‘保健医療の地域経営’ カテゴリーのアーカイブ

新型インフルエンザワクチン(2)

2010 年 2 月 12 日 金曜日

安全上、気になることが詳しくQ&Aに掲載されています。

 

Q 輸入ワクチンと国内産ワクチンは何が異なるのですか?

A 海外で製造されたワクチンについては、以下の点などで国内産ワクチンとは異なっています。

国内での使用経験・実績(臨床試験を除く)がなかったこと

国内では使用経験のないアジュバント(免疫補助剤)が使用されていること

国内では使用経験のない細胞を用いた細胞培養による製造法(細胞培養)が用いられているものがあること(ノバルティス社製ワクチン)

投与経路が筋肉内(国内産は皮下)であること

製品によって、用法・用量が異なること

妊婦には接種しないことが望ましいこと

他のワクチンとは同時に接種しないことが望ましいこと

 

Q 新型インフルエンザワクチンを接種しても、おなかの子どもへの影響はないのですか?授乳中でも問題はありませんか?

A ※国内産ワクチンと輸入ワクチンで異なります。

【国内産ワクチンについて】

現在までのところ、妊娠中にインフルエンザワクチンの接種を受けたことにより流産や先天異常の発生頻度が高くなったという報告はありません。

なお、新型インフルエンザワクチンの複数回接種用のバイアル製剤(小瓶に注射液が充てんされている製剤)には季節性インフルエンザ用の製剤と同様にチメロサール等の保存剤が使用されています。今回の新型インフルエンザワクチンでは、プレフィルドシリンジ製剤(あらかじめ注射器に注射液が充てんされている製剤)には保存剤の添加は行われておらず、保存剤の添加されていないワクチン接種を希望する妊婦さんは、プレフィルドシリンジ製剤が使用できることとしています。

また、授乳期間中でも、インフルエンザワクチンを接種して支障はありません。

インフルエンザワクチンには、病原性をなくしたウイルスの成分を用いており、接種後にウイルスが体内で増えることはありません。ですから、母乳を介してお子さんに影響を与えることはありません。

【輸入ワクチンについて】

輸入ワクチンは、妊娠されている方や授乳中の方には、接種しないことが望ましいとされています。

 

Q インフルエンザワクチンにはチメロサールという添加剤が含まれているとのことですが、安全ですか? チメロサールが入っていないものはないのですか?

A 新型インフルエンザワクチン(輸入ワクチンを含む)の複数回接種用のバイアル製剤(小瓶に注射液が充てんされている製剤)には、季節性インフルエンザ用の製剤と同様、チメロサールなどの保存剤が使用されています。

チメロサールは殺菌作用のある水銀化合物で、ワクチンには防腐剤として入れられます。

過去において、海外で、このチメロサールと発達障害との関連が指摘されました。しかし、最近の疫学研究では、その関連はないとされています。

ただし、予防的な対応が大切であるとして、各国ともワクチンから除去・減量の努力を行っています。

今回の新型インフルエンザワクチンでは、チメロサールの使われているものと使われていないものがあります。プレフィルドシリンジ製剤(あらかじめ注射器に注射液が充てんされている製剤)では使われていません。この製剤は主に産婦人科を対象として配分されていますから、こちらの製剤による接種をお望みの妊婦さんは、かかりつけ医に依頼してください。

 

Q 海外ワクチンの1つには、海外のウシに由来する原材料が使われていると聞きました。狂牛病(BSE)など、安全性に問題はないのですか?

A GSK社製ワクチンについては、その製造過程で、わが国の基準で使用が認められていない原産国のウシの胆汁から作られた物質を用いています。そのため、理論上完全には伝達性海綿状脳症注(TSEBSEもこの一種です)のリスクを排除することはできませんが、ヨーロッパの基準に準拠しており、また厳しい製造条件で製造していることにより、そのリスクは極めて低いと考えられます。

新型インフルエンザワクチン(1)

2010 年 2 月 11 日 木曜日

厚生労働省ホームページの「新型インフルエンザワクチンQ&A」が更新されました。

膨大な数のQ&Aです。

いくつかピックアップして紹介します。

 

Q 今回の新型インフルエンザワクチン接種事業の目的は何ですか?

A 今回の新型インフルエンザウイルスは、感染力は強いのですが、多くの感染者はかかっても軽症のまま回復しています。また、タミフル等の治療薬も有効です。

ただし、国民の大多数に免疫がなく、感染が拡大する可能性があることや、糖尿病やぜん息などの基礎疾患がある方や妊婦さんなどが重症化する可能性が高いことが懸念されていました。また、健康な成人の方の中でも重症化する方や死亡される例は見られています。

今回の新型インフルエンザワクチンの接種は、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこととともに、こうした患者さんが集中発生して医療機関が混乱することを防ぐことを目的としています。

 

Q 流行のピークが過ぎたあとに、ワクチンを打つ意味はありますか?

A 新型インフルエンザの患者数は、全国的には減少傾向ですが、まだ全国で1週間に約35万人が新しく新型インフルエンザにかかっていると推計され、油断はできません。

また、過去のパンデミックインフルエンザの経験では、一度流行が終息した後にも再流行することがあり、今回の新型インフルエンザにおいても今後再流行が起こる可能性があります。そのため、新型インフルエンザワクチンを接種することにより、今後起こりうる再流行に備えることができます。

ただし、インフルエンザウイルスが変異することにより、今回の新型インフルエンザワクチンを接種しても期待する効果が得られなくなることがありえます。

 

Q ワクチンはいつ、どこで接種できますか?

A 新型インフルエンザワクチンは、それぞれの接種対象者ごとに各都道府県が設定した時期から接種を受けることができます。2月上旬には全ての都道府県で、すべての方が接種可能となりました。

接種を受けることができる医療機関については、市町村のホームページや広報資料などをご覧下さい。

 

Q ワクチン接種の費用はいくらですか?

A 今回の新型インフルエンザワクチンの接種費用については、接種を受ける方に実費をご負担いただくこととしております。1回目の接種は3600円、2回目の接種は2550円(ただし、2回目の接種を異なる医療機関で受けた場合は、基本的な健康状態等の確認が再度必要となるため、3600円)です。輸入ワクチンも国内産ワクチンも、1回あたりの接種費用は同じです。

ただし、所得の少ない世帯の方などについては、費用負担の減免措置注)が市町村によって行われます。

注:市町村民税非課税世帯の方のご負担を軽減できる財源(1歳~13歳未満の方は6,150円、その他の年齢の方は3,600円(基礎疾患を有する方のうちの一部の方は6,150円)に相当する額)が確保されていますが、具体的な費用負担額軽減措置の内容については、各市町村で異なっていますので、お住まいの市町村におたずねください。

 

Q 今回の新型インフルエンザワクチンは日本国内でどれくらい確保できているのですか?

