‘政権交代と医療’ カテゴリーのアーカイブ

政権交代と医療(36)

2009 年 10 月 7 日 水曜日

行政刷新会議の担当官に厚生労働省の官僚が抜擢されました。

村重直子課長補佐で、5日付での異動です。

医学部卒業後、日米で内科医として7年の臨床経験を積んだ後、平成17年から厚生労働官僚(医系技官)として働いていた人です。

必ずしも官僚の代弁者ではなく、対外的にも歯に衣着せぬ情報発信を続けていたところが舛添前厚生労働大臣の眼鏡に適い、省改革メンバーに抜擢されました。

大臣側近(大臣政策室政策官)としての活躍の様子が、行政刷新会議の仙谷大臣の眼鏡にも適ったものと思われます。

http://video.aol.com/video-detail/-1/1223385/?icid=VIDURVENT01

(村重氏の講演映像)

舛添前大臣の打ち出した医療政策には村重氏が影響を及ぼしています。

仙谷大臣へも少なからず影響を与えることでしょう。

官僚としての立場を離れた発言を繰り返す官僚は、通例、官僚組織から爪弾きされるものですが、村重氏は「官僚を改革する」という時流に乗って、医療改革の中枢に遡上することができました。

村重氏は官僚の代弁者というより医療現場の代弁者としての意識が強い方です。

官僚経験が短いから、というわけではなく、官僚経験の多くを官僚組織を敵に回すような職務で過ごされたからでしょう。

仙谷大臣と同じく医療費抑制政策への反発が強く、医療現場としては力強い人事ですが、日本の医療を守っているのは医療の現場だけではありません。

財源を確保する現場や過疎地の交通アクセスを確保する現場など、さまざまな現場の声に耳を傾けて、行政刷新にその手腕を発揮していただきたく思います。

政権交代と医療(35)

2009 年 10 月 4 日 日曜日

民主党政策集による歯科医療政策です。

 

○歯の健康の保持の推進に関する法律を成立させる

○そしゃく機能の障害については申請手続に歯科医師の診断書を認めるよう、身体障害者福祉法を改正

○寝たきりの高齢者や障がい者も含め、すべての国民が歯科検診・医療を受けられるようにする

○歯科疾患の予防法や治療について調査研究を推進

○歯科技工物(義歯)のトレーサビリティーの基準を定める

○歯科技工士の評価等、技術料や歯科基本料の見直しを検討

 

歯科医療の経営危機は医科に先んじて訪れています。

上記は、歯科医療の経営改善にプラスとなる政策ですので、歯科関係者には朗報です。

本年の歯科医師の新規参入(国家試験合格者数)は2383人で、医師の新規参入は7668人でした。

年々、診療領域の割にはアンバランスに過剰な数の歯科医師が生み出されています。

さらに歯科技工士の養成数は歯科医師の養成数を上回っています。

歯科医療政策としては、個々の歯科医師や歯科技工士の収入を増やす方策はさておき、養成数を適正化することが重要ですが、その記載はありません。

政権交代と医療(34)

2009 年 10 月 3 日 土曜日

新政権が予算編成作業に本格的に着手します。

10月15日が平成22年度予算の新たな概算要求締め切りですが、年内編成のためには2か月しかありません。

行うべき作業は次の4つです。

  新規事業を予算に盛り込むこと。

  事業財源を確保するため、既得予算を削ること。

  予算支出・削減の根拠となる法令等を整えること。

  予算執行に齟齬をきたさないため、制度間調整と省庁間調整を行うこと。

昨年までも、この時期、官僚たちは上記作業を4か月がかりで行っていました。

今回は新規事業の数が桁違いに多くなります。

それを半分の期間で実現するとなるとたいへんです。

困難が予想されるのは、②の既得予算の削除と③の法令の整備でしょう。

社会保障費については、この数年、毎年2200億円の削減を迫られ、厚生労働省予算には削減の余地がほとんどなくなっています。

過去の財務省とのやり取りを通じ、法的根拠のない予算については情け容赦なく査定されてきましたので、今後、大胆に予算を削減するためには、法的根拠をなくすための法改正を余儀なくされます。

他省でも事情は似通っていることと思います。

予算関連法は年明けの予算審議国会で年度内に成立させれば間に合いますが、制度廃止や制度創設など十分な周知期間や準備期間を要するものについては、年内成立を目指さなければなりません。

今月下旬から12月上旬までの40日間程度の臨時国会が予定されていますが、法案が煮詰まっていなかったりすると審議が紛糾するのは必定です。

政権交代と医療(33)

2009 年 10 月 2 日 金曜日

産科医療について唐突な方針変更がありました。

お産の費用がかかることが少子化の一因ということで出産育児一時金(38万円)が支給されてきましたが、退院後しばらくしてから産婦へ支払われる制度だったため、妊婦は手元に多額の現金を準備しておく必要がありました。

10月1日より一時金が42万円に増額されることになり、同時に、医療保険から医療機関へ直接支払う制度になる予定でした。

妊婦は手元に多額の現金がなくても出産できるようになります。

ところが、制度開始2日前の9月29日、長妻厚生労働相は10月からの全国一斉の開始を見送り、医療機関に半年間の導入猶予を設けると記者発表しました。

新制度では医療保険からの支払いに時間がかかるため、医療機関側の資金繰りが悪くなることが理由です。

唐突な意志決定であったため、急遽、厚生労働省は29日付けで関係機関へ事務連絡通知を出しました。

問い合わせが殺到したため、1日、妊産婦や医療機関向けの相談電話窓口(03・3595・2224、平日午前9時半~午後6時15分)を開設しました。

当面、新制度に切り替えるか否かは医療機関に委ねられることになりましたので、医療機関によっては窓口で全額の支払いを要求されることがあります。

厳しい経営状況の産科医療機関に配慮した意志決定は理解できないわけではありませんが、新制度に切り替わることを織り込み済みで安心して臨月を迎えられている多くの妊婦に不安を与えるような唐突な方針変更はいただけません。

政権交代と医療(32)

2009 年 10 月 1 日 木曜日

民主党政策集による産科・小児科医療の記述です。

 

