‘保健医療の地域経営’ カテゴリーのアーカイブ

医療従事者の動向(1)

2010 年 1 月 13 日 水曜日

平成11年から平成20年にかけての「患者調査」受療率の変化は、傷病ごとに傾向は異なるものの、全体では、外来受療率はほとんど横這いで、入院受療率は7%低下しています。

一般産業に置き換えると、1件あたり購買額が高い顧客層が7%も減少していることになります。

診療報酬はこの9年間、マイナス改定でしたが、この間の「医療費」(=医療機関の収入)の変化は次の通りです。(単位:兆円)

なお、「医療費」には、介護保険制度発足(平成12年4月)以前は、下記以外に老人保健施設や訪問看護ステーションへの配分(平成11年で約1兆円)も算定されていましたので、総医療費の変化(30兆円→34兆円)の分析には介護費の動向も配慮する必要があります。

 

       病 院  一般診療所  歯科診療所  保険薬局

平成11年 17.0   7.2    2.4    2.4

平成20年 18.1   8.0    2.5    5.4

 増率    6%    11%     2%    127%

 

この間、商品単価(診療報酬)が抑えられ、顧客が減少しているのに、それぞれ収入が増加しているのは、取扱商品が高級化(医療サービスの高度化)しているためです。

高級化に対応するため、従業員数を増やしてサービスの質を上げています。

医療施設従事者数の変化は次の通りです。(単位:万人)

 

      病 院  一般診療所  歯科診療所

平成11年 162    75     32

平成20年 177    70     30

 増率    9%    -7%    -5%

 

病院は収入の伸びより従事者数の伸びが大きいので収益性の悪化が窺えますが、労働環境(労働負荷)は改善しているといえるでしょう。

診療所は、従事者数を減らして収入を増やしていますが、外来受療率が横這いで診療内容が高度化しているにかかわらず従事者数が減っていますので、労働負荷は大きくなってきていると思われます。

予防か治療か(8)

2010 年 1 月 10 日 日曜日

 “「うつ百万人」陰に新薬?”

過日の読売新聞の見出しです。

記事を要約すると次の通りです。

・うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2・4倍に急増している。

・国の調査では、うつ病など気分障害の患者は、2000年代に入り急激に増えており、一概に不況だけの影響とは言えそうにない。

・抗うつ薬市場は1999年に新規抗うつ薬「SSRI」が登場してから急伸している。

・欧米でも、この薬が発売された80年代後半から90年代初めにかけ、患者の増加がみられた。

・うつ病啓発キャンペーンで精神科受診の抵抗感が減った一方、一時的な気分の落ち込みまでうつ病だと思う人が増えた。

・精神科診療所の医師に対する調査では、約8割の医師が、うつ病の診断が広がり過ぎていることに懸念を示した。

・安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。

 

SSRIの登場により、うつ病の医療は画期的に進展しました。

薬では治らないのでは、と精神科受診をためらっていた人たちに、薬で治る希望を与え精神科を受診させることができるくらいのインパクトがありました。

このように、医療の進歩がかえって受療率を引き上げることもあります。

うつ病患者の激増に対比すれば、自殺者数の増加は穏やかです。

裏返せば、自殺者数の増え方程度しか、本当はうつ病は増えていないのかもしれません。

本当にうつ病が激増しているのであれば、自殺を抑制するのに医療とりわけSSRIが大きく貢献していることになります。

医療によって自殺者数を減少に転じさせる希望(可能性)をもつことができます。

予防か治療か(7)

2010 年 1 月 9 日 土曜日

死亡に直接結びつかない病気については、死亡数や死亡率の統計では動向が読めません。

自殺に関係が深い病気に「うつ病」があります。

統計分類上は「精神及び行動の障害」のカテゴリーの中の一疾患ですが、この分類が死亡統計に表出するのはごく一部です。

しかし、患者調査による受療率で動向を把握することができます。

「精神及び行動の障害」の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  263   236   90%

 外来  123   182  148%

ふたつの大きな特徴があります。

1 入院受療率のほうが外来受療率よりもはるかに高いこと。

2 外来受療率が急増していること。

治療技術の進歩で、精神疾患の重症例は少なくなってきています。

入院受療率の低下はそのあらわれでしょう。

いわゆる「社会的入院」患者が退院して外来受療率を押し上げている側面もあるのかもしれません。

それにしても、入院と外来をあわせて人口10万対400以上ということは、250人に1人ということですので、確率的には、ある程度の規模の組織(学校、会社)にはこの疾患で悩む方がおられるということです。

中には、進歩した医療の恩恵を受けないままに病状を悪化させている人もおられるでしょう。

「予防」も「治療」も手つかずなら、予防か治療かという議論にもなりません。

予防か治療か(6)

2010 年 1 月 8 日 金曜日

糖尿病については、死亡数は18%増(平成12年比)です。

なお、糖尿病が基礎疾患であることが多い腎不全の死亡数は30%増です。

年齢調整死亡率は、男9%減、女18%減で、死亡数の傾向と乖離しています。

(腎不全は男8%減、女12%減です。)

患者調査では糖尿病の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   32    20   63%

 外来  146   147  101%

外来受療率に変化がないのは、心疾患や脳血管疾患ほどには予防効果が見られないのか、あるいは予防効果による減少に匹敵するほど健診による受療促進が進んでいるのか、どちらかでしょう。

入院受療率が心疾患や脳血管疾患より大きく低下していますので、後者のように思えますが、医療の進歩で糖尿病の多くが外来で管理可能となり、入院の必要性が小さくなってきたのかもしれません。

 

