‘保健医療の地域経営’ カテゴリーのアーカイブ

平成22年の死亡数の急増(1)

2011 年 5 月 22 日 日曜日

一昨日(20日)、厚生労働省は「平成22年における死亡災害・重大災害発生状況等」について公表しました。
平成22年の労働災害による死亡者数は1195人で11年ぶりに増加しています。
前年比11.2%増で、異常事態であるといえるでしょう。
業種別では、建設業が365人で最多です。
次いで、製造業が211人、陸上貨物運送事業が154人となっています。
事故の型別では、「墜落・転落」が311人で最多です。
次いで、「交通事故(道路)」が278人、「はさまれ巻き込まれ」が171人、「激突され」が73人、「崩壊・倒壊」が67人となっています。
重大災害(一時に3人以上の労働者の業務上災害)についても、平成22年の発生件数は245件で、前年比7.5%増でした。
労働災害の増加は全国的傾向です。
何らかの労働災害予防体制の緩みが全国的に生じたのだとすれば、現場単位ではわずかな増加かもしれませんが、全国的に集計すれば統計に現われます。
労働災害に限らず、死亡数の急増は全国的傾向です。
たとえば、神戸市の死亡統計は次のようになっており、前年比7%以上の増加となっています。
大震災の年を除いては、これほどまで増加した年はありません。

平成 死亡数  前年比増加率
5年 10809    1.2%
6年 10780   -0.3%
7年 15351   42.4%←大震災
8年 10251  -33.2%
9年 10421    1.7%
10年 10887    4.5%
11年 11247    3.3%←インフルエンザ
12年 11146   -0.9%
13年 11296    1.3%
14年 11360    0.6%
15年 11910    4.8% ←インフルエンザ
16年 11963    4.5%
17年 12545    4.9% ←インフルエンザ
18年 12748    1.6%
19年 12973    1.8%
20年 13391    3.2%
21年 13489    0.7%
22年 14458    7.2%

神戸市以外では、統計史上最大の伸び率の地方が多いようです。
国民の生存権を護る社会保障体制の全国的な緩みを危惧します。

介護保険制度の財源(2)

2011 年 3 月 28 日 月曜日

みやま市の平成21年度決算を例に介護保険の財源構成を解説します。
介護保険は介護保険事業特別会計で運用されています。
この特別会計の歳出予算規模は39.3億円、総務費等を除く保険給付費は36.4億円です。
財源として大きい順に並べると、次の通りです。

支払基金交付金    11.0億円
(第2号被保険者の保険料です)
国庫支出金       9.3億円
(国の負担分で、このうち2.8億円が財政調整交付金、0.2億円が地域支援事業交付金です)
一般会計からの繰入金  6.3億円
(市の負担分です)
県支出金        5.6億円
介護保険料       6.5億円
(第1号被保険者の保険料です)

それぞれの支出割合は、前回記載の割合とは少しずつ異なっています。
保険料(第1号+第2号)分は計17.5億円で、保険給付費の48%です。
本来の50%に届いていません。
国庫支出金(地域支援事業交付金を除く)は保険給付費の25%で、過不足はありません。
県支出金と市の一般会計繰入金は、いずれも12.5%を上回っていますが、それは総務費等の保険給付費以外の負担が必要であるためです。
なお、市の一般会計からは、この年、特別会計への繰出金以外に「介護基盤緊急整備事業費」3千5百万円が支出され、小規模多機能型居宅介護拠点が整備されています。
この支出額のうち2千7百万円は県からの「介護基盤緊急整備等臨時特例交付金」という補助金です。

介護保険制度の財源(1)

2011 年 3 月 27 日 日曜日

介護保険の財源構成も比較的簡単です。
利用者負担(ほとんどのサービスにおいて1割、上限あり)を除く介護費用は次の割合で負担が分担されています。
保険料    50%
税(国)   25%
税(県)   12.5%
税(市町村) 12.5%
市町村が独自に介護保険の支給限度基準額を上乗せしてサービスを充実する場合がありますが、その場合上乗せ財源は市町村の特別会計から支出されます。
なお、上記のうち、国負担の25%というのは全国平均で、実際は、20%相当額に財政調整交付金を上乗せした額となっています。
高齢化率の高い市町村は介護保険財政が苦しいので5%より多く交付されます。
反対に高齢化率の低い市町村は5%より少なく交付されます。
保険料については、65歳以上(第1号被保険者)の保険料は市町村が3年ごとに決めています。
所得に応じて5段階の保険料が決められ、公的年金などから天引きされます。
40歳以上65歳未満(第2号被保険者)の保険料は加入している医療保険から拠出されます。
財源としては第2号被保険者の保険料の方が大きく、サービスの受給年齢であるところ第1号被保険者の保険料は介護保険給付サービスの財源構成の20%にすぎません。
残りの80%は若い世代による支援ということになります。

後期高齢者医療制度の財源(2)

2011 年 3 月 23 日 水曜日

みやま市民(人口4万2千人)の16.5%は75歳以上の後期高齢者(約7千人)です。
後期高齢者1人あたり100万円の医療費として、みやま市の後期高齢者には約70億円の医療費を要しています。
患者窓口負担分を除くと約60億円が広域連合を通じて支払われていることになります。

みやま市の一般会計へは、県からの「後期高齢者医療保険基盤安定負担金」歳入が1.1億円あり、一般会計からは、広域連合への「後期高齢者医療療養給付費負担金」5.3億円と後期高齢者医療特別会計への繰出金1.7億円が支出されています。
広域連合への負担金は、この制度を支える公費(5割)のうちの市町村の分担分です。
特別会計への繰出金は事務費繰出金(3千万円)と「保険基盤安定繰出金」1.4億円です。
後期高齢者医療特別会計は、一般会計からの繰入金1.7億円と75歳以上から徴収した保険料3.4億円が主な収入で、総額5.2億円の歳入です。
これから総務管理費等を除いた5.0億円が広域連合へ納付されています。
国保特別会計からは、若年者による「後期高齢者支援金」として5.9億円が広域連合へ拠出されています。
この拠出金は、数年後より、国保の加入者への特定健診(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導の実施状況に応じて上下することになっています。
国保特別会計では、特定健診事業費が1.7千万円支出されています。

以上より、みやま市から広域連合へは、5.3億円(一般会計)+5.0億円(後期高齢者医療特別会計)+5.9億円(国保特別会計)=16.2億円が支出されていることになります。
60億円のうち残りの40億円以上は、国・県の税金と協会けんぽ・健保組合が負担していることになります。

後期高齢者医療制度の財源(1)