○周産期母子医療センターのもつ機能を明確化・再分類・整備拡充し、産科病院のネットワーク化を推進

○都道府県の責任で救急本部業務と連携させながら周産期情報システムおよび搬送先照会システムを改善

○医師・助産師・看護師の業務範囲の見直し

○共同体制(スキルミックス)を促進

○現在の出産一時金を見直し、国からの助成を加え、出産時に55万円までの助成

○開業医が地域小児科センターで時間外外来を担当する共同化

○小児救急医療のシステム化

○小児医療診療報酬引き上げ

○小児医療の自己負担軽減

○新生児特定集中治療室(NICU)を現行2000床から当面2500床へと増床し、後方支援病床を拡充

 

少子化対策のためには母子医療への投資が必要です。

出産一時金を13万円増額するのに、年1400億円を要します。

NICUを運営するのに1床あたり年間4千万円近い経費を要しますので、500床の増床には年200億円を要します。

政権交代と医療(31)

2009 年 9 月 30 日 水曜日

来年度の各省概算要求はいったん白紙化され、10月15日までにマニフェストや連立合意を踏まえた組み替え予算があらためて各省から要求されることになりました。

厚生労働省から出される組み替え要求が最も注目されるところです。

たとえば政策的に診療報酬を平均4%アップさせるのに、どのくらいの増額要求が必要でしょうか。

医療の財源構成の25%(約8.4兆円)が国税なので、この4%、約3400億円を増額要求すればよいというものではありません。

健康保険料を上げずに実現するためには、制度改正が必要とはなりますが、保険の増額分を税金で肩代わりする必要があります。

保険料を上げることがままならなかったことが医療費抑制策の背景にあるのですから、政策だからといって、健康保険組合や被保険者へ簡単に保険料アップを強要できる問題ではありません。

医療の49%(約16.8兆円)が保険料なので、この4%、約6700億円をさらに増額要求する必要があります。

さらに患者負担も上がらないような配慮をしようと思えば、患者負担14%(4.8兆円)の4%、約1900億円も必要です。

これらを総計すると、診療報酬を4%あげるのに、厚生労働省予算だけでも1.2兆円をあらたに確保する必要がでてきます。

民主党政策集には、医療費を対GDP比でOECD平均まで大幅に引き上げることを目指し、そのために1.2兆円の予算を投入する、との記載がありますが、1.2兆円の投入では4%しか上がりません。

総務省予算にも着目する必要があります。

医療の財源の12%(4.1兆円)は地方税から支出されているからです。

地方税も伸び悩んでいますから、実現のためには地方交付税を手厚くする必要があります。

白紙化される前の総務省の来年度概算要求では、地方交付税はわずか0.4%の微増で1千億円にも満ちませんでした。

医療財源分だけでも4.1兆円の4%、1600億円の増額がほしいところです。

政権交代と医療(30)

2009 年 9 月 27 日 日曜日

民主党政策集には個別疾病対策にも言及があります。

がん対策については次の通りです。

 

○国内どこに住んでいても最善のがん検診・治療が受けられる体制を確立

○有効性が高いがん検診受診率を大幅に向上させるよう受診しやすい体制を整備

○がん予防に有効なワクチンの開発・接種の推進

○禁煙対策の徹底化

○がん患者への最新のがん関連情報の提供や相談支援体制などを充実

○がん患者や家族も加わった「がん対策推進協議会」の運営

○がん登録の法制化

○地域がん診療拠点病院は国立がんセンターと協力し、化学療法専門医・放射線治療専門医を養成(数値目標を明示)

 

ワクチンの開発は企業努力で行われていますが、政策としても関与するということです。

旧政権では、特定企業の利益誘導との批判を生みがちな政策は躊躇しがちでしたが、結果、新薬市場は外資系企業の独壇場となっています。

国策として、国産の医薬品、医療機器の開発をもっと推進すべきであったのかもしれません。

政権交代と医療(29)

2009 年 9 月 26 日 土曜日

民主党政策集には予防医療の推進について次の記載があります。

 

○ヒトパピローマウイルスワクチンの日本での開発を推進し、任意接種に対する助成制度を創設

○ヘモフィルスインフルエンザ菌b型ワクチンの定期接種化

○肺炎球菌ワクチン接種の対象年齢を拡大

○自治体の保健師採用基準の年齢要件の撤廃

○メタボリックシンドローム対策

○禁煙対策

 

ヒトパピローマウィルスワクチンは子宮頸がんの予防に有効ですが、承認申請中のものは外資系2社のみで、日本での開発承認ははるか未来のことになります。

ひとつ(グラクソ・スミスクライン社の「サーバリックス」)が10月にも承認される見通しですので、当面は1社独占となります。

ヘモフィルスインフルエンザ菌b型ワクチンは細菌性髄膜炎の予防に有効ですが、サノフィパスツール第一三共「アクトヒブ」の1社独占です。

肺炎球菌ワクチンは万有製薬「ニューモバックスNP」の1社独占です。

これらのワクチンの公的予防接種プログラムへの組み入れは特定企業に莫大な利益をもたらします。

旧政権では何かにつけ特定企業との癒着が噂されるのがトラウマとなり、慎重に検討されていましたが、新政権にはそういう杞憂はなさそうです。

予防医療の観点から導入すべきものは、たとえ寡占製品であれ、導入すべきでしょう。

これらのワクチンは、欧米諸国では公的予防接種プログラムに組み込まれています。

政権交代と医療(28)

2009 年 9 月 25 日 金曜日

国家行政組織法第八条に、行政機関は「学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる」とあります。

国民各層の利益を代表する者と実務・学識経験者などにより組織される各種「審議会」のことで、議会制民主主義を補完する国民参加機関です。

審議会は、重要な政策方針を策定したり特定の処分を下す際に意見の答申を行います。

現行の行政施策のほとんどは、審議会の答申を重視して方針が決められています。

さらに近年は、行政手続法により、行政機関が命令等(政令、省令など)を制定する際、事前に命令等の案を示し、その案について広く国民から意見や情報を募集する「パブリックコメント」手続きを行うことも一般的になってきています。