いくつかの代表的な疾患について、死亡数、年齢調整死亡率、受療率の3つの指標の動向を紹介しましたが、疾患ごとに、動向のパターンがそれぞれ異なることがわかります。

必然(高齢化)、予防、発見、治療、それぞれの因子の貢献の度合いによって作られるパターンです。

他の指標はともあれ、年齢調整死亡率が順調に低下してゆくのは一つの理想です。

そういう観点で死因順位を並び替えると、年齢調整死亡率の両年比のワースト順は次のようになります。

      男 女

老   衰 100% 113%

自   殺 99% 106%

腎 不 全 92% 88%

悪性新生物 88% 91%

肺   炎 91% 87%

心 疾 患 90% 86%

肝 疾 患 83% 91%

糖 尿 病 91% 82%

不慮の事故 73% 79%

(交通事故() 52% 50%

脳血管疾患 72% 66%

老衰が第一位であるのは救われる気がしますが、それにしても自殺が改善しないのはいただけません。

自殺死亡数は肝疾患死と糖尿病死の合計に匹敵します。

治療か予防か、という観点では、やはり予防でしょう。

予防か治療か(5)

2010 年 1 月 6 日 水曜日

肝疾患については、死亡数は1%増(平成12年比)です。

年齢調整死亡率は男17%減、女9%減です。

死亡率と年齢調整死亡率の乖離は、生活習慣病など高齢になるほど罹患しやすい病気の特徴ですが、肝疾患は年齢とともに必然的に増加する疾患というわけではありません。

高齢者の肝疾患死亡の中には、現代の知見では、若い時に肝炎ウィルス感染対策がなされてさえいれば防ぐことができたであろう死が多く含まれています。

効果的な対策がとられる以前の感染の影響で、年間およそ1万6千人が亡くなられています。

交通事故死の倍ですが、交通事故死は少し前までは肝疾患死と並んでいました。

交通事故対策に行政が本腰を入れたのと同様、この四半世紀、ウィルス肝炎対策に行政は力を注いできましたので、やがて死亡数も減少へと転じ、近い将来、再び交通事故死と並ぶことになるでしょう

患者調査では肝疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

(肝疾患+ウィルス肝炎)

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   20    11   55%

 外来  115    71   62%

ウィルス肝炎検査の推進による受療者の増加を考慮すれば、すでに半減の勢いといえるかもしれません。

予防か治療か(4)

2010 年 1 月 5 日 火曜日

死因の第三位、脳血管疾患については、死亡数は4%減(平成12年比)です。

病気による死亡は軒並み増加している中、上位疾患では脳血管疾患のみ、死亡数が減少しています。

年齢調整死亡率の低下はもっと大きく、男28%減、女34%減で、激減といえるでしょう。

患者調査では脳血管疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  172   156   91%

 外来  116    94   81%

脳血管疾患の受療率の低下は、入院も外来も、心疾患の受療率の低下と同程度です。

心疾患同様、高血圧管理が功を奏して、高血圧症が脳血管疾患にまで進行するのを喰い止めているのでしょう。

しかし、受療率の傾向が同じなのに、脳血管疾患の死亡率の低下は顕著です。

脳血管疾患については、治療技術の進歩の貢献がより大きいのかもしれません。

なお、脳血管疾患の受療には、回復後のリハビリ受療も多く含まれています。

予防(食生活改善等)が効を奏して初診受療が大きく減少し、その結果として死亡率が大きく低下した可能性も否定できません。

予防か治療か(3)

2010 年 1 月 4 日 月曜日

死因の第二位、心疾患については、死亡数は24%増(平成12年比)と激増ですが、年齢調整死亡率は男10%減、女14%減で、各年齢階層ごとの死亡率は大きく減っているようです。

患者調査では心疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   50    46   92%

 外来  130   102   78%

心疾患の入院受療率の低下は、新生物の入院受療率の低下と同程度です。

死亡数の激増に匹敵する入院需要の増加があってしかるべきところですが、逆に入院受療率が低下しているのは、新生物と同様、入院期間の短縮化が進んでいるためでしょう。

新生物の場合は入院受療率の低下以上に外来受療率が向上していましたので、(早期発見効果による)外来管理へのシフトを理由として挙げることができましたが、心疾患の場合は外来受療率が入院受療率以上に低下しています。

高血圧管理が功を奏して、高血圧症が心疾患にまで進行するのを喰い止めているのかもしれません。

高血圧性疾患の外来受療率は平成11年が514で平成20年が471、両年比は92%で心疾患ほどは低下していません。

健診の受診率が向上して高血圧症の発見が増えるにつれ、外来受療率が向上してもしかるべきですが、そうはなっていません。

健診でせっかく高血圧症が発見されても受診に結びついていないのか、高血圧症そのものが減少しているかでしょう。

喫煙や食習慣は循環器系疾患に(より短期間に)直接的な影響を与えますので、喫煙率の低下や食習慣の変化(減塩化など)が高血圧症の発病を予防しているのかもしれません。

予防か治療か(2)

2010 年 1 月 3 日 日曜日

死因の第一位、悪性新生物については、死亡数は16%増(平成12年比)、年齢調整死亡率は男12%減、女9%減でした。

患者調査では、新生物(良性新生物や診断確定前の悪性新生物も含まれる)の受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  134   125   93%

 外来  144   171  119%

悪性新生物については、最も効果ある予防手段は禁煙です。

男性の喫煙率は、平成11年の49.2%から平成20年の36.8%へと大きく低下していますが、この変化ががん予防効果として統計的に現れるのはもっと先でしょう。

男性喫煙率が急減したのは、この5年くらいのことです。

なお、女性の喫煙率は、平成11年の10.3%から平成20年の9.1%へとわずかな低下です。

悪性新生物については、早期発見が決め手です。

外来受療率の伸びは、発見率の伸びと外来管理患者の蓄積を反映しています。

入院受療率の低下は、入院期間の短縮、すなわち早期発見の効果のあらわれともいえるでしょう。

死亡率の改善に治療技術の進歩が貢献しているのは間違いないでしょうが、貢献度は早期発見のほうが大きいかもしれません。

予防か治療か(1)