2011 年 3 月 21 日 月曜日

国保の医療費は総医療費の約3分の1を占めますが、後期高齢者の医療費も約3分の1を占めています。
後期高齢者制度の財源構成は国保に比較すれば比較的単純です。
患者窓口負担(1割。現役並所得者は3割)を除いた総医療費について、次のように分担し、広域連合(都道府県単位に設置された後期高齢者医療制度の運営主体)へ交付されます。

約5割:公費(国:都道府県:市町村=4:1:1)
約4割:後期高齢者支援金(若年者の保険料)
約1割:75歳以上の保険料

公費のうちの国負担分については、その4分の1相当額は調整交付金で、広域連合の財政力に応じて負担割合が変動します。
後期高齢者支援金は、国保や健保組合などの保険者から社会保険診療報酬支払基金へ一括納付され、支払基金が各広域連合へ交付します。
なお、国保と協会けんぽの後期高齢者支援金には、別途、公費が投入されます。
国保への公費投入は50%です。
75歳以上の保険料は、市町村の後期高齢者医療特別会計を経由して広域連合へ納付されます。
低所得者等の保険料軽減分は公費(都道府県:市町村=3:1)で補填されます。
高額医療費については公費(国と都道府県が4分の1ずつ)による負担があります。
このほか、保険料未納などの財政影響リスクに備えた財政安定化基金が設けられ、国と都道府県と広域連合が3分の1ずつ拠出します。

国民健康保険の財源(8)

2011 年 3 月 15 日 火曜日

国保の保険料も、すべてが医療給付費に充てられるわけではありません。
75歳未満の加入者が払う保険料の中には後期高齢者医療制度への支援金が含まれています。
後期高齢者医療制度の財源の多くは若い世代が支える仕組みになっているからです。
また、40歳以上65歳未満の加入者の保険料には、介護保険制度への納付金も含まれます。
みやま市の場合、保険料11.5億円のうち8.2億円(71%)が医療給付費分で、2.1億円(19%)が後期高齢者支援金分、1.2億円(10%)が介護納付金分です。
すなわち、みやま市民の保険料は、医療給付費(保険給付費)36.5億円の4分の1以下にしか充てられず、4分の3は国庫・県からの支出金や支払基金からの前期高齢者交付金、退職者医療療養給付費交付金が充てられ、それでも不足する2.8億円が一般会計から繰り入れられているという構図です。
2.8億円は、市民税収入14.9億円の約5分の1に相当する額となりますので、保険料の設定は市町村財政を左右する重要事項だということができます。
みやま市に限らず、多くの市町村でも同様です。

国民健康保険の財源(7)

2011 年 3 月 14 日 月曜日

国保の財源構成について、みやま市(人口4万2千人)を例に具体的に述べてみます。
みやま市の平成21年度の国民健康保険特別会計の歳出は54億円、歳入は57.3億円でした。
歳出と歳入の差が約3.3億円あり翌年度の特別会計へ繰り越されますが、歳入のうち3.1億円は前年度からの繰越金ですので、実質的予算規模は歳出相当の54億円です。
歳出54億円の内訳は、多い順に次の通りです。
・保険給付費   36.5億円(67.6%)
・共同事業拠出金  7.3億円(13.5%)
・後期高齢者支援金 5.9億円(10.9%)
・介護納付金    2.5億円( 4.6%)
・他(総務管理費等)1.8億円
国保特別会計歳出の約3分の2が保険給付費です。
保険者の負担金として後期高齢者医療制度、介護保険制度のための支出もあります。
なお、後期高齢者医療特別会計、介護保険事業特別会計は別会計です。
歳入の内訳は、多い順に次の通りです。
(%は54億円に対する比率)
・国庫支出金    14.5億円(26.9%)
・前期高齢者交付金 12.3億円(22.8%)
・保険料      11.5億円(21.3%)
・共同事業交付金   7.0億円(13.0%)
・療養給付費交付金  3.5億円( 6.5%)(退職者医療)
・一般会計繰入金   2.8億円( 5.2%)
・県支出金      2.3億円( 4.3%)
健保組合の場合は50%を加入者の保険料で賄いますので、国保は加入者負担率が小さい制度設計となっています。
共同事業については、国保連へ7.3億円を拠出して7億円が交付されていますので、差し引き0.3億円のマイナスですが、国庫・県支出金のうち計0.5億円は共同事業負担金ですので、収支バランスはプラスです。
一般会計からの繰入金(2.8億円)は、国保特別会計の不足分の負担を納税者全般へ求めるもので、本来はゼロに近づけるべき歳入です。(一般会計へは、国・県からの「国保基盤安定負担金」歳入が計1.2億円あります。)
これを保険料で賄うためには、保険料を24%も引き上げなければなりません。
なお、未納で回収できない保険料が1.8億円もあります。
保険料を引き上げると未納者が増えるジレンマがあります。

国民健康保険の財源(6)

2011 年 3 月 12 日 土曜日

年齢構成の違いによる不均衡は前期高齢者医療制度による財政調整によって是正されますが、国保には、加入者数が健康保険組合や協会けんぽより少ないことに伴う財政的不安定があります。

加入者数が多ければ、少数の加入者が高額の医療費を要してもカバーすることができるのですが、加入者数が少ない場合、高額な医療費を要する加入者が想定数を少し上回っただけで国保特別会計の収支バランスが崩れてしまうおそれがあります。

また、一定額を超える高額医療費については、加入者からは一定額以上の自己負担を求めない「高額療養費」制度もありますので、患者の自己負担分についても国保特別会計で肩代わりする必要があります。

そのような保険財政上のリスクを回避するため、保険の保険ともいえる「共同事業」が県単位(都道府県国民健康保険連合会)で実施されています。

「共同事業」のため各市町村の国保特別会計から拠出金が支出されますが、1件30万円を超える医療費については「保険財政共同安定化事業交付金」が拠出金のプールから交付されます。

また、1件80万円を超える医療費については「高額医療費共同事業交付金」が交付されるとともに、国・県の財政支援もあります。

近年は1件420万円を超える超高額な医療費が発生する場合がありますが、それが特定の県に集中すると「共同事業」が破綻するおそれもあります。

そこで、保険の保険の保険として、都道府県国保連合会の拠出金によって国民健康保険中央会による「超高額医療費共同事業」が運用され、国庫補助金も交付されています。

高額医療費に対する国や県の財政支援は、納税者の目からは国保への特別優遇措置であり制度間のバランスを欠きますが、高額医療費を要する患者が健保組合で忌避されて国保に集中していることも考えられますので、特別優遇措置はリーズナブルかもしれません。