A 今回の新型インフルエンザワクチンについては、国内産ワクチンは、平成211019日の週から順次、接種を開始しており、平成21年度内に5,400万回分確保できる予定です。

また、海外企業から9,900万回分程度を確保できる見込みです。

注)回数は成人量換算

 

Q 1歳未満の子どもは接種できないのですか?

A 国内産ワクチンについては、1歳未満のお子様は、予防接種によって免疫をつけることが難しいため、お子様本人は優先的に接種する対象者(優先接種対象者等)に含めず、その保護者を優先的に接種することとしています。

今回の新型インフルエンザワクチンの接種を受けるか否かについては、個人の意思が尊重されるものですが、1歳未満のお子様本人への接種は、免疫をつけることが難しいため推奨されません。ただし、優先接種対象者等以外の方々への接種が開始されるに当たって、保護者の方が、有益性とリスクを十分に考慮した上で、強く希望する場合は、接種を行うことを妨げるものではありません。

輸入ワクチンについては、1歳未満の方に限らず子どもへの接種を保護者の方が希望される場合には、その有益性と危険性、国内産ワクチンとの違いについて医師と十分相談をしていただき、慎重に判断していただくこととしています。

海外滞在経験者の献血

2010 年 2 月 9 日 火曜日

献血制限は1980年から1996年の間の英国滞在歴だけではありません。

(1) 英国に昭和55年(1980年)から平成8年(1996年)までに通算1か月(31日)以上の滞在歴のある方。

(2) 英国に平成9年(1997年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(3)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)

(3) アイルランド、イタリア、オランダ、サウジアラビア、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、ポルトガルに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算6か月以上の滞在(居住)歴のある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(4)の滞在(居住)歴も含みます。)

(4) スイスに、昭和55年(1980年)から今日までに通算6か月以上の滞在(居住)歴がある方。(通算6か月の計算には(1)(2)(3)の滞在(居住)歴も含みます。)

(5) オーストリア、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ルクセンブルグに、昭和55年(1980年)から平成16年(2004年)までに通算5年以上の滞在(居住)歴のある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(6)の滞在(居住)歴も含みます。)

(6) アイスランド、アルバニア、アンドラ、クロアチア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、バチカン、ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、マルタ、モナコ、モンテネグロ、ノルウェー、リヒテンシュタイン、ルーマニアに昭和55年(1980年)から今日までに通算5年以上の滞在(居住)歴がある方。(通算5年の計算には(1)(2)(3)(4)(5)の滞在(居住)歴も含みます。)

○どこの国からであれ、帰国日(入国日)当日から4週間以内の方

○マラリア流行地を旅行したことのある方(帰国後1年間)

○マラリア流行地に居住したことがある方(帰国後3年間)

私自身は、海外に通算3年近い滞在経験がありますが、上述の国々の中ではサウジアラビアが最長で1週間程度です。

サウジアラビアは今回の改正時に追加されました。

なお、「海外で医療行為、研究などで患者等と接する機会があったり、野外調査研究に従事する機会があった場合にも献血をご遠慮いただく場合があります」というルールがありますので、開発途上国援助に携わった経験がある人は、献血制限される可能性があります。

血液を通じた感染リスクのある病気は途上国に数多くあります。

インフルエンザも血液を通じた感染リスクがあります。

英国旅行経験者の献血

2010 年 2 月 8 日 月曜日

先日(1月26日)まで、1980年から1996年までの間に英国に1日(1泊)でも滞在したことがある人は献血ができませんでしたが、制限が緩和されました。

この期間中の英国滞在が通算1か月未満であれば献血ができます。

そもそもこの制限は、2005年2月に我が国第1例として確認された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の方が1990年に24日程度の英国滞在歴を有していたことから、実施されていたものです。

病原物質(異常プリオン蛋白)混入の可能性が大きい肉骨粉が英国で使用され始めた時期が1980年で、英国での牛の危険部位の流通規制が徹底されたのが1996年です。

1980年から1996年までの英国は、それ以外の時期、国よりも感染リスクが高いといえます。

我が国の献血制限は世界でもっとも厳しいのですが、それは血液製剤によるHIV感染の経験を行政が重く受け止めている証左でもあります。

それにしても、1日でも英国に滞在していたら牛の危険部位を口にした可能性があるので献血ができない、というのは厳しすぎる制限かもしれません。

献血希望者のうち約4%が、かつての英国旅行を理由に門前払いされています。

感染リスクがある献血者の排除は重要ですが、一方、献血者の確保も重要です。

毎年冬には血液の供給量が厳しくなります。

血液の供給が途絶えると、命を失う人が生じます。

今冬は新型インフルエンザの流行と相まって、血液の安定供給に支障が生じる恐れが例年以上に高くなったことが、献血制限の見直しの背景にあります。

リスクが完全にゼロであるとは言い切れないなかでの制限緩和です。

行政的には厳しい決断であったろうと慮ります。

国保の財政状況

2010 年 2 月 6 日 土曜日

平成20年度国民健康保険(市町村)の財政状況の速報値が発表されました。

それによると、市町村一般会計からの赤字補填分(2,585億円)を除いた実質的な収支で、2,384億円の赤字でした。

単年度収支差での赤字保険者(市町村)は1788保険者中812保険者で45%です。

保険料の収納率は88.35%に低下し、国民皆保険となった昭和36年度以降最低となっています。

収納率低下の要因は、収納率の高い75歳以上の者が市町村国保から後期高齢者医療制度へ移行した制度上の理由もありますが、景気悪化などの影響もあると考えられます。

市町村国保の全世帯に占める滞納世帯の割合は20.8%でした。

5世帯に1世帯が滞納しています。

九州各県の収納率と滞納世帯率は次の通りです。

収納率(%) 滞納世帯率(%)

