‘政策研究’ カテゴリーのアーカイブ

消費税率の引き上げと医療(下)

2012 年 1 月 15 日 日曜日

社会保障・税一体改革素案(平成24年1月6日閣議報告)に、医療と消費税について下記の言及があります。

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第2部 税制抜本改革

第3章 各分野の基本的な方向性

1.消費課税

(2)消費税率の引上げを踏まえ検討すべき事項

今回の改正に当たっては、社会保険診療は、諸外国においても非課税であることや課税化した場合の患者の自己負担の問題等を踏まえ、非課税の取扱いとする。その際、医療機関等の行う高額の投資に係る消費税負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して手当てを行うことを検討する。これにより、医療機関等の仕入れに係る消費税については、診療報酬など医療保険制度において手当てすることとする。また、医療機関等の消費税負担について、厚生労働省において定期的に検証する場を設けることとする。なお、医療に係る消費税の課税のあり方については、引き続き検討をする。

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消費税は(内需が維持できれば)1%の増税で2兆円の税収が増えるといわれています。

2015年に5%の増税で消費税率10%となれば10兆円の増収という皮算用です。

増収分のうち3分の1は地方の取り分ですので7兆円弱が国の増収ということになります。

この7兆円がすべて社会保障目的に使われるとすれば、社会保障給付費のうち医療の占める割合は3割ですので、2兆円が医療のために宛がわれるということになります。

総医療費は年に1.4兆円ずつ増えていますので2015年には43兆円となります。

この43兆円の医業支出のうち半分弱の20兆円が消費税課税される支出であるとすれば、医療機関の消費税負担は、5%の消費税率の引き上げで1兆円の負担増ということになります。

この負担増分が消費税の増収で「手当て」されるとすれば、差し引き1兆円の消費税が医療に回され医療が充実する、すなわち消費税率アップは医療にはプラスにはたらくということになります。

しかし、1%の増税で2兆円の増収はあくまで皮算用で、識者の推計には増収効果は1%あたり1兆円に満たないだろうというものも多数あります。

1%あたり増収が1兆円を切るようだと、医療機関の消費税負担増分の「手当て」の財源すら確保できないということになり、消費税率アップは医療にはマイナスということになります。

TPPと診療報酬

2012 年 1 月 14 日 土曜日

昨日開催された中医協総会に提出された資料により、平成24年診療報酬改定の金額ベースでの増減がわかります。

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全体改定率+0.004%

診療報酬(本体)改定率+1.379%(約5,500億円)

(内訳)

医科+1.55%(約4,700億円)

歯科+1.70%(約500億円)

調剤+0.46%(約300億円)

薬価改定率-1.375%(約5,500億円)

(内訳)

薬価改定-1.26%(薬価ベース-6.00%)(約5,000億円)

材料価格改定-0.12%(約500億円)

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診療報酬本体の引き上げ財源は、ほぼそっくり薬価の引き下げによって確保されていることがわかります。

今後、TPP交渉が進展すると、外資系医薬品の薬価引き下げへの抵抗が予想されますので、将来の診療報酬改定では財源を薬価に求めることができなくなるかもしれません。

米韓FTAで問題とされているような薬価の高騰が現実のこととなれば、薬価を確保するための財源として診療報酬本体から財源を供出しなければなりません。

TPP交渉は外交交渉なので交渉の経緯は非公開が原則です。

交渉担当官には守秘義務が課せられます。

TPP交渉は水面下で既に着手されているところですが、診療報酬に深刻な影響が及ぶことがないよう、医療の仕組みに明るい人に交渉を担当していただきたいものです。

消費税率の引き上げと医療(上)

2012 年 1 月 13 日 金曜日

消費税率が引き上げられると、消費者の懐を直撃します。

2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げることが政府の税制改革の柱で、その方向へと国政は向かっています。

物品やサービスを消費者へ販売する事業者は、消費税を消費者から徴収し、消費者が納めた税金を代行して納税しているだけですので、自らへの設備投資等を除いては消費税率引き上げの直接的影響は及びません。

しかし、消費税率の引き上げによる買い控えが起きたりしたら、それは打撃となります。

医療の場合、受診控えが起きたりしたら生命にかかわりますので、医療費(社会保険診療報酬)は消費税非課税となっています。

しかし、医療機関が購入する医療機器や医薬品や給食材料や外注委托業者への支払いには消費税がかかります。

もちろん、建て替えや改修などの設備投資にも消費税がかかります。

消費税率が上がっても診療報酬には変化がなく、従って医療機関の収入に変化がないとすれば、支払いにかかる消費税率アップの分だけ医療機関の経営の打撃となります。

大雑把に、医療機関の収入の半分が消費税が課税される支払いに充てられているとすれば、診療報酬に消費税率の半分相当が上乗せされない限り、医療機関にとって消費税は「損税」ということになります。

消費税率が10%ともなると、医療経営上は大打撃です。

民主党(税制調査会と社会保障と税の一体改革調査会)は、医療機関の高額な投資にかかる消費税負担に関し、新たな一定の基準に該当するものを区分して手当を行うことを検討する方針や診療報酬で手当する方針を示していますが、そのような「手当」に必要となる額は、医療費総額(36兆円)の大きさを考えると「兆円」のオーダーとなり、社会保障目的税化して消費税の増収分を医療に宛がったとしても足りないくらいの額となってしまいます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(11)

2012 年 1 月 10 日 火曜日

<障害者施策>については、良質な障害福祉サービスの確保のために7434億円が計上され、障害者等が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスが計画的に確保されるとともに、平成24年4月に+2.0%の障害福祉サービス費用(報酬)の改定が行われ、福祉・介護職員の処遇改善、通所サービス等の送迎を含む障害者の地域生活の支援、障害福祉サービスの質の向上等が推進されます。

地域生活支援事業の着実な実施には450億円が計上され、移動支援やコミュニケーション支援など障害児・者の地域生活を支援する事業について、市町村等での事業の着実な実施や定着が図られます。

また、障害児・者が地域生活へ移行するための支援や、安心して地域で暮らすことができるための支援体制を整備するため、地域での相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターの機能強化や成年後見制度の利用が促進されるとともに、児童発達支援センターの地域支援機能の強化など障害児支援の充実が図られます。

障害児・者への福祉サービス提供体制の基盤整備には117億円が計上され、障害児・者の地域移行・地域定着支援や就労支援の充実を図るため、生活介護や就労継続支援等の「日中活動の場」の基盤整備が推進されるとともに、グループホーム等の「住まいの場」の整備が推進されます。

また、基幹相談支援センターの設置が促進されるとともに、児童発達支援センターの地域支援機能の強化や障害児入所施設の小規模グループによる療育など障害児支援の充実を図るための整備が推進されます。

さらに、災害時に、障害福祉サービス事業所や障害児施設等に障害児・者の緊急の受入が可能となる設備等を備えた防災拠点等の整備が推進されます。

なお、これまで社会福祉施設等施設整備費補助金の整備対象としてきた大規模修繕等及び保護施設等の整備については、平成24年度からは地域自主戦略交付金(一括交付金)による対応となります。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(10)

2012 年 1 月 9 日 月曜日

<医療イノベーション>については、ライフ・イノベーションの一体的な推進に127億円が計上されています。

(1)   個別重点分野の研究開発・実用化支援に71億円。

(内訳)

①がん診断・治療研究の推進 16億円

・難治性がん、小児がん等の希少がんを中心に、革新的診断法・治療薬の実用化のための質の高い臨床試験が推進されます。

B 型肝炎の創薬実用化研究等の推進 28億円

B 型肝炎の画期的な新規治療薬の開発等を目指し、基盤技術の開発を含む創薬研究や、治療薬としての実用化に向けた臨床研究等が総合的に推進されます。

③気分障害の診断・治療研究の推進 50百万円

・うつ病などの気分障害の客観的な診断法や病態メカニズムに応じた効果的な治療法の研究・開発が推進されます。

④希少疾病用医薬品・医療機器の開発支援 2億円

・極めて患者数の少ない希少疾病に効果のある医薬品・医療機器の開発に取り組む企業への助成率の引上げ等、開発支援の充実が図られます。

⑤再生医療、iPS 細胞研究等の推進 12億円

iPS 細胞等ヒト幹細胞を用いた再生医療技術の基盤を構築するとともに、臨床応用に向けた免疫拒絶対策等の研究、iPS 細胞から分化・誘導した細胞による創薬・医薬品の安全性評価への応用が推進されます。