国民健康保険の財源(5)

2011 年 3 月 11 日 金曜日

国民健康保険の財源として、保険料、国庫支出金と並んで大きな割合を占めるものがあります。

社会保険診療報酬支払基金から交付される「前期高齢者交付金」です。

前期高齢者とは、65~74歳の方のことです。

健康保険組合等の被用者保険の加入者(本人)が前期高齢者の年齢になると、退職して扶養家族ともども国保の加入者に切り替わる場合が多いので、国保加入者の年齢構成は高齢者に偏ることになります。

前期高齢者の加入率は健保組合では2%程度ですが、国保では30%だったりします。

若年者より高齢者のほうが医療費を要しますので、加入者ひとりあたりの医療費は国保のほうが割高となり、保険料も割高とならざるを得ません。

この不均衡を是正するため、前期高齢者の加入人数の多い国民健康保険の財政支援を、若年者の加入の多い健康保険組合などが行う制度が設けられています。

前期高齢者の加入者の割合が全保険者平均より少ない保険者が「前期高齢者納付金」を支払基金へ納付し、支払基金はそれを「前期高齢者交付金」として各市町村国保特別会計へ分配して交付する制度です。

以前は制度間の不均衡を是正するための制度として「退職者医療」制度が設けられていましたが、この制度は前期高齢者医療制度の発足とともに新規適用が停止され、最後の適用者が65歳に達する平成26年度をもって廃止されます。

国民健康保険の財源(4)

2011 年 3 月 10 日 木曜日

新年度の国保の保険料の引き下げや引き上げには条例の改正が必要ですので、全国各地の市町村議会では条例改正案が審議されているところです。

一昨日、栃木県大田原市の国保料率を15%上げる条例改正案が市議会に提出されたことが報道されました。

市は、市の国民健康保険運営協議会への諮問を経て、国保料引き上げの方針を固めたのだそうで、福岡市と真逆の対応です。

大田原市は医療ハイテクメーカーが集積する医療産業都市で、本学の教育と同領域の「医療福祉・マネジメント学科」を有する国際医療福祉大学が所在している市でもあります。

政権交代によって、昨春、十年ぶりに診療報酬が引き上げられましたが、入院医療を担う病院の診療報酬が手厚くなりましたので、福岡市はじめ病院が集中している市では医療費が増大します。

市町村の国保特別会計ではこれに対応した歳入を確保しなければなりません。

大田原市では、保険料を上げなければ新年度に6億400万円が不足すると試算し、大幅に保険料率を引き上げる方針を出しています。

国民健康保険の財源(3)

2011 年 3 月 9 日 水曜日

国民健康保険には被用者保険の事業主負担に当たるものがないため、国が負担をすることになっています。
すなわち、市町村国保の財源は、患者の自己負担分を除く保険給付費の50%相当は国税等が財源に充てられていることになります。
国保の保険給付費の50%は、市町村が国保特別会計で支出すべき額に対しては30%くらいの額となります。
国保特別会計では、後期高齢医療の拠出金など、保険給付費以外にも負担すべき部分があるためです。
また、保険給付費の残りの50%をすべて保険料収入で賄うことができない市町村には、さらに市町村負担が生じることになります。
実際、国民健康保険には保険料負担能力の低い被保険者が多く、国保財政が不安定となっています。
市町村国保の財政基盤の強化を図るため「保険基盤安定制度」が設けられています。
保険料の軽減額について、市町村が一般会計から国保特別会計に軽減相当額を繰り入れ、その繰入れに要する費用の4分の3を都道府県が負担する制度です。
以前は4分の2を国が負担していましたが、平成17年度から国の負担がすべて都道府県負担に振替えられました。
また、「財政調整交付金」という制度もあります。
市町村の財政状況等に応じて配分されるもので、各市町村の医療費や所得水準等に基づいて配分される普通調整交付金と、災害等の特別の事情に応じて配分される特別調整交付金からなります。
調整交付金は各市町村の収納率に応じて減額されます。
市町村の保険料徴収努力が足りない分は市町村の税財源を充ててくださいという趣旨でしょう。
財政調整交付金制度も、平成17年度から、国の負担部分の一部が減り、新たに都道府県による財政調整交付金が導入されています。
国保財源として都道府県負担割合が増えつつあるのは、医療費が高騰している都道府県の医療費は都道府県の税財源を充ててくださいという趣旨でしょう。

国民健康保険の財源(2)

2011 年 3 月 8 日 火曜日

税財源の投入や後期高齢者医療費の切り離しにかかわらず、国民健康保険料の高さはしばしば政治問題となっています。

保険料負担は他の健康保険でも大きく、また、医療費の増に応じて引き上げられてゆくのも必然的動向です。

年金保険や健康保険には、保険制度とはいうものの、法により、税財源も投入されるルールになっていますので、年金や医療費の増加に応じて税財源の投入も増加させてゆかなければなりません。

社会保障制度の維持のために消費税の引き上げが必要だといわれるゆえんです。

しかし、保険料の引き上げ分まで消費税の増分で対応しようとする論調には警戒が必要です。

消費税は所得に関係なく課税される制度ですので、低所得者に重税感が生じるシステムです。

それに対し、健康保険料は収入に応じた額を徴収する制度ですので、低所得者に優しいシステムです。

社会保障制度は、共助(保険)と公助(税)と自助(窓口負担)のバランスを保ちながら発展していますが、低所得者救済を社会保障の柱とするのであれば、その財源負担も低所得者を直撃しないような制度設計とするべきであり、保険料の伸びを税で肩代わりするような発想にはブレーキが必要です。

国民健康保険の財源(1)

2011 年 3 月 7 日 月曜日

3月5日のニュース(西日本新聞)で、福岡市の国保運営協議会の会長(九州大学大学院尾形教授)が委員と会長職を辞任されたのを知りました。

尾形教授は医療政策の第一人者で、日本医療経営学会でシンポジウムの共同座長をさせていただいたり、医療政策に関して私と接点が多い方です。

辞任の理由は、2011年度の国保料の引き下げ(昨年11月に当選した高島市長の公約)を福岡市が1月19日に協議会へ諮問し、協議会が2月1日に「適当である」と答申したこと。

協議会で反対意見を述べたのは尾形教授のみであったので、協議会としては諮問案を認める答申とせざるを得ず、尾形教授の信念に反するので辞任するしかなかったようです。

福岡市の国保医療費は増加しています。

国保の財源は、国民健康保険法に則り、税財源と保険料財源とで折半することになっています。

保険料財源は市民の保険料で賄わなければなりません。

国保医療費の増加に対しても、税と保険料とが折半して対応するのが本筋で、もし保険料を引き下げるのであれば、その分を国保加入者以外の人にも税金として過重に負担していただかなければなりません。

