‘国際協力’ カテゴリーのアーカイブ

ケニア共和国輸血の安全性確保プロジェクト

2012 年 1 月 11 日 水曜日

明日、長崎大学で国際協力の「評価」に関する講義をいたします。

次の終了時評価報告を講義題材として整理しました。

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ケニア共和国輸血の安全性確保プロジェクト

2006/10/202009/10/19

協力金額:2億7千万円

先方関係機関:医療サービス省、国家輸血サービス(NBTS)、ナクル地域血液センター(RBTC)、リフトバレー州総合病院、ナイバシャ県病院、コイバテック県病院

協力の背景と協力内容:

ケニア共和国の血液事業は、輸血が必要になった際に患者の親族や友人から供血者を募り、採血を行うシステムに長年拠っていましたが、HIVをはじめ血液由来の感染症の危険が指摘されるとともに、供給体制の不備や血液製剤を使用する病院側の管理面が問題視されました。ケニア国政府は2001年に国の血液事業に関するガイドラインを策定し、自発的・無報酬の献血を促進し、血液センターで採血・検査・血液製剤化し、品質の確保された血液製剤を各病院に供給するシステムへの移行を進めています。ケニア国政府は我が国に血液製剤の安全で無駄のない適正使用の技術協力の要請を行いました。

(1)上位目標

プロジェクトで実証された、血液製剤の安全で無駄のない適切な使用に対するアプローチが、ケニア国内の他の輸血サービス機関に適用される。

(2)プロジェクト目標

血液製剤の安全で無駄のない適切な使用に対するアプローチが開発・実証され、国の基準として適用される。

(3)成果

1)血液事業に関係する機関・施設間の連携や情報共有が強化される。

2)小児用小容量濃厚赤血球製剤がRBTCナクルで安全に調製される。

3)RBTCナクル、モデル病院及びナクル地域の非モデル病院で、血液及び血液製剤のロジスティクス管理が改善され、そのシステムがケニアの他地域に導入される。

4)モデル病院で血液製剤が安全かつ適正に使用される。

(4)投入

日本側:長期専門家派遣 2名  短期専門家派遣 7名

研修員受入れ 19名

機材供与 2864万円  ローカルコスト負担 3070万円

相手国側:カウンターパート(C/P)配置 24名

土地・施設提供  ローカルコスト負担 2億4056万ケニア・シリング

<終了時評価調査結果>

200712月の国内治安情勢の急激な悪化により日本人専門家のモデルサイトへの立ち入りが禁止となり、暴動によりモデル病院の活動も休止状態となりましたが、ナイロビからの遠隔運営によりプロジェクト目標は達成される見込みとなり、プロジェクトの有効性は高いと判断されました。C/Pの能力が大きく向上し、記録や文書化がなされ、課題発見と分析による解決のための行動をとることができるようになりました。

米国大統領エイズ救済緊急計画資金の拠出の遅れやJICA専門家(チーフアドバイザー)の派遣遅延はプロジェクト前半期の活動の円滑な実施に影響を及ぼしましたが、ローカルコンサルタント(前NBTS所長)の雇用によって目覚しい活動の進捗があり、効率性は高いと判断されました。特に本邦研修を受けたC/Pが研修成果を生かしてプロジェクト活動実施に大きく貢献しました。

予期せぬ小児用小容量濃厚赤血球製剤の色調変化の問題発生が活動の進捗に影響を及ぼしましたが、この問題の発見・解決の過程を通してC/Pのキャパシティ・ディベロップメントにつながったこと、モデル病院の医師が異動先の他病院でも活動を展開したことなどのインパクトもありました。

政策面・技術面での自立発展性は非常に高いと判断されましたが、財政面についてはケニア政府がBTSの維持に必要な財源確保についての明確な考え方と計画を策定する必要があります。この点については、コスト・リカバリー・システムと国家予算配分について検討すること、必要な予算規模についてはコスト分析を明らかにすることなどを提言しています。

このプロジェクトから得られた教訓は次の通りです。

(1)開発パートナーと協力分野を区分して実施したために、支援対象に集中して効果的な活動が実施可能であった。しかし、一方でその前提条件である各パートナーによる活動が計画通り実施されない場合には、プロジェクトは深刻な困難に直面する。

(2)現場での日本人専門家からC/Pへの直接の技術移転によるキャパシティ・ディベロップメントは、JICAが比較優位を有する効果的なものであることが確認された。このような技術移転の手法は、移転した知識と技術を更に拡大するその後の活動においても、C/Pのオーナーシップを醸成し自発性を促進するのに、非常に有効である。

(3)リスクマネージメント領域の協力はJICAにとって新しい協力分野である。リスクマネージメントは安全性という究極の目標を追求するものであり、JICA協力後も途上国自身が自立的、持続的にリスクマネージメントの制度改善や技術向上を進めていくことを支援すべく、それらの基盤となる制度や仕組みの構築支援に注力することに意義がある。今後も様々な角度からの議論が必要な領域であるが、特に途上国においてはこれら制度・仕組みの構築のプロセスとして、やはりキャパシティ・ディベロップメントが重要かつ有効であることが示唆される。

ブータン王国との国際協力

2011 年 11 月 21 日 月曜日

ブータン王国は人口70万人弱の独立国です。
北辺をヒマラヤ山脈(中国・チベット)、三方をインドに囲まれています。
ブータン経済は、インド経済と密接に関連しており、水力発電に国家収入の多くを依存しています。
基幹産業は農林業で、就業人口の6 割以上は農林業ですが、平地が狭隘であるため農業経営は小規模です。
ブータンは大家族制で、家族、親類だけではなく、地方から出てきた同郷人も自分の家に泊める習慣があります。
「幸福」と感じる国民が大多数であると報道されていますが、世界中どの国にも暗部はあります。
ブータンの失業率は4%あり、若年層では10%以上です。
若年層の都市への流入が増加しているのですが、ブータンの産業構造では都市部で職が得られるとは限りません。
若者の酒やドラッグ、HIV感染の問題も深刻化しつつあります。
火曜日は、ノー・アルコール・デーで、この日はレストランやバーでもアルコール類は出しません。
近代化に伴う車両の増加に道路整備が追いついていませんが、クラクションを鳴らしてはいけない区間があったり、後ろの車に道を譲るときに追い抜いても安全か否かを手信号やウィンカーで知らせてくれる習慣があるなど、独自の交通マナーが発展しています。
ブータンの国語はゾン語ですが、英語が広く通用します。
学校教育が英語で行われているため、就学していれば英語が使えるようになります。
しかし、教師数の不足やアクセスの悪さにより教育施設の配置が不十分で、就学率は高くありません。
成人の識字率は60%を下回っています。
我が国とブータンの国際協力は、1964年の故西岡京治氏(農業開発専門家)の派遣に始まり、無償資金協力と技術協力が中心となっています。
青年海外協力隊員、シニア海外ボランティアも派遣し、人材育成を広範な分野で支援しています。
「地方電化計画」については円借款を行っています。
技術協力プロジェクトでは、現在、感染症対策プロジェクト、職業訓練校の質的強化プロジェクト、園芸作物研究開発・普及支援プロジェクトが進行中です。
ブータン政府は自立心が強く、外国からの援助受入れはインド、日本、欧州諸国に限定しています。
ブータンに在留する日本人は約130人、日本に在留するブータン人は約70人です。

在宅医療の充実のための新年度予算要求

2011 年 11 月 15 日 火曜日

在宅医療を提供する機関(在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所・訪問看護ステーション等)を連携拠点として、多職種協働による在宅医療の支援体制を構築し、医療と介護が連携した地域における包括的かつ継続的な在宅医療の提供を目指す「在宅医療連携拠点事業」が新年度予算に要望(31億円)されています。
連携拠点に配置されたケアマネジャーの資格を持つ看護師とMSW等が地域の医療・介護を横断的にサポートする事業で、事業を通じたデータ収集・分析を通じて、在宅医療連携拠点が地域において必要な役割を果たすための条件を見出し、好事例の情報を広く関係者に提供して在宅医療の取組みの全国的な向上を図ろうとするものです。
在宅医療においては、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護士などの医療福祉従事者がお互いの専門的な知識を活かしながらチームとなって患者・家族をサポートしていく体制を構築することが重要ですので「多職種協働による在宅チーム医療を担う人材育成事業」も新年度予算に要望(3.2億円)されています。
○国が、都道府県リーダーに対して、在宅医療を担う多職種がチームとして協働するための講習を行う(都道府県リーダー研修)。
○都道府県リーダーが、地域リーダーに対して、各地域の実情やニーズにあった研修プログラムの策定を念頭に置いた講習を行う(地域リーダー研修)。
○地域リーダーは、各地域の実情や教育ニーズに合ったプログラムを策定し、それに沿って各市区町村で地域の多職種への研修を行う。
という、カスケード方式の研修事業です。
カスケード方式研修は、開発途上国で全国的に技術者の技能を高めたい場合に援助機関がよく採用する手法ですが、実際の効果については疑問がある場合もあります。
研修実施の前提として研修テキストの作成が必要ですが、研修テキストの充実よりも研修を実施することにエネルギーを集中してしまったような場合に失敗例が多いようです。
「多職種協働による在宅チーム医療」に関する著作物が稀有である現状のままに研修事業だけを強行しても多くの途上国と同じ結末になりかねませんので、研修テキストの開発にエネルギーを注いでほしく思います。
優れた研修テキストが出版されて全国へ普及すれば、研修に参加しない関係者へも研修で伝えたいことを伝えることができます。