⑥個別化医療の推進 13億円

・個人のゲノム情報に基づく個別化医療の推進に必要な基盤を整備するため、国立高度専門医療研究センターが連携してバイオバンクを整備し、収集した生体試料を活用した研究が推進されます。

(2)   臨床研究中核病院等の整備及び機能強化に34億円。

(内訳)

①臨床研究中核病院の整備 26億円

・日本の豊富な基礎研究の成果から革新的な医薬品・医療機器を創出するには、質の高い臨床研究のデータをもとに薬事承認につなげる必要があることから、国際水準(ICH-GCP準拠)の臨床研究の実施や医師主導治験の中心的役割を担うとともに、最適な治療法を見いだすための臨床研究を実施する基盤として、臨床研究中核病院が5 箇所整備されます。

うち1箇所は、被災地域での革新的な医薬品・医療機器創出拠点の形成を通じ、質の高い臨床研究を実施するとともに産業集積、新産業創出により復興を図ることを目的として、復旧・復興対策経費により整備されます。

②国際水準で実施する臨床研究等の支援 8億円

・臨床研究中核病院での国際水準の臨床研究を支援するとともに、国立高度専門医療研究センターの体制整備を行い、臨床研究等が支援されます。

(3)   技術の進歩に対応する薬事承認審査・安全対策の向上に21億円。

(内訳)

①安全性・有効性の評価法の確立、人材の育成 12億円

・革新的な医薬品・医療機器・再生医療製品の、臨床上の評価に関するガイドライン(審査の方針、実用化研究において考慮すべき安全性と有効性確保のための考え方)を国が作成するため、最先端の技術を研究している大学等におけるレギュラトリーサイエンス(※)を基盤とした安全性と有効性の評価法の確立が支援されます。

※レギュラトリーサイエンス:科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学。

・開発途上の最先端の技術の安全性と有効性を評価できる人材を育成するため、その大学等、国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の間で人材交流を行います。

②薬事承認審査の迅速化に必要なガイドラインの作成に向けた研究の推進等 3.7億円

・革新的な医薬品・医療機器・再生医療製品について、安全性と有効性を確保しつつ審査を迅速化するため、NIHSPMDA において審査に必要なガイドライン作成の基盤となるレギュラトリーサイエンス研究が推進されます。

・革新的な医療機器の承認後における安全かつ適正な使用を確保するため、関連学会と連携して、医療機器を使用する際の人的・施設的要件に関するガイドラインを作成します。

③安全対策の強化 3.5億円

・新技術の未知のリスクに対応し、医薬品・医療機器・再生医療製品の安全対策の強化・充実を図るため、PMDA において大規模医療情報データベースを安全対策に活用するための分析手法を開発します。

・特に安全性情報が限られる小児への医薬品の使用情報を収集するため、独立行政法人国立成育医療研究センターに「小児と薬情報センター」が設置されます。

④生産・流通のグローバル化への対応 1.8億円

・医薬品・医療機器・再生医療製品開発のグローバル化に対応した審査体制を整備するため、海外主要国における医薬品・医療機器・再生医療製品の承認情報についてこれまでの承認情報を整理するとともに、新規の承認情報をタイムリーに把握し、データベースが構築されます。

・個人輸入される偽造医薬品等の監視・取締りや啓発に活用するため、健康被害や医薬品等の不正な輸入に関する情報を収集するホットラインを設置するとともに、消費者に偽造医薬品等に関する注意啓発が行われます。

(4)費用対効果を勘案した医療技術等の評価に関する研究・調査に7千5百万円。

・医療技術等の保険償還価格の設定に関し、さらなるイノベーションの評価や、開発のインセンティブを確保しつつ費用対効果を勘案した技術等の評価を行うため、海外報告事例の調査や適応の可能性についての検討等が行われます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(9)

2012 年 1 月 8 日 日曜日

<貧困・格差対策の強化>には、求職者支援制度による職業訓練や給付金の支給等を通じた就職支援に1479億円が計上されています。

また、セーフティネット支援対策等事業費補助金(237億円)の使途として、次の事業が行われます。

     生活保護受給者の就労・自立支援対策(トランポリン機能)の強化

生活保護受給者や生活保護に至るおそれのある者のうち、通常の就労支援では直ちに就職には結びつきにくい方を対象に、生活のリズムづくりなど基本的な日常生活習慣の改善支援、就職に結びつきやすい清掃・警備・介護などの基礎技能の習得支援、能力に合わせたきめ細かい個別求人開拓等の取組が総合的に実施されます。

②子どもの貧困対策支援の充実(「貧困の連鎖」の防止)

生活保護世帯などの子どもやその親への養育相談・学習支援等を実施し、生活保護世帯の子どもが大人になって再び生活保護を受給するといった「貧困の連鎖」の防止が図られます。

     地域生活定着促進事業の実施

高齢又は障害により自立が困難な矯正施設退所者の社会復帰や地域生活への定着をより促進するため、各都道府県の「地域生活定着支援センター」と保護観察所が協働して、入所中から退所後まで一貫した相談支援が行われます。

このほか、貧困・格差に関する指標の開発に3百万円が計上され、貧困・格差の実態を総合的・継続的に把握し、施策に反映できるよう、各国の指標を参考としながら、客観的な貧困・格差の指標を開発するための検討会が開催されます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(8)

2012 年 1 月 7 日 土曜日

重層的なセーフティネットの構築のため、雇用調整助成金を活用した企業の雇用維持努力への支援の実施に2101億円が計上され、雇用調整助成金や中小企業緊急雇用安定助成金を活用し、引き続き労働者の雇用の維持に取り組む事業主が支援されます。

雇用保険制度によるセーフティネットの確保には 1714億円が計上され、リーマン・ショック以降の雇用失業情勢の悪化に対応するための給付日数の延長(個別延長給付)等の暫定措置(平成23年度末までの措置)について、依然として厳しい雇用失業情勢にあることなどから、2年間の延長の措置が講じられます。

失業等給付に係る雇用保険料率は平成24年4月1日から1.2%を1.0%に引き下げられる予定です。

なお、失業等給付費は1兆7790億円が計上されています。

求職者支援制度による職業訓練や給付金の支給等を通じた就職支援には1479億円が計上され、東日本大震災の影響による全国的な雇用の悪化への対応を含め、「求職者支援制度」により、雇用保険を受給できない求職者に対し、求職者が新たな職業能力や技術を身につけるための職業訓練が実施されるとともに、訓練期間中の生活を支援するための給付金が支給されること等により、求職者の早期の就職支援が行われます。

「福祉から就労」支援事業の拡充には40億円が計上され、自治体とハローワークの協定等による連携を基盤とし、生活保護等の福祉給付受給者を対象に、申請段階等からの早期アプローチ、求人開拓、能力開発を通じたマッチングや定着に向けたフォローアップ等就労支援の強化が図られます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(7)

2012 年 1 月 6 日 金曜日

<ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現>については、まず、有期労働契約に関する新たなルールの整備に5千3百万円が計上され、有期労働契約によって働く労働者について、雇用の安定や公正な処遇の実現に向けた法制度の整備について検討されます。

パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保と正社員転換の推進には5億円が計上され、パートタイム労働法に基づく指導、専門家による相談・援助や職務分析・職務評価の導入支援が行われるほか、パートタイム労働者の公正な待遇の確保に向けた法制度の整備についての検討されます。

過重労働の解消等のための働き方・休み方の見直しには11億円が計上され、都道府県労働局に働き方・休み方の改善のためのコンサルタントが配置され、恒常的な長時間労働などの実態がみられる業種や職種を重点に過重労働の解消に取り組むとともに、計画年休制度の導入促進などにより、年次有給休暇の取得が促進されます。