福岡県  90.11  18.0

佐賀県  91.84  16.4

長崎県  91.10  18.9

熊本県  89.80  22.3

大分県  89.40  19.0

宮崎県  90.80  23.2

鹿児島県 90.22  17.0

沖縄県  91.27  19.7

全 国  88.35  20.8

後期高齢者医療制度と汚職

2010 年 2 月 5 日 金曜日

後期高齢者医療制度の運用をめぐって、福岡県前副知事が収賄容疑で、県町村会長が贈賄容疑で逮捕されました。

県内全市町村でつくる「県後期高齢者医療広域連合」設立の際、県町村会側に便宜を図った謝礼などとして現金100万円が授受された疑いです。

後期高齢者医療広域連合は、後期高齢者医療制度の開始に際し、全市町村が加入して都道府県ごとに設けられた特別地方公共団体です。

広域連合の意志決定機構は「議会」です。

議会が歳入歳出予算を議決します。

福岡県では、広域連合の設立準備委員会で、議員定数を少なくするよう求める市長会側と町村会側が対立しましたが、全町村からの議員参加を求めていた町村会側の意向が通り、議員定数は77人になっています。

設立時の議員定数は、福岡が最多で、次いで千葉56人、岐阜49人、兵庫41人の順です。

議員定数20~30人の自治体が大半で、福岡の多さは突出しています。

ところで、町村からの議員が多いと、町村にどういうメリットがあり、広域連合にどういうデメリットがあるのでしょうか。

議員には議員報酬がありますが、福岡県の広域連合一般会計予算(21年度)では議員報酬も含めた議会費は総額252万円にすぎません。

一般会計上大きな予算は市町村事務費負担金です。

その総額は3億8千万円(21年度)ですが、全市町村均等割や高齢者人口割だと町村の負担金が大きくなり、人口割だと都市の負担金が大きくなります。

町村からの議員が多ければ、町村の負担金が大きくなるような意思決定は退けられがちですので、市町村事務費負担金の出費を数千万円少なく誘導することが可能かもしれません。

なお、福岡県後期高齢者医療広域連合の特別会計の予算規模は5615億円です。

地方公共団体としては桁違いに大きな額に影響力がある議会です。

NPとPA

2010 年 1 月 31 日 日曜日

昨日と本日、聖マリア医学会研究会が開催されています。

昨日は「ナース・プラクティショナーの現状と課題」のシンポジウムが開かれました。

欧米では、医行為の一部を行うことができるNP(ナース・プラクティショナー)やPA(フィジシャン・アシスタント)という職種が医療現場へ配置されています。

日本では、医師法により、医行為は医師に責任と権限が集中しています。

医行為といっても、高度なもの(画像診断、遺伝子治療、再生医療など)もあればそうでないもの(血圧判定、約束処方、傷の手当てなど)もあります。

たとえ軽微な医行為であれ、医師以外はこれらを主体的に行ってはなりません。

結果として、あらゆる医行為の場面において、医師の配置が求められます。

たとえば日本の外科手術室では、執刀医以外に何人も外科医師がいて、執刀医を補佐しています。

欧米ではPAが代替していることを、日本では医師が行っています。

健診や予防接種や献血などの公衆衛生活動の場面でも医師の配置が求められます。

欧米ではNPが代替していることを、日本では医師が行っています。

医師配置の限界が公衆衛生活動の限界となったりします。

「医師不足」が叫ばれるのも当然かもしれません。

医行為の責任が医師に集約されていることの意義を無碍には否定できませんが、医師不足対策の決め手は医師を増やすことであるというような発想に囚われず、NPやPAについての議論を深めることは重要でしょう。

死亡退院

2010 年 1 月 30 日 土曜日

死亡数が毎年2万人増えてゆくということは、医療機関の「死亡退院」が増えてゆくということです。

退院にはいろんな形態がありますが、代表的な退院形態は「治癒退院」「軽快退院」「死亡退院」です。

医学の進歩やクリティカルパスの普及により、「治癒退院」あるいは「軽快退院」に至るまでの平均在院日数を短くすることができます。

人口構造の高齢化に伴い患者の絶対数が増えているにかかわらず病床数が抑制できているのは、平均在院日数が短縮化されてきているからです。

診療報酬上、在院日数が短いほど医療機関の収益性が向上するように政策誘導されるようになって久しく、医療機関にとって、「治癒退院」「軽快退院」へのパスが期待される患者は、在院日数を短くできる余地があるので大歓迎です。

ところが、「死亡退院」が運命づけられている患者については、進歩した医療を適用すればするほど在院日数が長くなります。

意図的に在院日数を短くすることは許されません。

1995年は総病床数193万床に対し、死亡数は92万人。

2008年は総病床数176万床に対し、死亡数は114万人。

死亡数は15年後には150万人を突破します。

在院日数短縮の政策誘導と、死亡退院の増加とが相容れなくなる時代がすぐそこへと迫っています。

死亡数の動向

2010 年 1 月 29 日 金曜日

人口構成の高齢化の加速で当然のことではありますが、死亡数が急増しています。

年  死亡数(千人)

1975      702

1985      752

1995      922

2005    1,084

近年の増加は顕著です。

過去10年で2割増です。

この間、病床数の増加は抑制されていますが、死亡者の多くは医療機関の病床で亡くなられています。

国立社会保障・人口問題研究所が日本の将来推計人口(平成18年12月推計)を公表しています。

数年おきにこの統計が発表されるたびに、出生率がこのままだと将来どうなる、と少子化の危機感を煽る報道で全国へ紹介され、もっぱら出生の動向に焦点があてられています。

しかし、死亡率が改善されないと将来どうなる、という推計も同時に発表されています。

出生率、死亡率ともに現状維持の場合、死亡数の将来推計は次の通りです。

年  死亡数(千人)

2010    1,192

2015    1,314

2020    1,429

2025    1,526

死亡数は5年ごとに十万人ずつ増えてゆきます。

向こう10年で2割増です。

医療供給体制は大丈夫でしょうか。

医療従事者の動向(10)

2010 年 1 月 24 日 日曜日

医療法上に必置数の定めがないにかかわらず医療機関従事者数の14%(7人に1人)を占め、かつ、増加率も大きい職種があります。

事務職員です。

(総      数)(病   院)(一般診療所) (歯科診療所)

    H20 H11 増数 増率 H20  H11 増率 H20  H11 増率 H20 H11 増率

事務職員 38.5 36.4 2.2 6%   16.3 15.1 8%  19.6 18.6 6%  2.7 2.8 -3%

    (単位:万人)