カンボジアの洪水被害

2011 年 11 月 4 日 金曜日

連日、タイの洪水被害のみが報道されていますが、隣国のカンボジアやベトナムでも深刻で、既に数百人の死者が出ています。
世界遺産のアンコールワットにも浸水が及んでいるようです。
インドシナ半島の国々へはメコン川が豊かな恵みをもたらしていますが、時としてこの川が牙をむきます。
道路、橋、学校、医療施設などの公共インフラの被災により、経済や暮らしへ長期的に影響が及びます。
農地や家畜への被害が貧困層の人々の生活を直撃しています。
水田が広域に浸水し、カンボジアの主要農産物であるコメの収穫に深刻な被害が出ているようです。
水田は10日以上浸水すると収穫ができなくなるのだそうです。
高床式の家の1階で飼われている家畜にも被害が及びます。
数千頭の家畜が犠牲となっているようです。
カンボジアからベトナム向けの輸出産品である食用ネズミ肉についても、洪水によるネズミの水死で輸出量が激減しているとのことです。
この十数年のカンボジアへの集中的な復興開発援助によって多くの農民がようやく貧困から脱したばかりのところへ、数十年ぶりの洪水が時間を昔へ戻してしまいました。
洪水の制御と乾季の灌漑に有効な治水・利水方策のひとつにダム建設があります。
ダムは開発に伴って増大するエネルギー需要にも貢献しますが、住民の立ち退き強制に伴う問題や生態系影響への懸念があります。
メコン川上流域では既に中国がダムを建設しており、川の流れに変化が起きているようです。
下流域でも外国資本によるダム建設が計画中ですが、回遊魚などの生態系への影響や流域漁民の生活への影響は避けられません。
国の開発のために治水・利水は必要ですが、ダム建設は新たな問題も生み出します。
開発の難しいところです。

円高と放射線影響研究

2011 年 8 月 19 日 金曜日

日本を戦後最高値に迫る円高が襲っています。

また、依然、放射能の脅威は去っていません。

放射能については、その人体影響について未解明なところ(低線量被曝の影響)が人々の恐怖心を煽りますので、人体影響研究の一層の推進が望まれるところです。

人の放射線リスクに関する情報のほとんどは人の被曝集団から得られるものです。

医用放射線被曝集団や職業被曝集団などからも重要なリスク情報を得ることができますが、被曝集団の中で最も例数が多く、追跡期間が長いものは広島、長崎の原爆被爆者です。

放射線の人体に及ぼす影響について世界で最も多くの質の高い調査研究データを蓄積している調査機関は広島と長崎に研究所を置く(財)放射線影響研究所(放影研)です。

世界中で採用されている放射線防護基準の基礎データは、ほとんど放影研が提供しています。

被曝による発癌などの確率的影響は、人口当たりの過剰症例数をその過剰を引き起こしている線量で割ることによって推計されますので、被曝線量の推計は重要な意味を持ちます。

広島、長崎の被爆者については、被爆者ごとの被曝線量の推計についても、莫大な予算を投じて誤差を最小化する研究が行われています。

原爆被爆者では残留放射能や内部被曝の線量推計が過少ではないかとの批判がありますが、リスクは被曝線量と過剰症例との相対関係で算定されますので、被爆者の被曝線量推計が上方修正されれば被曝線量あたりのリスクは低くなり、放射線防護基準も緩和されることになります。

福島原発事故を契機に議論されている放射線許容量の基準値は放影研が推定している原爆被爆者の被曝線量がもととなって算出されているものですので、放影研の研究の信頼度に大きく依存します。

乳幼児の被曝の長期的影響については、原爆投下時点で乳幼児であった被爆者ががん多発年齢に達したところですので、これからの研究が重要となってきます。

ところが円高と放射線影響研究とは密接な関係があります。

放影研は日米共同で運営されている研究機関で、「日米交換公文」によって日米折半で運営管理することになっています。

アメリカからは放影研への研究補助金として年額1400万ドルが支給されていますが、円高が1円進むごとに1400万円が減額されてゆくことになります。

日米「折半」の国際約束を遵守するならば、日本側の補助金も円高が1円進むごとに1400万円を減額することになります。

それでは職員の人件費が賄えなくなりますので、日本側が円高で目減りした分を肩代わりしています。

平成21年度決算(1ドル=87~98円)では、日本政府の国庫補助金は21億7千万円で、米国政府の国庫補助金は12億7千万円でした。

「折半」とはほど遠い実態となっていますが、日本政府による肩代わりを際限なく続けるわけにもゆかず、円高が続けば、放射線の人体影響研究が停滞してしまうことになります。

パレスチナとの国際協力

2011 年 8 月 11 日 木曜日

パレスチナを国家承認している国は中南米諸国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビア、エクアドル、チリ、ベネズエラ、キューバ)と朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国とシリアのみで日本政府は未承認です。

しかし、パレスチナ自治政府と日本とは、ODAによる国際協力を行っています。

日本政府のイニシアティブで、中東和平を支援するため、ヨルダン渓谷周辺の隣接する中東諸国の総合開発計画(「平和と繁栄の回廊」計画)が推進されました。

たとえば技術協力プロジェクトとして2005年8月から「母子保健リプロダクティブヘルス向上プロジェクト」が実施され、私もプロジェクト運営に関わりました。

パレスチナ自治区では、イスラエル政府による長期の分離政策(分離壁、検問所、外出禁止令)が女性の行動を阻害しています。

妊婦が医療施設へ通うことにも困難があります。

パレスチナ自治区の人口の半分近くが難民登録されており、貧困が人々の生存を脅かしています。

妊婦の3割、乳児の4割に貧血があり、妊産婦の死亡率も乳幼児の死亡率も高い状況です。

パレスチナの政治・社会情勢が悪化するなかでも実施(来年まで継続予定)している技術協力プロジェクトですが、この国際協力を通じて2006年7月、アラブ地域で初めて「母子健康手帳」が導入されました。

日本の母子健康手帳を参考にパレスチナ人自身の手で作られた手帳ですが、「生命(いのち)のパスポート」と呼ばれています。

パレスチナ自治政府には出生登録制度がありパレスチナ人として登録されますが、パレスチナを承認していない多くの国々では「無国籍児」扱いです。

赤ちゃん本人にとって、公的に発行される母子健康手帳は生まれてきた証拠として大きな意味があります。

2007年にハマスがガザ地区を制圧して内閣が崩壊、西岸地区で非常事態内閣が設立され、パレスチナはハマスが統治するガザ地区とファタハが統治する西岸地区とに分かれて内紛状態にありますが、イスラエルからの軍事攻撃など必ずしも安全とはいえない環境下で、派遣された日本人専門家たちがプロジェクト活動を展開しています。

ガザ地区であれ西岸地区であれ、国際機関の協力も得て、母子健康手帳の活用はパレスチナ全域に定着しつつあります。

さらにパレスチナでの成果を踏まえ、母子健康手帳はヨルダンのパレスチナ難民に対しても導入が拡大しつつあります。

不安定な情勢での技術協力は危険を伴いますが、不安定な情勢であるからこそ、平和構築のための国際協力が必要です。

軍事貢献によらない平和構築は、日本にリーダーシップをとってもらいたいものです。

クック諸島との国際協力

2011 年 8 月 5 日 金曜日

クック諸島は人口22600人の小さな国です。

国土面積は、すべての島を合わせても237平方キロ(徳之島とほぼ同じ)しかありません。

1770年にジェームス・クックが上陸調査し、1888年にイギリスの保護領となり、1901年にニュージーランドの属領となりました。

1965年に自治権(立法権と行政権)を得ていますが、国民はニュージーランドの市民権とパスポートを有し、軍事と外交の最終的な責任はニュージーランドが有しています。

国家元首もニュージーランドと同じくエリザベス2世(英国女王)で、通貨もニュージーランド・ドルが流通しています。

このような国ですので独立国家として承認していない国も多いのですが、マレーシアが1992年に国家承認し、領主のニュージーランド自身も1993年に承認(対等な外交関係を樹立)しています。

ニュージーランドとは「自由連合」という関係での独立だそうです。

以降、ナウル、オーストラリア、パプアニューギニア、ポルトガル、南アフリカ、ボスニアヘルツェゴビナ、イラン、中国、インド、スペイン、ノルウェー、フィジー、バチカン、フランス、欧州連合、ドイツ、イタリア、東ティモール、キューバ、ジャマイカ、タイ、ベルギー、スイスがクック諸島を独立国家として承認しています。

