儀なくされているのが国際協力活動の現実なのです。

渡航費を節減する余地がまったくないとは言えないにせよ、既に、かなりの節減努力をJICAは行っていますので、これ以上の節減を指示されれば国際協力活動が低迷する可能性があります。

リーダーシップと管理

2009 年 10 月 29 日 木曜日

本日、JICAの国際集団研修「病院経営・財務管理」コースで、リーダーシップと管理に関する講義をします。

11か国からの医師や病院管理者が対象です。

リーダーシップは、個(リーダー)と集団との関係で単純化できるものではありません。

個(リーダー)と個(メンバー)との二者間の関係が、集団構成員の数だけ重なってできる集団統率のスキルです。

リーダーシップは自認するものではなく、メンバーが認知するものです。

メンバーによって、リーダーシップが認められたり認められなかったりします。

個と個との関係次第です。

メンバー全員から孤立した人にはリーダーシップは発揮できません。

管理者室から命令を下すだけの人にはリーダーシップは発揮できません。

リーダーシップとは、周囲を巻き込むスキルです。

自分たちだけでは解決できないことを、解決できる(権限のある、技術のある)人を動かして、解決するスキルです。

人とのコミュニケーションがうまくゆくか否かがポイントです。

自分自身は、次の4つの部分に分解できます。

     パブリックな部分:自分がよく知っていて、他人にも知られている自分

     プライベートな部分:自分はよく知っているが、他人には隠している自分

     ブラインドな部分:他人には知られているが、自分は気付かない自分

     アンノウンな部分:他人にも自分にもわからない自分

この中で、自分と他人とのコミュニケーションが成立するのは①のみです。

自分が何を目指し、何をしようとしているかを表明し、明示することによって、プライベートな部分が縮小し、パブリックな部分が拡大します。

自分の行動がどう受け止められているかをフィードバックしてもらうことで、ブラインドの部分が縮小します。

リーダーシップのポイントは「自己表明」と「フィードバック」です。

リーダーとメンバーが(明示された)目的を共有し、状況把握、判断、企画、実践、評価のいかなる側面においても情報や意識を共有することでリーダーシップが醸成されます。

5S(ファイブ・エス)

2009 年 7 月 26 日 日曜日

明日は、保健医療経営学概論の最後(15回目)の講義です。

オムニバス方式で、複数の教員がそれぞれの専門領域について導入講義を行ってきました。

最後の授業は、保健医療経営「学」という学問の導入ではなく、保健医療経営の「実際」を具体的にイメージしてもらうことが達成目標です。

これまでの講義で、施設管理(設備管理、物品管理、在庫管理 ・・・)、情報管理(医事情報管理、個人情報管理、情報公開 ・・・)、危機管理(事故防止、事故時対応 ・・・)、人材管理(人材採用、人材育成 ・・・)などについて学んできた学生たちに、それらの具体的なイメージを把握してもらうには、実践の実例を示す必要があります。

施設管理の実例としては、5Sを題材にしようと思います。

5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾のローマ字の頭文字を並べたものがオリジナルですが、少し強引に「S」を並べた感があり、それぞれに補足的な語釈を加えなければ真意が誤解されがちです。

5Sは、英訳されて海外でも普及しています。

どちらかといえば、英訳のほうが真意が素直に伝わります。

 

        整理(sorting):要るものと要らないものを区分します。

        整頓(set):何を、どこに、どのように置くかを決めて実施します。

        清掃(shine):ゴミをなくすこと。異常(ゴミ)を発見(点検)し、早期に解決します。

清潔(standardize):すべてを最高の状態にします。

躾(sustain):上記4Sを維持します。維持管理のためのルールを確立します。

 

整理から躾に向かうほど、実施の難易度が上がります。

5Sがどのくらいできているかは、施設管理がうまくいっているかどうかの尺度となります。

国際協力の評価(4)

2009 年 7 月 9 日 木曜日

インパクトと自立発展性の評価は、プロジェクトそのものではなく、プロジェクトの(空間的、時間的)周辺を評価するものです。

インパクトの評価は、プロジェクトを実施したことによって、当初予想していなかった(あるいは予想はできるものの「計画」外の)影響が発生しているかどうかを評価するものです。