一般企業では、経営が困難になった時に真っ先に整理されるのは事務職員です。

しかし医療経営の場合、度重なる制度変更や法規制に対応するため、むしろ事務体制を強化せざるを得ない状況です。

医療の経営危機は今後も叫ばれ続けますが、これ以上、事務職員を増やすことは許されないかもしれません。

事務職員は、他の医療従事者と異なり、国家資格で資質が担保されているわけではありません。

経営や医療制度に疎い事務職員がいくら増えても、医療経営はうまくゆきません。

これからは事務職員にも資質が求められる時代となるでしょう。

医療従事者の動向(9)

2010 年 1 月 23 日 土曜日

基本給が高く絶対数も多いために医療経営に直結する、医師数の動向です。

(総      数) (病   院) (一般診療所)

      H20   H11 増数 増率    H20   H11 増率   H20   H11 増率

医師     30.6  28.4  2.2   8%   18.8  16.7  13%  11.8  11.7   1%

常勤   24.8  23.4  1.3   6%   15.0  13.7  10%   9.7  9.7    0%

非常勤  5.8   4.9  0.9  17%    3.8   3.0  27%   2.0  2.0    2%

   (単位:万人)

勤務医の開業志向がよく言われていますが、統計上、一般診療所の医師数はほとんど増えていません。

病院の常勤医師数は10%も増加していますが、9年間の増加数は1.3万人程度で、歯科医師の場合と同様、医師養成数を吸収しきれるほどの増加ではありません。

非常勤医師として不安定な雇用にある医師が増えているものと思われます。

医師数も薬剤師同様、医療法による必置数は病床区分別病床数や外来数に応じて算定されますが、病床数が増えず、病床転換が進み、外来受療率も横ばいの状況下では医師必置数は減っています。

医師不足といいながら、実際は必置数を上回って医師を確保できている病院がほとんどで、なかなか常勤雇用してもらえない実態が統計から覗えます。

医師不足対策は、医療法の算定式をいじって、医師の必置数を養成数見合いに上乗せするだけで解決の糸口となるかもしれません。

不安定雇用の非常勤では、医師は辺地の診療科への赴任をためらいます。

医療従事者の動向(8)

2010 年 1 月 22 日 金曜日

医療機関に勤務する薬剤師の動向です。

(総      数) (病   院) (一般診療所)

      H20  H11 増数 増率   H20  H11 増率  H20  H11 増率

薬剤師  4.9  5.2 -0.3  -6%   4.2  4.1  1%   0.7  1.0 -32%

   (単位:万人)

薬学部が急増し、薬剤師養成数も急増しているにかかわらず、医療機関勤務薬剤師数は減っています。

医療法による病院の薬剤師の配置基準は、次の式で得られる数を切り上げた数です。

 

一般病床数/70+療養病床数/150+精神病床数/150+結核病床数/70+外来処方箋数/75

 

病床数が増えない、あるいは一般病床の療養病床への転換が進む状況の下、外来受療率も横ばいですので、病院の薬剤師必置数は減ってゆきます。

医療機関勤務薬剤師は飽和状態にあります。

しかし、薬学部卒業生の勤務先は、薬局あるいは製薬メーカーなど、医療機関以外に活路が開かれています。

保険薬局の医療費(収入)は増加の一途です。

薬剤師雇用により取扱い医薬品の幅が広がるため、民間での薬剤師需要も拡大しています。

医療従事者の動向(7)

2010 年 1 月 21 日 木曜日

歯科診療所と病院における、歯科医師を補佐する職種の動向です。

        (歯科診療所)    (病   院)

H20  H11 増数 増率    H20  H11 増数 増率

歯科衛生士     7.9  6.7  1.2   18%   0.4  0.4  0.1  21%

歯科技工士     1.1  1.5 -0.4  -28%   0.1  0.1  0   -16%

歯科業務補助者 8.3 10.7 -2.4  -22%

       (単位:万人)

歯科技工士の養成数は多いのですが、医療機関での配置は減少傾向です。

対し、歯科衛生士は、歯科診療所のみならず、病院においても配置が増えています。

口腔衛生の需要の高まりに呼応しているようです。

歯科医師の動向はどうでしょうか。

(歯科診療所)   (病   院) (一般診療所)

      H20  H11 増数 増率    H20  H11  増率   H20  H11 増率

歯科医師  9.3  8.7  0.6   7%    1.0  0.9   14%   0.2  0.2   1%

常勤    8.2  7.8  0.4   5%   0.8  0.7   14%   0.1  0.1  18%

非常勤  1.1  0.9  0.2  20%    0.2  0.1   13%   0.1  0.1 -22%

    (常勤換算、単位:万人)

歯科医師数も増加していますが、この9年で常勤歯科医師は4千人しか増えていません。

歯科診療所数は頭打ちです。

大学歯学部の入学定員は平成20年現在29校2657名ですので、養成数を吸収できるだけの受け皿がありません。

多くは非常勤歯科医師として不安定な雇用を余儀なくされていると思われます。

医療従事者の動向(6)

2010 年 1 月 20 日 水曜日

栄養士、管理栄養士の動向です。

(一般診療所は、管理栄養士と栄養士を区分した統計が計上されていません。)

(病   院)

H20  H11 増数 増率

管理栄養士  1.7  1.5  0.3  18%    (一般診療所)

栄養士      0.6  0.9 -0.3 -32%   H20  H11 増数 増率

(栄養士計)2.3  2.3  0     0%   0.8  0.8  0   -4%

     (単位:万人)

医療法施行規則により、100床以上の病院にあつては栄養士を配置しなければなりません。

食事療養は治療の一環であり、生活習慣病管理の需要増にともない、管理栄養士の需要は高まっています。

「入院時食事療養費特別管理加算」「特別食加算」「外来栄養食事指導料」「入院栄養食事指導料」「在宅患者訪問食事指導料」「集団栄養食事指導料」などを算定し請求するためには管理栄養士の配置が必要です。

しかし、需要の高まりにかかわらず、栄養士の総数は増えていません。

特に人数配置の基準が設けられていませんので、必置義務数を上回って配置するほどの経営的余裕が医療機関にないのかもしれません。

栄養士は、一定規模以上の福祉施設や介護施設に必置義務がありますので、社会全体の需要は大きいのですが、医療機関に限っては飽和状態であるようです。

医療従事者の動向(5)

2010 年 1 月 19 日 火曜日

診療放射線技師(診療X線技師含む)、臨床検査技師(衛生検査技師含む)の動向です。

(総      数) (病   院) (一般診療所)