本年3月25日、日本もクック諸島を独立国家として承認し、外交関係が開設されました。

外交関係が開設される前にも、国際会議などの際にクック諸島の首脳は何度も来日しています。

クック諸島は国際連合の加盟国とはなっていませんが、WHOやFAOやUNESCOなどの国際機関については正規メンバー国です。

承認直前の3月11日の東日本大震災の際には、クック諸島政府からお見舞いと連帯が表明されています。

6月にはプナ首相夫妻が来日し、外交関係開設のための書簡への署名式と書簡の交換が行われました。

日本側で対応したのは総理大臣ではなく外務大臣でしたが、プナ首相からは国家承認に対する謝意とともに日本国民に対する弔意が表明されました。

外務大臣からは経済協力など二国間関係の一層の強化に取り組んでいく考えが伝えられ、これに対し、プナ首相からは環境分野における日本の協力への期待が表明されました。

外交関係が開設されていない国に対し、人道的な見地からODAによる国際協力を行うことはあります。

クック諸島に対しては、日本は母子保健分野や予防接種に関する国際協力を行ったことがあります(私もそれらの国際協力の実現に関与しました)。

本来ならばニュージーランドが行うべきところでしょうが、そもそも論で時間を費やしているうちに現地では多くの命が失われてゆくのです。

アフリカ諸国の開発援助も、本来ならばイギリスやフランスなどの旧宗主国が行うべきところを、日本やアメリカが国際協力を先導しているのと同じことです。

日本はクック諸島から年11億円(2009年)を輸入しています。

日本人の意識の中では無視されるほど小さい存在の国かもしれませんが、クック諸島の国民からは、日本は、ニュージーランドやオーストラリアを抜いて、最大の輸出相手国なのです。

クック諸島での流通通貨はニュージーランド・ドルですが、独自通貨の発行権がありますので、海外のコレクター向けに3ドル紙幣などのクックアイランド・ドルも発行されており、これも法定通貨の扱いです。

2004年には日本のコレクター向けにハローキティ金貨・銀貨も発行されています。

海外での日本人死亡

2011 年 6 月 23 日 木曜日

昨年(平成22年)の海外邦人援護統計が発表されました。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/6/PDF/110622_02.pdf
海外で事件・事故、犯罪加害、犯罪被害、災害などのトラブルに遭遇した日本人に対して在外公館などが行った援護の件数・人数をとりまとめたものです。
総援護件数は1万7515件で対前年比3.25%増、総援護人数は1万9882人で対前年比5.51%増でした。
増加要因は出国者数の増です。
昨年の出国者数は1663万7224人で対前年比7.7%増でした。
出国者の約800人に1人がトラブルに遭遇して援護されていることになります。
トラブルの約3分の1は犯罪被害です。
内訳は、窃盗被害が5989人、詐欺被害が461人、強盗被害が488人でした。
犯罪(加害)もあります。
主なものは、出入国・査証関係犯罪が110人、道路交通法違反が44人、傷害・暴行が74人、麻薬が75人、詐欺・詐欺未遂が45人でした。
海外で死亡した日本人数は647人で過去最高です。
対前年比は26.1%増で、出国者数の増だけでは説明できないほどの急増です。
半数以上が疾病による死亡で336人でした。
外務省は「海外渡航をする高齢者の増加が背景にある」と分析しています。
なお、交通事故の死亡者数は35人でした。
行方不明者は132人です。

モンゴル国とヨウ素

2011 年 4 月 5 日 火曜日

東日本大震災には世界各国からの支援が相次いでいますが、モンゴル(人口270万人)では、政府が全ての公務員に給料1日分の募金を呼びかけています。

モンゴルは貧しい国ですが、公務員にとどまらず、一般国民や企業の自発的な募金運動に発展し、すでに1億円をはるかに超える額が集まっています。

在日モンゴル大使館は「日本はモンゴルが市場経済に移行した1990年代、政府開発援助(ODA)で一番支援してくれた。国民みんなが感謝している」と語っています。

1990年代には、私もモンゴルへのODAにかかわりました。

モンゴル国「母と子の健康プロジェクト」(1997~2002)という技術協力プロジェクトを企画運営し、予防接種の普及とヨウ素欠乏症(IDD)の制圧に取り組みました。

海産物の流通が少ない内陸の国ではヨウ素が欠乏しがちです。

ユニセフの調査では、首都ウランバートルの学童と妊娠可能年齢女性のIDDによる甲状腺肥大は40%を超えていました。

また、IDDによる知能障害や発育不全も多く見られていました。

日本のODAでは、製塩工場でのヨウ素添加塩の製造と流通を支援しました。

このプロジェクトの運営にあたっては、千葉県の全面的な協力をいただきました。

ヨウ素の生産量は日本が世界生産量の35%を占めています。

チリに次いで世界第2位の産出国です。

日本国内では、そのほとんどが千葉県で生産されています。

プロジェクトでは、ヨウ素添加塩の原料のヨウ素について、千葉県から無償で提供していただきました。

千葉県によるヨウ素支援の国際協力はその後も継続しており、近年は、千葉県と日本ヨード工業会とユニセフの三者連携事業として、カンボジアへヨウ素支援を行っています。

今般の原発事故でヨウ素剤の需要が高まってきていますが、ヨウ素の生産や備蓄において心配は無用です。

必要な時には必要な量が流通すると思われます。

マダガスカルとの国際協力(終)

2011 年 3 月 6 日 日曜日

本日、帰国しました。

JICAへ提出する調査報告書(下書き)は以下の通りです。

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1.HIV関連統計の正確性の向上について

マダガスカルのエイズ予防対策を考えるにあたり、マダガスカルは、統計上、HIVが蔓延している状況ではない(人口あたりHIV陽性者率が比較的低い)ということを念頭に置かねばならない。HIVが蔓延している地域であれば、すべてのハイリスク者(性感染症外来受診者など)や重点対策者(妊婦、結核患者など)に対してHIV検査を積極的に促すことの意義が大きいが、そうではない地域にあっては、他に保健衛生上の優先課題があれば、財源(予算)をアンバランスにHIV対策に重点配分することは適当ではない。マダガスカルではマラリアによる死亡が多く小児の死因の首位である。また妊産婦死亡率も高く、母子保健対策の優先度が高い。HIVの脅威が少ない地域であれば、妊婦の健診では貧血の検査のほうがHIV検査より優先されるべきである。

 しかし、マダガスカルのHIVの脅威については真実を見極める必要がある。対岸のアフリカ大陸の諸国ではHIVが蔓延しており、大陸とマダガスカルとの交易も盛んである。性産業従事者、麻薬中毒者、男性同性愛者など、HIV感染のハイリスク群も大陸同様に存在している。マダガスカルにおいても男性同性愛者間では高いHIV陽性率であるという報告もある。ほとんどのHIV蔓延国において、HIVはまずハイリスク群内に浸透し、次に性的接触を通じて一般人口に拡がっている。マダガスカルはまだ初期の段階にあるのかもしれないが、低頻度ではあっても全国各地で散発的に妊婦のHIV陽性者が報告されている状況から、すでに一般人口への浸透が始まっている。妊婦の性感染症罹患率も高く(梅毒検査を受けた妊婦の1割前後が陽性)、性的接触を通じてHIV感染が急速に拡がる可能性は大きい。このような状況下において、マダガスカルのエイズ対策において重要な点は、HIV感染の拡がりの実態を把握することである。おそらく、地域ごとに蔓延状況が異なり、濃淡があるものと思われる。今回視察した地域では妊婦のHIV陽性率が1%を超えるところもあり、そのような地域では重点地域としてHIV検査とカウンセリングの一層の推進が必要である。

マダガスカルでは全国の医療施設からの月間報告を収集して集計する保健情報システムが導入されており、プロジェクトによってHIV関連情報もこのシステムに統合されているので、理論的には月ごとにHIV検査(と検査結果と治療)の実態が把握できるはずであるが、その信頼性については疑問が呈されている。今回、運営指導調査を通じて統計情報を検証するためのパイロット地区(アナラマンガ県と県下2郡)が決定されたが、地区を限定して統計把握の実態を詳細に調査することの意義は大きい。医療施設でのHIV検査の実際が台帳に正確に記載されているか否か、台帳の集計結果が郡への報告様式に正確に転記されているか否か、群からの報告が正確に県で統計情報システムに入力されているか否かを検証し、どこかに統計の信頼性を損なう不安があれば、その不安を解消するための具体的な方策を提起することが望まれる。保健統計が信頼されている日本の場合、報告された保健情報の集計結果はフィードバックされ、地域比較や年次比較に活用されている。正確な報告をすることの意義が明確であることが、正確な報告のモチベーションである。

マダガスカルの保健情報システムは、地方から国への一方通行の情報収集システムであり、報告を正確にしなければならないというモチベーションは働きにくい。月間報告という頻度で膨大な量の保健情報を報告しなければならない状況にあっては、架空の情報が捏造されて報告されるおそれがある。HIV関連情報を切り口として行政統計の正確性を向上させようとする活動は、他の感染症統計や母子保健統計などの行政統計の正確性の向上にも直結する活動であり、行政統計の活用が全般的に促進されれば、エイズ予防対策強化には留まらない大きなインパクトを生むことが期待される。

 