プロジェクトを通じて日本の技術が注目され、プロジェクト以外の分野でも日本のやり方が参考にされるようになった、というようなこともインパクトです。

プラスのインパクトとマイナスのインパクトの両面から評価します。

自立発展性は、プロジェクトが終了した後に元の木阿弥になってしまわないかどうかを評価するものです。

日本からの投入が続いている間はプロジェクト活動は継続しますが、投入が終了、すなわち日本が引き揚げた後も、国の発展に必要な活動が継続されるかどうかを予測して評価します。

制度、財政、組織、技術のそれぞれの側面から評価しますが、国際協力を評価する場合、評価5項目の中では最も重視すべき評価項目だと思います。

評価は客観的に行うよう心がけなければなりませんが、インパクトと自立発展性の評価には、プロジェクトの対象外のことや将来のことを推測したり予測したりする要素がありますので、若干の主観が混じります。

評価者の資質が問われるところでもあります。

昨夜、帰国しました。

本日より大学業務に復帰しています。

国際協力の評価(3)

2009 年 7 月 8 日 水曜日

有効性の評価とは、プロジェクト設計の良し悪しを評価するものです。

プロジェクトを実施することでいくつかの具体的成果を生むことができますが、その成果が果たしてプロジェクト目標の達成に役立つものであったのか、それとも的外れのものであったのかが問われます。

一生懸命やっていろんなアウトプットを得ることはできたものの、相手国の抱える課題の解決には至らなかった、というような場合は、有効性は低いと評価します。

母子保健プロジェクトを実施したけれども乳児死亡や妊産婦死亡の実態の改善には至らなかったとか、HIV/AIDSプロジェクトを実施したけれどもHIVの拡がりを阻止できなかった、というような残念な事態にならないためにも、有効性の評価は重要です。

有効性(effectiveness)と混同されがちな評価指標に、効率性(efficiency)があります。

成果を生むために、プロジェクトでは様々な投入(専門家の派遣、相手国人材の日本での研修、機材供与など)が行われますが、アウトプットを得るためであればインプットはいくらかけてもいい、ということはなく、より少ない投入でより大きな成果を上げることが肝要です。

国際協力プロジェクトの場合、インプットの財源の多くは国民の税金です。

少ない投資で大きな成果を生むように心がけなければなりませんので、効率性の評価は重要です。

妥当性、有効性、効率性の評価は、国際協力に限らずとも、ありとあらゆる組織活動の評価に共通の評価指標です。

「経営」評価の重要な指標ですので、特に保健医療経営大学の学生はしっかりと学修して自分のものとする必要があります。

国際協力の評価(2)

2009 年 7 月 7 日 火曜日

プロジェクトの評価は、評価5項目というモノサシを用いて実施されます。

評価5項目とは、妥当性、有効性、効率性、インパクト、自立発展性の5つです。

妥当性は、特に事前評価の段階でしっかりと見極めておかなければなりません。

プロジェクトが目指している効果(プロジェクト目標)が相手国の政策や日本の援助政策と整合性があるかどうか、相手国が抱える課題の解決策として適切か、などについての評価が妥当性評価です。

たとえば、相手国では優先度が低い疾病や課題について、日本の得意分野だからという理由で協力計画を立てても妥当性は低いと言わざるを得ません。

また、相手国では優先度が高い疾病や課題について協力計画を立てても、日本側にその課題に対処できるだけの技術力がなければ、妥当性は低いということになります。

終了時評価の時点でも、情勢の変化等を考慮し、妥当性が保たれているかどうかを評価します。

(HIV/AIDS関係のプロジェクトなど)国際的な援助動向の変化に対応できていなければ妥当性を欠く結果となってしまいます。

日本国のアフリカ援助政策もプロジェクト期間中に新たな方針が打ち出されたりします。

国際協力の評価(1)