H20  H11 増数 増率    H20  H11  増率   H20  H11  増率

診療放射線技師   4.8  4.2  0.6  15%    3.8  3.3  14%    1.0  0.9   19%

臨床検査技師     6.0  5.8  0.3   5%    4.8  4.7   1%    1.3  1.1   21%

        (単位:万人)

画像診断や臨床検査診断抜きに医師が正確な診断を下せる時代ではなくなりましたので、これらの職種は着実に増加しています。

臨床検査技師が病院においてあまり増えていませんが、検体検査の外注委托が一般化してきたからかもしれません。

しかし、臨床検査の需要は着実に伸びています。

一般診療所で臨床検査技師が増えているのは、看護師の確保難が影響しているのかもしれません。

診療所における諸検査では、医師を看護師が補佐する体制が一般的でしたが、看護師に代わり、検査担当の技師を雇用しているのかもしれません。

医療従事者の動向(4)

2010 年 1 月 18 日 月曜日

絶対数は少ないものの、増率において看護師を上回っている職種は次の通りです。

病院でも診療所でも急増している職種です。

                H20  H11 増数  増率

理学療法士(PT)  4.5  2.1  2.5  119%

作業療法士(OT)  2.6  0.9  1.7  187%

視能訓練士          0.6  0.3  0.2   76%

言語聴覚士          0.9  0.2  0.6  244%

社会福祉士          0.7  0.1  0.6  867%

介護福祉士          5.2  0.8  4.4  551%

臨床工学技士        1.7  0.8  0.8  103%

柔道整復師          0.4  0.2  0.2  121%

精神保健福祉士      0.8  0.2  0.7  405%

医療社会事業従事者  1.1  0.9  0.2   22%

         (単位:万人)

絶対数の増加から、介護福祉士、理学療法士、作業療法士が手厚く医療現場へ配置されてきていることがわかります。

精神保健福祉士、社会福祉士、言語聴覚士の配置も進んでいるようです。

福祉への橋渡し的職種が多いのは、福祉との連携なしには医療は成り立たない時代となってきているからでしょう。

臨床工学技師が倍増しているのは医療機器の高度化の影響のあらわれですが、公正取引の観点で、平成11年度から医療機器メーカーからの労務の無償提供が制限されるようになったことも影響しているかもしれません。

医療従事者の動向(3)

2010 年 1 月 17 日 日曜日

看護師の国家資格に上乗せの国家資格職種の医療機関勤務の動向です。

(総      数) (病   院) (一般診療所)

H20  H11 増数 増率    H20  H11  増率   H20  H11  増率

保健師 0.9  0.8  0.1  13%    0.4  0.2  113%   0.5  0.6  -17%

助産師 2.3  2.1  0.2  11%    1.8  1.7    5%   0.5  0.4   37%

     (単位:万人)

保健師は保健所や市町村保健担当部局、助産師は助産所という、病院・診療所以外での活路があるのですが、医療機関での採用も増えています。

保健師は地域連携に能力を発揮する職種です。

地域連携クリティカルパスなど、病院医療を地域資源と連携させる動きがうねりとなりつつあります。

保健師の活動の場として、まだまだ病院は一般的ではありませんが、着実に増えてゆく職種だろうと思えます。

助産師は、産科医師不足をカバーする職種として注目されてきています。

正常分娩は、医師が立ち会わなくても、助産師が主体的に行うことができます。

「院内助産所」を設ける病院も増えてきています。

医療従事者の動向(2)

2010 年 1 月 16 日 土曜日

医療従事者総数は、平成11年から20年までの9年間で8万1千人増加していますが、職種ごとには増減があります。

最も増加数が多いのは看護師で、12万5千人の増、21%も増えています。

診療所の看護師は減少していますので、病院だけに着目すれば、25%の増です。

看護師が診療所から病院へシフトしています。

看護師を多く配置するほど入院医療の診療報酬が手厚くなる制度改定がなされたためでしょう。

逆に、最も減少数が大きいのは准看護師で、12万人も減っています。

病院でも診療所でも減っていますので、准看護師から(正)看護師へのシフトが加速していることのあらわれです。

看護師数と准看護師数を併せた数は、9年間で5千人、1%しか増えていません。

病院では9%の増ですが、一般診療所では26%も減っています。

看護業務の労働負荷は、病院では改善、診療所では悪化といえそうですが、どちらでも看護業務補助者が減っています。

病院でも診療報酬の増分程度しか、看護業務の負荷は軽減されていないかもしれません。

(総      数)   (病   院) (一般診療所)

           H20   H11   増数増率    H20   H11  増率   H20   H11 増率

看護師         72.2  59.7  12.5  21%    63.7  51.0  25%   8.5   8.7  -2%

准看護師       26.1  38.1 -12.0 -31%    17.1  23.1 -26%   9.0  14.9 -40%

(看護職計)   98.3  97.8   0.5   1%    80.8  74.0   9%  17.5  23.6 -26%

看護業務補助者 22.2  25.0  -2.9 -11%    19.0  20.4  -7%   3.2   4.6 -31%

(看護業務計)120.5 122.8  -2.3  -2%    99.8  94.5   6%  20.7  28.2 -27%

       (単位:万人)

政権交代と医療(86)

2010 年 1 月 14 日 木曜日

民主党の政権公約では、「医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する」としています。

しかし、むしろ医療従事者が不足している地方に、医療の問題は集積しています。

社会的インフラが整っていない地域では病院経営が成り立たない、ということが起こらないようにしなければなりません。

昨日(13日)の中央社会保険医療協議会総会では「地域の特性を考慮した診療報酬点数について」という議題がありました。

不利な地域の診療報酬を手厚くしたらどうかという議論ですが、地域ごとに異なる診療報酬とした場合、

(1)同一の医療サービスを受けても住んでいる地域により、患者の負担金額が異なる。

(2)診療報酬が高い地域においては、保険者負担も高くなる。

などの問題が生じます。

資料として、一般病床の看護職員数が著しく少ない地域のデータが提出されています。

『一般病床のみで構成される一般病院の1日平均在院患者数100人当たりの看護職員数』が著しく少ない二次医療圏が、少ないほうから9圏選ばれていますが、そのうちの1圏は「佐賀県東部保健医療圏」でした。

