‘政権交代と医療’ カテゴリーのアーカイブ

政権交代と医療(61)

2009 年 11 月 15 日 日曜日

行政刷新会議ワーキンググループ(WG)の診療報酬に関する11日の事業仕分けの際、評決結果は中央社会保険医療協議会(中医協)へ伝えられることになっていました。

中医協が13日に開催され、そこで報告されたのですが、委員から激しい反応があったようです。

<診療報酬が伸びたから下げよう、という議論はあまりにも乱暴である>

<中医協は専門家が毎週2回、3時間以上、計数百時間にわたって膨大な資料を見ながら議論を重ねて結論を生み出そうとしているが、医療関係者なしで短時間、資料もほとんどない中で決められたものに拘束されるのはおかしい>

<政権公約の中に医療費のある程度の引き上げは必要だろうという考えがあったはずだが、事業仕分けの結果は政権公約と乖離しているのでは>

これらがちゃんと説明されない限り、診療報酬の行方は迷走することでしょう。

政権交代と医療(60)

2009 年 11 月 14 日 土曜日

来年度予算の概算要求が発表されて4週間が経ちました。

例年であれば水面下では省庁間の調整が進行し、来年度に向けての閣僚発言も活発化してくる頃です。

新政権でも閣僚発言は活発ですが、例年と異なるのは、閣僚によって発言内容が異なることが目立つことです。

横断的な調整がうまく行っておれば、閣内不一致は起きにくくなります。

行政機構では「縦割り」の弊害が起きやすいことから、従来は、省庁間で調整に調整を重ね、調整が済んだ段階で対外的に方針が発表されていました。

昨今の報道は、財務大臣はこう言っているが○○大臣はこう言っている、という類のものをはじめ、総理や副総理に至るまで、閣内の発言に統一性がない、究極の「縦割り」が放置されている状態になっています。

財務大臣は財務省の立場を主張し、総務大臣は総務省の立場を主張し、厚生労働大臣は厚生労働省の立場を主張し・・・と、概算要求提出直後のコメントであれば容認されるような縦割りの思考が、今になっても堂々と公言されている異常事態です。

「縦割り」弊害の時代に逆行しまいかと心配です。

医療に関しては、診療報酬の扱いが、縦割り体制の中でどう決着されるものかが気になります。

行政刷新会議の評決と政権政策との整合性もありません。

調整がないがしろにされ、結局は声が大きい(財布の紐を握っている)者の主張が問答無用に通ってしまうのではないかと懸念されます。

厚生労働大臣は13日、次期診療報酬改定率の上昇をできる限り抑えたい意向を示しました。

「コストが引き下げられる部分はできる限り引き下げていただいて、その差額を上げるべき部分に使う」と、改定率の上昇を抑え、財源の配分見直しで対応する意向で、行政刷新会議の評決に沿った発言です。

財務省との調整が済んだのかもしれませんが、診療報酬の大幅アップを信じて新政権に投票した多くの医療関係者を裏切る発言であることは否めません。

政権交代と医療(59)

2009 年 11 月 12 日 木曜日

事業仕分けのインターネット中継で診療報酬や入院時の食費・居住費などの議論をリアルタイムで視聴することができました。

診療報酬を1%上げると3400億円も国民負担が増えるので診療報酬は上げるな、入院時の食費・居住費を保険から支出するのはけしからん、と医療経営にはマイナスで、かつ患者負担が大幅に増えるような方向付けの評決となりました。

診療所の医師のほうが勤務医より年収が多いので診療所配分を減らして病院へ回すべきだ、年収が多い皮膚科や眼科への配分を小児科や外科へ回すべきだ、とゼロサムの議論に始終しました。