審議会の答申やパブリックコメントを重視して決定された施策を中止・廃止する際には、相応の民主的な手続きが必要だと思います。

審議会やパブリックコメントは、政府・与党の暴走を制止する安全弁として機能するものです。

厚生労働省には社会保障審議会が置かれています。

法(厚生労働省設置法)により、社会保障に関する重要事項を調査審議する機関とされています。

社会保障は国民の生命を預かる重要な事項ばかりです。

新政権は矢継ぎ早に重要な政策方針を出していますが、社会保障審議会やパブリックコメントをないがしろにしない行政運営を願っています。

 

 

 

政権交代と医療(27)

2009 年 9 月 24 日 木曜日

旧政権では診療報酬請求書(レセプト)のオンライン請求を完全義務化することを閣議決定していました。

ITの活用は、医療の効率化の手段のひとつです。

しかし、すべての医療機関が同調して新しいシステムに統一した場合と、新旧のシステムが混在している場合とでは、効率化の度合いが格段に異なります。

旧政権が完全義務化を目指したのは、医療の効率化と透明化、平準化を推進したいがためでした。

この目的達成のため、インターネット未導入の医療機関にも頑張っていただくべきではないか。

十分な予告期間を設けたし、インターネットの普及状況からしても、そう無理な目標設定ではないのではないか。

旧政権はそのように考えて完全義務化を決めたのかもしれませんが、その後、完全義務化を契機に診療所を閉じると宣言するところがたくさんでてきました。

医療機関いえども、ITにまったく無縁で医業を行っていたところもあります。

それが過疎地の診療所だったりします。

民主党政策集では、オンライン請求を「完全義務化」から「原則化」に改めています。

オンライン請求の導入は、今日、そう難易度の高い技術ではありません。

導入コストが診療収入に見合うかどうかのレベルの問題であれば、過疎地の診療所などへ何らかの公的助成をすればよいだけのことかもしれません。

過疎地だからといって、医療の透明化や平準化をしなくてもよいということはないはずで、むしろ過疎地なればこそ、平準化が必要ともいえます。

政権交代で完全義務化は遠のきましたが、医療の効率化、透明化、平準化は急がなくてはなりません。

民主党の医療政策のスローガンは、「崖っぷち日本の医療、必ず救う!」です。

政権交代と医療(26)

2009 年 9 月 23 日 水曜日

民主党政策集の中で、医療関係者の期待が最も寄せられているのは、診療報酬の引き上げに関するところです。

OECD 諸国(先進30か国)の中で、我が国は医療費の対GDP比は22位で、1人あたりの医療費も17位と下位に位置しています。

政策集では、長期的に、対GDP 比を8.1%の現状からOECD 平均の8.9%程度まで引き上げることを目指すとしています。

現状の1割増しということになります。

長期的に、という形容がありますので、来年度の診療報酬改定でいきなりアップする公約とはなりませんが、少なくともマイナス改定とはならないでしょう。

なお、政策集には、医療従事者の大幅な増員も謳われていますので、人件費を中心に、国全体の医業支出も大幅に増えることになります。

診療報酬改定による増分より支出の増分のほうが大きくなれば、医療の経営環境はより悪化することになります。

なお、診療報酬の増額が政策集上に明記されているのは「地域医療を守る医療機関の入院」についてのみであり、他の診療については期待感を感じさせる表現に留まっています。

4疾病5事業(4疾病はがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病。5事業は救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)を中核的に扱っていない病院や診療所には、かえって厳しい時代になるかもしれません。

地域全体で医療の効率化を一層推進しなければなりませんが、公的な病院(国立・公立病院、日赤病院、厚生年金病院等)の政策的削減はしないとも明記してあります。

政権交代と医療(25)

2009 年 9 月 22 日 火曜日

「子ども手当」に所得制限を設けるか否かが議論になっています。

子ども手当は医療の話題ではありませんが、個人給付施策(扶助費など)に所得制限を設けないという発想は社会保障哲学の大変更を意味しますので自立支援医療など公費負担医療制度の将来に影響する可能性があります。

定額給付金の導入の際も所得制限が議論になりましたが、社会保障施策ではなく単発的な景気浮揚策だと整理されました。

恒久的に実施される子ども手当は社会保障施策に位置づけられるものでしょう。

社会保障施策は、所得再分配を基本として構築されるものです。

あまりにも教科書的な、基本中の基本なので、子ども手当に所得制限を設けないという政権公約に社会保障関係者は混乱したと思います。

これまでの社会保障施策の基本が根底から覆されるとなると、新政権による社会保障施策の将来が予測しにくくなります。

給付額が比較的小さくて事務経費割合が大きくなる場合、国家補償的性格が大きい場合、対象者数が限定的で社会防衛や研究推進などの社会保障以外の目的が大きい場合など、例外的に所得制限なしで実施されている社会保障施策もありますが、子ども手当構想のように金額が大きく対象者数も多い施策に所得制限が設けられないというのは驚きです。

議論が大きくなっているのは、連立した社民党と国民新党が所得制限の設定を主張しているためです。

財政刷新会議には進行中の事業の見直しだけではなく、予定事業についても税金の有効利用を考えてほしく思います。

政権交代と医療(24)

2009 年 9 月 21 日 月曜日

民主党の政権政策は、医療に関しては多大な予算を要することばかりです。

それらが実現できるかどうかは、その予算が配分されるか否かにかかっています。

新大臣は厚生労働官僚へ矢継ぎ早に政権政策の実現を指示していますが、実現のためには予算を獲得できることが大前提です。

事務次官(官僚)同士の調整の機会が奪われるのであれば、必要な予算を確保してくるのは大臣の仕事です。

これまでのように、財務官僚と折衝を重ねて大きな予算を獲得してくることを官僚へ指示することはできません。

日本の行政機構では、財布の紐をしっかりと握っているのは財務省です。

国家戦略室(局)と行政刷新会議は政権公約の実現のために新設された組織ですが、政権公約のうち、主として支出を伴う施策を主導するのが前者、主として無駄の排除による財源捻出を主導するのが後者であり、いずれの組織も、財源と施策のバランスを調整する「財政」を担う組織ではありません。