隣接医療圏のデータと比較してみます。

       一般病床入院百人 人口十万対 人口千対

(医療圏)  あたり看護職員数 医 師 数 一般病床数

久留米     80.6   297.4  10.8

八女・筑後  100.8   131.6   7.0

佐賀県東部   54.1   100.8   6.2

全国平均    87.6   224.5   7.1

佐賀県東部は、隣接医療圏より医師数も看護職員数も著しく少ないようです。

医師や看護師が確保できなければ一般病床を収入の少ない療養病床に転換せざるを得ず、その結果か、人口あたり一般病床数も少ないようです。

佐賀県東部はさぞかし医療費も少なかろう、と思われるのですが、実際は真逆です。

全国比較のために医療費を年齢調整した指標(全国平均を1.0とした地域差指数)は、佐賀県東部医療圏は平成17年度は1.345で全国ワースト1位、平成18年度は1.325で全国ワースト2位でした。

全国平均の3割増しを上回る医療費です。

佐賀県東部の医療機関が3割増しの収入を得ているのではなく、近隣医療圏を受診した患者の医療費が指標を押し上げているのだと思われますが、同じ佐賀県東部の住民が、久留米や八女・筑後で受診するより地元で受診したほうが診療報酬が高く、患者負担が高くなるようなら、ますます地元医療が空洞化してしまいます。

地域特性の考慮は、なかなかいい解決策がありません。

医療従事者の動向(1)

2010 年 1 月 13 日 水曜日

平成11年から平成20年にかけての「患者調査」受療率の変化は、傷病ごとに傾向は異なるものの、全体では、外来受療率はほとんど横這いで、入院受療率は7%低下しています。

一般産業に置き換えると、1件あたり購買額が高い顧客層が7%も減少していることになります。

診療報酬はこの9年間、マイナス改定でしたが、この間の「医療費」(=医療機関の収入)の変化は次の通りです。(単位:兆円)

なお、「医療費」には、介護保険制度発足(平成12年4月)以前は、下記以外に老人保健施設や訪問看護ステーションへの配分(平成11年で約1兆円)も算定されていましたので、総医療費の変化(30兆円→34兆円)の分析には介護費の動向も配慮する必要があります。

 

       病 院  一般診療所  歯科診療所  保険薬局

平成11年 17.0   7.2    2.4    2.4

平成20年 18.1   8.0    2.5    5.4

 増率    6%    11%     2%    127%

 

この間、商品単価(診療報酬)が抑えられ、顧客が減少しているのに、それぞれ収入が増加しているのは、取扱商品が高級化(医療サービスの高度化)しているためです。

高級化に対応するため、従業員数を増やしてサービスの質を上げています。

医療施設従事者数の変化は次の通りです。(単位:万人)

 

      病 院  一般診療所  歯科診療所

平成11年 162    75     32

平成20年 177    70     30

 増率    9%    -7%    -5%

 

病院は収入の伸びより従事者数の伸びが大きいので収益性の悪化が窺えますが、労働環境(労働負荷)は改善しているといえるでしょう。

診療所は、従事者数を減らして収入を増やしていますが、外来受療率が横這いで診療内容が高度化しているにかかわらず従事者数が減っていますので、労働負荷は大きくなってきていると思われます。

予防か治療か(8)

2010 年 1 月 10 日 日曜日

 “「うつ百万人」陰に新薬?”

過日の読売新聞の見出しです。

記事を要約すると次の通りです。

・うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2・4倍に急増している。

・国の調査では、うつ病など気分障害の患者は、2000年代に入り急激に増えており、一概に不況だけの影響とは言えそうにない。

・抗うつ薬市場は1999年に新規抗うつ薬「SSRI」が登場してから急伸している。

・欧米でも、この薬が発売された80年代後半から90年代初めにかけ、患者の増加がみられた。

・うつ病啓発キャンペーンで精神科受診の抵抗感が減った一方、一時的な気分の落ち込みまでうつ病だと思う人が増えた。

・精神科診療所の医師に対する調査では、約8割の医師が、うつ病の診断が広がり過ぎていることに懸念を示した。

・安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。

 

SSRIの登場により、うつ病の医療は画期的に進展しました。

薬では治らないのでは、と精神科受診をためらっていた人たちに、薬で治る希望を与え精神科を受診させることができるくらいのインパクトがありました。

このように、医療の進歩がかえって受療率を引き上げることもあります。

うつ病患者の激増に対比すれば、自殺者数の増加は穏やかです。

裏返せば、自殺者数の増え方程度しか、本当はうつ病は増えていないのかもしれません。

本当にうつ病が激増しているのであれば、自殺を抑制するのに医療とりわけSSRIが大きく貢献していることになります。

医療によって自殺者数を減少に転じさせる希望(可能性)をもつことができます。

予防か治療か(7)

2010 年 1 月 9 日 土曜日

死亡に直接結びつかない病気については、死亡数や死亡率の統計では動向が読めません。

自殺に関係が深い病気に「うつ病」があります。

統計分類上は「精神及び行動の障害」のカテゴリーの中の一疾患ですが、この分類が死亡統計に表出するのはごく一部です。

しかし、患者調査による受療率で動向を把握することができます。

「精神及び行動の障害」の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  263   236   90%

 外来  123   182  148%

ふたつの大きな特徴があります。

1 入院受療率のほうが外来受療率よりもはるかに高いこと。

2 外来受療率が急増していること。

治療技術の進歩で、精神疾患の重症例は少なくなってきています。

入院受療率の低下はそのあらわれでしょう。

いわゆる「社会的入院」患者が退院して外来受療率を押し上げている側面もあるのかもしれません。

それにしても、入院と外来をあわせて人口10万対400以上ということは、250人に1人ということですので、確率的には、ある程度の規模の組織(学校、会社)にはこの疾患で悩む方がおられるということです。

中には、進歩した医療の恩恵を受けないままに病状を悪化させている人もおられるでしょう。

「予防」も「治療」も手つかずなら、予防か治療かという議論にもなりません。

予防か治療か(6)

2010 年 1 月 8 日 金曜日

糖尿病については、死亡数は18%増(平成12年比)です。

なお、糖尿病が基礎疾患であることが多い腎不全の死亡数は30%増です。

年齢調整死亡率は、男9%減、女18%減で、死亡数の傾向と乖離しています。

(腎不全は男8%減、女12%減です。)

患者調査では糖尿病の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   32    20   63%

 外来  146   147  101%

外来受療率に変化がないのは、心疾患や脳血管疾患ほどには予防効果が見られないのか、あるいは予防効果による減少に匹敵するほど健診による受療促進が進んでいるのか、どちらかでしょう。