政権公約で謳われた医療費(診療報酬)の大幅アップは幻想だということになりますが、部分的にでもアップできさえすれば公約違反とまでは言えないのかもしれません。

入院患者の窓口支払いも大幅増となる公算が高まりました。

食費・居住費を保険外とすれば、それは患者にとっては食費・居住費の当然の支払いであって、保険診療の窓口負担が増加するわけではありません。

医療費の患者負担を増やさないという政権公約を犯すわけではありません。

政権交代と医療(58)

2009 年 11 月 12 日 木曜日

事業仕分け作業が始まりました。

進め方は具体的には次の通りです。

1.事業説明(5~7分)

各省担当職員が事業シートに基づいて当該事業の要点やシートの補足説明を行います。

2.査定担当より考え方の表明(3~5分)

財務省主計局より、当該事業の論点や主計局としての考え方を説明します。

3.当該事業の主な論点を発表(2分程度)

とりまとめ役より、事業を選定した背景や主な論点等を提示します。

4.質疑・議論(40分程度)

5.各評価者が「評価シート」へ記入(3分程度)

評価シートに評決内容とその理由を記載します。

6.WGとして評決結果を発表(2分程度)

各評価者の評価シートをとりまとめ役が集約し、WGとしての評決結果を公表します。

 

議事は一般公開されていますので傍聴できます。

事前登録は不要で入退室自由ですが、会場の都合(座席数300名程度)上、入場制限がされる場合があります。

11 11 日、12 日、13 日、16 日、17 日、24 日、25 日、26 日、27 日の9:3018:30です。 (14 日、28 日、29 日にも開催の可能性があります)

開催場所は独立行政法人国立印刷局市ヶ谷センターです。

http://www.npb.go.jp/ja/guide/soshiki/ichigaya/index.html

なお、議事はインターネットでも同時中継されます。

http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/live.html 

指名された仕分け人は必ずしも国民の意思の代表者ではなく、また、公開であるか否かは結論の妥当性を支持するものでもありませんので、評決結果は政治判断の参考意見にすぎないはずですが、このように公開の場で評決がなされますと、その結論の妥当性の如何を問わず、評決結果には従わざるを得ないような無言の圧力が醸し出されます。

劇場扇動型プロパガンダの誤謬に陥りがちな危険性を孕む手法ですので、国民としては、個々の評決結果が民主主義のフィルターを通るのを見届けるまでは安心できません。

 

たとえば、行政刷新会議メンバーがODA事業を槍玉に挙げ、国際協力機構(JICA)の「渡航費が高すぎる」と批判していることが報道されましたが、第2WGでもその通りの評決になる可能性が高いと思われます。

JICA事業でしばしば海外出張していた私自身でさえ、JICA本部勤務を経験するまでは経費削減のために格安チケットを活用しないことに疑問を持っていたくらいですので、国際協力の実務に明るくない方々であれば口を揃えて「渡航費が高すぎる」と評決するであろうことは容易に予想できます。

しかし、今回の外務大臣の渡米スケジュールの不確定性にも覗えるように、交渉相手の都合や突発的な事件への対処で、予約チケットの変更(ドタキャンや搭乗者変更、旅程変更など)が日常的に行われ、格安チケットの条件に最もそぐわないオペレーションを余儀なくされているのが国際協力活動の現実なのです。

渡航費を節減する余地がまったくないとは言えないにせよ、既に、かなりの節減努力をJICAは行っていますので、これ以上の節減を指示されれば国際協力活動が低迷する可能性があります。

政権交代と医療(57)

2009 年 11 月 11 日 水曜日

行政刷新会議の事業仕分け作業は、始動が遅れに遅れた分、短期決戦で事業ごとの裁断をしなければなりません。

メンバーは次の方々です。

鳩山 由紀夫 内閣総理大臣:議長

仙谷 由人 内閣府特命担当大臣(行政刷新) :副議長

菅 直人 副総理(国家戦略担当大臣)