現時点では水面下での綱引きが行われているようですが、予算編成の権限は相変わらず財務大臣に集中するものと思われます。

長妻厚生労働大臣は、官僚の助けなしに、藤井財務大臣と折衝して、政策実現に必要な予算を獲得しなければなりません。

他の大臣も同様の事情にありますので、閣内は限られた財源の争奪戦となります。

政治家歴が短い長妻大臣が争奪戦に勝てるかどうかはわかりません。

藤井大臣は、強硬な財政再建論者として知られています。

財源が安易に配分されるとは思えず、医療の無駄の徹底的な排除による自主財源捻出を迫られるものと予想されます。

閣内には医療費拡大論者である仙谷大臣がおられるので助けを得たいところですが、仙谷大臣は無駄の排除を担当する行政刷新大臣に任命されていますので、立場上、医療だけに甘い顔をするわけにはいきません。

国家戦略局の応援を期待したいところですが、国家戦略担当の菅大臣の厚生大臣時代は低医療費政策が基調でした。

政権交代と医療(23)

2009 年 9 月 20 日 日曜日

民主党政策集では、医療機関の中でも国立の病院について、特別の措置を実施するとしています。

国立がんセンターはじめ国立高度専門医療センター(6施設)は平成22年度から独立行政法人となります。

しかし、これまでの投資が重い債務となっており、債務を背負ったままでは施設運用がままならなくなります。

政策集では、長期債務を切り離す、と言及しています。

国立大学病院についても、同様に債務を切り離し、また、国立大学病院運営費交付金を引き上げて十分な額を確保するとのことです。

債務返済が困難な理由のひとつには国立(いわゆる親方日の丸)施設ゆえの運営の非効率性もあったわけで、非効率性をそのままに債務だけを切り離すのは虫のいい話です。

債務を切り離せば、その債務はそのまま国民の負担に切り替わるわけですので、国公労連の皆さんには奮起していただかなければなりません。

政権交代と医療(22)

2009 年 9 月 19 日 土曜日

民主党政策集には救急業務体制の整備について次のような言及があります。

 

○救急業務を市町村から原則的に都道府県に移管

○救急本部に救急医療の専門的知識・経験がある医師を24時間体制で配置

○救急本部は、通報内容から患者の緊急度・重症度を判断

軽症の場合は医療機関の紹介等

重症の場合は救急車や消防防災ヘリ、ドクターカー・ドクターヘリ等、最適な搬送手段により医療機関に搬送

○ドクターカーをすべての救命救急センターに配置

○消防防災ヘリをドクターヘリとしても活用できるよう高規格化し、救急本部ごとにドクターヘリ配備

○救急救命士の職能拡大

救急救命士も簡易な血糖値の測定ができるよう体制の整備

 

これまで消防と救急は(広域)市町村単位で一体的に行われてきましたが、これを分離するというものです。

確かに市町村単位で24時間体制で医師を配置することは困難なので、都道府県単位で体制整備をするという着想になるのでしょうが、救急医療の専門医は人材難ですので、貴重な人材を救命救急センターから引き抜くような制度設計は好ましくありません。

市町村単位で培われてきた救急車の運用ノウハウには誇るべきものがあり、時間との闘いが決め手の業務ゆえ、小地域ごとに臨機に運用されている利点には捨てがたいものがあります。

業務主管が分離したからといって、119番で浸透している電話番号を変えるとなれば、大混乱です。

政権政策集に明記してある事項ですのでこの方向で制度改革がなされるのでしょうが、生命にかかわる改革については、慎重に慎重を重ねて取り組んでいただきたく思います。

政権交代と医療(21)

2009 年 9 月 18 日 金曜日

新大臣の昨日の記者会見での後期高齢者医療制度廃止についてのコメントです。

 

「廃止して元に戻し、別の制度にすると混乱が起こる可能性がある」

「めどは早急に付けたいが、まずは現状把握とそれらの検討の結果を見ていきたい」

 

制度設計が未然であったことが判明しました。

8年ごしの議論の末にできた制度の見直しにこれから着手するというのでは、検討にかなりの時間を要すると思います。

いずれにせよ、拙速は避けてほしいと願っています。

政権交代と医療(20)

2009 年 9 月 18 日 金曜日

長妻昭厚生労働大臣は初閣議後の記者会見で、後期高齢者医療制度を廃止すると明言しました。

民主党マニフェストでも明言してあり、連立三党の合意事項でもあるので当然でしょう。

記者会見では次のような発言でした。

大臣任命から記者会見までの間、官僚は大臣から遠ざけられていましたので、記者会見での発言には官僚サイドの意見は反映されていません。

 

○年齢で区分して一つの保険制度に入れるのは無理がある

○その時期、手法については現状把握をした上で詳細に制度設計をつくり上げていきたい

 

混乱を避けるために、現状把握をした上で、時期、手法を考えるというのは当然のことです。

医療現場にとって最も迷惑なのは、制度改革が招く混乱です。

後期高齢者医療制度の発足時も、制度の善し悪しの問題より、現場の混乱がクローズアップされての大ブーイングでした。

ただ、大臣発言が、これから制度設計するというようにも聞こえたので耳を疑いました。

制度設計も未然なままマニフェストに載せるのは、国民の生命に直結する事項であるだけに無責任です。

設計していた制度案にこれから若干の修正を加える、という意であるべきでしょう。

その制度案は、既に、世の中に示されています。

昨年2月に衆議院へ提出された「後期高齢者医療制度を廃止する等医療に係る高齢者の負担の増加を回避する等のための健康保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」(後期高齢者医療制度廃止法案)です。

民主、共産、社民、国民新の4党による共同提案でしたので、連立協議も不要です。

基本的には、この制度案が、そのまま実施されると考えるのが順当でしょう。

この法案は廃案となっていますので現時点では幻ですが、ネット上で拾うことができます。

高齢者医療の未来図を新政権がどのように描いているかを知る手がかりになります。

法案の骨子は、制度を廃止してそれ以前の法体系に戻した上で、窓口自己負担額の軽減措置を追加するものでした。

政権交代と医療(19)