入院受療率が心疾患や脳血管疾患より大きく低下していますので、後者のように思えますが、医療の進歩で糖尿病の多くが外来で管理可能となり、入院の必要性が小さくなってきたのかもしれません。

 

いくつかの代表的な疾患について、死亡数、年齢調整死亡率、受療率の3つの指標の動向を紹介しましたが、疾患ごとに、動向のパターンがそれぞれ異なることがわかります。

必然(高齢化)、予防、発見、治療、それぞれの因子の貢献の度合いによって作られるパターンです。

他の指標はともあれ、年齢調整死亡率が順調に低下してゆくのは一つの理想です。

そういう観点で死因順位を並び替えると、年齢調整死亡率の両年比のワースト順は次のようになります。

      男 女

老   衰 100% 113%

自   殺 99% 106%

腎 不 全 92% 88%

悪性新生物 88% 91%

肺   炎 91% 87%

心 疾 患 90% 86%

肝 疾 患 83% 91%

糖 尿 病 91% 82%

不慮の事故 73% 79%

(交通事故() 52% 50%

脳血管疾患 72% 66%

老衰が第一位であるのは救われる気がしますが、それにしても自殺が改善しないのはいただけません。

自殺死亡数は肝疾患死と糖尿病死の合計に匹敵します。

治療か予防か、という観点では、やはり予防でしょう。

予防か治療か(5)

2010 年 1 月 6 日 水曜日

肝疾患については、死亡数は1%増(平成12年比)です。

年齢調整死亡率は男17%減、女9%減です。

死亡率と年齢調整死亡率の乖離は、生活習慣病など高齢になるほど罹患しやすい病気の特徴ですが、肝疾患は年齢とともに必然的に増加する疾患というわけではありません。

高齢者の肝疾患死亡の中には、現代の知見では、若い時に肝炎ウィルス感染対策がなされてさえいれば防ぐことができたであろう死が多く含まれています。

効果的な対策がとられる以前の感染の影響で、年間およそ1万6千人が亡くなられています。

交通事故死の倍ですが、交通事故死は少し前までは肝疾患死と並んでいました。

交通事故対策に行政が本腰を入れたのと同様、この四半世紀、ウィルス肝炎対策に行政は力を注いできましたので、やがて死亡数も減少へと転じ、近い将来、再び交通事故死と並ぶことになるでしょう

患者調査では肝疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

(肝疾患+ウィルス肝炎)

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   20    11   55%

 外来  115    71   62%

ウィルス肝炎検査の推進による受療者の増加を考慮すれば、すでに半減の勢いといえるかもしれません。

予防か治療か(4)

2010 年 1 月 5 日 火曜日

死因の第三位、脳血管疾患については、死亡数は4%減(平成12年比)です。

病気による死亡は軒並み増加している中、上位疾患では脳血管疾患のみ、死亡数が減少しています。

年齢調整死亡率の低下はもっと大きく、男28%減、女34%減で、激減といえるでしょう。

患者調査では脳血管疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  172   156   91%

 外来  116    94   81%

脳血管疾患の受療率の低下は、入院も外来も、心疾患の受療率の低下と同程度です。

心疾患同様、高血圧管理が功を奏して、高血圧症が脳血管疾患にまで進行するのを喰い止めているのでしょう。

しかし、受療率の傾向が同じなのに、脳血管疾患の死亡率の低下は顕著です。

脳血管疾患については、治療技術の進歩の貢献がより大きいのかもしれません。

なお、脳血管疾患の受療には、回復後のリハビリ受療も多く含まれています。

予防(食生活改善等)が効を奏して初診受療が大きく減少し、その結果として死亡率が大きく低下した可能性も否定できません。

予防か治療か(3)

2010 年 1 月 4 日 月曜日

死因の第二位、心疾患については、死亡数は24%増(平成12年比)と激増ですが、年齢調整死亡率は男10%減、女14%減で、各年齢階層ごとの死亡率は大きく減っているようです。

患者調査では心疾患の人口10万対受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院   50    46   92%

 外来  130   102   78%

心疾患の入院受療率の低下は、新生物の入院受療率の低下と同程度です。

死亡数の激増に匹敵する入院需要の増加があってしかるべきところですが、逆に入院受療率が低下しているのは、新生物と同様、入院期間の短縮化が進んでいるためでしょう。

新生物の場合は入院受療率の低下以上に外来受療率が向上していましたので、(早期発見効果による)外来管理へのシフトを理由として挙げることができましたが、心疾患の場合は外来受療率が入院受療率以上に低下しています。

高血圧管理が功を奏して、高血圧症が心疾患にまで進行するのを喰い止めているのかもしれません。

高血圧性疾患の外来受療率は平成11年が514で平成20年が471、両年比は92%で心疾患ほどは低下していません。

健診の受診率が向上して高血圧症の発見が増えるにつれ、外来受療率が向上してもしかるべきですが、そうはなっていません。

健診でせっかく高血圧症が発見されても受診に結びついていないのか、高血圧症そのものが減少しているかでしょう。

喫煙や食習慣は循環器系疾患に(より短期間に)直接的な影響を与えますので、喫煙率の低下や食習慣の変化(減塩化など)が高血圧症の発病を予防しているのかもしれません。

予防か治療か(2)

2010 年 1 月 3 日 日曜日

死因の第一位、悪性新生物については、死亡数は16%増(平成12年比)、年齢調整死亡率は男12%減、女9%減でした。

患者調査では、新生物(良性新生物や診断確定前の悪性新生物も含まれる)の受療率は次の通りです。

    平成11年 平成20年 両年比

 入院  134   125   93%

 外来  144   171  119%

悪性新生物については、最も効果ある予防手段は禁煙です。

男性の喫煙率は、平成11年の49.2%から平成20年の36.8%へと大きく低下していますが、この変化ががん予防効果として統計的に現れるのはもっと先でしょう。

男性喫煙率が急減したのは、この5年くらいのことです。

なお、女性の喫煙率は、平成11年の10.3%から平成20年の9.1%へとわずかな低下です。

悪性新生物については、早期発見が決め手です。

外来受療率の伸びは、発見率の伸びと外来管理患者の蓄積を反映しています。

入院受療率の低下は、入院期間の短縮、すなわち早期発見の効果のあらわれともいえるでしょう。

死亡率の改善に治療技術の進歩が貢献しているのは間違いないでしょうが、貢献度は早期発見のほうが大きいかもしれません。

予防か治療か(1)