2009 年 7 月 6 日 月曜日

評価対象プロジェクト(技術協力プロジェクト)の実地調査を終了し「評価報告書」の作成が完了いたしました。

明日より、帰路につきます。

技術協力プロジェクトというのは、一定の成果を一定の期限内に達成することを目的として、あらかじめ合意した協力計画に基づいて実施される国際協力事業です。

プロジェクトの実施財源は相手国政府も日本国政府も共同で負担しますが、折半ということはなく、圧倒的に日本側負担のほうが大きく、日本人の納めた税金でプロジェクトが実施されていると言っても過言ではありません。

一定の期限を迎えたプロジェクトについては、目的としていた一定の成果が達成できているかどうかが評価(終了時評価)され、公開されます。

そうでなければ納税者への説明責任が果たせません。

プロジェクトの協力計画の合意の前にも、事前評価が実施され、公表されています。

3年を超えるプロジェクトの場合には中間評価が実施されます。

また、プロジェクトが終了後、一定の年月を経過した頃、事後評価が実施される場合もあります。

開発途上国の新型インフルエンザ(長文レポート)

2009 年 7 月 5 日 日曜日

6月30日の現地(ケニア)紙の一面を占めた記事はケニア初の新型インフルエンザ患者報告のニュースでした。

政府はちゃんとやるのでパニックになるな、噂に惑わされるな、との公衆衛生大臣から国民への呼びかけも同時に掲載されていました。

6面から7面にかけては関連記事です。

6面には、水際対策についての詳細。

アジア系乗客が空港でゴーグルとマスクと手袋姿の検疫官に問診されている様子の写真がでかでかと掲載されています。

患者と同行者33人が隔離されているホテルの写真もあります。

相談窓口の電話番号とEメールアドレスが強調して掲載されています。

7面には解説記事。

症状や感染様式、タミフル備蓄量(WHOの供与で5万錠)などについて客観的な情報が掲載されていますが、残念ながら、パニックになるな、というトーンが主体で、具体的な予防法(手洗いなど)についての情報はありません

しかし、この日、午前中に訪れた地方病院には、はやくも新型インフルエンザの予防法についての現地語(スワヒリ語)と英語の官製ポスターとリーフレットが届き、配られ始めました。

絶妙のタイミングには驚きです。

今回の患者の診断を確定したのは米国CDCで、このポスターとリーフレットの印刷配布を支援しているのもCDCはじめ各種海外機関です。

1 手を石鹸で洗うこと。

2 (咳するとき)口と鼻を覆うこと。

3 (洗わない手で)目や鼻や口を触らないこと。

4 医師の指示に従い、具合悪いときは家にいること。

5 患者に近づかないこと。

の5項目が書いてあります。

 

翌7月1日の紙面は、冷静さを取り戻し、詳細な解説記事となっています。

患者の足取りに基づく接触者調査のこと、世界の動向のこと、タミフル耐性患者がデンマークで報告されたこと、旅行業界への影響(旅行キャンセルはほとんどない)のことなど。

社説でも政府の対応について触れ、患者と同行者を厳重にホテルへ監禁していることに対する風刺漫画が添えられています。

なお、この日の紙面にも、残念ながら予防法の強調はなく、他の紙面には、タバコの害の特集記事が2面にわたって掲載されていました。

厳しい圧力に直面している欧米のタバコ会社は販路を開発途上国へ転向している、との警告記事です。

 

翌7月2日の紙面に、ようやく予防法が強調されました。

1 咳するときにはティッシュかハンカチを使うこと。

2 使ったティッシュはすぐに捨てること。

3 手とハンカチはよく洗うこと。

4 いつも衛生を心がけること。

5 症状が出たら、ただちに報告すること。

の5項目ですが、官製ポスターの5項目とは異なります。

(なお、後日の紙面には、タバコや酒を控えるべし、みたいなことも追記してありました。どさくさ紛れの感がありますが、この国の公衆衛生推進関係者のしたたかさを感じます。)

国立病院が感染患者を受け入れるというニュースも。

ホテル監禁中の33人については、「囚人」のようだとの表現も。

ホテルを訪問中のマスク姿の大臣の写真が掲載されています。

国際協力の方法(9)