国保以外の保険でも多くの健康保険で保険料は引き上げられていますので、国保加入者ではない市民は自分の保険料が引き上げられると同時に国保加入者の分の保険料の一部を肩代わりした額を納税しなければなりません。

税収が比較的豊かな福岡市だから実現可能な施策かもしれませんが、同じような論理で全国の首長が国保の保険料を税金で肩代わりすることになれば、日本の健康保険制度の根幹が揺らいでしまいます。

医療経済

2011 年 2 月 21 日 月曜日

本日の午後、大分大学医学部の学生へ医療経済の講義(90分×2)を行います。
医療経済=医療(人の命を救う)+経済(お金を動かす)
なので、命を救うためのコスト負担について、正面から向き合って考える時間です。
人の命を救うためにはお金を惜しむべきではない、という論理は、国家が経済的にゆとりがあるときのみに通じる論理であり、経済的制約の中では命も制約されるのが現実です。
ある1人の患者の命を救うのに1億円かかるが、1億円あれば1000人の患者の命が救えるとき、使えるお金が1億円しかなければ、1000人の命を救って1人の命を失う選択をせざるを得ないかもしれません。
1億円の診療報酬を、1人を診療するだけで得られるのか、1000人を診療しなければ得られないのか、という経営者のモノサシでは、1人の命を救って1000人の命を失う選択をしてしまうこともあり得ます。
お金は無尽蔵に天から降ってくるものではありません。
医療にかかるお金は誰が負担しているのか、について医師の卵たちは知っておく必要があります。
それを知ることで、そのお金の使い方のルール(保険診療のルール)を遵守することの重要性がわかります。

みやま市スポーツクラブ

2011 年 1 月 6 日 木曜日

みやま市スポーツクラブ(仮称)では、スポーツの体験を通してスポーツを始めるきっかけにしてもらおうと運動教室を開催しています。

1月から2月にかけて、本学のトレーニングルームで、以下の3つのプログラムが開催されます。それぞれ全5回のコースです。

問い合わせは本学の事務局まで。

 

リフレッシュ体操(火曜19:30~20:30):1/1118252/18

ヨガ教室    (水曜19:30~20:30):1/1219262/29

高齢者運動教室 (金曜13:00~14:30):1/1421282/411

 

リフレッシュ体操は、20~50代の方が対象で藤崎道子先生(エクササイズスタジオFeel代表:九州には6人しかいない日本フィットネス協会のディレクター)による指導です。

定員20名で参加費は5回分計1000円です。

ヨガ教室( http://www.city.miyama.lg.jp/file/temp/712488.pdf )は初心者対象で、ヨガインストラクターのMakiさんによる指導です。

定員20名で参加費は5回分計2000円です。

高齢者運動教室は、「介護予防筋力アップ教室(基山町)」や「いきいき減量教室(田川郡)」等実績多数の堀田亮先生による指導です。

定員20名で参加費は5回分計1000円です。

APEC

2010 年 11 月 13 日 土曜日

2003年のAPECはタイで開催されました。
このように大きな国際会議は大都市で開催されるのが通例ですが、この年のAPECは会合の一部がタイ東北地方のコンケンという地方都市で開催されています。
私は、このコンケンに、その十年くらい前に暮らしていました。
国際協力の仕事で2年弱派遣されていたのですが、コンケンの公衆衛生の向上や交通事故死の防止活動に携わりました。
アクションリサーチ(オペレーションズリサーチ)という手法を導入したのですが、これは自分たちの活動の成果を要所要所で確認し評価しながらプロジェクト目標に近づくやり方です。
実は、日本の公衆衛生活動の現場で一般的に行われている手法でもあります。
日本では公衆衛生学会や保健師学術集会などが成果確認と評価の場です。
この手法は、現地の職員に業務統計を整理して視覚化するなど余計な仕事を与え、ワークショップのための時間も割かせることになりますが、業務に達成感を味わうことができます。
達成感があれば、人は、業務の負荷を厭わないものです。
コンケンの人たちにもアクションリサーチの手法が受け入れられ、コンケンの公衆衛生は飛躍的に、また自律的に向上してゆきました。
交通事故死の防止活動についても、数年後には、コンケンはタイで最も先進的な地域となりました。
コンケンで始まったバイクのヘルメット着用運動も全国へ広がり、やがて法制化されました。
APECのような世界のVIPが集合する国際会議は、安全が保証されない不衛生なところでは開催することができませんが、十年後のコンケンは、堂々とAPECが開催できる都市へと成長を遂げています。
自分としても、帰国後、コンケンでAPECが開催されるという報に接し、おおいに達成感を味わいました。
当時の苦労の思い出がすべて喜びに転換しました。

地方財政と医療費

2010 年 11 月 3 日 水曜日

昨日、福岡県下26市の財政主管課長会議が開催され、そこで「地方財政における医療費の意義」について講演しました。

福岡県は1人あたり医療費が高いこと、人口あたり医療施設数や医療従事者数が多いこと、しかし半数の医療圏では人口あたり医師数が全国平均より少なく医師不足感があることなどを導入に、「医療費」というお金の流れは、地域経済にとってはプラスにもマイナスにも働くので、プラスへの働きを強める政策誘導が必要であることを強調しました。

経済にプラスというのは、お金が停滞せずに地域で循環することです。

地域の外へお金が一方通行で逃げてゆくようだったら経済にマイナスです。

医療費は、医療機関へ支払われ、それが職員の給与や業者への支払いを通じて地域内を循環すれば、地域経済が活性化し、税収増や保険料増につながり、医療費の財源に還流します。

医療費の経済規模は、地方都市では市の一般会計予算規模に匹敵するので、医療は地域最大の基幹産業であるということができます。

医療費が地域内を還流するポイントは、かかりつけ医をつくること、開業時間に受診すること、病気が軽いうちに受診することです。

行政施策としては、特定健診の推進が重要な鍵を握ります。

日本医療経営学会学術総会in福岡

2010 年 10 月 5 日 火曜日

11月26日(金)・27日(土)に福岡市で第9回日本医療経営学会学術総会が開催されます。

学会長は社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院の井手義雄理事長です。

本学はじめ聖マリアグループが後援です。

日本医療経営学会は、日本の医療の歴史と文化を踏まえた医療経営学の確立を目指して活動を重ねている学術団体です。

26日は、一般演題の発表と招待特別講演です。

韓国カトリックメディカルセンター、韓国カトリック大学校医科大学ソウル聖母病院の鄭秀教(ジョンスギョ)教授による「理念の追求と地域活動」についての講演があります。

27日は、

平成22年度診療報酬改定の検証(診療報酬改定による病院機能・財務の変化、改定影響事例)報告、

国土交通省道路局高速道路課森昌文課長による「少子高齢化社会と地域」についての特別講演、

九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座尾形裕也教授による「地域再生と医療」についての基調講演、