平野 博文 内閣官房長官

藤井 裕久 財務大臣

原口 一博 総務大臣

稲盛 和夫 京セラ株式会社名誉会長

片山 善博 慶應義塾大学法学部教授

加藤 秀樹 行政刷新会議事務局長

草野 忠義 財団法人連合総合生活開発研究所理事長

茂木 友三郎 キッコーマン株式会社代表取締役会長CEO

12月下旬が政府予算案決定のタイムリミットですが、今後の会合は、11月中旬、下旬、12月下旬の3回しか予定されていません。

実務作業は会合の合間に3つのWG(ワーキンググループ)が行うことになります。

厚生労働省は第2WGが担当しますが、外務省、経済産業省も同じWGが担当です。

WGによる事業仕分けは、今月11日(水)~17日(火)と24日(火)~27日(金)に公開で行われます。

評価者には、全WGを横断的に、枝野 幸男 衆議院議員、泉健太 内閣府大臣政務官、大串 博志 財務大臣政務官が充てられていますが、第2WGについては以下の方々です。

(政治家)

菊田 真紀子 衆議院議員、尾立 源幸 参議院議員、担当省の副大臣又は政務官の一人

(民間有識者)

飯田 哲也 NPO法人環境エネルギー政策研究所所長

石 弘光 放送大学学長

市川 眞一 クレディ・スイス証券()チーフ・マーケット・ストラテジスト

長 隆 東日本税理士法人代表社員

海東 英和 前高島市長

梶川 融 太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員

木下 敏之 前佐賀市長/木下敏之行政経営研究所代表

熊谷 哲 京都府議会議員

河野 龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト

小瀬村 寿美子 厚木市職員

露木 幹也 小田原市職員

土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授

中里 実 東京大学大学院法学政治学研究科教授

福井 秀夫 政策研究大学院大学教授

船曳 鴻紅 ()東京デザインセンター代表取締役社長

松本 悟 一橋大学大学院社会学研究科教員

丸山 康幸 フェニックス・シーガイア・リゾート取締役会長

村藤 功 九州大学ビジネススクール専攻長

森田 朗 東京大学公共政策大学院教授

吉田 あつし 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授

和田 浩子 Office WaDa代表

 

この方々に社会保障行政の刷新を託すことになります。

直接的な医療関係者が見あたりませんが、利害関係者は事業仕分け作業には加わらないルールです。

それにしても、医療の複雑な仕組みの理解抜きにはまともな議論は期待できませんので、医療事業の仕分けには医療制度に明るいコーディネーターが必要になります。

おそらく行政刷新会議の事務局職員(官僚)がコーディネーターを努めることになりますが、事務局職員の出身官庁は財務省3人、内閣府2人、経済産業省1人、厚生労働省1人、国土交通省1人と、財務省の影響力が大きい構成となっています。

政権交代と医療(56)

2009 年 11 月 10 日 火曜日

厚生労働省の事業仕分け対象事業が決まりました。

財源を絞り出すのが主目的の作業ですので、対象事業に選ばれたものは予算が減額される可能性が高いといえます。

 

(健康づくりに関する予算)

8020運動特別推進事業

健康増進対策費(地域健康づくり推進対策費)

健康増進対策費(女性の健康支援対策事業委託費)

(介護の充実に関する予算)

介護予防事業(地域支援事業の一部)

介護サービス適正実施指導事業

介護支援専門員資質向上事業

(医療費の配分システムに関する予算)

レセプト審査の適正化対策

レセプトオンライン導入のための機器の整備等の補助

国保中央会・国保連に対する補助金(国保連・支払基金の統合)

(医療機関へ配分される予算)

生活保護費等負担金(医療扶助の不正請求対策)

診療報酬の配分(勤務医対策等)

医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)

(その他)

柔道整復師の療養費に対する国庫負担

後発品のある先発品などの薬価の見直し

入院時の食費・居住費のあり方

 