職場でのメンタルヘルス対策の推進には36億円が計上され、ストレス症状を有する人への面接指導制度の創設や、産業医が他の医師等と連携してメンタルヘルス対策を実施する体制の整備に向けた法令等の整備が行われます。

また、事業場でのメンタルヘルス対策を含めた産業保健活動の支援の充実が図られます。

職場での受動喫煙防止対策の推進には7.4億円が計上され、職場の全面禁煙または空間分煙等による受動喫煙防止対策の事業者への義務付けなどの法令等の整備が行われます。

また、受動喫煙防止対策に係る相談対応等の技術的支援や、喫煙室設置に係る財政的支援が推進されます。

最低賃金引上げにより最も影響を受ける中小企業への支援と最低賃金の遵守の徹底には41億円が計上されています。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(6)

2012 年 1 月 5 日 木曜日

<就労促進>については、全員参加型社会の実現として、「大学生現役就職促進プロジェクト」の推進等による新規学卒者等の就職支援の強化に112億円が計上されています。

大学の未就職卒業者等の減少を図り、将来の日本を担う人材として育成するため、「新卒応援ハローワーク」を拠点としてジョブサポーターを配置し、主に現役大学生を対象に、ジョブサポーターの大学への恒常的な出張相談や、大学等の協力を得て未内定者の全員登録・集中支援などを行う「大学生現役就職促進プロジェクト」を実施するなど、新規学卒者等への就職支援の強化が図られます。

また、東日本大震災の被災地の新卒者・既卒者等への就職支援も強化されます。

「若者ステップアッププログラム」によるフリーター等の就職支援の強化には65億円が計上され、個別支援など専門的支援を中核として、トライアル雇用の活用や職業訓練の活用等が推進されます。

大都市部には、支援拠点が設置されます。

ジョブ・カード制度の推進には105億円が計上され非正規労働者等のキャリア・アップが支援されます。

「ジョブ・カード」の対象となる訓練が公的な訓練全般(公共職業訓練や求職者支援制度による訓練)に拡大されます。

また、求職者と求人企業とのマッチングでの活用の促進や、「ジョブ・カード普及サポーター企業」の開拓等により「ジョブ・カード」の取得促進が図られ、キャリア形成支援の観点から、「ジョブ・カード」の対象者が中小企業等の在職労働者や大学生等に拡大されます。

女性の就業の拡大(就業率のM字カーブの解消)には120億円が計上され、男女雇用機会均等対策の推進、育児休業、介護休業等を利用しやすい職場環境の整備が図えあれます。

子育て中の女性等がその能力を発揮できる職場を確保できるよう、マザーズハローワーク事業の設置拠点が拡充(168箇所→173箇所)されます。

希望者全員の65歳までの雇用確保には44億円が計上され、公的年金支給開始年齢(報酬比例部分)の65歳への引上げが平成25年度から開始されることに伴い、65歳まで希望者全員の雇用が確保されるよう雇用と年金を確実に接続させるための法整備について検討されるとともに、定年を控えた高年齢者でその知識や経験を活かすことができる他の企業での雇用を希望する者を職業紹介事業者の紹介により雇い入れる事業主への助成など、企業の取組への必要な支援が行われます。

雇用率達成指導の強化、地域の就労支援力の更なる強化には82億円が計上され、中小企業に重点を置いた雇用率達成指導や就職面接会が実施されるとともに、雇用と福祉の連携のための「障害者就業・生活支援センター」の拡充(322箇所→327箇所)・機能強化が図られます。

障害特性・就労形態に応じたきめ細かな支援策の充実・強化には29億円が計上され、ハローワークでの精神障害者や発達障害者への支援体制や在宅就業障害者への支援の充実が図られます。

成長分野の人材育成の推進には2053億円が計上され、介護・福祉、医療、子育て、情報通信等の成長分野について、民間教育訓練機関等を活用した実践的な公共職業訓練及び求職者支援訓練が推進されるとともに、訓練修了者への就職支援が強化されます。

また、環境・エネルギー分野など、今後成長が期待される分野で、事業主等への委託による職場での実施を主体とした実践的な職業能力を付与する職業訓練の実施(成長分野人材育成プログラム)が推進されるとともに、事業主団体、大学等と連携し、カリキュラムの開発等が行われます。

新事業展開地域人材育成支援事業の推進には1億円が計上され、地場産業が集積する地域の業界団体等(事業協同組合等)が教育訓練機関と連携し、新たな事業展開を図る企業に対し、教育訓練カリキュラムの開発・教育訓練の実施等の支援を行うことにより、地域の活性化・雇用の確保を図る観点で地場産業を支える企業の人材育成支援が行われます。

東日本大震災復興特別会計(仮称)の主な施策(3)

2012 年 1 月 4 日 水曜日

今後の災害への備えのための予算は次の通りです。

○医療情報連携・保全基盤の整備 9.5億円

・医療機関の主要な診療データを、平時から標準的な形式で外部保存しバックアップすることにより、災害時にも過去の診療情報を参照できる手段を確保し、継続した医療の提供を可能とするとともに、平常時には連携医療機関相互でデータの閲覧を可能とし、質の高い地域医療連携に活用できる医療情報連携・保全基盤を整備する。

○災害時の安心につながる在宅医療連携体制の推進 10億円

・災害が発生した場合にも在宅医療を必要とする人が安心して医療サービスを受けることができるよう、地域での多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療の提供に向け、医療機関等による連携を推進するとともに、災害時の在宅医療に必要な備品の整備を併せて行う。

○災害時の障害児・者への福祉サービス提供体制の基盤整備 45億円

・災害時に、障害福祉サービス事業所や障害児施設等に障害児・者の緊急の受入が可能となる設備等を備えた防災拠点等の整備を推進する。

○水道施設の防災対策 176億円

・東日本大震災を教訓として、東海地震や東南海・南海地震など、大地震の切迫性が高いと想定される地域での水道施設の耐震化を推進する。

なお、基幹管路の耐震化率は平成22年度は31%でした。

○発達障害者への災害時支援 4千5百万円

・発達障害者支援センター等の関係機関の連携による災害時の対応や避難場所の確保など、災害時の支援に効果的な方法等のマニュアルを作成する。

○国立高度専門医療研究センターによる東日本大震災からの医療の復興に資する研究 5億円

・被災地の医療復興を実現するため、国立高度専門医療研究センターの専門性を活かして、個別の疾患等の特性に応じた在宅医療や心のケアに関する研究を実施する。

東日本大震災復興特別会計(仮称)の主な施策(2)

2012 年 1 月 3 日 火曜日

原子力災害からの復興のための予算は次の通りです。

○放射性物質による食品等の汚染に対する取組みへのWHO 等による支援 9千5百万円

WHOや国際がん研究機関(IARC)が食品等に関する検査等に対して助言や諸外国から信頼される情報発信等の支援を行うに当たり必要な費用を拠出する。

○食品中の放射性物質対策の推進 2億円

・食品中の放射性物質の安全対策を推進するため、新たに設定する基準値について、食品の汚染状況や摂取状況を調査し、継続的に検証するとともに、国において流通段階での買上調査を実施するなどの対策を推進する。

○自治体における食品中の放射性物質の検査体制の整備支援等 5.1億円

・食品中の放射性物質の安全対策を推進するため、新たに設定する基準値の下で円滑にモニタリング検査が行えるよう、自治体の検査機器の整備に対して補助を行うとともに、食品中の放射性物質に関する調査研究を行う。

東日本大震災復興特別会計(仮称)の主な施策(1)

2012 年 1 月 2 日 月曜日

東日本大震災の被災者が暮らしを再生するための予算は次の通りです。

○水道施設の復旧・復興 200億円

・東日本大震災の津波等で甚大な被害を受けた地域で、都市計画の見直しを伴うなど、通常の原形復旧では対応できない水道施設の復旧・復興を図る。

(災害救助の実施)

○災害救助法による災害救助 494億円

・東日本大震災による被災者の方々の住居の安定を図るなど、応急救助に必要な経費を負担する。

(雇用の確保)