2009 年 7 月 4 日 土曜日

自分の力をすぐにでも国際協力に役立てたい人のための総合情報サイトがあります。

http://partner.jica.go.jp/

求人情報(JICAはじめ様々な国際協力実施団体の求人情報)や研修・セミナー情報が随時掲載されています。

また、自分自身の経験や技術を登録する、国際協力人材登録制度も運用されています。

いわば国際協力を実施している団体と、国際協力の世界で仕事をしたい人との出会いの場を提供しているサイトで、実際、数多くの人が、このサイトを国際協力のきっかけとしています。

国際協力の方法(8)

2009 年 7 月 3 日 金曜日

ボランティアの域にとどまらず、必要な専門性を修得し、即戦力人材(国際協力専門家)として途上国で知識や技術を活かす方法もあります。

途上国からは数多くの専門家派遣要請があります。

保健医療分野の専門家の要請もたくさんあります。

「専門性」を修得することが大前提で、熱意や友好心だけでは途上国の求める専門性への期待に応えることはできません。

専門性を修得するには、たとえば保健医療経営大学で保健医療の地域経営の専門性と国際協力センスを身に付けるなどの方法がありますが、JICAなどの国際協力機関にも、海外長期研修、国内長期研修、「技術協力専門家」養成個人研修、専門員制度など、多種多様のメニューがあります。

また、国際協力の専門性を高めるため、「インターンシップ」や「NGOスタッフ研修」なども行われています。

http://www.jica.go.jp/recruit/index.html

国際協力の方法(7)

2009 年 7 月 2 日 木曜日

国際協力についての知識を得ることが、国際協力の第一歩ですが、その知識を活かすことが、次のステップとなります。

途上国からの研修員を受け入れて日本国内で技術指導することは、自分の知識や技術を具体的に役立てる身近な方法ですが、実際に海外に出て役立てる方法も拓けています。

日本へは、途上国からのボランティア派遣依頼がたくさん来ています。

この依頼に応えることができるボランテイアの募集をJICAが行っています。

http://www.jica.go.jp/activities/volunteer/index.html

「ボランティア」とはいうものの、現地生活費、住居費、往復旅費等は支給されます。

20~39歳のボランティアは、

青年海外協力隊(毎年春・秋に募集、年間約1300人)

日系社会青年ボランティア(毎年秋に募集、年間約50人)

40~69歳のボランティアは、

シニア海外ボランティア(毎年春・秋に募集、年間約500人)

日系社会シニア海外ボランティア(毎年秋に募集、年間約25人)

 

限られた人生の中の2年間(シニア海外ボランティアは1年間または2年間)の過ごし方ですので慎重な判断が必要です。

判断のため、JICA国内機関などを通じて経験者と相談することが重要です。

国際協力の方法(6)

2009 年 7 月 1 日 水曜日

このブログ記事のように、国際協力について知ったこと感じたことを多くの人へ伝えるという方法も国際協力のひとつであり、そのような趣旨で、高校生・中学生を対象にした国際協力エッセイコンテストを毎年(募集期間は6月~9月頃)JICAが行っています。

受賞者は海外研修旅行で現地体験ができます。

百聞は一見にしかず、現地を視察すれば、世界の国々の実情をより深く知ることができますが、その機会に恵まれる人は限られます。

より多くの次世代に世界をより深く知ってもらうため、高校・中学校・小学校の先生を対象にした、夏休み期間中の約10日間の「教師海外研修」を毎年(募集時期は4月~5月)JICAが行っています。

帰国後、国際理解を深める授業に体験を役立てていただくことが狙いです。

教師でない人でも「ODA民間モニター」としてODA(政府開発援助)事業の現場を視察することができます。

外務省が主催し、派遣期間は約1週間、募集時期は4月~6月です。

国際協力の方法(5)

2009 年 6 月 30 日 火曜日

世界の国々のことを知り、途上国の人に役立つことがしたい、という気持ちになった時、日本にいながらできることがあります。

世界中で国際協力のために汗を流している青年海外協力隊員などのボランティアは、先進国であれば当たり前のように流通している物品を人々が切望している場面にしばしば接します。