2010 年 1 月 2 日 土曜日

平成12年と平成20年を比較し、この8年間で(年間死亡数は19%増加したけれども)年齢調整死亡率が男12%、女13%減少していることから、医学医療の進歩の恩恵であるとコメントしました。

しかし、仮に医学医療が進歩しなくても、人々の健康管理の実践が普及し、医療機関を受診する患者数が減少しても、死亡率は低下します。

「患者調査」で、人々の受療の実態がわかります。

患者調査は3年ごとの調査ですので、平成11年と平成20年との9年間の変化を見てみます。

人口10万対受療率の変化は次の通りです。

平成11年 平成20年  両年比

 入院  1170  1090  93%

 外来  5396  5376 100%

入院受療率の低下は、病床規制や平均在院日数の短縮など、要因が複合しています。

もう少し詳細な分析をしなければ、入院需要が減っているのかどうかは即断できません。

外来受療率については変化がありません。

人口の高齢化を考えれば、外来需要が減っていることが窺えます。

年齢別受療率は次の通りです。

入  院      外  来               

H11  H20 両年比  H11 H20 両年比

0歳 1391 1052  76%  6258 5814  93%

1~4  216  195  90%  5788 6077  105%

5~9  147  97  66%  3838 4096  107%

10~14  138  97  70%  2250 2275  101%

15~19  181  131  72%  1920 1906  99%

20~24  276  183  66%  2277 2132  94%

25~29  407  269  66%  2749 2649  96%

30~34  459  311  68%  3094 2987  97%

35~39  468  326  70%  3092 3092  100%

40~44  563  375  67%  3207 3313  103%

45~49  758  508  67%  3805 3659  96%

50~54  976  683  70%  4841 4322  89%

55~59  1262  950  75%  6074 5224  86%

60~64  1644 1209  74%  7860 6872  87%

65~69  2148 1565  73%  10709 8548  80%

70~74  2839 2202  78%  13796 11458  83%

75~79  4093 3236  79%  15009 12855  86%

80~84  5998 4583  76%  14081 12531  89%

85~89  8739 6879  79%  12488 11067  89%

90歳以上 12399 10308  83%  9594  8562  89%

どの年齢層も大幅に入院受療率が低下していることがわかります。

(どの年齢階級よりも全年齢についての受療率の変化が小さいのは、人口の年齢構成が異なるからです。)

仮に年齢調整入院受療率を算定するとすれば、年齢調整死亡率の低下よりもはるかに大きい低下となるでしょう。

外来受療率については、50歳未満ではあまり変化がありませんが、50歳以上では10%以上低下しています。

50歳以上は生活習慣病の好発年齢です。

生活習慣病の予防(健康管理)の実践が普及してきたのでしょうか。

万が一の死亡

2009 年 12 月 30 日 水曜日

人口動態統計調査では死因ごとの年間死亡数がわかります。

日本人の1万人に1人以上が1年間に死亡する死因は次の10死因です。

日本人は、むこう一年間以内に、これらの死因で死亡する可能性が「万が一」あります。

(死亡数)

 平成12年 平成20年 両年比

全 死 因   961653   1142407  119%

悪性新生物   295484   342963  116%

心 疾 患   146741   181928  124%

脳血管疾患   132529   127023   96%

肺   炎    86938   115317  133%

不慮の事故    39484    38153   97%

交通事故(再) 12857    7499   58%

老   衰    21213    35975  170%

自   殺    30251    30229  100%

腎 不 全    17260    22517  130%

肝 疾 患    16079    16268  101%

糖 尿 病    12303    14462  118%

交通事故死が激減しているのは、シートベルトの徹底など、交通安全運動の成果でしよう。

それにひきかえ、病気による死亡が減っていないのは、医学医療の進歩の恩恵が日本人に及んでいないかに思えてしまいます。

実は、そういうことではなく、死亡数の増加は人口構成の高齢化のためです。

年齢調整死亡率という、比較のために年齢補正した指標があります。

主要死因の年齢調整死亡率の推移は次の通りです。

(人口10万対年齢調整死亡率)

(男)H12 H20 両年比 (女)H12 H20 両年比

全 死 因 634.2 557.4  88%   323.9 283.0  87%

悪性新生物 214.0 188.9  88%   103.5 94.2  91%

心 疾 患 85.8 77.1  90%   48.5 41.7  86%

脳血管疾患 74.2 53.6  72%   45.7 30.3  66%

肺   炎 53.1 48.2  91%   23.3 20.3  87%

不慮の事故 33.6 24.5  73%   12.6  9.9  79%

交通事故(再)13.2  6.9  52%    4.4  2.2  50%

老   衰  6.3  6.3  100%    6.8  7.7  113%

自   殺 30.7 30.5  99%   10.7 11.3  106%

肝 疾 患 14.0 11.6  83%    4.4  4.0  91%

腎 不 全  9.2  8.5  92%    5.7  5.0  88%

糖 尿 病  7.8  7.1  91%    4.4  3.6  82%

医学医療の進歩の恩恵で、どの死因も死亡率が大きく改善していますが、老衰と自殺には恩恵は及ばないようです。

出生と死亡の国際化

2009 年 12 月 29 日 火曜日

人口動態統計調査では、日本居住の外国人の人口動態と外国居住の日本人の人口動態も調査されています。

平成20年に日本で生まれた外国人は1万4千人で出生数の1%以上となっています。

国際結婚が18組に1組であることもあわせ、日本の母子保健は国際化への対応が必要となってきています。

日本で死亡した外国人は6千人で出生数の半分以下ですので、日本居住の外国人人口は8千人の自然増ということになります。

日本人人口の自然減が外国人人口の自然増で補われる構図で、日本社会の国際化は急速に進展しています。

国別内訳(出生は母の国籍別)は次の通りです。

        出生数  死亡数

中国    3670  514

ブラジル  3463  184

韓国・朝鮮 1734 4679

フィリピン 1523  129

ペルー    768   49

米国     255  140

タイ     121   42

英国      46   19

日本との人的交流が反映する統計ですが、これらの国々は国際結婚の相手の国籍としても多い国々です。

「韓国・朝鮮」の自然減が特異的です。

日本定住の歴史の長さのあらわれかもしれません。

外国における日本人の出生数は15563人、死亡数は1596人でした。

出生数は日本における外国人の出生数相当ですが、外国で死亡する人は少なく、若い企業戦士の国際進出のあらわれでしょう。