2009 年 9 月 17 日 木曜日

医療を支える人たちは、事務系職員を除き、ほとんどが国家資格の持ち主です。

資格に許された業務範囲を超えて医療行為を行うことはできません。

民主党政策集では、この職能について、次のような大胆な政策が掲げられています。

 

○薬剤師、理学療法士、臨床検査技師などコメディカルスタッフの職能拡大と増員を図り、医療提供体制を充実させ、医療事故防止、患者とのコミュニケーション向上を図ります。

○専門的な臨床教育等を受けた看護師等の業務範囲を拡大し、医療行為の一部を分担します。

○医師の事務を分担する医療事務員(医療クラーク)の導入を支援します。

 

一番目のコメディカルスタッフも二番目の看護師も、医師の指示に基づいて医師の診療を補佐する職種です。

これらの職種と患者とのコミュニケーションが円滑になるのはいいことですが、日本の医療の基本軸は主治医-患者関係にあります。

患者は全生命を主治医に預けます。

看護師やコメディカルスタッフには預けません。

医療行為は、助産など一部の例外を除き、医師を頂点とした指揮命令系統となっており、責任の所在も医師に集約されています。

政策集記載の趣旨が、職能を拡大して医療行為の一部を医師以外の職種の判断で行うことができるようにするということであれば、法体系を変える必要があります。

看護師やコメディカルスタッフにも判断責任が課せられることになります。

養成カリキュラムも、技術の習得にとどまらず、判断能力育成を充実させなければなりません。

米国では、専門的な臨床教育修得を認定された看護師が医療行為の一部を主体的に行っていますが、訴訟社会にあって、彼らは医師と同様の責任を負って業務をこなしています。

職能拡大には、患者に対する責任をしっかりと受け止める覚悟が必要です。

三番目の医療クラークについては、既に旧政権で着手されています。

これから普及拡大する職種ということになります。

国家資格のない事務系職員に期待が寄せられるのは、本学としては嬉しい限りです。

政権交代と医療(18)

2009 年 9 月 16 日 水曜日

入閣する仙谷由人氏は行政刷新相だそうです。

行政刷新相というのは、ムダ遣いに目を光らせる大臣です。

厚生労働大臣は年金問題に明るい長妻昭氏。

年金問題は社会保障の最重要課題なので、新内閣には年金担当相が特別に設けられて長妻氏が充てられるであろうという予想もあったのですが、年金担当相は設けられず、長妻氏は厚生労働大臣の立場で年金問題に取り組まれることになりました。

長妻氏は厚生労働委員会で、高齢救急患者の受け入れ拒否、介護療養病床廃止後の受け入れ先など医療問題の追及もなされています。

後期高齢者医療制度については、廃止して、あるべき高齢者医療について再検討することを要請しています。

その他、医療費の削減をやめるべきなど民主党マニフェストを踏襲した主張をされておられますが、その前提として、過剰診療の廃絶、薬価の適正化、医療機器価格の内外格差の是正など、医療のムダを削るべきだという考えを表明されています。

医療のムダを削る、というのはこれまでの医療費削減策のメインの考え方でした。

医療費削減をやめる前提が、医療費削減策の推進ということになりますが、「医療のムダ」の概念の捉え方の問題でしょう。

旧政権では、社会的入院を減らすのに躍起でした。

社会的入院に限りある医療資源を投入するのは「医療のムダ」だという捉え方だったのだと思います。

政権交代と医療(17)

2009 年 9 月 16 日 水曜日

前に厚生労働大臣候補者のひとりとして発言を引用した民主党の仙谷由人衆院議員の入閣が内定したようです。

ネット上で拾える氏のその後の対外的なコメントをチェックしてみました。

組閣後は公人(大臣)としてのコメントとなりますので、総選挙後着任までのわずかな期間は、政権政党の立場もふまえた氏の本音を覗う数少ない機会です。

「急性期(病床)を減らすのは、人員を増やしてベッドを減らすという方法は有り得ると思う。そうなら次に行く慢性期のベッド数を保障して、どういう診療報酬を付けるかというのを一体化して考えないと」(ロハスメディア)

「子宮頸がんのように、エビデンスに基づいた予防措置がある。あるいは、検査を適宜繰り返すことによって、早期発見で治癒する方法があるのであれば、これは国家が本腰を入れるということが、労働力の再生産から言っても、医療費を適正化することにおいても甚だ合理的だ」(医療介護CBニュース)

「厚労省が言う話と我々が現場で聞く話が、あまりにも違い過ぎる。もうちょっと現場に怖がらずに話をさせることをやればいい。2か月ぐらい、現場の皆さんから言いたいことを今度の厚生労働大臣のところに手紙もしくはメールで出していただく。例えば、『これは保健局や医政局、健康局の医系技官が見ませんので出して下さい』と」(ロハスメディア)

 

最初のほうのコメントは厚生労働省内での医系技官たちの主張とさほど相違ないコメントですが、最後のコメントには医系技官不信が漲っています。

「保健局や医政局、健康局の医系技官」というのは、かつての私のポジションです。

医療現場の声を幅広に集め、省内に届けるのは医系技官の重要な役割のひとつなのですが、現場に怖がられているという意識はありませんでした。

事実なのか事実誤認なのか。

前者であれば、良い大臣を迎え、医療改革に期待が高まります。

後者であれば、省内の医系技官の発言力が弱まることにより、医療現場の幅広い声が省内に届きにくくなります。

政権交代と医療(16)

2009 年 9 月 15 日 火曜日

民主党政策集では勤務医の就業環境の改善策を列挙しています。

 

○医師の交代勤務制の導入を促進

○勤務医の不払い残業を是正

○当直を夜間勤務に

○大学病院などにおいて無給で働く医局員を常勤雇用に

○医療現場での労働基準法の遵守を徹底

○子育てや介護をしながら勤務する医療従事者のため

院内保育所の整備やオープン化

保育所への優先入所

病児保育の充実

育児支援などを拡充

○国立大学法人付属病院・ナショナルセンター運営費交付金および私学助成金の抜本拡充等により、これら病院の医員の待遇の改善

 