環境省総合環境政策局環境保健部(前厚生労働省保健局医療課)佐藤敏信部長による「平成22年度診療報酬改定と今後の展望」についての特別講演、

特別講演の演者と聖マリア病院島弘志病院長、竹田総合病院竹田秀理事長、小倉リハビリテーション病院浜村明徳病院長、今村病院今村英仁理事長による「地域再生と医療機関の対応」についてのシンポジウム

が行われます。

私は一般演題で医療の地域経営に関する発表を予定しています。

死亡届(戸籍法)

2010 年 8 月 5 日 木曜日

死亡届が提出されずにいる高齢死亡者のニュースが相次いでいます。

死亡届については戸籍法が根拠法です。

死亡届は戸籍削除のための重要な手順です。

この手順が守られないと、戸籍制度に基づく数多くの法規範の根幹が揺らいでしまいます。

死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に行わなければなりません(第86条)。

死亡届には、死亡診断書あるいは死体検案書を添付しなければなりませんので、死亡の事実がないのに届け出ることはできません。

やむを得ず診断書や検案書が得られない場合は、死亡の事実を証明する書面が必要です。

なお、死亡届が受理されない限り市町村長は埋葬、火葬の許可が出せません(墓地、埋葬等に関する法律第5条)ので、死亡届出義務は、通常、遵守されています。

届出義務者は次の順です(第87条)。

第一 同居の親族

第二 その他の同居者

第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

実際は、順序にかかわらず届け出ができますし、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も届け出ができますが、誰も届け出をしないということになると、上の順に届出義務違反が問われることになります。

独居老人の場合は、家主、地主、管理人に届出義務があります。

行き倒れなど身元不明者の場合は、警察官が、死亡地の市町村長に死亡の報告をします(第92条)。

身元不明者は失踪届が出されていることもあり、失踪届と照合して身元が判明したら、戸籍から削除されます。

高齢者の失踪が長期に及んだ場合、死亡とみなして戸籍から削除する場合もあります。

「100歳以上の高齢者については、その者の所在が不明で、かつ、その生死及び所在につき調査の資料を求める事ができない場合に限り、戸籍謄本及びその附票の写しのみによって、職権消除の許可をすることができる。」(法務省民事甲第163号回答(s32.1.31) )

「戸籍の附票に住所の記載の無い90歳以上の者で生存の見込みの無いものについては、関係者から戸籍消除の申し出があった場合、監督局長の許可を得て、死亡を原因として除籍して差し支えない。」(法務省民事甲第1358号通達(s32.8.1) )

失踪にかかわらず届け出をしない場合や、戸籍削除の申し出がない場合は、戸籍上は生存していることになります。

高齢者医療制度改革会議(10)

2010 年 8 月 3 日 火曜日

中間とりまとめ(案)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(5)高齢者の患者負担

○ 高齢者の医療費の増加に伴い、公費、高齢者の保険料、現役世代の保険料はいずれも増加せざるを得ないが、高齢者の患者負担については、負担能力に応じた適切な負担にとどめることを基本とする。

○ 特に、70歳から74歳までの方の患者負担については、現在、2割負担と法定されている中で、予算措置により1割負担に凍結しているが、個々の患者の負担の増加と各保険者の負担の増加の両面に配慮しつつ、そのあり方について引き続き検討する。

○ 高額療養費については、所得再分配機能を強化する観点から、所得の高い方の限度額は引き上げ、所得の低い方の限度額は引き下げる方向で見直すべきであり、現役世代を含む高額療養費全体の見直しの中で引き続き検討する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

医療の財源は、公費と保険料と患者負担の3つしかありません。

医療費の総額が膨らめば、3つとも膨らまざるを得ませんが、どれかの増加を抑制すれば、他の財源にしわ寄せが行きます。

なお、公費財源に限りがあるのは自明ですので、公費へのしわ寄せは、消費税率を欧州の福祉国家並みにアップしない限り、現実的議論とはなりません。

患者負担を増やすか、保険料を増やすか、という二者択一であれば、リスク分散の観点から、保険料を増やしたほうがいいでしょう。

保険料の議論と患者負担の議論とは、セットで考えなければなりません。

どちらも抑える、というのでは医療の維持ができません。

高齢者医療制度改革会議(9)

2010 年 8 月 2 日 月曜日

中間とりまとめ(案)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(4)現役世代の保険料による支援

○ 高齢者の医療給付費については、公費と高齢者の保険料に加え、国民全体で支えるという社会連帯の考え方に基づき、国保・被用者保険の現役世代の保険料で支えることが必要である。

○ その際、国保と被用者保険者間は加入者数による按分となるが、被用者保険者間では、財政力の弱い保険者の負担が過重なものとならないよう、負担能力に応じた支え合いにすべきであり、その具体的な按分方法については、引き続き検討する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

高齢者の医療費を現役世代の保険料で支えることなしには高齢者の医療制度は構築できませんが、被用者保険の「負担能力」は保険者ごとにまちまちです。

これ以上負担を求めたら破綻してしまいそうなところもあります。

比較的人口構成が若い健康保険組合は医療費支出も少ないので「負担能力」が高いということになりますが、「負担能力に応じて」ということになると、若い人の保険料を大幅に引き上げることになってしまいます。

高齢者医療制度改革会議(8)

2010 年 8 月 1 日 日曜日

中間とりまとめ(案)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(3)高齢者の保険料

○ 国保に加入する75歳以上の方の保険料水準については、現行の後期高齢者医療制度より増加することのないよう、引き続き、医療給付費の1割相当を保険料で賄うこととする。

○ また、都道府県単位の財政運営とする対象年齢を65歳以上とした場合、65歳から74歳までの方にも75歳以上の方と同じ保険料率の水準を適用すべきか、現行の保険料水準を維持すべきか、引き続き検討する。

○ 前者の場合には、65歳から74歳までの方の保険料は、総額としては減少するが、個々の保険料は変化することから、あらかじめ、高齢者の保険料の変化に関する調査を行うことが必要となる。また、急激な負担増が生じないよう、緩和措置を講じることが必要となる。