○求職者支援制度による職業訓練や給付金の支給等を通じた就職支援(東日本大震災復興特別会計(仮称)から労働保険特別会計雇用勘定への繰り入れ) 76億円

・東日本大震災の影響による全国的な雇用の悪化への対応を含め、「求職者支援制度」により、雇用保険を受給できない求職者に対し、求職者が新たな職業能力や技術を身につけるための職業訓練を実施するとともに、訓練期間中の生活を支援するための給付金を支給すること等により、求職者の早期の就職支援を行う。

○新規学卒者等の就職支援の強化 4.4億円

・来春以降の新規学卒者等については、東日本大震災の影響により特に被災地域の就職環境が厳しい状況であることが見込まれるため、被災地域を中心に重点的にジョブサポーターを配置し、学校との連携を強化し新卒者等の支援を行う。

・就職面接機会の継続的な提供を行える体制を整備し、各種就職面接会を実施し、多くの就職機会の提供を図る。

○自治体等と連携した被災求職者等への生活・就労総合支援事業の実施 13億円

・自治体や震災復旧・復興支援等を行う機関とハローワークが連携し、住居・生活に関する総合的な相談・援助を行うほか、被災求職者等を対象に、担当者制による職業相談・職業紹介、求人開拓、能力開発を通じたマッチングや定着に向けたフォローアップ等のきめ細かい就労支援を実施する。

○被災地域の復興に向けた臨床研究中核病院の整備 5.1億円

・被災地域での革新的な医薬品・医療機器創出拠点の形成を通じ、質の高い臨床研究を実施するとともに産業集積、新産業創出により復興を図ることを目的として、国際水準の臨床研究の実施や医師主導治験の中心的役割を担う基盤となる、臨床研究中核病院を1箇所整備する。

○被災地域の復興に向けた国際水準で実施する臨床研究等の支援 1億円

・被災地域での革新的な医薬品・医療機器創出拠点の形成を通じ、質の高い臨床研究を実施するとともに産業集積、新産業創出により復興を図ることを目的として、臨床研究中核病院での国際水準の臨床研究を支援する。

○被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援 10億円

・革新的な医薬品・医療機器を創出するとともに、産業のさらなる発展や雇用の創出を通じた震災からの復興に貢献することを目指して、被災地域での大学、研究機関発のシーズ開発を後押しし、臨床研究及び医師主導治験を支援する。

○東日本大震災の影響を受けた母子家庭等への経済的支援 8億円

・東日本大震災の影響を受けた母子家庭等に対し、母子寡婦福祉貸付金による経済的支援を行う。

○被災した生活衛生関係営業者への支援 1.4億円

・東日本大震災により被災した営業者自らが復興の担い手となるよう、被災した営業者の営業再開を支援する。

○災害時の福祉支援ネットワークの構築 5.2億円

・災害時において災害弱者(高齢者・障害者等支援が必要な方々)に対し緊急的に対応を行えるよう、民間事業者、団体等の広域的な福祉支援ネットワークを構築し、災害対策の強化を図る。

○東日本大震災復旧・復興工事に係る安全衛生確保支援対策 1千万円

・復旧・復興工事現場におけるアスベスト濃度の簡易測定方法の開発、復旧・復興工事に伴う労働災害の分析及び予防対策に関する調査研究を行う。

○医療保険制度の一部負担金減免等の特別措置 98億円

・東京電力福島第一原発の事故により設定された警戒区域等の住民の方について、医療保険の一部負担金や保険料の減免等の措置を延長する場合に、保険者の負担を軽減するための財政支援を行う。

○介護保険制度の利用者負担減免等の特別措置 44億円

・東京電力福島第一原発の事故により設定された警戒区域等の住民の方について、介護保険の利用者負担や保険料の減免の措置を延長する場合に、保険者等の負担を軽減するための財政支援を行う。

○障害福祉サービス等の利用者負担免除の特別措置 1千6百万円

・東京電力福島第一原発の事故により設定された警戒区域等の住民の方について、その利用者負担の免除の措置を延長する場合に、市町村等の負担を軽減するための財政支援を行う。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(5)

2011 年 12 月 31 日 土曜日

<年金>については、年金の国庫負担として8兆945億円が計上されています。

これ以外に、税外財源として2兆4879億円と運用収入相当額とを合算した額の「年金交付国債」(仮称)が発行される予定ですが、これは、将来、税によって償還されます。

平成24年度の基礎年金国庫負担割合は、歳出予算(36.5%分)と「年金交付国債」(仮称)によって2分の1が確保されます。

かつて特例法でマイナスの物価スライドを行わず年金額を据え置いたことにより本来の年金額より2.5%高い水準の年金額で支給している措置については、本来の水準に計画的に引き下げられます。

平成24年度から平成26年度の3年間で解消され、平成24年10月から0.9%引下げられます。

紙台帳とコンピュータ記録との突合せの促進には660億円が計上されています。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(4)

2011 年 12 月 30 日 金曜日

地域ケア多職種協働推進等事業に7.7億円が計上されています。

地域包括支援センターの医療・介護等の多職種連携機能を強化するため、ネットワーク構築や多職種連携の場である地域ケア会議の運営の指導的な役割を担う人、専門的な助言を行うOTPT、地域保健の医師・保健師や管理栄養士等の専門職の確保を支援する事業が行われます。

認知症を有する人の暮らしを守るための施策の推進には29億円が計上され、市町村での認知症施策の推進(認知症地域支援推進員を中心に医療、介護や生活支援サービスが有機的に連携したネットワークの構築)、地域での市民後見活動の仕組みづくりの推進(市民後見人を育成と活動支援)が行われます。

福祉用具・介護ロボットの実用化の支援には8千3百万円が計上され、試作段階の機器等を用いた臨床的評価やモニター調査等を通じ、実用的な機器の開発に資するスキームの構築が図られます。

市町村介護予防強化推進事業には2.8億円が計上され、閉じこもりやうつ等により通所での事業参加が困難な高齢者に対し、生活機能の低下予防に効果的な訪問型介護予防プログラムを開発し、全国へのマニュアル提示などが行われます。

後発医薬品の使用促進には4.8億円が計上され、後発医薬品の品質・安定供給の確保、情報提供の充実や普及啓発等による環境整備に関する事業等が引き続き実施されるとともに、後発医薬品の更なる信頼性向上のため、評価基準の検討や、これまでの取組への検証

等が行われます。

新型インフルエンザ対策の強化には3百万円が計上され、新型インフルエンザ発生時に、地域の発生状況に応じ都道府県ごとに実施すべき対策を判断するため、国と都道府県等が危機管理の観点から連携強化が図られます。

小児がん拠点病院の機能強化には4億円が計上され、診療や緩和ケアを行うがん医療従事者の育成、小児がん患者への相談支援や療育環境を確保するためのプレイルームの運営等に必要な経費について財政支援が行われます。

難病患者の生活支援等の推進(特定疾患治療研究事業)には350億円が計上され、都道府県の超過負担が縮減されます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(3)

2011 年 12 月 29 日 木曜日

個別の疾患等に対応したサービスの充実・支援には11億円が計上されています。

(内訳)

①国立高度専門医療研究センターによる在宅医療等推進のための研究事業に6.4億円。

国立高度専門医療研究センターの専門性を活かして、個別の疾患等の特性に応じた研究が実施されます。

②在宅医療推進のための医療機器の承認の促進に1千4百万円。

在宅医療の現場で必要とされている医療機器について、その特性を踏まえて迅速な薬事承認のための指針の策定等が進められます。

③在宅医療推進のための看護業務の安全性等の検証に7千万円。

専門的な臨床実践能力を有する看護師が医師の包括的指示を受け、看護業務を実施できる仕組みの構築に向け、業務の安全性や効果の検証が行われます。

④在宅介護者への歯科口腔保健の推進に1億円。

在宅介護者(在宅療養者を介護する家族等)への歯科口腔保健の普及推進を通じて在宅療養者の健康の保持・向上を図るため、歯科診療所が訪問歯科診療等により行う歯科診療の

予防に向けた取組みに必要な口腔内洗浄装置等が整備されます。

⑤在宅緩和ケア地域連携事業に1.1億円。

がん診療連携拠点病院が都道府県と連携して二次医療圏内の在宅療養支援を行う医療機関の協力リストを作成し、連携機能を強化するとともに、在宅緩和ケアを専門とする医師等と協力して在宅療養支援を行う医師等に対して在宅緩和ケアの知識や技術の向上を図る研修が実施されます。