病院勤務医を労働者として位置づける、ある意味当たり前の主張ばかりです。

労働者として組織的に待遇改善を主張することが下手な医師たちの善意と熱意に甘え、勤務医の実質賃金は、この十数年、据え置かれています。

勤務医の労働を、その専門性や労働時間を正当に評価すれば、現在の数割増し、あるいは数倍の報酬を支払わねばなりません。

上記のどの項目についても、改善には、国公私立病院を問わず、多大なコストを要します。

たとえば最初の項目の「交代勤務制」ひとつをとっても、「主治医制」の利点を損なわずに実現するには医師数をかなり増やさなければなりません。

政権公約通りに、病院の診療報酬を大幅にアップしなければ実現できない項目ばかりです。

最後の項目では政党支持組織色が強い病院を特記して待遇改善を謳っていますが、その他の民間病院の勤務医も等しく過酷な就業環境に晒されています。

政権交代と医療(15)

2009 年 9 月 14 日 月曜日

旧政権が着手した新卒医師の臨床研修制度は、大学医局の医師引き揚げによる医療崩壊を招いたと、評判が良くありません。

それまでの制度では、狭い専門分野しか診療できない医師を大量生産していました。

その主因は、大学医局による新卒医師の囲い込みにありました。

もちろん、医師らしい医師(専門分野にとらわれない幅広い診療ができる医師)を育てようと懸命に努力していた医局もたくさんありましたが、とうとう主流にはなれませんでした。

そんな医局主導の新卒医師研修に見切りをつけ、「幅広い実務的研修を提供」できる病院で2年間、アルバイトもさせずに研修に専念できるシステムにしたのが新しい臨床研修制度でした。

荒療治でした。

新卒医師の多くが大学医局と切り離されました。

大学では「幅広い実務的研修を提供」できなかったのです。

また、新卒医師を大学に引き留めても、彼らを指導医なしで関連病院へ「アルバイト」派遣することもできなくなりました。

結果、多くの大学医局では医師の絶対数が不足する事態となり、医師の引き揚げによる「医師不足」が社会問題化しています。

選挙を控え、旧政権では、義務年限の短縮化の方向での見直しに着手しました。

朝令暮改の感が否めません。

民主党政策集では、医師臨床研修制度について、次のように述べています。

具体性には欠きますが、現行制度を廃止して医局主導に逆戻りさせるような着眼ではないので安心できます。

 

○一貫性のある学部教育、前期・後期臨床研修を通じて質の高い専門医を養成し、専門医が研修医の指導医となる臨床研修システムの構築

○質の高い臨床医を養成する臨床研修制度には、専門医制度の確立が不可欠であり、総合医も専門医と位置づけ

○これまでの卒後臨床研修の成果を客観的に評価し、前期臨床研修の全国均てん化

○後期卒後臨床研修については、総合臨床医研修、へき地医療研修、産科・救急・小児・外科医療研修などの分野を中心にインセンティブを付与することによって、偏在を解消

政権交代と医療(14)

2009 年 9 月 13 日 日曜日

民主党政策集では、現役医師の有効活用策に言及しています。

 

○地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行います。

医療機関の役割分担を考慮した連携の推進

短時間正規勤務制の導入

国公立病院などの定数増

地域医療の維持に資する兼業の解禁

○都道府県単位で「医療従事者等確保支援センター(仮称)」を設置

医療従事者の確保・あっせん

休職者の復職支援

医師の国内研修や国外研修の支援

地域学士入学生に対する奨学金の支給

開業医による地域中核病院の外来診療や夜間診療の分担などを促進

○「地域医療推進機構(仮称)」を設置

厚生年金病院及び社会保険病院の管理、運営

 

医師の地域流動性を高めて労働力を既存病院にシフトさせようというもので、「地域医療」と言いながら、既存病院の施設経営改善のための利益誘導の発想からは脱していません。

前政権では、国公立病院や公的病院の統廃合など、集約化方策がダイナミックに打ち出され、医療の地域経営の効率化の方向性が示されていました。

少し後退した印象です。

政党支持組織の影響力が強いのかもしれません。

政権交代と医療(13)

2009 年 9 月 12 日 土曜日

民主党政策集には、医師養成数を1.5倍に増加させるとあります。

日本の医師数は人口千人あたり2人です。

これをOECD諸国並びの千人あたり3人にしようというものです。

昨今の勤務医の過酷な労働環境を鑑みると、医師数増は医療崩壊回避の解決策のひとつかもしれません。

医師は、その一挙手一投足(医療行為)が診療報酬を生み出すという、存在と経済とがダイレクトに結びつく特異な職種です。

医師が引き揚げた病院では経営がたちまち傾いてしまっていますので、わかりやすい構図です。

医師が増えれば増えただけ国民医療費が増えると考えて、まず間違いないでしょう。

医療費の大幅増は避けられません。

昔の医療は、もっと少ない医師数で運営されていました。

人口千人あたり3人という数が適正数なのか、過剰なのか、過少なのかはよくわかりません。

医療への欲求は際限なく、世界最高レベルの医療を全国民へ届けようと思えば千人あたり10人でも足りないかもしれません。

逆に、現在の医療水準くらいで良しとするのであれば、集約化など医療の効率化を推進するだけで、医師数を増やす必要はないのかもしれません。

なお、本学の半径100km以内には、久留米大学、佐賀大学、福岡大学、九州大学、熊本大学、長崎大学、産業医科大学と、7つもの医学部があり、医師養成数に関しては突出して恵まれていますが、それでも地域の中小病院は医師確保に頭を痛めています。

問題の本質は、医師の絶対数不足というより医師の偏在にあります。

医療の施設経営改善の発想では医師数を増やすという解決策しか見いだせないのかもしれませんが、医療を地域全体でとらえる地域経営の改善に本格的に取り組むことのほうが先決であると思います。

政権交代と医療(12)