○ さらに、現行制度では、現役世代の人口の減少による現役世代の保険料の増加分を高齢者と現役世代で折半し、高齢者の保険料の負担割合(後期高齢者負担率)を段階的に引き上げる仕組みになっているが、高齢者と現役世代の保険料規模は大きく異なるため、基本的に高齢者の保険料の伸びが現役世代の保険料の伸びを上回る構造となっている。このため、高齢者人口の増加と現役世代人口の減少に伴う現役世代の保険料の増加分を、高齢者と現役世代とで適切に分担する仕組みを設ける。

○ これにより、高齢者と現役世代の1人当たり医療費の伸びが同じであれば、高齢者と現役世代の保険料の伸びはほぼ均衡することとなるが、1人当たり医療費の伸びに差があった場合に、高齢者の保険料の伸びが現役世代の保険料の伸びよりも大きく乖離することとならないよう、財政安定化基金を活用して高齢者の保険料の伸びを抑制できる仕組みを設けることとし、その具体的なあり方については引き続き検討する。

○ 高齢者の保険料については、同一世帯の他の現役世代の保険料と合算し、世帯主が納付する。

○ これにより、世帯主以外の高齢者は保険料の納付義務が無くなり、こうした高齢者においては年金からの天引きは必要ないものとなるが、高齢者世帯の世帯主で希望される方は、引き続き、年金からの天引きも実施できるようにする。

○ 保険料の上限については、現在、後期高齢者医療制度は50万円(個人単位)、国保63万円(世帯単位)となっているが、国保の世帯単位の上限に一本化した上で、被用者保険の上限額(93万円;協会けんぽの本人負担分)も勘案しつつ、段階的に引き上げる。

○ 現在、75歳以上の方に適用されている低所得者の保険料軽減の特例措置(均等割の9割・8.5割軽減、所得割の5割軽減)については、後期高齢者医療制度施行時の追加的な措置として導入されたものであることや、介護保険との整合性を踏まえつつ、新たな制度の下で合理的な仕組みに改めることとし、その具体的なあり方については引き続き検討する。

○ 一方、被用者保険に加入する高齢者の保険料は、各被用者保険者の算定方法・徴収方法を適用する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

高齢者の医療費が総医療費の3分の1を占める中、高齢者の保険料は医療給付費の1割程度に抑えられています。

残りの9割は公費の投入と現役世代の保険料です。

今後、高齢者人口割合が急激に増えてゆきますが、まもなく高齢者の医療費が総医療費の半分を占める時代が訪れます。

そのような時代を迎えてもなお、高齢者の保険料負担を1割程度に抑え続けることができるのか、という議論が必要です。

高齢者に優しい社会を実現したいものですが、その社会が財政的に破綻してしまっては元も子もありません。

高齢者医療制度改革会議(7)

2010 年 7 月 31 日 土曜日

中間とりまとめ(案)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(2)公費

○ 現行の高齢者医療制度は、75歳以上の方の医療給付費に約5割の公費(平成22年度予算ベース;5.5兆円)を投入するとともに、市町村国保・協会けんぽ等が負担する後期高齢者支援金及び前期高齢者納付金等に一定割合の公費(同;2.0兆円)を投入している。

○ 公費については、高齢者や現役世代の保険料負担の増加を抑制するために、効果的な投入を図りつつ、充実させていくことが必要であり、今後の高齢化の進行等に応じた公費の投入のあり方について引き続き検討する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

医療への公費の投入についてですが、財源の目処がありません。

仮に消費税率を5%から10%に引き上げたとすれば税収は12兆円増えますが、このすべてが医療にあてがわれるはずがありません。

福祉目的税だとしても、多くは年金制度の維持に費やされるでしょうから、10兆円を超える高齢者医療費に対し、インパクトのある公費投入ができるとは思えません。

「保険料負担の増加を抑制するため」の公費投入の財源は見あたりません。

「今後の高齢化の進行等に応じた公費の投入のあり方について」検討が重ねられた結果として後期高齢者医療制度が創設された経緯があります。

高齢者医療制度改革会議(6)

2010 年 7 月 29 日 木曜日

中間とりまとめ(案)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3.費用負担
(1)支え合いの仕組みの必要性
○ 新たな仕組みの下では、高齢者も、国保や被用者保険にそれぞれ加入することとなるが、65歳以上の方については、一人当たり医療費が高く、国保・被用者保険の制度間で加入者数に大きな偏在が生じることから、引き続き、高齢者の医療費を国民全体で公平に分担する仕組みを設けることが不可欠である。
○ 高齢者が偏在して加入することに対する保険者間の調整の仕組みとしては、
① 現行の後期高齢者医療制度のように、高齢者の保険料と公費を高齢者の医療給付費に充て、これら以外の分を各保険者が現役世代の加入者数等に応じて支援する方法
② 老人保健制度や現行の前期高齢者に係る財政調整のように、充当される公費以外の分を各保険者がその加入者数等に応じて費用負担を行う方法(高齢者の保険料は、加入する各保険者にそれぞれ納められる)
③ 両者を組み合わせる方法
があるが、どのような仕組みが適切か、財政試算を明らかにしつつ、引き続き検討する。
○ また、新たな制度への移行に伴い、高齢者の保険料負担・患者負担や、市町村国保・協会けんぽ・健保組合・共済組合等の各保険者の負担が大幅に増加することのないようにする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現行制度は、高齢者の医療費の支え合いの仕組みについて、保険者間で調整に調整を重ねた末の産物として、長年の議論の末に制度設計されたものです。
高齢者のための独立した保険制度を新設して各保険者の高齢者医療支出の負担を軽減することと引き換えに、各保険者から相応の支援金を引き出すルールが定められました。
今回の案では、高齢者をそれぞれの保険者へ戻すことになっています。
支え合いの仕組みの構築は、相当の困難が予想されます。

高齢者医療制度改革会議(5)

2010 年 7 月 28 日 水曜日

中間とりまとめ(案)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(3)運営主体
○ 現行の後期高齢者医療広域連合については、①都道府県や市町村と比べ、住民から十分に認知されていない、②広域連合長は住民から直接選ばれていないので、責任が明確でない、③市町村に対する調整機能が十分に働いていない、④市町村からの派遣職員を中心に運営しており、組織としてのノウハウの承継が困難である、といった問題点が指摘されている。
○ このような中、「都道府県単位の運営主体」を具体的にどこにすべきかについては、都道府県が担うべきとする意見が多数であったが、慎重な意見もあり、今回の中間とりまとめにより明らかになる新制度の全体像を踏まえ、また、将来的な財政試算等を明らかにしつつ、引き続き検討する。
(4)財政リスクの軽減
○ 保険料の収納不足や給付の増加といった財政リスクを軽減するため、公費と保険料を財源とする財政安定化基金を設置し、安定的な運営を図ることができる仕組みとする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都道府県単位の運営については、現行制度のような「広域連合」が行うのか、都道府県みずからが行うのかについては今後の検討課題とされています。
保険料収入で支出(医療費)が賄えない場合に誰が不足分を支出するか、という現実的な問題がありますので、運営主体の決定は市町村や都道府県の財政当局にとっては重要な関心事です。
どこが運営主体となっても、財政リスクの軽減策は必須でしょう。