⑥難病患者の在宅医療・介護の充実・強化事業に4千5百万円。

在宅難病患者の日常生活支援の強化のため、医療・介護従事者研修の実施や災害時の緊急対応に備え、重症神経難病患者の受入機関確保のための全国専門医療機関ネットワークの構築等を通じて包括的な支援体制の充実・強化が図られます。

⑦HIV感染者・エイズ患者の在宅医療・介護の環境整備事業に4千万円。

HIV 感染者・エイズ患者の在宅医療・介護の環境を整備するため、訪問看護師や訪問介護職員への実地研修、かかりつけ医や地域の歯科医への講習会等が実施されます。

⑧在宅での疼痛緩和のための医療用麻薬の適正使用の推進に5千2百万円。

地域単位での医療用麻薬の在庫管理システムを開発・活用するモデル事業等を実施するとともに、医療用麻薬の適正使用の推進に向けた普及啓発が行われます。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(2)

2011 年 12 月 28 日 水曜日

<医療・介護等>については診療報酬の国庫負担として10兆1962億円、介護報酬の国庫負担として2兆4033億円が計上されています。

診療報酬本体は概ね5500億円の引上げで、急性期医療従事者の負担軽減・処遇改善の推進、早期の在宅療養への移行や地域生活の復帰に向けた取組の推進、医療と介護等との機能分化や円滑な連携の強化、在宅医療の充実、がん治療・認知症治療の充実が図られます。

国民健康保険制度の公費負担については、財政運営の都道府県単位化を円滑に進めるため、都道府県調整交付金が給付費等の7%から9%に引き上げられ、国の定率負担は給付費等の32%となります。

介護報酬は1.2%の改定率で、介護職員の処遇改善、施設から在宅介護への移行、自立支援型サービス(24時間定期巡回・随時対応サービスなどの在宅サービス、リハビリテーションなど)の強化が図られ、介護予防・重度化予防については効率化・重点化する方向で見直しが行われます。

地域医療確保対策には92億円が計上され、次の事業が行われます。

(1)地域医療支援センターの整備の拡充に7.3億円。

都道府県が設置する「地域医療支援センター」の箇所数が拡充され、医師の地域偏在解消に向けた取り組みが推進されます。

(2)専門医の在り方に関する検討に2千7百万円。

地域に必要な専門医がバランスよく分布するよう、診療領域別の必要医師養成数の実態把握や総合的な診療能力を有する医師の在り方を含め、専門医に関して幅広く検討が行われます。

(3)チーム医療の普及推進に2.4億円。

質の高いチーム医療の実践を全国の医療現場に普及定着させ、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等医療関係職種の業務の効率化・負担軽減等を図ります。

(4)医療情報連携・保全基盤の整備に9.5億円。

医療機関の主要な診療データを平時から標準的な形式で外部保存しバックアップすることにより、災害時にも過去の診療情報を参照できる手段を確保し、継続した医療の提供を可能とするとともに、平常時には連携医療機関相互でデータの閲覧を可能とし、質の高い地域医療連携に活用できる医療情報連携・保全基盤が整備されます。

在宅医療・介護の推進には35億円が計上され、次の事業が行われます。

(1)在宅チーム医療を担う人材の育成に1.1億円。

地域で在宅医療を担う人材(指導者)を養成するための多職種協働研修などを行うことにより、在宅医療を担う人材の知識・技術の向上やチーム医療の展開が図られます。

(2)実施拠点となる基盤の整備に23億円。

(内訳)

①在宅医療連携体制の推進に21億円。

多職種協働による在宅療養中の患者の支援体制を構築し、地域での包括的かつ継続的な在宅医療の提供に向け、在宅医療を提供する医療機関等による連携を地域や疾患の特性に応じて推進します。

②在宅医療を提供する拠点薬局の整備に1.6億円。

がん患者等の在宅医療を推進するため、高い無菌性が求められる注射薬や輸液などを身近な薬局で調剤できるよう、地域拠点薬局の無菌調剤室の共同利用体制をモデル的に構築します。

③栄養ケア活動の支援に5千2百万円。

栄養ケアの支援体制を構築するため、地域で栄養ケアを担う管理栄養士等の人材の確保、関係機関等と連携した先駆的活動を行う公益法人等の取組の推進を図ります。

④在宅サービス拠点の充実(地域介護・福祉空間整備推進交付金13億円の内数)

小規模多機能型居宅介護と訪問看護のサービスを組み合わせた「複合型サービス事業所」、訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応サービス」、訪問看護ステーションの大規模化やサテライト型事業所の開設に必要な備品購入費等の支援を行います。

⑤低所得高齢者の住まい対策(地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金等57億円の内数)

小規模な養護老人ホームの整備に対する支援、小規模な養護老人ホーム及び都市型軽費老人ホームの開設に必要な備品購入費等の支援を行います。

厚生労働省平成24年度予算案のポイント(1)

2011 年 12 月 27 日 火曜日

<Ⅰ 子ども・子育て支援>

・子どものための手当の恒久化

・待機児童の解消等

<Ⅱ 医療・介護等>

・地域の実情に応じたサービス提供体制の効率化・重点化と機能強化

・社会保障制度のセーフティネット機能の強化・給付の重点化

<Ⅲ 年金>

・信頼できる年金制度の確立

・短時間労働者への適用拡大

<Ⅵ 医療イノベーションの推進>

・臨床研究中核病院等の整備

・技術の進歩に対応する薬事承認審査・安全対策の向上

<Ⅴ 貧困・格差対策の強化>

・低所得者対策の強化

・社会保険の適用拡大

・重層的セーフティネットの構築、生活保護制度の見直し

<Ⅳ 就労促進、ディーセント・ワークの実現>

・高齢者雇用対策、有期労働契約、パートタイム労働対策、雇用保険制度の見直し

・総合的ビジョン、若年者雇用対策

<Ⅶ 障害者施策>

・総合的な障害者施策の充実

が、主要施策です。

<子ども・子育て支援>のうち子どものための手当制度予算は1兆2843億円です。

給付費総額2兆2857億円のうち国庫(厚生労働省)負担分が計上されていますが、これ以外に他の所属省庁から支給される国家公務員分が441億円あります。

所得制限額(子ども2人で960万円)未満の被用者に対する3歳未満の子どもに係る手当の費用の15分の7を事業主が負担し、その他の子どもに係る手当の費用を国と地方(都道府県と市町村の負担割合は1対1)が2対1の割合で負担する仕組みです。

待機児童解消策の推進など保育サービスの充実には4304億円が計上されています。

保育所等の受入児童数の拡大(約5万人)を図り、また、延長保育、休日・夜間保育、病児・病後児保育などの充実を図るための予算です。

放課後児童クラブの充実には308億円が計上されています。

虐待を受けた子ども等への支援には未成年後見人に対する報酬等の補助制度の創設や児童虐待防止医療ネットワークの推進のため915億円が計上されています。

 

児童養護施設等での被虐待児等の社会的養護の充実のためにも942億円が計上されています。

厚生労働省平成24年度予算案の全体像

2011 年 12 月 26 日 月曜日

厚生労働省の新年度一般会計予算案は26兆6873億円で、対前年度比7.9%減です。

減額は2兆2765億円ですが、基礎年金国庫負担の一部に(将来の増税で償還される)「年金交付国債」(仮称)で2兆4879億円を充てることになっていますので、税負担の先送り分も併せると実質は2114億円の増額ということになります。