2.医療施設でのHIV検査とカウンセリングの質の確保

現場(医療施設)の質を確保する手段は、手順の「標準化」とその「適用」である。「標準化」については、現場向けのガイドラインや規範がプロジェクトによって開発されつつあり、「適用」については、実用的な研修カリキュラムと研修テキストが開発され、かつ、他ドナーとの協同で現場の職員の研修が行われている。しかし「標準化」された手順が現場の職員に定着して「適用」されるためには、現場の職員が常にそれを確認できる環境が必要である。規範やガイドラインやテキストの中で必要な部分を抜粋し、ラミネート保護の下敷きや張り紙にして配布するなどの工夫が必要となるであろう。また、妊婦健診時にHIV検査を実施する場合には、二つの手順を統合した手順を具体的に示すことも重要である。

質の確保には、上位機関による定期的な監査(スーパービジョン)も有効だが、地理的・予算的条件による困難を補完する手段として自己チェックリストの開発と配布も検討すべきである。

 

3.オペレーショナル・リサーチの意義について

 プロジェクト活動としてのオペレーショナル・リサーチ(OR)は、行政目的の達成のために行われる。通常、行政目的の達成のために行われるものは「行政施策」であるが、それを研究の視点で行うということは、行政施策について、「実施」だけではなく「結果の検証」と「考察」にも重きを置く、また、そのような行政習慣を導入するということであり、行政官のキャパシティ・デベロップメント(CD)の実践的手法であるということができる。日本では、特にORと称さなくても、行政官が公衆衛生学会などの関連学会へ参画して施策の検証を行う場合も多く、そのような理念は行政施策のPDCAサイクルとして定着しているが、途上国では、特に植民地支配下の行政習慣の影響が残る国にあっては、自律的に発展するような仕組みの行政習慣は根付いていないことが多い。

ORが行政官から距離のある研究者のみで行われればORの意義は薄れるが、本プロジェクトでは課題の選択課程や顧問委員会などに多くの行政官を巻き込むことができている(公衆衛生省事務次官もOR課題へ具体的な興味を示していた)。諸般の事情によりORの着手は遅れたが、ORは活動成果を出すまでの過程においても行政官のCDを促す活動であるので、計画通りに進捗させることができれば、残り期間(1年間)にプロジェクトとしての成果を出すことができるであろうと思われる。

マダガスカルとの国際協力(12)

2011 年 3 月 5 日 土曜日

昨日(日本時間)はエイズ予防対策強化プロジェクトの運営指導調査の最終日でした。

これから深夜(午前1時半)便で出国します。

最終日は、調査結果について、保健省事務次官、在マダガスカル日本大使、JICA事務所長への報告でした。

保健省事務次官には30分以上の時間を割いて報告を聞いていただきました。

このプロジェクトの顕著な成果は、HIV検査・カウンセリングに関する国家政策を改訂し具体的な基準(規範)を策定したこと、研修カリキュラムを作成して講師研修を実施し、世界銀行、世界基金、ユニセフなどと協同して全国の医療従事者への研修を実施中であること、保健情報システムにHIV関連情報を統合して情報管理の一元化を行い、全県・全郡の保健統計担当者への研修を実施したことです。

プロジェクト終了(来年3月)までの活動計画として特に集中すべきことは、オペレーショナルリサーチ(OR)を実施して第三次エイズ国家戦略計画へ反映すること、首都圏において検査から治療に至る包括的サービスの実施体制を試行すること、信頼性のある保健情報の収集と分析が出来るように特定の県と郡を選定して集中的な調査を行い、保健情報の収集分析体制の改善方策を検討することです。

マダガスカルとの国際協力(11)

2011 年 3 月 4 日 金曜日

昨日は、エイズ予防対策強化プロジェクト関係者が一堂に会する「合同調整会議」が開催されました。

日本側はJICAマダガスカル事務所長以下事務所スタッフとプロジェクトへ派遣されている日本人専門家、マダガスカル側は保健省事務次官以下関係部署の長が出席し、このほか、セネガルから招聘したセネガル人専門家も参加しました。

セネガル人専門家は、マダガスカルのHIVカウンセリングの技術指導のために日本のODA予算で招へいした方です。

直行便がないためパリ経由で来ていただきましたので、同じアフリカの国であるにかかわらず日本から来るのと同じくらいの時間を要しました。

マダガスカルには約1か月間滞在されます。

HIVカウンセリングという心理的機微に触れる分野の技術指導は、言語や文化背景を共通とする隣国の専門家を活用する方が日本人専門家を活用するよりも効果的です。

日本の国際協力なのだから日本人のみで、というような狭量な考えでは思うような成果を上げることはできません。

セネガル人専門家からは多くの有益な助言をしていただきました。

私たち運営指導調査団からは、プロジェクト活動の視察結果と今後の活動に向けての提言を述べさせていただきました。

マダガスカルの方々は勤勉ですので、会議は時間通りに始まり、議事予定を大きく狂わすことなく議事が進行します。

前回の調査団が残した提言についても真摯に取り組んで実行されていましたので、今回の調査団の提言についても重く受け止めていただけるはずです。

相手国の実情に即さない無責任な提言をするわけにはいきませんので、調査団員も真剣にならざるを得ません。

マダガスカルとの国際協力(10)

2011 年 3 月 3 日 木曜日

昨日は、プロジェクト活動のひとつである「オペレーショナルリサーチ(OR)」の会議に参加しました。

ORというのは、確たる事実に基づいて計画を立て、実施結果を検証する、という科学研究の手法を行政課題に適用するものです。

単に決められた施策を実行するというのではなく、施策の履行状況を検証しながら施策の改善や次の施策の決定に役立てるものです。

日本では、日本公衆衛生学会など分野ごとの学会に行政官が参加してORが行われてきましたが、途上国ではそういうわけではありません。

植民地時代から、与えられた施策を何の疑問の余地も許さずそのまま実行することを良しとする行政習慣が根付いていることが多いようです。

プロジェクトで選択したOR課題は、HIV陽性者の受診行動に関する課題と、結核とHIVの重複感染に関する課題です。

これらのORを通じて、HIV感染者を早期受診に導くための行政施策を模索します。

マダガスカルでは報告されたHIV感染者数は少ないのですが、実態と乖離していることが問題です。

潜在のHIV感染者の早期受診を促すための施策の開発が必要となります。

マダガスカルとの国際協力(9)

2011 年 3 月 2 日 水曜日

昨日は、保健省の保健統計課長との協議を行いました。

先進国、途上国を問わず、医療施設で生まれた情報(HIVの場合は検査数や検査結果、治療実績など)は最寄りの行政機関に報告され、それが上位機関に集められて全国集計されます。

行政機関が扱う情報は、母子保健情報、予防接種情報、疾病ごとの情報、人事情報、施設資機材情報、予算情報と夥しい量となり、それらの情報を定期的に上位機関へ報告するとなると、行政機関の職員は膨大な報告書類と日々格闘しなければなりません。

紙ベースでの作業では著しく効率が落ちますので、近年は、途上国であってもコンピュータが導入されています。

マダガスカルでは国際機関(ユニセフ)が途上国向けに開発したGESISというデータベースが導入されています。

医療施設から一定様式で報告されてきた情報は地区の行政機関でコンピュータに入力され、その情報は電子媒体で県・郡の保健統計担当へ届けられます。

県・郡はそれらの情報を集約して国へ電子情報を送付します。

途上国の保健統計の問題点は、その信頼性の低さにあります。

コンピュータの入力に不慣れな職員の入力ミスが集計結果に桁違いの誤差をもたらします。

これらは職員の研修を行ったり、明らかな入力ミスが警告されるようにプログラムを改良することで信頼性を向上させることができますが、最大の問題点は、医療施設から報告される源情報の信頼度です。

正しい情報を報告しても誤った情報を報告しても、何ら現場にフィードバックがなされないのであれば正確な情報を報告しようというモチベーションは働きません。

報告の提出を急かされると、実態とは違う情報が机上で作られたりもします。

マダガスカルとの国際協力(8)

2011 年 3 月 1 日 火曜日

昨日は、国際機関関連の協議が続きました。

マダガスカル政府の援助調整機関、世界基金担当、世界銀行、ユニセフなど、この国のHIV対策のための援助をしている機関等です。

地域の最前線ではHIV検査と検査結果に応じたカウンセリングが行われていますが、これらは適切な研修なしには行えません。

国土が広いので研修を数多く行わなければなりませんが、これらの機関が分担して研修を実施しています。

わが国(JICA)は、これらの研修を行う者を育成する講師の研修を実施しました。

これまでに40名を育成していますが、彼らが他の援助機関が行う研修をサポートするという形の援助協調です。

夕刻は、首都圏隣接郡のHIV担当部局の統計担当を訪問しました。

HIV関係の統計の要となる人々ですが、各HIV検査実施機関からの報告の信頼性など課題が多く、HIV統計の改善のためにも研修が必要です。

マダガスカルとの国際協力(7)