高齢者医療制度改革会議(4)

2010 年 7 月 27 日 火曜日

中間とりまとめ(案)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(2)運営の仕組み
○ 市町村国保を都道府県単位の財政運営とする場合においても、すべての事務が「都道府県単位の運営主体」で行われるものではない。被保険者の利便性や保険者機能の発揮といった視点から、窓口サービスや保険料の徴収、健康づくりなどの保健事業は、市町村が行うことが必要である。
○ また、現行の後期高齢者医療制度の利点の一つとして、保険料の算定方式が統一され、都道府県単位で保険料負担の公平が図られた点がある一方で、問題点の一つとして、市町村が徴収できた額を広域連合に納めるだけの仕組みとなっている点がある。
○ このため、収納率の向上が大きな課題となっている市町村国保の現役世代も含めた広域化の実現も視野に入れ、都道府県単位の保険料という考え方は維持しつつ、保険料の収納対策に市町村が積極的に取り組むことを促す仕組みに改めることが必要である。
○ 具体的には次のような仕組みとすることが適当である。
・ 「都道府県単位の運営主体」は、高齢者の給付に要する費用から、均等割と所得割の2方式で標準保険料率を算出し、それを基に、市町村ごとに「都道府県単位の運営主体」に納付すべき額を算定する。
・ これを受け、市町村は、当該市町村の収納状況等を勘案し、当該市町村における高齢者の保険料率を定める。
・ 市町村は、現役世代の被保険者の保険料率を従来どおりの方法で定める。
・ 市町村は、高齢者の保険料と同一世帯の他の現役世代の被保険者の保険料を合算し、世帯主に賦課し、世帯主から徴収する。
○ このような仕組みとすることにより、市町村は収納率を高めるほど当該市町村の被保険者の保険料を安く設定することができ、一般会計からの多額の繰入れを行っている市町村における保険料の急激な増加を回避することもできる。
○ 以上を踏まえ、市町村国保については、新たな制度においては、まずは、①「都道府県単位の運営主体」は、都道府県単位の標準保険料率の算出・会計の処理等の事務を行い、②市町村は、保険料の賦課・徴収、資格管理、保健事業等の事務を行うといった形で、分担と責任を明確にしつつ、国保を地域の総合力により共同運営する仕組みとすることが考えられるが、全年齢を対象とした都道府県単位化の実現までの段階を考慮しつつ、より具体的な設計について引き続き検討する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都道府県単位の国保運営といっても、保険料の賦課・徴収は市町村の責務とし、収納率が低ければその市町村の高齢者の保険料は高くする新制度案です。

高齢者医療制度改革会議(3)

2010 年 7 月 26 日 月曜日

中間とりまとめ(案)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2.国保の運営のあり方
(1)財政運営単位
○ 現在、75歳以上の方々が加入している後期高齢者医療制度は、都道府県単位による財政運営が行われている。
○ 新たな仕組みの下では、多くの高齢者が国保に加入することとなるが、単純に市町村国保に戻ることとなれば、多くの高齢者の保険料が増加し、保険料格差も復活する(国保から後期高齢者医療制度への移行により、約7割の世帯で保険料は減少し、格差は5倍から2倍に縮小したが、この逆のことが起きる)。また、市町村国保の財政基盤を考えれば、再び市町村国保が高齢者医療の財政運営を担うことは不適当である。
○ したがって、市町村国保の中の、少なくとも75歳以上の高齢者医療については、都道府県単位の財政運営とすることが不可欠となる。
○ この場合の都道府県単位の財政運営とする高齢者医療の対象年齢は、75歳以上とする場合と、退職年齢・年金受給開始年齢・一般的な高齢者の概念等を考慮して65歳以上とする場合が考えられるが、個々の高齢者の保険料に与える影響や個々の保険者に与える財政影響を含め、引き続き検討する。
○ なお、見直し後における市町村国保の加入者は、65歳未満2500万人、65歳以上75歳未満1100万人、75歳以上1200万人であり、高齢者医療の対象年齢を65歳以上とすれば加入者のほぼ半分、75歳以上とすれば加入者の約4分の1が都道府県単位による財政運営の対象となる。いずれにせよ、65歳又は75歳という年齢区分は、国保の財政運営の安定化を図り、高齢者の負担の増加等を生じさせないようにするための財政運営上の区分にとどまるものである。
○ また、市町村国保の財政基盤を考えると、高齢者のみならず全年齢を対象に、国保の広域化を図ることが不可欠であり、今回の法改正で導入した都道府県が策定する「広域化等支援方針」に基づき、保険料算定方式の統一や保険財政共同安定化事業の拡大など、都道府県単位の財政運営に向けた環境整備を進めた上で、全年齢を対象に都道府県単位化を図る。
○ その移行手順については、平成25年度以降のある時期までと期限を定めて全国一律に都道府県単位化すべきという意見と、合意された都道府県から順次、都道府県単位化すべきという意見があり、引き続き検討する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現行制度が設計された背景に、高齢者割合が多い市町村国保の財政負担が破綻寸前だったことがあります。
したがって、高齢者を単純に旧制度(市町村国保)に戻すという選択肢はありえません。
国保には戻すけれども、都道府県単位で財政運営する新制度の国保を設けようという案です。

高齢者医療制度改革会議(2)