2010 年 1 月 2 日 土曜日

平成12年と平成20年を比較し、この8年間で(年間死亡数は19%増加したけれども)年齢調整死亡率が男12%、女13%減少していることから、医学医療の進歩の恩恵であるとコメントしました。

しかし、仮に医学医療が進歩しなくても、人々の健康管理の実践が普及し、医療機関を受診する患者数が減少しても、死亡率は低下します。

「患者調査」で、人々の受療の実態がわかります。

患者調査は3年ごとの調査ですので、平成11年と平成20年との9年間の変化を見てみます。

人口10万対受療率の変化は次の通りです。

平成11年 平成20年  両年比

 入院  1170  1090  93%

 外来  5396  5376 100%

入院受療率の低下は、病床規制や平均在院日数の短縮など、要因が複合しています。

もう少し詳細な分析をしなければ、入院需要が減っているのかどうかは即断できません。

外来受療率については変化がありません。

人口の高齢化を考えれば、外来需要が減っていることが窺えます。

年齢別受療率は次の通りです。

入  院      外  来               

H11  H20 両年比  H11 H20 両年比

0歳 1391 1052  76%  6258 5814  93%

1~4  216  195  90%  5788 6077  105%

5~9  147  97  66%  3838 4096  107%

10~14  138  97  70%  2250 2275  101%

15~19  181  131  72%  1920 1906  99%

20~24  276  183  66%  2277 2132  94%

25~29  407  269  66%  2749 2649  96%

30~34  459  311  68%  3094 2987  97%

35~39  468  326  70%  3092 3092  100%

40~44  563  375  67%  3207 3313  103%

45~49  758  508  67%  3805 3659  96%

50~54  976  683  70%  4841 4322  89%

55~59  1262  950  75%  6074 5224  86%

60~64  1644 1209  74%  7860 6872  87%

65~69  2148 1565  73%  10709 8548  80%

70~74  2839 2202  78%  13796 11458  83%

75~79  4093 3236  79%  15009 12855  86%

80~84  5998 4583  76%  14081 12531  89%

85~89  8739 6879  79%  12488 11067  89%

90歳以上 12399 10308  83%  9594  8562  89%

どの年齢層も大幅に入院受療率が低下していることがわかります。

(どの年齢階級よりも全年齢についての受療率の変化が小さいのは、人口の年齢構成が異なるからです。)

仮に年齢調整入院受療率を算定するとすれば、年齢調整死亡率の低下よりもはるかに大きい低下となるでしょう。

外来受療率については、50歳未満ではあまり変化がありませんが、50歳以上では10%以上低下しています。

50歳以上は生活習慣病の好発年齢です。

生活習慣病の予防(健康管理)の実践が普及してきたのでしょうか。

万が一の死亡

2009 年 12 月 30 日 水曜日

人口動態統計調査では死因ごとの年間死亡数がわかります。

日本人の1万人に1人以上が1年間に死亡する死因は次の10死因です。

日本人は、むこう一年間以内に、これらの死因で死亡する可能性が「万が一」あります。

(死亡数)

 平成12年 平成20年 両年比

全 死 因   961653   1142407  119%

悪性新生物   295484   342963  116%

心 疾 患   146741   181928  124%

脳血管疾患   132529   127023   96%

肺   炎    86938   115317  133%

不慮の事故    39484    38153   97%

交通事故(再) 12857    7499   58%

老   衰    21213    35975  170%

自   殺    30251    30229  100%

腎 不 全    17260    22517  130%

肝 疾 患    16079    16268  101%

糖 尿 病    12303    14462  118%

交通事故死が激減しているのは、シートベルトの徹底など、交通安全運動の成果でしよう。

それにひきかえ、病気による死亡が減っていないのは、医学医療の進歩の恩恵が日本人に及んでいないかに思えてしまいます。

実は、そういうことではなく、死亡数の増加は人口構成の高齢化のためです。

年齢調整死亡率という、比較のために年齢補正した指標があります。

主要死因の年齢調整死亡率の推移は次の通りです。

(人口10万対年齢調整死亡率)