2011 年 2 月 28 日 月曜日

マダガスカルでは新規の募集は行われていませんが、政変以前から派遣されている青年海外協力隊員が40名弱、活躍しています。

ほとんどの隊員は首都から離れたところでの活動ですので、短期間の訪問では活動の様子を知ることは困難ですが、数名だけ、首都に活動拠点を持つ隊員がいます。

ひとりは、2010年1月から派遣されている「環境教育」隊員で、国立チンバザザ動植物公園が任務地です。

わが国の草の根無償資金協力で園内に環境保全活動研修支援センターが設立されています。

昨日は休日で隊員にお会いすることはできませんでしたが、この動植物公園を訪問しました。

マダガスカルはアフリカ大陸とはまったく違う動植物相で、この国にしかいない固有の生き物がたくさん棲息しています。

チンバザザ動植物公園は、この国の遺産ともいえる生物多様性に関わる研究、保全、教育面における中心的な機関です。

チンバザザ動植物公園と日本との国際協力の歴史は長く、1990年代は霊長類の専門家を派遣し、2002年からは生態調査などを専門とする青年海外協力隊員が派遣されています。

また、マダガスカル人公園職員も数名が日本で研修を受けています。

マダガスカルは自然が豊かですが、貧困を背景として森林伐採が進み、貴重な動植物の生活環境が侵されています。

「環境教育」として動植物公園を訪れる子どもたちに森林伐採はいけないと教えるだけでは問題解決にはなりません。

国際協力活動を通じての政策レベルへの働きかけが重要で、何より、木を切るしか生活の術が見つからないような貧困から国民を脱却させなければなりません。

貧困を悪循環へ陥らせる主原因であるところのエイズ、結核、マラリアなどへの対策を促進することは、環境保全のためにも意義があることです。

マダガスカルとの国際協力(6)

2011 年 2 月 27 日 日曜日

マジュンガに一泊し、再び首都のアンタナナリボへ帰ってきました。

マダガスカル滞在中の移動は空路か陸路ですが、陸路の移動では、交通安全の規制が緩いことに気付きます。

前回、ケニアへ出張したときには、後部座席のシートベルト未着用にさえ罰金が課される厳しさでしたが、ここマダガスカルでは前席のシートベルトさえも取り締まられていないようです。

整備不良車やヘルメット未着用バイクも堂々と走っています。

聞けば、前政権まではシートベルトもヘルメットも取り締まられていたそうですが、現在の暫定政権下では警察の介入が弱くなっているとのことです。

警察官は見かけますので無政府状態というわけではありませんが、国としての統治体制にほころびが生じてきているということでしょう。

マダガスカルでは、前アンタナナリボ市長が軍を掌握して2009年3月に暫定政権を樹立しています。

この暫定政権は憲法手続きにのっとらない政権交代であり、日本政府はじめ国際社会の承認は得られておりません。

反「暫定政権」集会も散発的に行われており、昨年11月には武力行使による制圧もありました。

昨年12月に予定されていた全国市長選挙は延期、この3月に実施されることになっていた国民議会選挙も延期となっており、実施の見通しが立っていません。

日本を含め、国際機関や援助国は新規の援助を停止しています。

しかしながら、国際社会の援助がなければ必要な医薬品が患者へ届かず、エイズ、結核、マラリアなどで多くの命が失われてしまいます。

政変前から実施していた国際協力については、新規の援助ではないということで、かろうじて国際協力関係が維持できており、マダガスカル国民の命の綱となっています。

マダガスカルとの国際協力(5)

2011 年 2 月 26 日 土曜日

一昨日のタマタブは東海岸の港町でしたが、昨日はマジュンガという西海岸の港町を訪問しました。

東海岸はインド洋に面し、対岸はアジアの国々ですが、西海岸の対岸はアフリカ大陸です。

アフリカ大陸ではHIVが蔓延しています。

西海岸ではアフリカ大陸との交易が盛んですので、HIVの予防対策を怠ると、マダガスカルも大陸と同じ状況に陥る危険があります。

ここでも県・郡の保健局を訪問し、保健統計担当やHIV担当と意見交換を行い、保健所や大学病院を訪問しました。

マジュンガは、かつて母子保健の国際協力プロジェクト(日仏共同プロジェクト)が行われていた地域で、プロジェクトが終了した今でもなお、日本から導入した母子健康手帳の活用システムが動いていました。

この母子健康手帳にはHIV検査を受けたか否かを確認する項目があります。

検査結果は記載されませんが、妊婦が確実に検査を受けることができれば母子感染を未然に防ぐことが可能となります。

マジュンガの保健医療施設は整理整頓が行き届いており、いたるところで「5S(日本では、整理、整頓、清潔、清掃、躾の頭文字ですが、仏語版、マダガスカル語版でもSで始まる頭文字が宛てられていました)」「KAIZEN」の貼り紙を目にしました。

長年の日本との国際協力の成果です。

大学病院長室の応接テーブルには鶴と日の丸のデザインがほどこされていました。

ところで、マジュンガへも小型機をチャーターしての往復ですが、今回は副操縦士席に搭乗させていただくという貴重な体験をすることができました。

夥しい数の計器や操作レバーに囲まれた空間ですが、操縦士がこれらを自在に操って私たちの命を守ってくれていることを実感しました。

また、管制塔の人々や地上誘導の人々も私たちの命を守っていてくれていることを実感しました。

高度計の針が1万フィートを過ぎようとした時、操縦士は酸素吸入装置を鼻へ装着しました。

酸素不足で操縦士の意識が薄らぐリスクを回避するための予防措置で、規則なのだそうです。

私たちの命は、厳格な規則でも守られています。

マダガスカルとの国際協力(4)

2011 年 2 月 25 日 金曜日

今日はタマタブという港町へ行きました。

マダガスカルではHIV感染者が多い地域です。

陸路では道路事情が良くないので、小型機をチャーターしての往復です。

県・郡の保健局を訪問し、保健統計担当やHIV担当と意見交換を行いました。

母子保健施設や結核治療施設も訪問しました。

妊婦は母子感染の観点から、結核はHIVとの重複感染の観点から、HIV対策の重点となります。

タマタブの大学病院も訪問しました。

大学病院のHIV治療の専門医のもとには地域の感染者が集積します。

帰路、雲間から、緑色に広がる穀倉地帯が見えました。

稲作が盛んなのはアジア系移民が多いからかもしれません。

平地が少ない地形ですので、棚田がどこまでも広がっています。

棚田の維持は勤勉でなくてはできません。

マダガスカル国民が勤勉であることの証明です。

マダガスカルとの国際協力(3)

2011 年 2 月 24 日 木曜日

今朝は7時前に起床し、慌しく身支度を整えたのですが、窓の外にはゆったりとしたアフリカ時間が流れていました。

ホテル周辺の畑には、早朝の涼しい時間に農作業に勤しむ人々の姿が見えます。

畑のまわりのあぜ道には、都心へ向かって歩く通勤の人々の群れが見えます。

今日は、8時半から30分間のアポで保健大臣との会談。

通常ならお会いすることも叶わない立場の方でしょうが、日本との国際協力の協議ということで時間を割いていただけました。

政情不安のためにエイズ対策に必要な予算が確保できない現状を打開するための意見交換です。

9時からは、保健総局長との意見交換。

10時からはエイズ担当課長との意見交換。

11時からはSALAMA(医薬品倉庫)の代表との意見交換。

国じゅうの必須医薬品はこの倉庫から届けられ、現場で過不足が生じないようになっていますが、エイズ対策に必要な検査試薬や治療薬は独自のルートで流通しているために在庫管理上の問題が生じています。

11時半からはUNFPA(国連人口基金)の技術顧問との会談。

コンドームなどUNFPAによる配布物品の在庫管理システムについて意見交換しました。

午後2時からはWHO(世界保健機関)のエイズ対策担当官との会談。

マダガスカルのエイズ対策に関する問題点と解決策についての意見交換です。

午後3時半からはJICA事務所での協議。

今日は、こんな具合に時が流れました。

夕刻からは激しい雷雨。

一時、停電で闇の中での夕食でした。

マダガスカルとの国際協力(2)

2011 年 2 月 23 日 水曜日

昨夜午後11時すぎにマダガスカルの首都アンタナナリボへ到着しました。

深夜の到着と移動は治安上の不安がありますが、しっかりと現地スタッフに守られての移動です。

マダガスカルは熱帯気候で、今は夏です。

気温は17~26度、2月の降水量は257mmで、比較的雨が多い時期になります。

マラリアの流行地ですので、虫除けスプレーは必需品です。

日本との時差は6時間です。

言語はマダガスカル語ですが、フランス語も通用します。

私はフランス語がわかりませんので、業務では英仏通訳を雇上します。

なお、マダガスカルの宗教は、約3人に1人がキリスト教ですが、大多数は部族宗教です。

イスラム教人口も6%を占めています。

マダガスカルとの国際協力(1)

2011 年 2 月 22 日 火曜日

羽田空港国際線のラウンジで書いています。

JICAの「マダガスカル国エイズ予防対策強化プロジェクト」の運営指導・調査のため、これから出国するところです。

羽田空港から国際線に搭乗するのは、成田空港開港前に一度利用したきりで、38年ぶりということになります。

出発時刻は午前1時半です。

深夜出国は初めての経験です。

羽田空港も成田空港も関西国際空港も、深夜発着はありませんでしたが、羽田空港国際線からは可能になったということでしょうか。

まず、パリの空港へ向かい、そこからマダガスカル行きに乗り継ぎます。

フランス語圏アフリカへはパリをハブとして路線が広がっています。

英語圏アフリカの場合はロンドンがハブです。

アフリカの国同士を結ぶ路線はあまり発達していませんので、フランス語圏アフリカの国同士が国際会議を開催する時にはパリに集合するのが便利だったりします。

それでも、マダガスカルとパリの間は、11時間を要します。

国際協力論講義(73)