そのような物品は、不用になったものでも、使えるものであれば世界のどこかで役に立ちます。

絵本や文房具やスポーツ用品が、途上国のこどもたちの目を輝かせます。

福祉機器が途上国の障害者の手足となります。

JICAホームページには、必要とされている物品が「募集物品リスト」として

まとめられています。

http://www.jica.go.jp/partner/smile/index.html

東京都内の指定倉庫までの送料の負担は必要ですが、そこから現地までの送料はJICAが負担しますので、比較的手軽にできる国際協力です。

ただし、募集物品リストにない「不用品」や傷みの激しいものは行き場がないので役に立ちません。

安全性に問題があるものは、途上国の人々を傷つけます。

「善意」が仇となってしまう可能性に思いを馳せる気持ちも必要です。

国際協力の方法(4)

2009 年 6 月 29 日 月曜日

国際協力の片方(日本人)だけの体験談を聞くだけでは物足りないかもしれません。

しかし、もう片方(途上国の人々)の話を聞くためには途上国に行かなければならない、というのでは、その機会は限られます。

途上国は、安全(治安)上の理由で渡航制限がかけられているところが多いのです。

私が現在訪問中のケニアは、首都ナイロビ近辺は「十分注意してください」のレベルで渡航可能とはなっていますが、首都から離れた辺地では「渡航の是非を検討してください」、ソマリア国境付近では「渡航の延期をお勧めします」となっています。

http://www.pubanzen.mofa.go.jp/

(外務省 海外安全ホームページ)

入国できたとしても、真に援助を必要としている人々が生活している地域へは、安全上の理由だけではなく、アクセスの困難さから到達できないことも多く、途上国で国際協力の実態に触れるのは容易なことではありません。

しかし、国際協力の一環として、これらの途上国から、たくさんの人々が日本へ研修に訪れてきています。

研修員の受け入れもJICAの国内機関が実施していますが、各国内機関では、研修機関のアレンジを行うとともに、地域と研修員との交流プログラムもたびたび企画されています。

日本にいても、こういう機会には、母国の発展のために国際協力を求めている人々の生の声を聞くことができます。

たとえば聖マリア病院では、日本の医療を学ぶための研修プログラムがしばしば組み立てられていますので、途上国の人々と接することができる機会もたくさんあります。

国際協力の方法(3)

2009 年 6 月 28 日 日曜日

国際協力活動は、人と人とのふれあいが原点です。

写真や資料だけでは、その本質的なところが伝わりにくいかもしれません。

開発途上国で国際協力を経験した方の体験談を聞けば、国際協力の現場の実際をより深く知ることができます。

現場は、友好ムード一色のきれいごとばかりであるとは限りません。

時には、激しい人間同士の衝突もあります。

本気でその地域の生活を改善しようと思えば、いろんな利害関係者とぶつかるのは当然のことです。

有力者の鶴の一声で、国際協力で築き上げてきたものが一瞬にして崩壊してしまうこともあります。

青年海外協力隊員も、充実したいい思い出ばかりに満たされて帰国しているわけではありません。

苦々しさ、無力感、裏切り・・・こういうものも同時にいっぱい体験しながら任期をまっとうしているのです。

 

そのような人間模様も、有象無象、全部ひっくるめたものが「国際協力」です。

JICA国内機関に「JICA国際協力出前講座」を依頼すれば、国際協力経験者が講師として派遣されます。

学校やNGOの学習会などで活用されているようです。

国際協力の方法(2)

2009 年 6 月 27 日 土曜日

JICA地球ひろばの所在地は東京ですが、地球ひろば以外にも、全国各地に15か所のJICA国内機関があります。

これらの国内機関にも写真や国際協力活動を紹介する媒体が豊富にありますので、世界の国々について考えるきっかけがつかめます。

また、国際協力推進員が国際協力参加についての相談に応じています。

国際協力推進員は青年海外協力隊などの国際協力活動の経験者です。

本学の近くの国内機関はJICA九州(093-671-6311)です。

従前よりJICA九州と聖マリア病院とは密接な連携で国際協力活動をしてきましたが、今後は本学も連携を強めてゆきたく思います。

国際協力の方法(1)