(男)H12 H20 両年比 (女)H12 H20 両年比

全 死 因 634.2 557.4  88%   323.9 283.0  87%

悪性新生物 214.0 188.9  88%   103.5 94.2  91%

心 疾 患 85.8 77.1  90%   48.5 41.7  86%

脳血管疾患 74.2 53.6  72%   45.7 30.3  66%

肺   炎 53.1 48.2  91%   23.3 20.3  87%

不慮の事故 33.6 24.5  73%   12.6  9.9  79%

交通事故(再)13.2  6.9  52%    4.4  2.2  50%

老   衰  6.3  6.3  100%    6.8  7.7  113%

自   殺 30.7 30.5  99%   10.7 11.3  106%

肝 疾 患 14.0 11.6  83%    4.4  4.0  91%

腎 不 全  9.2  8.5  92%    5.7  5.0  88%

糖 尿 病  7.8  7.1  91%    4.4  3.6  82%

医学医療の進歩の恩恵で、どの死因も死亡率が大きく改善していますが、老衰と自殺には恩恵は及ばないようです。

出生と死亡の国際化

2009 年 12 月 29 日 火曜日

人口動態統計調査では、日本居住の外国人の人口動態と外国居住の日本人の人口動態も調査されています。

平成20年に日本で生まれた外国人は1万4千人で出生数の1%以上となっています。

国際結婚が18組に1組であることもあわせ、日本の母子保健は国際化への対応が必要となってきています。

日本で死亡した外国人は6千人で出生数の半分以下ですので、日本居住の外国人人口は8千人の自然増ということになります。

日本人人口の自然減が外国人人口の自然増で補われる構図で、日本社会の国際化は急速に進展しています。

国別内訳(出生は母の国籍別)は次の通りです。

        出生数  死亡数

中国    3670  514

ブラジル  3463  184

韓国・朝鮮 1734 4679

フィリピン 1523  129

ペルー    768   49

米国     255  140

タイ     121   42

英国      46   19

日本との人的交流が反映する統計ですが、これらの国々は国際結婚の相手の国籍としても多い国々です。

「韓国・朝鮮」の自然減が特異的です。

日本定住の歴史の長さのあらわれかもしれません。

外国における日本人の出生数は15563人、死亡数は1596人でした。

出生数は日本における外国人の出生数相当ですが、外国で死亡する人は少なく、若い企業戦士の国際進出のあらわれでしょう。

出生と死亡

2009 年 12 月 28 日 月曜日

平成20年の人口動態統計によると、出生数は109万1千人、死亡数は114万2千人で、差し引き5万人以上、人口が自然減したことになります。

日本の歴史上、初めて死亡数が出生数を上回ったのは平成17年です。

この年を境に日本の人口は減少しています。

一人の女性が一生に産む子供の数を示す合計特殊出生率という指標は1.37で、少子化が人口減の大きな要因であることは間違いありません。

合計特殊出生率が日本より低い国として、韓国(1.26)やシンガポール(1.29)がありますが、いずれの国も、死亡の倍以上の出生がありますので人口は増加しています。

世界に人口減の国はあまりありませんが、ドイツとイタリアは人口が減少局面に転じています。

合計特殊出生率はドイツが1.33でイタリアが1.35です。

日本も、25年前の昭和59年までは、死亡の倍以上の出生がありました。

この年の合計特殊出生率は1.81でした。

福岡県の国保(3)

2009 年 12 月 22 日 火曜日

資格証明書世帯調査で無保険高校生数が多いとされた福岡県の市町村は、福岡市、北九州市、飯塚市、水巻町、太宰府市、宗像市でした。

国保の運営主体は市町村であり、滞納率も市町村ごとに異なります。

福岡県の滞納率ワースト10は次の通りでした。

     世帯数 滞納世帯数 滞納率

嘉麻市   7,812   2,402  30.7%

香春町   2,154    602  27.9%

川崎町   3,290    863  26.2%

糸田町   1,680    437  26.0%

福岡市  216,408   53,536  24.7%

うきは市  5,114   1,260  24.6%

粕屋町   4,898   1,204  24.6%

行橋市   10,394   2,528  24.3%

新宮町   2,736    660  24.1%

久留米市  45,422   9,266  20.4%

無保険高校生数が多いとされた市町村は、必ずしも滞納率が高い市町村ではないようです。

水巻町も宗像市も10%未満です。

なお、滞納率が低い市町村は次の通りです。

久山町   1,119    54   4.8%

みやま市  6,408    304   4.7%

上毛町   1,249    50   4.0%

矢部村    324    12   3.7%

星野村    579    20   3.5%

ところで、滞納世帯への資格証明書の交付率が高い市町村は次の通りです。

     世帯数 滞納世帯数 交付数 高校生数 滞納率 交付率

太宰府市 9,890    997   628   59      10.1%        63.0%

宗像市  13,029    908   565   55      7.0%        62.2%

直方市  9,312    894   487   25      9.6%        54.5%

水巻町  4,974    471   244   60      9.5%        51.8%

岡垣町  4,697    274   136   12      5.8%        49.6%

豊前市  4,374    329   130    3       7.5%        39.5%

中間市  8,049    683   238   11      8.5%        34.8%

広川町  2,839    226    76    0       8.0%        33.6%

飯塚市  20,428   3,627  1,137   62        17.8%        31.3%

北九州市161,666   22,315  6,830   249        13.8%        30.6%

宮若市  4,756    622    185    5       13.1%        29.7%

福岡市 216,408   53,536  14,334   439     24.7%        26.8%

資格証明書世帯を調査する手法ゆえに、結果として、資格証明書交付率が高い市町村で数多くの高校生がカウントされているようです。

福岡県は、人口が多い福岡市や北九州市での交付率が高かったため、全国調査の1割以上の高校生がカウントされてしまったものと思われます。

滞納率が高い市町村や他の都道府県には、資格証明書が交付されていない世帯に、相当数の高校生が無保険状態にあることが推定されます。

福岡県の国保(2)

2009 年 12 月 20 日 日曜日

福岡県の国保の滞納率が際立って高いわけではありません。

各都道府県の滞納率は調査年ごとに変動しますが、平成21年9月の資格証明書世帯調査時点では、ワースト都道府県は次の通りでした。

      世帯数 滞納世帯数 滞納率

1 東京 2,408,788  692,322  28.7%

2 宮城  350,516   82,509  23.5%

3 岡山  282,030   64,474  22.9%

4 埼玉 1,181,810  267,767  22.7%

5 三重  291,131   62,870  21.6%

6 大阪 1,499,407  320,118  21.3%

7 奈良  209,209   42,920  20.5%

8 神奈川1,432,315  290,345  20.3%

9 千葉 1,028,450  206,176  20.0%

10福島  308,749   61,856  20.0%

これらの都道府県では、4~5世帯に1世帯が滞納していることになります。

九州の各県はワースト10には入っていません。

13熊本  330,191   63,323  19.2%

15沖縄  259,922   49,164  18.9%

17福岡  771,246  131,802  17.1%

23長崎  253,251   38,675  15.3%

26佐賀  122,300   18,126  14.8%

30大分  193,759   27,809  14.4%

31鹿児島 286,232   40,843  14.3%

37宮崎  202,027   25,565  12.7%

福岡県では6世帯に1世帯が滞納です。

最も滞納率が低い県は島根県でした。

47島根  104,021   7,578   7.3%

福岡県の国保(1)