2011 年 2 月 19 日 土曜日

例8)中華人民共和国医薬品安全性評価管理センター日中友好プロジェクト
(2000/7/1~2005/6/30)
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601973_3_s.pdf
協力金額:8億5918万円
先方関係機関:中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)、中国薬品生物制品検定所
日本側協力機関:国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人医薬品医療機器総合機構他
協力の背景と協力内容:
中国では医薬品の安全性が十分確保されておらず、国民の健康への影響が懸念されています。中国は自国で製造される医薬品を世界各国に輸出していますが、その安全性および信頼性を高めることが課題となっています。このような背景のもと、中国政府は国際的GLP基準(Good Laboratory Practice:「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準」)に適合した医薬品の評価を行うために安全性評価管理センターの設立に関する技術協力を日本政府に要請しました。
(1)上位目標
中国における医薬品の安全性が保証される
(2)プロジェクト目標
国際的GLP基準を満たす「医薬品安全性評価管理センター」が整備され、運営される
(3)成果(アウトプット)
1)管理・運営においてGLP基準が遵守される
2)技術指導を通じて試験技術のレベルが高まる
3)試験機器・機材が充実し活用される
(4)投入
日本側:長期専門家派遣:216.9MM(8人)  短期専門家派遣:90.8MM(88人)
研修員受入22人
機材供与2億4972万円  ローカルコスト負担5440万円
相手国側:カウンターパート配置:59人
    ローカルコスト負担9248万元 (11億7449万円)

<終了時評価結果>
医薬品安全性評価管理センターはGLP基準に適合しつつあると判断できます。しかし、プロジェクト目標の「国際的GLP基準を満たした医薬品安全性評価管理センターが整備され、運営される」を達成するためには、被験物質の分析と均一性に関する技術を向上し、発がん性試験の実施とバックグラウンドデータの集積、試験項目や手順をより厳格に遵守したGLP試験を行うことが非常に重要であり、プロジェクト期間中にこれらの点を強化する必要があります。当センターではGLP試験の経験がまだ浅いので、センターが国際的GLP基準に達してそれを維持するためにはGLP遵守の意識をさらに高め、国際的GLP試験の経験を多く積んで様々な事象に対して的確な判断を下せる能力をつける必要があります。さらに自主試験研究が行えるよう努力することも必要です。
妥当性:本プロジェクトの「計画の妥当性」はやや低かったと判断できます。プロジェクト開始前の1999年にGLP規範が試行段階に入り、プロジェクトが開始された当初はGLPの概念が広く普及しておらず、国際レベルのGLP基準に関する議論や認識も曖昧でした。したがって全く新しい概念を導入しようとしたプロジェクトの内容を考慮すると、5年間で達成すべき目標としては、本プロジェクトの目標設定はやや高すぎたと判断できます。さらに、計画ではプロジェクト活動が開始された半年後に安全評価管理センターが完成することになっていました。しかし建設が完成した後にプロジェクト活動を開始した方が、スムーズな立ち上げができたと考えられます。
有効性:プロジェクト目標の達成度はやや低いと判断されました。阻害要因は、(1)「国際GLP」に対する認識の違い、(2)データの信頼性が確保されていないこと、(3)プロジェクト目標の高さ、(4)外部条件のセンター建設の遅延-の4点が挙げられます。「国際GLP」に対する認識については、プロジェクト期間中にわたり中国側と日本側の間にギャップがあり、これを埋めることが困難でした。(2)については、第3者が客観的にデータの信頼性をチェックするスタディオディット(Study Audit)が有効に実施されていないため、本来のGLPの基本であるデータの記載方法が厳格に行われていません。中国ではスタディオディットは施設認定の際に実施されていますが、これは主に施設を対象に調査するもので、日本で実施されているようなデータの信頼性、再現性を担保するようなシステムではありません。(3)については、GLPという新しい概念を現場レベルに浸透させるところからはじめなければならない状況下で、「国際的なGLP水準に達する」という目標はやや高く、まずはGLPを実施できる基盤作りを目指す方が5年間の目標としては妥当だったと考えられます。(4)に関しては、センター建設の計画が約半年遅れ、プロジェクトの活動の進捗、成果やプロジェクト目標の達成度に影響を及ぼしました。
インパクト:本プロジェクトでは、シンポジウム、ワークショップ、地方講演を通じて、地方のGLP施設の運営管理者や技術者にGLPの概念や技術を普及しており、地方の参加者が習得した知識や技術を職場で活用しています。本プロジェクトの実施によって、SFDA自身のGLPに対する意識や理解の促進にも寄与しており、SFDAも医薬品安全性試験に対して具体的な要求を行うようになりました。今後はさらにGLP施設が増加し、海外からの安全性試験の受託も見込まれます。特に、中国はサルの世界的な繁殖供給地であることにより、当センターが最近の新薬開発の中心であるバイオテクノロジー医薬品でサルを用いた安全性試験の分野において重要な役割を果たすことも期待されます。
自立発展性:今後は、GLP管理下での各種試験技術を多く経験し、技術の拡充を図れれば技術面の自立発展性は確保されると見込めます。なお、確実にGLPの経験を総括してGLP管理体制を絶えず整備し、これによって試験データの再現性を保証することが必要です。当センターは中国国内でもナショナルセンターの役割も担っているため、国内のリーダーとして学会への参加、発表や、開発研究を積極的に実践し、知識、技術を普及していくことや、SOP作成に必要な基礎データの収集のための実験(バックグランドデータの集積)、研究(各種機器を用いた基礎データの集積と応用研究)を当センターで継続することが必要不可欠です。
提言:GLP技術の自立発展のために医薬品安全性評価管理センターがGLP試験の経験を重ねることが重要です。GLP試験の実践に際し、スタディオディットを併せて行うことにより、GLP基準の運用を強化すること。
本来、スタディオゥディットはGLPの知識・技術・経験に富んだ第三者によって行われることが望ましいですが、医薬品安全性評価管理センター自らがスタディオディットを行うことによりSOPの不備を自ら発見し、より使いやすいSOPへの改良を継続的に行える体制を整えることも重要です。第三者によってスタディオディットを行う体制と制度はSFDAによって一層の充実が図られるべきですが、内部スタディオディットはQAUの充実強化によってなされるべきです。内部スタディオディットの実施に当たっては、各部門に所属する技術者もQAUと協力し、他部門のGLP実施体制の評価を行うこと。それによって生データの管理体制や再現性が担保される記録記載法など自部門におけるGLP実施体制を反省する機会が拡大するとともに部門間の必要な連携が強化されることが期待されます。
大型機器の消耗品の調達のルートや手続きを明確にすること。
プロジェクト終了までの懸案事項を洗い出し、日本人専門家とカウンターパートとで協力してそれらの解決のための計画を具体的に策定し実施すること。
教訓:本プロジェクトではGLPという新しい概念を導入するのに日本で研修を受けたカウンターパートが重要な役割を果たしました。新しい概念を導入する場合、先進的な実践現場を見聞することは効果的です。本プロジェクトではGLPを全職員へ徹底する方策として新人研修を強化し、到達度試験を実施しています。新しい概念を全職員に徹底する方法として新人研修は有効です。本プロジェクトではスタディオディットによって飛躍的にGLPの理解が拡大しました。新しい概念・技術を強化させる方法として専門家による緻密なスーパーバイズは有効な手法です。本プロジェクトではシンポジウム・ワークショップ・地方講演等によりGLPの理解を全国的に広めました。国家の中心的な施設が自らシンポジウム等を積極的に開催することは新しい概念・知識を全国へ普及させるのに有効です。