2009 年 6 月 26 日 金曜日

海外へ出て行かなければ国際協力ができないということはありません。

特別な知識や技術がなければできないということもありません。

たとえば買い物のお釣りを募金箱へ入れることも国際協力です。

その募金を原資とした予防接種でたくさんの子どもたちの命が救えるかもしれません。

日本でできる国際協力の入り口は、世界の国々について考えることから。

JICA地球ひろば、という施設が東京にあります。

http://www.jica.go.jp/hiroba/index.html

ここの「体験ゾーン」では、途上国の暮らしの現状や国際協力の実際などを写真や映像資料などで体感することができます。

図書資料室では、青年海外協力隊の活動報告書はじめ国際協力関係の書籍が充実しています。

 

新型インフルエンザの水際対策

2009 年 6 月 25 日 木曜日

本日(日本時間では昨日)、ケニアに入国しました。

ソウルとドバイの二つのハブ空港を経由しての到着です。

ソウルでは、日本からの便の搭乗者全員に詳細な質問票への記入が求められ、さらに、全員の体温が検査されました。

ドバイ空港では、世界中の人々が交差する超巨大空港であるにかかわらず、乗り換え客への検疫はありませんでした。韓国からの便だったからかもしれません。

ケニアでは、入国審査に並んでいるところへ検疫官がやってきて、

「日本人か? 日本人ならこれに記入しなさい」

と、質問票が渡されました。

<インフルエンザA H1N1 サーベイランス票>

と書かれた質問票で、自覚症状や滞在先について詳しく記入させられました。

また、入国後2週間以内に具合が悪くなったら受診医師に渡すべし、と書いた紙も

渡されました。

その紙には、この紙の所持者はインフルエンザ流行国から来ているので検体を国家インフルエンザセンターへ送るべし、と書いてあります。

ちょっと前の、日本へ入国したメキシコ人が味わったであろう気分の追体験です。

保健医療経営大学と国際協力(2)

2009 年 6 月 24 日 水曜日

限られた財源で効率的に保健医療を運用できる人材、という国際社会が求める人材の育成は、保健医療経営大学の教育目的とぴったり合致します。

保健医療経営大学は、日本の保健医療の現状を改善するために生まれた大学ですが、同時に国際協力人材も育成できるというわけです。

社会保障、とりわけ保健医療については、国ごとに制度がまったく違い、一見、国際的な応用性がまったくないかに思える学問分野なのですが、それを深く学べば学ぶほど、逆に国際的な応用性が拡がるのが面白いところです。

保健医療経営大学では、さらに、国際協力論、国際経営論、国際関係論、国際経済論、海外フィールドワークなどなど、国際的視野を広げるカリキュラムを充実させています。

本学から、国際社会で活躍する人材をたくさん輩出したく思います。

保健医療経営大学と国際協力(1)

2009 年 6 月 23 日 火曜日

開発途上国の援助といえば、先進国の医療技術者が現地入りして医療活動を展開している姿を想像される人が多いと思います。

災害救助の場合には、どうしてもそのような援助が必要となりますが、開発途上国では、災害がなくても、日常的に、予防や治療が可能な病気で命を失う人が大勢います。

日常の保健医療の問題に対しては、先進国の医療技術者を限られた地域に限られた期間だけ派遣しても焼け石に水で、彼らが引き揚げた途端、元の木阿弥となってしまうことも多いようです。

開発途上国に必要なのは、限られた財源で効率的に保健医療を運用できる、持続可能なシステムつくりです。

私は、かつて国際協力機構(JICA)に勤務していた頃、開発途上国からの保健医療協力の要請にうまく応えられなかった苦い経験を何度も味わっています。

保健医療のシステムつくりに長けた人材を派遣できれば要請に応えることができるのですが、残念ながらそのような人材は日本には乏しいのが現実です。

 

JICAに委嘱され、本日より約2週間、ケニアへ出張いたします。

JICAがケニアで展開している終了間近のプロジェクトについて、現地のニーズに応える協力が行われたかどうかを評価することが目的です。

マスクの効用(1)