2009 年 12 月 19 日 土曜日

厚生労働省は、16日、「資格証明書世帯に属する中学生以下の子どもに対する短期被保険者証の交付状況及び資格証明書世帯に属する高校生等の人数に関する調査(平成21 9 月時点)の結果について」という記者発表を行いました。

保護者が国民健康保険の保険料を滞納して子どもが無保険状態になっている問題です。

4月に施行された改正国保法で中学生以下の子どもには救済措置が導入され、保護者が保険料を滞納していても6か月間有効の短期証が交付されることになりました。

今回、参考情報として調査された高校生世代(救済措置の対象外)について、資格証明書世帯で無保険状態の高校生世代が10647人も存在していることが判明しました。

都道府県別には、神奈川県1180人、福岡県1118人、千葉県947人がワースト3県です。

人口比で考えると、福岡県の突出が目立ちます。

(資格証明書世帯で)無保険高校生の1割以上が福岡県に集中していることになります。

資格証明書交付世帯は滞納者の一部(約1割)ですので、実際の無保険状態の高校生や中学生以下の子どもはもっとたくさんいることになりますが、その実態は不明です。

政権交代と医療(80) 患者調査(4)

2009 年 12 月 16 日 水曜日

調査日に在宅医療(往診、訪問診療など)を受けた推計外来患者数は10万人です。

内訳は、病院が1.1万人、一般診療所が6.2万人、歯科診療所が2.5万人です。

病院による在宅診療は前回調査より減っていますが、診療所では大きく伸びています。

量的にも、在宅診療の主力は診療所であるといえるでしょう。

高齢化が進み、入院病床数が抑制される中、在宅診療はしっかりと伸ばしてゆかなければなりません。

事業仕分けで、診療報酬配分を診療所から病院へとシフトさせる見直しが評決され、ほぼ既定路線となってしまいましたが、診療所から在宅診療の余力を奪ってしまうような荒療治だけは避けてほしく思います。

日本の医療は、(勤務医が疲弊している)病院だけではなく、地方の診療所も支えていることを忘れてはなりません。

患者調査(3)

2009 年 12 月 13 日 日曜日

患者調査の傷病別統計は主傷病のみについての統計ですが、患者はたった一つの病名だけで受療しているわけではありません。

代表的な病名(糖尿病、高脂血症、高血圧、虚血性心疾患、脳卒中、精神疾患など)について、副傷病もカウントして統計をとると次のようになります。

(入院)       (うち75歳以上)

精神疾患   53万人 (20万人)

高血圧    37万人 (23万人)

脳卒中    27万人 (18万人)

糖尿病    23万人 (11万人)

虚血性心疾患 15万人 (10万人)

高脂血症   11万人 ( 5万人)

(外来)

高血圧   127万人 (54万人)

高脂血症   65万人 (22万人)

糖尿病    51万人 (17万人)

精神疾患   43万人 (11万人)

虚血性心疾患 26万人 (14万人)

脳卒中    20万人 (11万人)

 

主傷病統計より精神疾患数がかなり多くなっています。

分布が高齢者に偏っていることから、認知症をかかえた高齢患者が多いのかもしれません。

高血圧の入院患者が37万人もいますが、入院患者総数は139万人ですので、入院患者の4人に1人以上は高血圧ということになります。

高血圧の外来患者は127万人です。外来患者総数は687万人ですので、外来患者の6人に1人以上が高血圧です。

糖尿病は、主傷病統計では「内分泌、栄養代謝疾患」に分類され入院患者数は下位のほうですが、副傷病もカウントすると23万人です。

入院患者の6人に1人は糖尿病ということになります。

主病名が何であれ、高血圧や糖尿病は入院に至るかなりの危険因子であるということができるでしょう。

メタボ健診でこれらの疾病をコントロールすることの重要性を裏付ける統計です。

患者調査(2)

2009 年 12 月 11 日 金曜日

傷病ごとの患者数は、多い順に次の通りです。

(入院)

1位 精神        30万人

2位 循環器系      28万人

3位 新生物       16万人

4位 損傷、中毒、外因  13万人(増加)

5位 神経系       11万人(増加)

6位 呼吸器系       8万人(増加)

7位 筋骨格系、結合組織  7万人

8位 消化器系       7万人

9位 腎尿路生殖器系    5万人(増加)

10位 内分泌、栄養代謝疾患 4万人

(外来)

1位 消化器系      125万人

2位 筋骨格系、結合組織  95万人

3位 循環器系       89万人

4位 呼吸器系       65万人

5位 内分泌、栄養代謝疾患 36万人

6位 損傷、中毒、外因   32万人(増加)

7位 歯          30万人(増加)

8位 腎尿路生殖器系    29万人(増加)

9位 眼          27万人

10位 皮膚         25万人

11位 精神         23万人(増加)

12位 新生物        22万人(増加)

 

入院の疾患順位と外来の疾患順位とは大きく異なります。

すなわち、入院診療を主体とする病院と外来診療を主体とする診療所とは、対象疾病においても機能分化することに合理性があります。

疾患の増減も、入院と外来では異なる傾向を示しています。

精神疾患や新生物の医療は入院管理から外来管理へとシフトしつつあることが読み取れます。

シートベルトやヘルメットの普及で交通事故死亡は減少しているものの、「損傷、中毒、外因」による患者数が入院、外来ともに増加傾向にあるのが気になります。

自殺企図の患者は、統計的にはここに分類されています。

患者調査(1)

2009 年 12 月 10 日 木曜日

「平成20年患者調査」結果が発表されました。

患者調査というのは、10月の特定の調査日(平日)に病院や診療所を利用した患者の実態を調査するものです。

なお、退院患者の実態については、9月中に退院した患者を調査しています。

調査結果によると、調査日に全国の医療施設で受療した推計患者数は、入院139万人(病院133万人、診療所6万人)、外来687万人(病院173万人、診療所514万人)でした。