また、東日本大震災復興特別会計(仮称)として別に1276億円が計上されています。

このほか、地方に「子どものための手当」(仮称)の負担増を2803億円強いる案となっています。

社会保障関係費は26兆2152億円で、厚生労働省予算の98%超を占めています。

従来、社会保障関係費で最も多く支出されていたのは年金予算でしたが、「年金交付国債」への挿げ替えのため、医療予算がトップに躍り出ました。

医療予算は10兆2442億円で対前年度3193億円(3.2%)増です。

伸び率が最も大きいのは介護予算で、1355億円(6.1%)の増で2兆3392億円です。

新年度の厚生労働省の組織・定員体制

2011 年 12 月 25 日 日曜日

昨日、来年度政府予算原案が固まりました。

同時に、その予算を執行するための組織・定員も確定しています。

厚生労働省では、労働基準局労働条件政策課に「医療労働企画官」というポストが新設されます。

医療従事者の勤務環境を改善する体制の強化です。

職業安定局雇用政策課には「雇用復興企画官」が新設され、東日本大震災からの雇用復興に向けた体制が強化されます。

このほか、社会・援護局地域福祉課には「社会的困窮者自立支援室」が、健康局には「がん・健康対策課」が設置されます。

厚生労働省の総定員は32485人ですが、合理化等によって870人減員したうえで体制強化のために598人増員されます。

増員の主な内訳は、社会保障・税一体改革の推進(大卒者等の就職支援、貧困・格差対策、子ども・子育て新システム等)、震災・原発対策(被災者に対する公共職業安定所の就職支援、東電福島第一原発における労働者の健康確保、震災で親を亡くした子ども等の心のケア等)とB型肝炎ウイルス感染者に対する給付金支給に係る体制強化です。

高齢者医療の行方

2011 年 11 月 27 日 日曜日

今月に入ってより頻繁に開催されるようになった中医協や介護給付費分科会に重ね、社会保障審議会の介護保険部会、医療部会、医療保険部会が相次いで開催されています。
24日には医療保険部会も開催されました。
医療保険の課題として最も大きい課題である「高齢者医療制度の見直し」が、この日の医療保険部会の議事でした。
民主党はマニフェスト2010に「後期高齢者医療制度は廃止し、2013年度から新しい高齢者医療制度をスタートさせます」と明記し、それが三党連立政権合意ともなっていますので、見直しを先延ばしするわけにもいきません。
高齢者医療制度の見直しについては「高齢者医療制度改革会議」という厚生労働大臣主宰の会議で昨年末に方針が示されていますが、審議会報告ではありませんので法的効力はありません。
二度手間となってしまいますが、社会保障に関わる重要な政策ですので、社会保障審議会に諮ることが必要です。
高齢者医療制度改革会議が示した構想は、後期高齢者医療制度を廃止し、75歳以上の高齢者は既存制度に戻して保険料は世帯主がまとめて納めるというものです。
これだと、多くの高齢者が国保に戻ることになり市町村国保間の保険料格差が復活します。
そこで、75歳以上については国保の財政運営を都道府県単位とし、75歳以上の財政負担(高齢者自身の負担金1割、現役世代からの支援金4割、公費5割)は現行通りとする構想となっています。
この構想では現役世代からの支援金の多くを請け負っている被用者保険の負担が増しますので、被用者保険においても75歳以上に国保と同じ財政負担が導入されます。
将来的には全年齢を対象に国保を都道府県単位の財政運営とする構想ですが、その実現には利害調整等で多大な困難が予想されますので、改革後も当分の間は75歳以上の制度運用が明確に区分されることになります。
70~74歳の一部負担金については、70歳に達した方から段階的に2割負担となります。
65~74歳については現行の保険者間の財政調整の仕組みが継続されます。
これらの構想に対し、全国知事会は新制度は看板の掛け替えに過ぎず新たな不公平が発生すること、高齢者の受益と負担を明確化し保険料負担の公平化を図った現行制度が定着していることなどを理由に新制度へ移行する必要はないという意見書を提出しています(10月24日)。

政策仕分け(2)

2011 年 11 月 24 日 木曜日

短時日で「医療」の仕組みの全貌を理解することは困難です。
そのため、社会保障審議会や中医協では、仕組みへの理解が深い当事者たちが、長い年月をかけて綿密な議論を重ねています。
しかし、「提言型政策仕分け」では、医療の当事者でない「仕分け人」たちが、限られた時間で結論を導こうとしています。
今回、彼らが導いた結論は、診療報酬の本体部分の「据え置き」が6人、「抑制」が3人でした。
本体部分というのは、人件費に反映する部分です。
医療費の半分近くは人件費として医療従事者の給与として支払われています。
わが国の医療は、医療ニーズの増大に対応すべく、毎年、医療従事者の絶対数が3%前後の伸びで増加し続けています。
医師数の伸び率は2.2%、看護師数の伸び率は3.4%、PT数、OT数、言語聴覚士数の伸び率はそれぞれ11%です。
医療従事者の需要増に応じ、医療従事者を養成する高等教育機関も増加の一途です。
医療従事者数の増加は、これらの養成機関を相当数閉鎖しない限りは止められません。
診療報酬の本体部分の据え置きや抑制を主張する「仕分け人」は、それが医療従事者の絶対数を増やすな、あるいは減らせと言っているのと同義であることに気付いているのでしょうか。
あるいは、医療従事者の給与を毎年3%ずつ削れと言っているのと同義であることに気付いているのでしょうか。
「仕分け人」たちはまた、医師不足改善のため、開業医と勤務医の報酬配分を大胆に見直すことを要求しました。
開業医の診療報酬配分を薄くせよ、という主張です。
低コスト体質の診療所に患者が集中するのと、高コスト体質の病院に患者が集中するのと、どちらが日本の総医療費の抑制に役立つのかの大局的見地に立てば、また、どちらが病院勤務医の真の負担軽減となるかを考えれば、開業医への患者の政策誘導を真剣に考えるべきところです。
また在宅医療の担い手としても開業医を有効活用しなければなりません。
診療報酬を手厚くしても医師の絶対数が増えるわけではなく、医師不足対策とはなりません。
診療報酬が手厚くなったところへ医師が偏在するだけです。
勤務医の付加価値を高めれば高めるほど大病院による囲い込みが進み、医師不足に拍車がかかります。
これは、看護師の付加価値を高めた過去の診療報酬改定の際に経験的に学んだことです。
医師不足の本質が医師の偏在にあるということを「仕分け人」たちは理解しているのでしょうか。

政策仕分け(1)

2011 年 11 月 23 日 水曜日

昨日(22日)は「政策仕分け」の3日目で、医療、介護、年金などの社会保障がテーマでした。

イラストや図表を用いて日本の社会保障の厳しい現実が説明され、仕分け人からは、社会保障の分野で効率化できることについて、聖域なく、最後まできちんと効率化すべきとの強い意見が出されています。

社会保障制度については「継続」させること以外の選択肢はありません。

すなわち、現実が厳しいのであれば給付(額、サービス)の削減や保険料や税金の負担増を行うしかありませんが、効率化によって節約できる余地があるのであれば、そちらが先決です。

医療の効率化は、制度上の効率化だけではなく、現場レベルでの効率化の積み上げが必要です。

制度上の効率化は、病床区分の機能分化など、改善の余地がありますが、現場レベルで制度改正によって余剰となった資源(人材など)が有効活用されずに放置されれば、総体として非効率です。