2010 年 7 月 25 日 日曜日

中間とりまとめ(案)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Ⅱ 新たな制度の基本骨格
1.制度の基本的枠組み
○ 現在、地域保険としては、広域連合を保険者とする「後期高齢者医療」と、市町村を保険者とする「国保」が並立しているが、後期高齢者医療制度を廃止し、地域保険は国保に一本化する。
○ 加入する制度を年齢で区分することなく、何歳になっても、サラリーマンである高齢者の方や被扶養者は被用者保険に、これら以外の地域で生活している方は国保に、それぞれ現役世代と同じ制度に加入するものとする。
○ 高齢者も現役世代と同じ制度に加入することにより、年齢によって保険証が変わるようなことはなくなり、保険料・高額療養費等の面でもメリットが生じることとなる。
○ 具体的には、
① 現在はすべての高齢者に保険料の納付義務が課せられているが、市町村国保では世帯主が納付義務を負うこととなるため、世帯主以外の高齢者の方は保険料の納付義務がなくなる
② 現行の独立した制度では、保険料の軽減判定が国保の加入者とは別に行われ、保険料負担が増加した方は、世帯全体で軽減判定が行われることにより、負担の増加が解消される
③ 高額療養費の自己負担限度額の適用は制度ごとに行われているため、同一世帯内の高齢者と現役世代が同じ制度に加入することにより自己負担が軽減される
等のメリットが生じる。
○ また、働いている高齢者の方は、若いサラリーマンと同様に、被用者保険に加入することにより、傷病手当金等を受けることができるようになるとともに、保険料については事業主と原則折半で負担することとなり、被扶養者の保険料負担はなくなるといったメリットが生じる。
○ 新制度への移行に際して、後期高齢者医療制度から市町村国保に移行する方は特段の手続は不要であるが、被用者保険に移行する方は一定の手続が必要になることから、混乱を招かないようにするための丁寧な周知等の対応が必要である。
○ なお、国保組合については、被用者保険と同様、高齢者であっても加入要件を満たす組合員及び組合員の世帯に属する方は当該組合に加入するものとする。また、特定健保(厚生労働大臣の認可を受けて、一定の要件を満たす退職者及びその被扶養者に対する保険給付、保険料の徴収等を行う健保組合をいう。)については、加入する高齢者の保険給付に係る費用負担を含め、そのあり方を引き続き検討する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現行制度では、75歳以上の方々は皆、まったく平等に扱われています。
特定の条件を満たす方々だけをピックアップして、その方々について「メリットが生じる」ということは、高齢者間に不平等が生じるということです。
また、高齢者の保険料負担が軽減されることは高齢者にとってはメリットですが、その他の方々にとってはデメリットです。
そういう観点での制度改革の議論が必要です。

高齢者医療制度改革会議(1)

2010 年 7 月 24 日 土曜日

高齢者医療制度改革会議(厚生労働省)が昨日(7月23日)開催され、中間とりまとめ(案)が公開されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000fkxr-att/2r9852000000fkz8.pdf
以下、引用です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Ⅰ 現行制度の問題点
○ 現行の高齢者医療制度は、75 歳以上の方は、独立した都道府県単位の後期高齢者医療制度に加入し、その医療給付費を高齢者の保険料(約1 割)、現役世代からの支援金(約4 割)、公費(約5 割)により支える仕組みとなっている。また、65 歳から74 歳までの方については、これらの方の偏在に伴い保険者間で医療費の負担に不均衡が生じないよう、これを保険者間で財政調整する仕組みとなっている。
○ 現行の後期高齢者医療制度は、かつての老人保健制度が抱えていた問題点を改善し、高齢者の医療費に関する負担の明確化が図られたことや、都道府県単位の運営とすることにより財政運営の安定化と保険料負担の公平化が図られたことは、一定の利点があったと評価できる。
○ 一方、後期高齢者医療制度の最大の問題点は、家族関係や医療保険の連続性等を考慮することなく、75 歳に到達した途端に、これまでの制度から区分された独立型の制度に加入させることにあり、これが多くの国民から差別的な制度と受け止められた。また、高齢者の方々の心情に全く配慮することなく、「後期高齢者」という名称が用いられた。さらに、高齢者の医療費の増加に比例して高齢者の保険料が増加するため、将来に不安を抱かせるものともなっている。運営主体についても、市町村が共同で設立した広域連合としたことに対して、様々な問題点が指摘されている。
○ また、国民皆保険の最後の砦である国保は、市町村が運営主体であるため、小規模な市町村の国保は、保険財政が不安定になりやすく、運営の広域化を図ることが長年の課題となっている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最初の2項は「問題点」ではありません。
また、最後の4項も高齢者医療制度の問題点ではありません。
3項に記されている「問題点」の要点は、
①75歳に到達した途端に、独立型の制度に加入させることは差別的な制度である
②後期高齢者という名称は高齢者の心情への配慮がない
③高齢者の医療費の増加に比例して高齢者の保険料が増加するので将来が不安である
④市町村が共同で設立した広域連合に問題点がある
の4点です。
①は、旧制度で問題とされていた不公平を是認するか、年齢線引きを是認するか、どちらを制度として選択すべきかの問題であり、単独の絶対的な問題ではありません。
高齢者の保険料負担を公平化するためには、どこかで線引きが必要であり、線引きが不明確になった途端、負担は公平となりません。
②は、「75歳以上高齢者」をどう表現するかの問題です。
どう表現しても、一定年齢以上の方を「区別」するための名称ですので、差別的な心情をもたれる方はおられると思います。
この問題の解決策は、年齢による線引きをなくすしかありません。
③は、給付額と保険料がある程度比例するのは保険制度の必然です。
これを、給付額が増えても保険料が増えない制度にするためには、財源に占める高齢者の保険料の割合(1割)を給付額の変動に応じて変動させるような制度にする必要があります。
給付額が2倍になれば高齢者の保険料の割合が0.5割となるような制度設計をするためには、給付額に比例して保険料負担や税負担も倍になった現役世代に、さらに0.5割分の負担を上乗せしなければなりません。
④は、新制度導入による混乱に伴う問題と、広域連合という仕組み自体の問題を区別して考える必要があります。

安全な輸血医療に必要なコストはどこまで許されるか

2010 年 5 月 30 日 日曜日

名古屋国際会議場で第58回日本輸血・細胞治療学会が開催されています。

http://jstmct58.umin.jp/ )

本日は最終日ですが、午前のパネルディスカッションのパネラーとして、リスクゼロを求め(られ)ての制度設計について発表します。

制度設計には予算(財源)上の制約があります。

輸血の安全性を高めるための必要財源は輸血用血液製剤の「薬価」へ転嫁され、最終的には国民医療費に跳ね返ります。

輸血血液中のあらゆる微生物を死滅させる「不活化」技術の導入の是非が輸血医療関係者間ではホットな話題です。

輸血によるウィルス感染のリスクはほとんどゼロに近づいてきましたが、まだゼロではありません。

不活化技術導入により、数人~数十人のウィルス感染を予防することができますが、コストがかかるのが難点です。

不活化技術導入のためには、年間数十~数百億円の追加財源が必要です。

ウィルス感染を防ぐための(1人あたり)コストはどこまで許されるか、という命題についての公開討論です。