入院患者と入院患者数相当の外来患者を病院が受け持ち、そのほかの外来患者を診療所がしっかりと受け止めている日本の医療の姿が、全国統計を鳥瞰すると見えてきます。

ごく一部の病院だけを見て日本の医療を語ることの危うさがわかります。

75歳以上の患者は、入院65万人、外来159万人です。

入院患者の半数は後期高齢者であることがわかります。

後期高齢者の入院医療の診療報酬の抑制が全国の病院経営を直撃することが頷けます。

患者調査は3年おきに実施されています。

前回調査(平成17年)と比較すると、入院患者数も外来患者数も減少しています。

患者数が減少した理由は、国民全体が健康になったからなのか、受診が抑制されたからなのかはわかりません。

年齢別に見ると、75歳以上の患者数は増えていますが、他の年齢では減少しています。

人口希薄地の医療

2009 年 11 月 26 日 木曜日

僻地医療や離島医療などの特別の条件にある地域の医療ではなく、都会から離れた、ごく普通の地方の医療について考えてみましょう。

医療統計では、人口あたり医師数だの、人口あたり病床数だのと、人口比が地域間比較で多用されています。

欧米諸国の人口あたり医師数が日本の1.5倍だというので、日本の医師数も1.5倍に増やそうという政策判断がなされたりします。

しかし、医療には地域密着性がありますので、人口希薄地では、医療機関や医師の配置は、人口あたりどれだけかというより、面積あたりどれだけかのほうが重要です。

人口1000人あたり2人の医師だと、大都会ではあちこちで医師に出会うことになりますが、人口希薄地だと、何キロも走ってやっと医師に辿り着けるかどうかといった感覚です。

欧米諸国のように広大な国土の国の人口あたり医師数と、日本のような人口密度が高い国の人口あたり医師数を比較しても説得力はありません。

ところで、診療報酬は、全国どこでも一律です。

都会であっても、田舎であっても、同じ医療行為に対しては同じ対価(診療報酬)が医療機関へ支払われます。

また、同じ医療行為を10人に対して行えば、1人に対して行った場合の10倍の対価を得ることができます。

医療機関の収益は患者数に比例しますので、患者数が多い地域ほど医療機関の経営は楽になります。

患者数は人口に比例しますので、人口が多い地域ほど経営は楽だということです。

医療の地域密着性を考えれば、人口密度が多い地域ほど経営が楽だということになりますので、現在、かなりの医療機関が都会へ集積しています。

医療機関の全国統計は、圧倒的多数の都会の医療機関の実態を反映した統計になりがちです。

そのような統計を根拠に診療報酬が上げ下げされれば、人口希薄地の医療機関は大打撃を受けることになってしまいます。

都会のモノサシを田舎にあてるようなことがあってはなりません。

田舎には田舎のモノサシをあてがわないと、地域医療は崩壊してしまいます。

救急医療

2009 年 11 月 25 日 水曜日

昨日記載の論点を整理してみます。

医療は、重症医療(あるいは急性期医療)とそうでない医療(軽症医療あるいは療養医療)とに大別することができます。

重症医療は病状の変化も大きいので、人員配置を厚くする必要があります。

また、医療を、時間内診療と時間外診療とに大別することもできます。

時間外であろうと時間内であろうと、診療体制を整えるためには、人員配置を厚くする必要があります。

これらの組み合わせで、医療には次の4つのパターンがあります。

     重症患者の時間内診療

     重症患者の時間外診療

     軽症患者の時間内診療

     軽症患者の時間外診療

もっぱら軽症患者の入院医療を担う医療機関については、人員配置が薄くてすむことを根拠に、診療報酬がかなり抑制されています。

軽症患者は病状が比較的安定しているので時間外の人員配置をさらに薄くすることができ、そうすることでかろうじて経営が維持されています。

それらの医療機関では時間外の外来診療ができなくなってきています。

結果、重症患者の時間外診療を担う医療機関が(圧倒的多数の)軽症患者の時間外診療を引き受けざるを得ない状況になっています。

軽症患者の時間外診療を、軽症患者の医療を担う機関に受け持ってもらえるような診療報酬体系が実現できれば、救急医療の問題の多くが解消できるはずです。

政権交代と医療(1)

2009 年 8 月 31 日 月曜日

政権が交代することになりました。

今日、8月31日は各省庁から財務省への平成22年度予算概算要求の締切日です。

現大臣が要求しますので、政権交代を前提としたものではありません。

概算要求は6月23日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」等を踏まえて7月1日に閣議了解された「平成22年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」に基づいて行われます。

現政権の閣議で決められたもので、政権交代は想定されていません。

年金・医療等の経費についての概算要求基準は「高齢化等に伴う自然増1兆900億円を認め」「無理のない範囲で節約に努め、節約できた分は社会保障に充当する」というものでした。

次に予定される政権政党のマニフェストは、社会保障への多大な税金投入を前提としていますので、1兆円程度の増額要求では到底足りません。

概算要求に対し、今後、財務省による査定作業が始まります。

査定は、新政権の財務大臣の指揮下で行われます。

マニフェストを実現するためには、厚生労働省予算については概算要求額を上回る査定増が必要となります。

すべての省庁について査定増をするわけにはいきません。

歳出予算は歳入(財源)の範囲内でしか組み立てられないからです。

公共事業を預かる省庁の予算が大幅に削られるかもしれません。

景気が後退すると保険料が伸び悩みますので、医療には打撃です。

産業としての医療

2009 年 8 月 13 日 木曜日

医療がどうなってゆくのかは、日本経済の将来にとっても重大関心事です。

社団法人経済同友会は医療制度改革委員会を設け、6月に中間報告を発表しました。

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2009/090626a.html

厚生労働省が設ける委員会と異なり、報告書の行政拘束力はありません。

また、委員も委員長(髙須武男:バンダイナムコホールディングス取締役会長)はじめ医師や医療関係者ではない人たちが主たる構成メンバーです。

報告書は次のような章立てとなっています。

 