国際協力論レポート課題

2011 年 2 月 17 日 木曜日

国際協力論講義の締め括りとして受講学生へ課したレポートが返ってきました。

 

~~~~~~~~~(レポート課題)~~~~~~~~

あなたが青年海外協力隊員として2年間、開発途上国へ派遣されて国際協力活動を行うとします。どの国でどのような活動をしてみたいか、下記の事項に沿ってレポートしてください。

※ 派遣国、派遣部門、活動事例等についてはネット検索して調べてください。

 

○数ある派遣国のうち、どの国を希望しますか。

○その国を希望する理由は何ですか。

○数ある派遣部門・職種のうち、どの部門・職種を希望しますか。

例:保健衛生部門・エイズ対策、教育文化部門・幼稚園教諭、スポーツ部門・相撲

※あくまで仮定の話なので、自分にその分野の専門知識・技術・資格があるか否かは問いません。

○その部門・職種を希望する理由は何ですか。

○自分自身の手当や生活費以外に、国際協力のためであれば自由に使える活動資金として、派遣国の人々の平均年収の十年分が渡されたと仮定します。そのお金を使ってどのような活動をしたいですか。活動計画を立ててください。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

砂漠での植林活動計画をPDM(Project Design Matrix)を添えて提出した学生もいました。たのもしい学生たちです。

国際協力論講義(72)

2011 年 2 月 12 日 土曜日

例7)中華人民共和国予防接種事業強化プロジェクト(2000/6/1~2005/5/31)
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601976_3_s.pdf

協力金額:4億4461万円(機材供与、ローカルコスト負担)
先方関係機関:中国衛生部、中国疾病予防控制中心(中国CDC)
日本側協力機関:国立感染症研究所、国立国際医療センター
協力の背景と協力内容:
中国が正式に拡大予防接種計画(EPI)の実施を打ち出したのは1970年代末であり、1980年代に入って児童の免疫スケジュールが策定され、コールドチェーンシステムの整備が進み、全国規模で計画的かつ統一的なスケジュールによる予防接種(BCG、DPT(三種混合)、麻疹、ポリオ)が実施されるようになった。中国衛生部はEPIの強化を保健衛生の重要政策のひとつとして位置付け、これに関わる各種計画の立案と実施に力を入れた結果、EPI活動は全国的に高い水準に達した。しかし、近年の中国の経済的、社会的変化にもかかわらず、貧困地域において予防接種サービスの質的維持が懸念されていた。一部では、注射の安全性が十分確保されていないため、内陸部、特に予防接種事業が遅れている西北地域を対象とする本件プロジェクトの実施を日本政府に要請した。
(1)上位目標
有効で安全なEPIサービスが対象省全域で提供される
(「有効で安全なEPI」とは、適切なサーベイランスの実施、接種率の向上、安全注射の実施を指す)
(2)プロジェクト目標
対象省(山西省、陜西省、甘粛省、青海省、寧夏回族自治区)全域におけるEPIサービスが改善される
(3)成果(アウトプット)
1)安全注射が実施される
2)EPI接種サービスが向上する
3)ポリオ等EPI疾患サーベイランスが強化される
4)EPI情報がオンライン化され、利用される
(4)投入
日本側:長期専門家派遣 8人  短期専門家派遣 67人
研修員受入 19人
機材供与 3億1079万円  ローカルコスト負担 1億3382万円
相手国側:カウンターパート配置 3665人  ローカルコスト負担 232万円

<終了時評価結果>
実績の確認:対象省のパイロット県では安全注射の実施率がほぼ100%になっており、対象5省での「一人一針一筒」の実施に関しても、2000年と2004年を比較すると5省すべてで改善された。四種ワクチン接種率は80%以上で維持されている。各省ともにポリオサーベイランスの結果を綿密にモニタリングしており、政策や対応策へのフィードバック体制が整備されたといえる。ただし、遠隔地や未登録人口へのEPIサービスの普及が遅れている地域もある。本プロジェクトでは、対象5省全域をプロジェクトの対象範囲としているため、EPIサービスの普及が遅れている地域への対応は今後の課題である。
妥当性:プロジェクトの対象地区は中国でも比較的経済開発が遅れている省で、公共サービスであるEPI事業への支援の対象省としたことは妥当だったといえる。プロジェクト初期は、2省をモデル地域とし、他のモデル外対象地域3省へ波及させることとしていたが、日中の協議の結果、プロジェクトの活動実績を踏まえ、モデル地域とモデル外地域の区別をなくすことが適切と判断し、5省をプロジェクトの対象省と位置づけることとした。これは、本プロジェクトが経済効率のよいEPI事業を対象としたプロジェクトだったことと、中国側にEPIの基礎的なシステムが既に確立していたことから、5省に対象を拡大することが可能になったものである。
効率性:2003年にSARSが流行し、中央と省のCDC(疾病予防コントロールセンター)は対応に追われたため、プロジェクトの活動が3~4ヶ月停滞したが、最終的にはプロジェクト活動の大幅な遅延にはならなかった。
本プロジェクトでは、他プロジェクトとの連携も促進された。具体的には、中国側、他ドナー、GAVI(Global Alliance on Vaccine and Immunization)、日本が参加するドナー調整会議が開催され、EPI関連活動の調整やサーベイランスの結果が共有された。その他、JICAの医療特別機材供与によるポリオワクチンの供与(2000~2003年)や無償資金協力「中国西部7省自治区感染症予防推進計画」がプロジェクトの活動を補強したり、GAVIがADシリンジ(1回使い切りの注射器)とB型肝炎ワクチンに対する資金供与を実施した。これらは本プロジェクトと効率的に連携してEPI事業全体をサポートした。
インパクト:予防接種のみならず、病院などの臨床の注射器の回収処理についても、プロジェクトで実施してきた使用済み注射器の回収処理モデルが適用されており、波及効果が認められる。
自立発展性:2004年12月1日に「中華人民共和国伝染病防治法」が改定され、プロジェクト終了後も中国衛生部の活動は中央政府よりサポートを得られると考えられる。
問題点:流動人口の増加による未登録人口の問題や、計画外出産の問題があるため、正確なEPI対象人口を把握することが困難だった。

国家独立の承認

2011 年 2 月 11 日 金曜日

どこであっても、国としての要件(領土を持つこと、国民が存在すること、実効的な統治機構があること)を満たせば国家たり得ますが、国際社会から独立国として認められるためには、世界各国の政府が、その国を主権国家として承認しなければなりません。

なお、多くの国が国家承認している国であっても、承認するかしないかは二国間の関係ですので、たとえば日本政府が承認しない国については、日本政府は独立国として扱いません。

国際連合加盟国の1か国以上から承認を請けている国であるが日本政府が承認していない国は次の通りです。

<アジア>

中華民国:中華人民共和国と中華民国は、どちらも中国全土(大陸と台湾)の領有権を主張していますので、両方とも承認することは困難です。日本は中華民国が実効支配する台湾のみを中華民国として承認していましたが、1972年、中華人民共和国を承認した時点から中華民国を国家と承認できなくなりました。2008年1月現在、中華民国を国家として承認している国は23か国(ブルキナファソ、ベリーズ、ドミニカ共和国、ガンビア、グアテマラ、ホンジュラス、ハイチ、キリバス、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、マーシャル諸島、ニカラグア、ナウル、パナマ、パラオ、パラグアイ、ソロモン諸島、エルサルバドル、サントメ・プリンシペ、スワジランド、ツバル、バチカン、セントビンセント・グレナディーン)です。

朝鮮民主主義人民共和国:大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国も、どちらも朝鮮半島全土の領有権を主張しています。実効支配している範囲をそれぞれの領土として両国をそれぞれ国家と承認している国が多く、朝鮮民主主義人民共和国は国際連合加盟国です。

北キプロス・トルコ共和国:トルコのみが承認しています。日本政府は「トルコ軍占領地域」としています。

アブハジア:ロシア連邦、ニカラグア、ベネズエラ、ナウルのみが承認しています。

南オセチア共和国:ロシア連邦、ニカラグア、ベネズエラ、ナウルのみが承認しています。

<アフリカ>

サハラ・アラブ民主共和国:アフリカ諸国と中南米諸国を中心に承認されています。

<オセアニア>

クック諸島

ニウエ

<無地域>

マルタ騎士団:国土はありませんが、「主権実体」であるとして94か国が承認しています。

<部分的承認>

大韓民国:国家承認はしていますが、朝鮮半島北部と竹島の領有権は承認していません。

イスラエル:国家承認はしていますが、エルサレムが首都であることは承認していません。

ソマリア:国家承認はしていますが、日本が承認している政府は存在しません。

 

承認手順は、法規で正式に定める前に、独立祝電など政府機関発行の公的文書や政府高官の声明によって暫定的に政府承認とみなされることもあります。

日本においても、明治元年に旧幕府脱走軍が蝦夷地を平定し、立ち寄った英仏の軍艦によって承認されたことがあります(数か月後、英仏の外交官によって承認が否定されました)。

アフリカの国家独立

2011 年 2 月 10 日 木曜日

今年7月、アフリカに新たな独立国が生まれます。

スーダン共和国の南部地域です。

モンテネグロに次ぎ、5年ぶり、193番目の国連加盟国になる予定です。

スーダンはアフリカ大陸で最大の面積の国家です。

エジプト、リビア、チャド、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ケニア、エチオピア、エリトリアと国境を接しています。

アフリカ諸国の国境は直線であることが多く、民族や宗教や言語の分布はお構いなしに宗主国同士が利害を調整して机上で決めた国境に由来しています。

そのため、同一民族が国境で分断されて別々の宗教や言語を強要されたり、同一国内で民族対立や宗教対立が生じています。

スーダンにおいても激しい内戦が繰り返されてきました。