2009 年 9 月 11 日 金曜日

政権交代による医療の行方については、厚生労働大臣のポストに誰が任命されるかで流れが変わります。

民主党政策集の記載事項に方向性が示されていますので、個人プレイでそれらに逆らうことはできないでしょうが、政策の実現手順など子細については、大臣の匙加減の余地があります。

大臣自身の、医療についての見識や哲学に委ねられます。

また、大臣と官僚との距離の取り方のスタイルにもよります。

固有名詞の世界です。

厚生労働行政は、医療だけではなく年金、労働、福祉と幅広い課題を管轄していますので、それぞれの分野ごとに候補者がいます。

ここでは医療がテーマですので、民主党国会議員で特に医療政策に詳しいとされている2人をピックアップし、選挙後、業界ニュース(ロハスメディア取材)で流れた彼らの発言を拾ってみます。

 

仙谷由人:医療再建議員懇談会会長、がん治療の前進をめざす議員懇談会会長

(国立の)医療施設について、「減価償却も未来投資もないような貸借対照表でやっているのはおかしい。そんな状態で中期的にもプロフェッショナルとしての医師や看護師がどう育ち、どう継続していってくれるのか。そこから考えてもすぐ分かるようなでたらめな事が行われていた。ビジネスモデルを色々照らし合わせてモデルを提示し、医療と経営ができる人を育てていくことが必要」

中央社会保険医療協議会(中医協)について、「診療報酬の付け方として、ことここまで来させて、国民から怨嗟の声が上がって、民間病院の首が全部絞まって公的病院は赤字だらけ。国って何なのかと、中医協という存在はそういうことは考えなくてよかったのかと。公益委員の役割は何だったのかと。保険組合とか開業医、財務省との三者の綱の引き合いの中で祭り上げられてまとめ役をやっているような気になっていたけど、まとまった結果としてもそのことが医療現場をどういう状況にさせたのかという反省なしに、金があるかないかの話するだけなら、そういう中医協ならいらないのではないかと僕は思っている」

 

鈴木寛:医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟幹事長

国家戦略局がマニフェストの内容を体制整備していく際の方向性について、「トッププライオリティは医療であるのは間違いない」

中医協改革について、「12月まではいじらない。本格的には1月後半」

中医協改革というのは象徴であって、本来は診療報酬の決定プロセスをどうするかということ。それには実態がきちんと把握されていることが大事で、医療の手間ひま、あるいは技(わざ)の実態調査からまずやらなければいけない。その実態把握がフェアで納得のいくものでなければいけない」

 

国務大臣というのは民間人の登用も有り得ますし、過去の連立政権では、厚生労働大臣を連立党から登用したことが何度もありました。

現段階では予測がつきませんが、しっかりとした社会保障哲学を具有された方を登用してほしいと願います。

政権交代と医療(11)

2009 年 9 月 10 日 木曜日

民主党政策集では、旧政権の政策を踏襲し、後発医薬品の普及について述べていますが、無条件に推奨しているわけではありません。

 

○医薬品の銘柄情報が医師や医療機関にフィードバックされ、その情報が長期間保有されるようにします。後発医薬品はその効果において先発品と同等であるという評価を得ていますが、厳密な意味での比較対照試験は不充分であり、公的機関による評価のための情報収集を推進します。

 

後発医薬品とは、特許権が消滅した先発医薬品について、他の医薬品製造メーカーがその特許の内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ医薬品をいいます。

後発品の薬価には巨額な開発費用を反映する必要がなく、先発品よりはるかに安い薬価が設定されます。

また、数社が販売競争をしますので市場価格がさらに下落し、連動して薬価も安くなってゆきます。

先発品と後発品は、薬効が同じなのに薬価が大きく違います。

旧政権では、医療費抑制のために後発品の普及がほとんど無条件に進められています。

昨年4月より処方箋の書式が変更になり、「後発医薬品への変更不可」欄に署名がなければ後発品が処方されるようになりました。

生物学的同等性試験によって先発品と後発品の同等性は証明されています。

特許権が消滅するまでに開発費用の回収も終わっていると考えられますので先発メーカーを特段に保護する必要もありません。

後発品の普及推進は理に適っていると思われます。

では、民主党政策集が条件(銘柄情報のフィードバック)を求めているのはなぜでしょうか。

先発品と後発品は、添加物などの副成分にわずかな相違があったりします。

品質のばらつきも、メーカーによって微妙な違いがあります。

後発企業の多くは中小企業であり、医薬情報担当者の数が少なく、先発品で見られなかった副作用が出現した場合の対応に不安があります。

政権交代と医療(10)

2009 年 9 月 9 日 水曜日

民主党政策集では、新しい医療技術、医薬品の保険適用の迅速化にも言及しています。

 

製造・輸入の承認や保険適用の判断基準を明確にして、審議や結果をオープンにし、その効果や安全性が確立されたものについて、速やかに保険適用します。

 

保険適用によって従来の医薬品の限界が突破できるのであれば、おおいに推進すべき政策でしょう。

旧政権からの政策そのもので、別に政策転換というわけではありません。

むしろ、民主党政策集に堂々と掲げられていることに、若干の違和感があります。

医薬品の承認審査については、過去の多くの薬害事件に関し、民主党のスタンスは相当に厳しかったはずです。

承認時点での知見では効果や安全性が確認されて迅速に承認されたのだが後になって薬害事件を引き起こした医薬品について、その承認プロセスを相当に問題視してきた政党です。

 