地域を主体とする医療制度を目指して

~地域医療から考える抜本的改革への処方箋~

はじめに

I. 医療制度の課題

II. 目指すべき地域医療の姿

III.地域医療における改革の方向性(医療サービスの提供体制について)

IV. 地域医療における改革の方向性(産業としての医療の発展について)

V. 地域医療における改革の方向性(診療報酬、医療保険制度について)

おわりに(最終提言に向けての課題)

 

厚生労働省の諮問委員会の報告書と異なり専門用語が少なく、読みやすくわかりやすい文章です。

しかし、読みやすさ、わかりやすさと内容の妥当性とは別問題です。

医療を「社会保障」としてとらえるか「産業」としてとらえるかは、実はそう簡単に割り切れる問題ではありません。

「社会保障」の切り口で論じると、どうしてもわかりにくくなってしまいます。

「産業」の切り口だと、身近な商行為を演繹できるので、わかりやすくなります。

 

この報告書は、ポイントもよく押さえられており、何より非医療関係者の視点で整理されていますので、この報告書を叩き台として地域医療を考えることは意義が大きいと思います。

国が消える?

2009 年 8 月 12 日 水曜日

病院という地域の人々が命を預ける施設でさえ、赤字が続けば消えてゆきます。

私たちが生活を預けている日本という国も、ずっと赤字続きです。

国債や借入金などを合計した「国の借金」は6月末時点で860兆円です。

3月末からの3か月間で14兆円も増えています。

国民1人当たり約674万円で、3月末からの3か月間で10万円増えました。

こんなことで、この国は大丈夫なのでしょうか?

金額的に大きすぎるのはともかくとして「国の借金」は、病院や個人の借金ほど深刻にとらえられていません。

日本国民からの借金であれば、それは、自分の稼ぎを自由に使っている家族から家計維持のための借金をするようなもので、多額な借金が可能ということは、それだけ家族の稼ぎがいいということです。

海外からの借金であれば、貸し倒れにはならないとの信用あればこそ貸してくれるわけで、国が消えそうな状態ではないことの証明ともいえます。

怖いのは、家族(日本国民)にお金を貸すだけの余裕がなくなった時です。

借金を膨らし続けることで運転してきた経済が、途端に借金返済に追われる経済に転換します。

そのような国への貸付はリスクが大きいので、海外からの借金も難しくなります。

 

家族(日本国民)の稼ぎぶりについては、国際収支に覗うことができます。

平成21年上半期の国際収支は、貿易・サービス収支では4024億円の赤字でした。

貿易収支は黒字ですが、サービス(旅行・輸送など)収支は赤字です。

貿易収支は、昨年来、黒字幅が大きく縮小し、赤字転落寸前です。

所得収支(証券投資収益など)は6兆7648億円の黒字でした。

貿易の落ち込みをマネーゲームで補っている構図ですが、黒字幅は大きく縮小しています。

資本収支(投資収支など)は7兆7711億円の流出超でした。

資産を削って家計を維持している状況です。

社会保障の維持に必要なお金の借り入れを今後も続けていけるのでしょうか?

借金に依存しなくてすむような体制への変換を急がなければなりません。

病院が消える(2)

2009 年 8 月 11 日 火曜日

新たに開設される病院も、毎年百件近くあります。

医療施設調査での病院数の増減は、開設病院数と廃止病院数との差ですので、実際は年に百八十件近くの病院が廃院に追い込まれていることになります。

開設者別の廃止・休止病院数は次の通りです。

 

   (平成19年)(前年から1年間の)

     病院数   廃止数 休止数

医療法人 5702   92  10

個人    533   33   2

その他  2627   50   4

 

個人病院は、1年の間で、十数病院にひとつが廃院しています。

小規模病院が厳しい状況にあることは、病床規模別の病院数の増減の統計からも覗えます。

 

          平成18年 平成19年  増 減

20~ 99床  3482  3391   -91

100~199床  2709  2725    16

200~399床  1911  1913     2

400床以上     841   833    -8

 

※ 200~399床の病院が100~199床に病床数を変更した件数が24件(その逆は8件)、400床以上の病院が200~399床に変更した件数が12件(その逆は2件)あります。病床規模が大きい病院の数のマイナスは必ずしも廃院を意味しません。

病院が消える(1)

2009 年 8 月 10 日 月曜日

病院収入の伸び率が支出の伸び率を下回る状況が長年蓄積すると、いつか単年度収支が赤字となってしまいます。

赤字の状態が長年続くと、やがて資産をすべて食い尽くし、運転資金がショートしてしまいます。

新たな投資によって現状を打破できる見込みがあれば、資金を借り入れることができますが、全国的に病院経営に暗雲が漂っている中、資金を貸す側は慎重にならざるを得ません。

経営陣が頼りない病院への貸付はリスクが大きいので、銀行は貸し渋ります。

当然のことです。

経営陣を強化することで経営が改善しそうな病院であれば、銀行による経営介入を全面的に受け入れることを条件に当座の資金を借り入れることができたりもしていますが、実情は、銀行側も医療経営に明るいわけではありませんので、銀行が経営介入したからといって事態が改善するわけではありません。

どこからも運転資金を借り入れることができなかった病院は、従業員へ給与を払うことすらできません。

これが病院倒産です。

病院がひとつ消えることになります。

病院がなくなることは、地方の一大事です。

「医療施設調査」によると、平成19年10月1日現在の全国の「一般病院」数は7785施設でした。前年調査時より85施設減少しています。

すべてが倒産というわけではないでしょうが、地方の一大事が毎週どこかで数件起きている計算です。

一般病院数は平成2年以降、減り続けています。

平成2年は9022施設でしたので、この十数年で少なくとも千以上の病院が消えたことになります。

医療費の動向(12)