北部のスーダン国民会議(NC:イスラム教徒系)と南部のスーダン人民解放運動(SPLA)との対立が多くの悲劇(22年間の内戦で220万人以上が死亡)を生んできましたが、2005年に包括和平合意が実現し、NCSPLAによる暫定政府が発足しました。

暫定政府は、6年間の統治の後に南部で住民投票を実施し、南部の独立を決めることになっていました。

先月、住民投票が行われ、99%近い賛成を得て南部の独立が確定しました。

国家の独立(日本政府承認)はコソボ共和国以来3年ぶりです(コソボ共和国は、まだ国連加盟国の過半が独立を承認していません)。

アフリカ大陸では、いまだに多くの国で内紛が続いています。

19世紀に別大陸の会議室のテーブルで地図上に引かれた線のために、いまなお多くの命が消えています。

国際協力論講義(71)

2011 年 2 月 8 日 火曜日

例6)ホンジュラス国第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクト
(2000/4/1~2005/3/31)
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0603088_3_s.pdf
協力金額:6億9600万円

先方関係機関:保健省(第7保健地域事務所、サンフランシスコ病院、本省)
日本側協力機関:国立国際医療センター
協力の背景と協力内容:
ホンジュラス政府は保健セクターの既存資源を有効活用し保健サービスの改善を図るべく、我が国に開発調査「全国保健医療総合改善計画調査」を要請しました。同調査は1995 年1月から1996 年8月まで実施され、同調査の結果を受けて、ホンジュラス政府は、同調査結果においてモデル地域とされた第7保健地域(オランチョ県)におけるプロジェクト方式技術協力「第7保健地域保健総合開発計画」を要請しました。これを受けて、JICA は1999 年2月に事前評価調査を、2000 年3月に実施協議調査を実施し、プロジェクトの協力対象を特にリプロダクティブヘルスとして本プロジェクトが開始されました。
(1)上位目標
第7保健地域のリプロダクティブヘルスの状況が改善される。
(2)プロジェクト目標
第7保健地域において保健医療供給者による質の高いリプロダクティブヘルスサービスが提供される。
(3)成果
1)サンフランシスコ病院(HRSF)および母子クリニック(CMI)において、女性に対しての適切かつ時宜を得た治療がなされる。
2)サンフランシスコ病院および母子クリニックにおいて、新生児ケアが改善される。
3)CESAR(医師無し保健所)、CESAMO(医師有り保健所)、サンフランシスコ病院および母子クリニックにおいて、妊娠、出産、産後のリスク要因が早期に同定される。
4)患者の適切な治療のための基本薬品供給が保障される。
5)第7保健地域の臨床検査ネットワークにおける質の高いサービスの利用が保障される。
6)保健医療スタッフによるリプロダクティブヘルスのハイリスク発見のための健康教育が(患者へ)提供される。
7)第7保健地域におけるカウンセリングサービスへのアクセスが改善される。
8)地域レベルのモニタリングシステムが強化される。
9)人的資源と資金が効果的に活用される。
(4)投 入
日本側:長期専門家派遣 10 名  短期専門家派遣 49 名  研修員受入れ 21 名
機材供与 1,433 千US ドル  現地業務費 10,594 千レンピーラ
ホンジュラス側:土地・施設提供  ローカルコスト負担 8,158 千レンピーラ

<終了時評価結果>
プロジェクト目標の指標の達成状況:
<指標1>利用者の90%がリプロダクティブヘルス分野のサービスに満足する。
<指標2>施設分娩の割合が12%増加する。
<指標3>サンフランシスコ病院内の新生児死亡率が1割減少する。
サンフランシスコ病院の新生児死亡率はプロジェクト開始時からほとんど変化が見られず、プロジェクト終了時までの目標達成は難しい。
<指標4>妊婦検診受診者率が1割増加する。
<指標5>産後検診受診者率が1割増加する。
有効性:プロジェクト目標の指標の達成状況から、プロジェクト目標の達成度は高いと判断できる。各成果の達成がプロジェクト目標の達成に貢献したと考えられる。
インパクト:
9つの成果は着実に進展しており、第7保健地域におけるリプロダクティブヘルスサービスの質は確実に向上してきている。上位目標の指標である妊産婦死亡率の改善は明確には確認できないながらも、第7保健地域のリプロダクティブヘルスの状況は改善傾向にあると推測される。
問題点:プロジェクト全体の包括的な運営管理、モニタリングについて不十分な点が見受けられた。具体的には、各成果を担当するホンジュラス側責任者が一堂に会してプロジェクト全体の進捗状況を話し合うといった場が稀にしか設けられなかったことから、成果間の情報共有や連携が必ずしも十分になされず、成果一つ一つが個別のプロジェクトのように運営管理される側面が見られた。また、2004 年のPDMの見直しまでは適切な指標が設定されておらず、達成状況の確認が十分にはなされていなかった。
提言:本プロジェクトは成果レベルにおいて、ある程度の達成度を示しているが、プロジェクト目標の達成に向けての各成果の貢献の程度については実証できていない。プロジェクト目標の達成に有効な活動として何がなされ、何がなされなかったかを検証することにより、プロジェクト目標達成への筋道を論理的に組み立てることが必要である。そのため、成果ごとのホンジュラス側責任者を交え、CCR は論理関係を整理し、それに基づく今後の活動計画を明確化すべきである。
教訓:本プロジェクトの成果分野横断的ワークチーム(グループCINCO)の例が示すとおり、プロジェクト目標の達成を念頭に置いた分野間協調のメリットは大きい。
重要な保健指標データの欠如は、プロジェクトの評価や活動の改善、成果のアピールなどの障害となる。重要な保健指標データが適宜得られるシステムを、プロジェクト早期より構築するべきである。

ポルトガル語圏の国々

2011 年 2 月 7 日 月曜日

日本人が初めて接したヨーロッパの言語はポルトガル語です。

16世紀に、鉄砲やキリスト教とともに日本へやってきました。

現在もブラジル人が30万人近く来日して働いていますので、日本人にとってもポルトガル語は身近な存在です。

ポルトガル語は人口1千万人のポルトガルの言葉ですが、人口1億8千万人のブラジルの公用語ですので、現代のポルトガル語はブラジルで進化しています。

以下がポルトガル語を公用語とする国々ですが、旧植民地の名残としてアフリカに集中しています。

<ヨーロッパ>

ポルトガル

<南米>

ブラジル

<アフリカ>

アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ、サントメ・プリンシペ、モザンビーク、赤道ギニア

<アジア>

東ティモール、マカオ

 

アフリカにおける言語地図は大西洋奴隷貿易を抜きには語れません。

部族闘争が繰り返されていたアフリカでは、他部族の黒人を捕らえて奴隷にする慣習があったのですが、15世紀後半になり、部族の権力者がその奴隷をポルトガル商人へ売却して利益にするようになりました。

ポルトガル商人は、購入した奴隷を中南米のスペインの植民地開発に必要な労働力として売却しました。

熱帯性の気候や伝染病に強いと考えられたアフリカ人が労働力として注目され、奴隷取引は拡大していきます。

16世紀になると、ポルトガルとスペインで独占的な奴隷貿易会社が設立されました。

アフリカの国々も奴隷貿易で潤うようになり、奴隷狩りがしばしば行われました。

その後、奴隷貿易の主導権はオランダ、フランス、イギリスなどに移り、18世紀になると、イギリスやフランスから積み出された産品が奴隷と交換されました。

奴隷との交換産品として、アフリカで需要が多い綿布を大量生産しようと、マンチェスターで綿工業が起こりました。

イギリス産業革命の始まりです。

蒸気機関の発明にも、奴隷貿易による資本が融資されました。

19世紀初頭より奴隷貿易を禁止する動きが強まり、奴隷制も、イギリス領では1833年、スウェーデン領では1846年、フランス領では1848年、オランダ領では1863年に廃止されました。

ヨーロッパ-アフリカ-中南米間で奴隷貿易が行われていた頃、日本でも、日本人領主が中国人商人やポルトガル人商人を通じて日本人貧民を東南アジアなどへ売買するようなことが行われていたようです。

イエズス会の宣教師たちの働きにより、1571年、ポルトガル王は日本人貧民の海外売買禁止令を発布しています。

スペイン語圏の国々

2011 年 2 月 6 日 日曜日

アフリカに、スペイン語を公用語とする国が1か国だけあります。

赤道ギニア共和国(1968年にスペインから独立)です。

赤道ギニアでは、第一公用語がスペイン語、第二公用語がフランス語、第三公用語がポルトガル語です。

もともとはポルトガル領でしたが、18世紀末に、ブラジルの領有権と引き換えに、スペインは奴隷貿易の中継地としてポルトガルから島の一つを得ています。

スペイン語圏がアフリカにひとつだけぽつんとある経緯ですが、スペインとしてはブラジルの領有権を手放してでも欲しい重要な拠点だったわけです。

赤道ギニア国立大学では中南米スペイン語圏から派遣された教授が教育に携わり、スペインの国立遠隔教育大学も赤道ギニアに支部を置いています。

スペイン語を公用語とするのは次の国々です。

<ヨーロッパ>

スペイン

<中南米>

メキシコ、コスタリカ, グアテマラ、エルサルバドル、パナマ、ホンジュラス、ニカラグア、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ(米国自由連合州)、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ

<アフリカ>

赤道ギニア

 

公用語という位置づけでなくても、中南米では、多くの国でスペイン語が使われています。

アメリカ合衆国でも、かつては南西部一帯がメキシコ領でしたので、ニューメキシコ州ではスペイン語が事実上の公用語となっています。

ヒスパニック移民の割合が高いカリフォルニア州やフロリダ州、テキサス州などでもスペイン語が第二言語となりつつあります。

アジアにはスペイン語圏とされる国はありませんが、フィリピンは1898年までスペイン領でした。

フィリピンではスペイン語の単語が日常生活にとけ込んでおり、公用語の英語にもヒスパニック訛りがあります。