現場レベルでの非効率(無駄)が積み重なれば、全国的には大きな無駄となります。

現場レベルでの効率化とは、結局は医療経営をしっかりと行うことに尽きます。

医療経営の効率化には、医療経営の素養が必要ですが、本学は、その素養を身に付けた人材を輩出するために設立されています。

在宅医療の充実のための新年度予算要求

2011 年 11 月 15 日 火曜日

在宅医療を提供する機関(在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所・訪問看護ステーション等)を連携拠点として、多職種協働による在宅医療の支援体制を構築し、医療と介護が連携した地域における包括的かつ継続的な在宅医療の提供を目指す「在宅医療連携拠点事業」が新年度予算に要望(31億円)されています。
連携拠点に配置されたケアマネジャーの資格を持つ看護師とMSW等が地域の医療・介護を横断的にサポートする事業で、事業を通じたデータ収集・分析を通じて、在宅医療連携拠点が地域において必要な役割を果たすための条件を見出し、好事例の情報を広く関係者に提供して在宅医療の取組みの全国的な向上を図ろうとするものです。
在宅医療においては、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護士などの医療福祉従事者がお互いの専門的な知識を活かしながらチームとなって患者・家族をサポートしていく体制を構築することが重要ですので「多職種協働による在宅チーム医療を担う人材育成事業」も新年度予算に要望(3.2億円)されています。
○国が、都道府県リーダーに対して、在宅医療を担う多職種がチームとして協働するための講習を行う(都道府県リーダー研修)。
○都道府県リーダーが、地域リーダーに対して、各地域の実情やニーズにあった研修プログラムの策定を念頭に置いた講習を行う(地域リーダー研修)。
○地域リーダーは、各地域の実情や教育ニーズに合ったプログラムを策定し、それに沿って各市区町村で地域の多職種への研修を行う。
という、カスケード方式の研修事業です。
カスケード方式研修は、開発途上国で全国的に技術者の技能を高めたい場合に援助機関がよく採用する手法ですが、実際の効果については疑問がある場合もあります。
研修実施の前提として研修テキストの作成が必要ですが、研修テキストの充実よりも研修を実施することにエネルギーを集中してしまったような場合に失敗例が多いようです。
「多職種協働による在宅チーム医療」に関する著作物が稀有である現状のままに研修事業だけを強行しても多くの途上国と同じ結末になりかねませんので、研修テキストの開発にエネルギーを注いでほしく思います。
優れた研修テキストが出版されて全国へ普及すれば、研修に参加しない関係者へも研修で伝えたいことを伝えることができます。

TPPアクセス・ウィンドウ

2011 年 11 月 11 日 金曜日

TPPが重要な局面を迎えています。

「情報」なしに正しい判断はできません。

外務省が先日公開した「医薬品へのアクセスの拡大のためのTPP 貿易目標」(本年9 12 日米通商代表部(USTR)公表)の仮訳をそのまま転載します。

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TEAMTrade Enhancing Access to Medicines)アプローチの下、米国は現在のTPP パートナー諸国-豪州、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ヴェトナム-と、以下の諸目標を達成するために協力する。

1. 革新的医薬品・ジェネリック医薬品へのアクセスの、「TPP アクセス・ウィンドウ」を通じた迅速化

医薬品限定の知的財産の保護の申請に際して、合意される期間内に発明者がTPP 域内市場に医薬品を供給することを条件付けることにより、TPP 域内市場への生命を救い延ばす医薬品の供給を促進すると同時に、同市場にジェネリック医薬品が可能な限り早期に参入する途をひらく。

2. ジェネリック医薬品の製造業者にとっての法的予見性の強化

発明者の知的財産の保護とのバランスを維持しつつ、特許の例外とジェネリック医薬品に対するインセンティヴを通じて、TPP 全域においてジェネリック医薬品製造業者にとっての法的予見性を強化する。

3. 医薬品に対する関税撤廃

医薬品及び医療機器にかかる関税を即時撤廃することにより、特に病院、診療所、援助機関及び消費者にとってのコストを低減する。例えばアモキシシリン、ペニシリン及び抗マラリア薬にかかる現行関税の撤廃も、これには含まれる。

4. 税関における障壁の低減

差別的、高負担また予見可能性のない税関手続きといった、革新的医薬品及びジェネリック医薬品へのアクセスを妨げる輸入障壁を最少化する。

5. 模倣医薬品の貿易阻止

不正商標を付した医薬品のTPP 各国の市場への流入を防止するため、税関及び刑事上の執行措置を利用可能とし、それにより、かかる偽医薬品が患者にもたらす重大な危険を手当てするためのTPP 諸国の取り組みを支援する。

6. 各国内における医薬品の流通障壁の低減

医薬品に関する輸入、輸出及び流通の権利を保証し、必要とする者への医薬品の効率的流通の妨げとなり得る国内障壁を最少化する。

7. 透明性と手続きの公平性の強化

ジェネリック医薬品及び革新的医薬品双方がTPP 各国の市場に参入する最も公正な機会を確保するため、政府の健康保険払戻制度の運用において透明性と手続きの公平性の基本規範が尊重されることを求める。

8. 不要な規制障壁の最小化

TPP 域内での規制の今後の一貫性を促進しつつ、安全で有効な医薬品の公衆にとっての利用可能性を高めるため、透明で無差別な規制構造を促進する。

9. TRIPS 及び公衆衛生に関するドーハ宣言の再確認

TRIPS 及び公衆衛生に関するドーハ宣言に基づく公衆衛生措置の利用可能性に関する重要な理解を織り込む。

TPPと混合診療解禁

2011 年 11 月 9 日 水曜日

政府は7日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉において、保険適用の診療と保険適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁について「議論される可能性は排除されない」との見解を表明しました。

混合診療の解禁には賛否両論がありますが、保険診療の質が保てるか否か、が是非の判断のポイントです。

混合診療を解禁すると、保険診療に自由診療部分が上乗せされます。

混合診療が解禁されると、限られた医療人材(医師、看護師等)の労力でぎりぎりの運営をやっている保険診療から、医療人材の労力の一部が自由診療へと割かれることになります。

医療の質は医療人材の投入の多寡に左右されますので、保険診療の質の低下が危ぶまれます。

多くの開発途上国では、富裕層をターゲットにした民間医療が有能な医療人材を引き抜いて公的医療の質の低下を招いている深刻な現実に直面しています。

混合診療の自由診療部分は価格設定に公的統制が及びませんので、医療人材の待遇改善費用も価格に反映させることができ、開発途上国同様の医療人材の投入シフトは起こり得ることでしょう。

混合診療の自由診療部分は、たとえば重粒子線治療や新薬治療だったりすれば数百万円以上の患者負担を要したりもしますが、低所得層には縁遠い医療です。

低所得層が望むのは、これらの治療法が有効な場合には、保険診療の適用で低所得層にも平等な医療の恩恵がもたらされることです。

混合診療が解禁されれば、医療機器メーカーや製薬メーカーは、無理矢理にでも保険診療の適用の努力をする必然性がなくなります。

保険診療として採用されれば、公定価格としての薬価を適用しなければなりませんので、企業経営戦略としては自由に価格設定ができる混合診療のままのほうが良いに決まっています。

混合診療の解禁とともに、保険診療における新薬や新医療技術の導入が停滞するであろうことも配慮した上で、混合診療解禁の是非を議論する必要があります。

平成24年診療報酬・介護報酬改定(90)

2011 年 11 月 5 日 土曜日

TPPと医療との関係が政治課題となってきました。

TPP交渉への参加の是非は高度な政治判断を要することですが、「判断」のためには正確な情報が必要です。

この一週間に、次のような動きがありました。

これまで、正確な情報が国民(特に医療関係者)へ伝わっていなかったようです。

以下、日本農業新聞のヘッドラインニュースを転載している「enet」(http://www.agrinews.co.jp/)からの引用です。

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<医療自由化目標「入手していた」 米国文書で厚労相  (1028)

米国政府がTPP交渉で、公的医療保険の運用で自由化を求める文書を公表していたにもかかわらず、日本政府が「公的医療保険制度は交渉の対象外」と国民に説明していた問題で、小宮山洋子厚生労働相は27日、「9月16日に外務省を通じて受け取っていた」と述べ、入手していたことを明らかにした。公的医療制度の根幹である薬価の決定方法が交渉対象になる可能性も認めた。

<医療自由化求める米国文書 概略版不明記認める 問われる情報公開姿勢 厚労相  (1029)

TPP交渉で公的医療保険の運用に関し自由化を求める米国政府の文書を確認していたにもかかわらず、日本政府が国民向けに作った概略版資料で「公的医療保険制度は交渉の対象外」と説明していた問題で、小宮山洋子厚生労働相は27日、「医薬品の保険手続きに関する透明性の確保が論議の対象になる可能性は、分厚い説明資料で説明した」と述べた。概略版で実態を明らかにせず、国民の目に触れにくい「分厚い資料」だけで医療自由化の可能性を示していたことを認める発言で、政府の情報公開に対する姿勢が問われそうだ。

<TPP交渉米国文書漏えい 薬価見直し機会提案 医療費高騰の恐れ  (1103)

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で米国が主張した医薬品・医療機器などの価格決定についての提案とされる文書が漏えいした。各国の公的機関が行う新薬の認証や価格決定に対し、製薬会社などが見直しを迫られる仕組みの導入が盛り込まれている。TPPの国民生活への影響を指摘する市民団体や有識者から「薬価を低く抑える公的医療保険制度を脅かし、価格を上昇させる」など懸念の声が上がる。