承認に時間を要している申請薬には、安全性や有効性において既承認薬との比較優位の証明が悩ましいものが少なくありません。

製薬メーカーも、開発コストの回収のため、優位性に乏しいからといって申請を取り下げたりはしません。

かろうじて、ごくわずかな優位性をもって承認に漕ぎ着けている医薬品がたくさんあります。

それらは、一旦承認されたら、高い薬価が付けられ、特許権が消滅するまでは後発医薬品に置き換わることもなく、医療費高騰の一因となるのです。

流通後に安全性の問題が浮上してきたものもたくさんあります。

すべての承認について迅速化を謳えば製薬メーカーは大喜びですが、我が国は、医薬品の承認と流通に関し、多くの苦い経験を重ねてきたことを忘れてはなりません。

国民への福音となる画期的新薬に限定して承認・保険適用の迅速化と流通後のモニターの充実を図り、他は承認を焦らない、というのが本来あるべき姿であろうと思います。

新政権の試金石は、新型インフルエンザワクチンの輸入承認です。

1万人に1人しか重篤な副作用をきたさないようなものであっても、1千万人へ接種すれば1千人が重篤となります。

安全性の確認には時間がかかります。

今シーズンは見送って既承認の国産ワクチンだけで乗り切るか、多少の安全性の不安には目を瞑って承認を急ぐか。

従来の民主党のスタンスだと前者でしょうが、新型インフルエンザ対策全般に責任を負う政権党の立場での決断はどうなるでしょう。

政権交代と医療(9)

2009 年 9 月 8 日 火曜日

民主党の政策集には「包括払い制度の推進」という項目があります。

「出来高払い方式」(医療行為ごとに医療機関が報酬を受ける方式)は過剰診療に傾きがちで、医療費高騰の一因だといわれています。

それに対し、包括払い方式は、診療行為に関係なく、病態ごとに定額の報酬が支払われる方式です。

包括払い方式であれば過剰診療が医療費に反映しませんので、医療費抑制策のひとつとして、旧政権から導入が推進されています。

新政権の推進方針は次の通りです。

 

○急性期病院において、より一層の包括払い制度の導入を推進します。

○療養病床においては食費・居住費を含めた包括払い制度を導入します。

○超急性期・回復期・維持期リハビリテーションについては、当面は出来高払い制度としますが、スタッフの充実度および成果を検証し、将来的には包括払い制度に組込みます。

 

包括払い方式は診療に手抜きをしても定額の報酬が得られるので、必要な検査や投薬が省略される危険性がありますが、手抜き診療で病気の回復が遅れると医療機関の出費がかえって増えてしまいます。

粗診療が行われにくいよう丁寧に制度を組み立てることができれば、包括払い方式は効率的な医療の推進に役立つ仕組みだといえるでしょう。

包括払い方式の難点は、報酬額を決定するメカニズムが複雑であることです。

病態ごとの実勢相場(出来高払い換算)が基本となりますが、全国の医療現場で効率化が進めば進むほど、評価報酬額は少なくなってゆきます。

効率化が進まない医療機関では収益性が悪化してゆきます。

なお、外来診療にも、後期高齢者について定額の「包括払い」が導入されています。

かかりつけ医が診療計画書を作成して生活全般にかかわる指導・診察を行えば定額請求できる診療報酬です。

この包括払いについては、医師へのフリーアクセスが制限され、必要な検査ができなくなる恐れがあることなどから、新政権は反対しています。

政権交代と医療(8)

2009 年 9 月 7 日 月曜日

民主党の政策集では「被用者保険と国民健康保険を順次統合し、将来、地域医療保険として、医療保険制度の一元的運用を図る」という方向性が示されています。

経済同友会報告でもそうでしたが、医療保険制度の一元化は、医療制度の改革を検討する人が必ずと言っていいほど囚われる夢です。

一元化して、最も保険料が少ない制度に揃えることができるのであれば改革への着手は容易ですが、それは叶わぬ夢です。

70歳未満の統計に限っても、加入者一人あたり医療費が23万円の国民健康保険と、加入者一人あたり医療費が13万円の被用者保険とが一元化されれば、被用者保険の保険料はかなり上げなければなりません。

健康保険組合の合意を得ることは困難でしょう。

税金を投入して運用している保険であれば政権の意のままにできるかもしれませんが、健康保険組合は、逆に、他の保険を支えるために多大な拠出をさせられています。

さらに加入者一人あたり医療費86万円の後期高齢者医療制度も廃止して一元化するとなれば、健康保険組合の多くは破綻し、国民皆保険の維持が困難となってしまいます。

制度統合によって増える負担分を税金で補填すれば一元化は可能かもしれませんが、24兆円の社会保障予算の財布の持ち主が34兆円の医療費の財布の持ち主を助けようとしても、限界は明白です。

政権交代と医療(7)

2009 年 9 月 6 日 日曜日

民主党のマニフェストで最も強調された項目のひとつは、後期高齢者医療制度の廃止です。

もし廃止できなければ政権の信用が一気に失われるであろうくらいにクローズアップされた公約です。

制度廃止は新政権の生命線だといえるでしょう。

しかし、制定理由があって出来た制度ですので、廃止はそう容易ではありません。

廃止前の制度は、健康保険組合や国民健康保険が拠出金を出し合って高齢者の医療費に充てる仕組みでしたが、拠出金の増大に耐えられず、健康保険組合による拠出金不払い運動が起きました。

1999年のことです。

この年の秋から国会で高齢者の医療についての論議が始まっていますので、2008年の制度開始は8年越しの検討の集大成だということもできます。

この間、市町村国保は、拠出金負担の多寡により保険料格差が最大5倍に広がり、社会保障制度としては許容できないほどの不公平状態となりました。

保険料の高騰は保険料の不払いを招き、国民皆保険の根幹が揺らぐ事態となりました。

制度開始により、健保も国保も、負担がずいぶん緩和されています。

保険料の地域間格差も小さくなっています。

この制度を廃止してしまうと、高齢者を多くかかえる健保や国保がたちまち破綻してしまいますので、何らかの財政措置が必要となります。

民主党の政策集では次の措置が記載してあります。

 

○廃止に伴う国民健康保険の財政負担増は国が支援

○国民健康保険を運営する自治体への財政支援を強化し、地域間の格差を是正

○高齢者の保険料負担は現行水準の概ね維持または軽減、若年負担について現行水準の概ね維持

 

医療費を多く要する高齢者は、これからも急増します。

しかし、保険料は現状維持でということです。

そういう制度設計だと、高齢者の医療費の増分はすべて税金で賄われることになります。

税支出が際限なく増え続けます。

消費税率アップなど、増税策を次々に打ち出さなければ維持できない制度となります。