2009 年 8 月 9 日 日曜日

病院の1施設あたりの医療費(収入)の伸びは、病院規模や年度によってばらつきがあるものの、近年は、平均して対前年度比1.6%といったところです。

病院の(常勤換算)従事者数の伸びはどうでしょうか。

平成20年の統計はまだ発表されていませんが、医療施設調査によれば、平成19年は対前年比1.7%、平成18年は対前年比2.0%の伸びでした。

医療費の伸びより従事者数の伸びのほうが大きいので、単純に考えれば、病院の支出構造のうち人件費の占める割合が大きくなってきているということになります。

さもなくば、実質的な賃金カットが数年にわたって行われているはずです。

従事者数の伸びの主な要素は看護師数です。

看護師養成施設が増え、採用も増えています。

近年は大学病院など大病院が好条件で看護師を採用する傾向が強かったようです。

大病院では、医療費(収入)の伸びが大きかったとはいえ、人件費の伸びも大きかったと思われます。

中小病院も、大病院へ看護師を奪われないために、看護師の待遇は落とせません。

人件費の伸びを医療費の伸び程度に抑えるため、看護師以外の職種へのしわ寄せ(給与抑制あるいは労務強化)が年々蓄積しているであろうことが予想されます。

医療崩壊の引き金に指がかかっています。

消費税率の引き上げや診療報酬のマイナス改定など、全国的な医療収支悪化の大波が訪れた途端、あちこちで破綻が相次ぐことになるでしょう。

根源的な解決策を模索しなければなりません。

医療費の動向(11)

2009 年 8 月 8 日 土曜日

1施設あたりの入院医療費を見てみましょう。

入院医療費は1病院あたり約15億円で、病院収入の4分の3は入院医療費に依存しています。

平成20年度の病院あたり入院医療費の対前年度伸び率は2.9%でした。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     3.1%

  公的     2.8%

  法人     2.6%

  個人    -1.0%

伸び率がいちばん大きいとはいえ、大学病院のみが、前回示した施設全体の伸び率を入院医療費の伸び率が下回っています。

1施設あたりの入院外医療費(外来医療費)の伸び率はどうなっているでしょうか。

平成20年度の病院あたり入院外医療費の対前年度伸び率は0.9%でした。

医科診療所の伸び率(0.2%)を上回っています。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     5.1%

  公的     0.7%

  法人     0.2%

  個人    -2.8%

外来患者が大病院に集中して本来の専門的医療提供機能が損なわれることがないように、との意図で政策的に診療機能の役割分担が推進されているところですが、むしろ大病院へ外来需要が集中してきているようです。

個人病院では、外来収入も大きく落ち込み、入院収入も落ち込んでいます。

小規模病院は相当に厳しい状況に陥っているようです。

医療費の動向(10)

2009 年 8 月 7 日 金曜日

1施設当たり医療費という指標があります。

医療施設の立場では、施設あたりの収入ということになります。

平成20年度の統計では、病院は、1施設あたり20億3835万円です。

病院といっても規模は様々で、病床数が多い大学病院だと平均して約130億円となっています。

小規模施設が多い個人病院だと平均6億円強です。

医科診療所は、1施設あたり9443万円です。

保険薬局は1施設あたり1億1085万円です。

平成16年以降、診療所と保険薬局とは経営規模が逆転しています。

経営の観点では、施設ごとの伸び率が気になります。

 

対前年度比の伸び率は次の通りです。

病  院     2.3%

  大学     3.7%

  公的     2.2%

  法人     2.0%

  個人    -1.5%

医科診療所    0.2%

歯科診療所    2.3%

保険薬局     3.0%

 

単年度だけでは伸び率に上下があります。

過去8年間の対前年度比伸び率の平均は次の通りです。

病  院     1.6%

  大学     2.5%

  公的     1.0%

  法人     1.2%

  個人     0.9%

医科診療所    0.2%

歯科診療所   -0.8%

保険薬局     5.4%

 

歯科診療所は単年度では伸びているとはいえ、傾向としてはマイナス基調です。

保険薬局は安定して伸びています。

大学病院も着実に伸びていますが、人件費その他の経費の伸びをカバーできるだけの伸びであるかは厳しいところです。

そのほかの施設では従業員のベースアップ分すらカバーできないような所が多かろうことが類推されます。

このような状態が、破綻せずに向こう何年も続くとは到底思えません。

医療費の動向(9)

2009 年 8 月 6 日 木曜日

前回、協会けんぽの平成20年度決算(10月から半年間)の赤字が326億円と書きましたが、協会けんぽ発足前の旧政府管掌健康保険の平成20年度決算(4月から9月まで)も発表されましたので、通年の赤字が明らかになりました。

通年では2538億円の赤字です。

前年度の赤字(1352億円)が倍増しています。

この健康保険には、中小企業の従業員や家族の約3500万人が加入しています。

従業員1人あたりおよそ1万円の赤字ということになるのでしょうか。

協会けんぽの健康保険は、国民健康保険と並び、我が国の医療の財源を決定づける大きな要素ですので無関心であってはなりません。

年度途中で健康保険の運営形態が代わったこと、そのため決算報告も分断されて全貌がつかみにくくなったこと、そして何より、国民のほとんどがそのことを知らないか無関心であること、そのあたりに我が国の医療が抱える問題の本質が見え隠れしています。

医療の当事者は患者です。

そして、患者になる可能性がある全国民です。

病院の「赤字」、健康保険の「赤字」・・・このような赤字を放置したままでは医療が健全に発展するはずがないのは自明のことです。

医療の「赤字」をどうすれば解消できるのか、全国民が主体的に考えるべきときでしょう。