<政府、楽観的過ぎる 揺らぐ国民皆保険 3師会  (1103)

日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会(3師会)の会長は2日、厚生労働省で記者会見を開き、政府が国民皆保険を守ることを表明しない限り「TPP交渉参加を認めることはできない」との見解を発表した。公的医療保険制度は交渉の議題になっていないとする政府の説明に対しては「現時点の推測で楽観的過ぎる」と批判。TPP交渉では日本の同制度の除外を明言するよう政府に強く要請した。

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9月16日に厚生労働大臣が受け取っていた文書というのは「米国政府が公的医療保険の運用で自由化を求める声明」というもののようです。

米国はTPP参加国に、公的医療保険制度の運用において、透明性と手続きの公正性を求めています。

米豪FTAでも米韓FTAでも公的医療保険制度はターゲットにされていましたので、TPPでは俎上にないというのは不可解でしたが、やはり交渉対象だったようです。

米豪FTAでは、薬価を低く抑える制度の変更が求められ、新薬に市場価格並みの高い薬価が設定されるよう制度が見直されました。

米韓FTAでも、医薬品の認可や薬価に対して米国系製薬会社に不服がある場合に決定の見直しを求める機関が設置されました。

TPPでは、公的医療保険制度での薬価などについて、米豪FTA、米韓FTAよりも厳格に「透明性と公平性」を確保できる規律を課すことを目指しているようです。

わが国では、国民皆保険制度の維持のために医療費抑制基調の診療報酬改定が繰り返されてきましたが、それでも、何とか医療現場に実質的なプラスをもたらすべく、薬価のマイナス改定による節約を主たる財源として医療現場の評価へと振り向けてきました。

今後、改定のたびに薬価がプラスの方へ揺れ戻るような事態となれば、医療現場における診療報酬改定は実質的なマイナス改定が繰り返されることにもなりかねません。

医療関係者はTPPの行方に無関心では居られません。

TPPと医療

2011 年 11 月 2 日 水曜日

野田総理大臣はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を直前に控え、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉参加に前向きな意向を表明しましたが、日本医師会は反対の姿勢を示しています。

TPPに参加すれば、混合診療の全面解禁による高額の自由診療の導入や医療の市場開放によって国民皆保険が終焉し、所得によって受けられる医療に格差がある社会ができる危惧がある、という理由からです。

政府は「公的医療制度はTPPの交渉対象になっていない」と説明し、医療関係者から反対の狼煙があがることを敬遠していますが、米国通商代表部は、TPP交渉で公的医療保険制度の運用について透明性と公平な手続きの尊重を求めると明記していますので、TPPの交渉対象ではないということはありません。

「TPPのための米国企業連合」には米国の大手製薬会社の名前も見られます。

オバマ政権のヘルスケア法案は、米国民の多数が加入することになる保険者によって米国の医療費の高騰に歯止めがかかる可能性を内包していますので、米国内での利益獲得に翳りが生じる事態を予見し、世界第2位の保険市場である日本へ米国の保険業界と医薬品業界の矛先が向けられることは予想に難くありません。

保険診療の範囲を狭めて、保険外診療の部分が拡大すれば、日本の医療へ米国の保険会社と医薬品会社が参入する余地が大きくなります。

保険診療についても、米国企業の医薬品の薬価や米国発の医療技術の診療報酬の評価に不服が唱えられれば、TPPに基づいて不服審議のための協議機関を設置させられる可能性があります。

こうなると、保険診療についても医療費が米国水準まで急騰してしまう危険性さえあります。

日本の経済活力の維持のためにTPPの交渉参加が必要である、という経済界の主張も頷けますが、日本の経済活力の維持向上に医療が果たしてきた役割や、医療費高騰下における経済活力の維持可能性についても総合的に議論した上で、日本政府には最適の結論を導いていただきたく思います。

TPP交渉参加の是非はともかくとして、少なくとも「交渉対象ではない」として医療を議論の蚊帳の外に置くようなことはあってはならぬことでしょう。

社会保障副教材

2011 年 10 月 18 日 火曜日

一昨日、厚生労働省が、年金や医療などの改革を進めるにあたって、子どもの頃から社会保障制度を理解してもらう必要があるとして、小学生から高校生に向けた副教材を作成することになった、というニュースが流れました。

社会保障と税の一体改革を進めるためには、子どもの頃から社会保障制度を理解してもらう必要があるというものです。

厚生労働省は、有識者による検討会議を設置して、社会保障制度に対する理解がどうして深まらないのかを 検証したうえで、学んでもらう内容などを検討することにしているのだそうです。

来年3月までに、 小学生、中学生、高校生のそれぞれの年代に応じた副教材を作成し、各学校で活用してもらうことを目標としています。

同じような着想で、租税の理解を促す副教材だとか放射能理解を促す副教材だとかが言われていますが、社会生活において真に重要な事項について小学校から学ぶということは必要です。

社会保障や安全保障は政治色が表れやすい分野ですので、学校教育では取扱いにくいという現実がありますが、取扱いにくいからといって勉強しなくてもよいということにはなりません。

学校教育で取り上げなければ、社会保障や安全保障に無知な人たちが政治を動かすことにもなりかねません。

保健医療経営大学は社会保障と人間の安全保障を教える大学であるともいえますが、高校までの教育で社会保障の重要性の理解を促すことができていれば、受験生獲得にこれほどの苦労をせずにすむのに、と思うことしきりです。

平成24年度組織・定員要求

2011 年 10 月 5 日 水曜日

各府省庁では予算要求の作業と平行して「組織・定員要求」も行います。

重点施策なりを強力に推進するためには、推進体制を整えなければなりません。

厚生労働省では、定員については、仕事密度が薄くなった部署を合理化して734人を減員し、体制強化のための増員に振り替えます。

増員要求は1056人で、差し引き322人の増員要求ということになりますが、増員は公務員人件費の増に直結しますので、例年、大きく査定されています。

増員の内訳は、新卒者らの就職支援体制の強化(224人)、検疫所の体制強化(79人)、震災の復旧・復興工事にかかわる労働基準監督体制の強化(27人)、麻薬取り締まりの強化(20人)、B型肝炎訴訟対策(15人)、原発で働く労働者の健康確保体制の強化(13人)などです。

組織要求では「在宅医療推進室」(医政局指導課)、福島第1原発の作業員対策担当参事官(労働基準局)、作業員の被曝線量などを管理する「原発作業員健康管理室」(労働基準局労働衛生課)、被災者の中長期的な雇用対策などを担う「雇用復興企画官」(職業安定局雇用政策課)、低所得者らを対象にした「社会的困窮者自立支援室」(社会・援護局地域福祉課)などの設置を要求しています。

組織・定員要求からも各府省庁の次年度の力点を窺い知ることができます。

国民医療費と復興費

2011 年 10 月 3 日 月曜日

向こう10年の復興費、16.2兆円の財源をどう確保するかが政治課題となっています。
税外収入を5兆円にして増税を11.2兆円にするのか、税外収入を7兆円にして増税を9.2兆円にするのかの駆け引きです。
向こう10年間で、国民一人あたりの税金上乗せを、9万円弱にするのか7万円強にするのかが、喧喧囂囂、永田町界隈で議論されているというわけです。
ところで国民医療費については、毎年1兆2千億円の増加が続くとすれば、むこう10年で、増加分の累積は66兆円となります。
1.2兆円+1.2兆円×2+1.2兆円×3+・・・+1.2兆円×10=66兆円
復興費の4倍です。
国民一人あたり53万円を、向こう10年で、税か保険料か患者窓口負担に上乗せして財源を確保しなければなりません。
国民医療費の毎年の増加を1兆2千億円でなく1兆1600億円に抑制するだけで、負担増見積もりは2兆円以上軽減されます。
毎年の増加を9千億円に抑制することができれば、負担増見積もりは復興費(16.2兆円)以上軽減されます。
国民医療費についても真剣な議論を行わなければ、復興財源確保の議論が空しくなってしまいます。