2009 年 6 月 4 日 木曜日

昨日、上京しました。

空港や電車でマスクの人をあまり見ませんでした。

つい2週間前に上京したときとの違いに驚きました。

WHOは新型インフルエンザへの警戒をさらに強めています。

毒性は「軽微」ではない。

「フェィズ6」に近づいている。

これが、直近のWHOの認識です。

日本でも、連日、どこかで患者の発生報告があります。

まだ終息しているわけではありません。

しかし、人々の緊張感は緩んできているようです。

政府広報でも繰り返し流れているように、感染予防の「基本」を押さえておれば過度に恐れることはありません。

マスク着用は「基本」のひとつです。

この「基本」は誤っていたのでしょうか?

水際対策「される」側(2)・・・麻疹

2009 年 5 月 26 日 火曜日

感染症に関して日本の最大の不名誉は、麻疹輸出国という汚名です。

WHOは麻疹排除に向かう段階を3つに区分しています。

第一段階:制圧(control)期;麻疹は恒常的に発生。麻疹患者の発生、死亡の減少を目指す時期

第二段階:集団発生予防(outbreak prevention)期;全体の発生を低く抑えつつ集団発生を防ぐことを目指す時期

最終段階:排除(elimination)期;国内伝播はほぼなくなり、根絶(eradication)に近い状態

 

世界の麻疹対策は着実に進展しています。

http://idsc.nih.go.jp/iasr/30/348/fr3481.html

アメリカ大陸、ヨーロッパ、南アフリカや中近東の一部など100か国以上は既に最終段階にあります。

アメリカの国内発生の大半は日本からの持ち込みです。

オセアニア諸国は第二段階です。

日本は第一段階に留まっています。

http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html

麻疹の感染力はインフルエンザよりはるかに強力なので、予防接種率の向上による免疫の壁が決め手です。

水際対策「される」側(1)・・・コレラ

2009 年 5 月 24 日 日曜日

ANA機内誌『翼の王国』の今月号掲載のエッセイ「ラプラタ遁走曲」(旦敬介)に、ブラジルの国境検問所での入国審査トラブルのエピソードが書いてありました。

バスの乗客のうち、日本人の著者のみが入国できず、深夜の検問所に取り残されてしまった想い出。

警察のコレラ汚染地域リストに日本が記載されており、日本人はコレラの予防接種証明がないと入国できず、空港では運用上無視されている規則が辺地の検問所では厳密に適用されていたという話です。

日本では、毎年コレラの患者発生が報告されています。

http://www.forth.go.jp/tourist/kansen/01_chol.html

国際社会の中での日本

2009 年 5 月 23 日 土曜日

新型インフルエンザの記事がWebトピックス一覧や新聞第1面を飾らない日も出てくるようになってきました。

しかし事態は、国際的には、日本はアメリカ、メキシコ、カナダに次ぐ流行国で、発生報告数が3週間前のメキシコの報告数を上回る状況となっています。

すなわち、いつのまにか日本は、水際対策を「する」側から「される」側になってしまったというわけです。

4月26日当初の日本の政府方針はこうでした。

     メキシコからの入国者に一定期間の健康観察を実施する。

     症状がない人でも、入国後10日間ほどはなるべく外出しないよう求める。

この方針を受けて実際に行われたことは報道の通りです。

入国者に連絡先を書いてもらい、10日間程度、地元の保健所が1日1回電話で健康状態を確認しました。

感染が疑われた人の接触者は、10日間程度の隔離が行われました。

韓国は19日、日本を「危険地域」に指定し、日本からのすべての入国者の追跡調査や機内検疫を強化する方針を打ち出しました。

最近、日本政府は方針を変換しましたが、他国の方針を変換させる権限はありません。

外国がすべて、3週間前の日本と同じ方針を打ち出し、3週間もその方針を貫かれたら、日本は完全に孤立してしまいます。

海外旅行も国際交流も、重要な会議のための国外出張も、ほとんど制約を受けてしまいます。

しかし、WHOやCDCの方針に逆らってまで日本が他国に対して行ったことですので、そうなったとしても文句は言えません。

水際対策は重要ですが、国際社会の中ではなかなか難しいこともあります。