これらのうち金額的に大きいのは医療機関へ配分される予算、とりわけ診療報酬の配分です。

これが大きく削られると、診療報酬の大幅増を約束した政権公約を破ることになってしまいます。

削らずに配分を診療所から勤務医へと大きくシフトすると、診療所を主体とした低コスト医療体制が崩れます。

なお、事業仕分けは子ども手当の予算を確保するための作業でもありますが、医療以外には次の事業も対象事業にされています。

子ども手当のために保育予算が削られるのは本末転倒でしょう。

延長保育事業(次世代育成支援対策交付金)

保育所運営費負担金(保育所の利用料の設定の仕組みを含む)

政権交代と医療(55)

2009 年 11 月 7 日 土曜日

社会保障の国民負担(国民所得比)を国際比較してみます。

いずれの国も2006年のデータです。

 

        日本 米国 英国 独  仏  スウェーデン

租税負担(A)   24.3 26.1 38.5 29.1 37.8 49.0

保険料負担(B)  14.8  8.6 10.8 22.9 24.6 17.2

国民負担率(A+B) 39.1 34.7 49.2 52.0 62.4 66.2

 

イギリスやスウェーデンは保険料負担を抑えて税負担を主に、ドイツやフランスは税負担を抑えて保険料負担のウェイトを高くして社会保障財源としています。

米国は、保険料負担を抑えたイギリスやスウェーデンよりも保険料負担が少なく、税負担を抑えたドイツやフランスよりも税負担が少なくなっています。

米国の社会保障の脆弱さのゆえんです。

日本は、その米国よりさらに税負担が少ないようです。

ずっと以前からそうだったわけではありません。

この十数年、日本が社会保障への税負担を減らしてきた結果です。

1990年時点でのデータはこうなっています。

 

        日本 米国 英国 独  仏  スウェーデン

租税負担(A)   27.6 24.1 41.4 26.4 33.0 57.5

保険料負担(B)  10.6  9.8 10.1 19.5 28.1 22.1

国民負担率(A+B) 38.2 33.9 51.5 45.9 61.1 79.6

 

保険料負担も税負担も増やしている国:ドイツ

保険料負担を減らし税負担を増やしている国:アメリカ、フランス

保険料負担を増やし税負担を減らしている国:日本、イギリス

保険料負担も税負担も減らしている国:スウェーデン

 

新政権は税負担を増やして保険料負担を抑制する政権公約ですので、税負担が大きく伸びればイギリス型に、財源不足で思うように税負担が伸びなければアメリカ型に近づくことになるでしょう。

政権交代と医療(54)

2009 年 11 月 5 日 木曜日

新政権下での国会論戦が始まりました。

閣僚が具体的な質問へ答弁します。

国会は「国権の最高機関」(日本国憲法第41条)ですので、国会答弁には重みがあります。

そのため、一字一句を間違いなく記録する速記職員も配置されています。

答弁したことを、後になって、「あの答弁は間違いでした」とうやむやにすることは許されません。

答弁ひとつで市場が動いたり、企業が計画を変更したりします。

国会質疑で自殺者が出たこともありました。

答弁してしまったことは、国権の最高機関における閣僚の発言として永久に記録され、取り消しはできません。

国会答弁を官僚たちが徹夜で作成していたゆえんです。

長妻厚生労働大臣は、11月2日の衆院予算委員会で、段階的に後期高齢者医療制度を廃止する方針を明らかにしました。

制度廃止はマニフェストに記載してあり、段階的廃止の方針も大臣記者会見等で旧聞ですが、国会答弁として記録されたことにより、正規の方針であることが確定しました。

国会答弁では、後期高齢者医療制度の問題点を改善するとして、たとえば次の事項が述べられています。

○75歳以上の人を原則、「被保険者資格証明書」の交付対象としないこと

○自治体による健康診断の対象にすること

 

被保険者資格証明書というのは、特別な理由がないのに保険料を1年間以上滞納している人に対して保険者証の代わりに交付されるものです。

保険者証と違い、診察を受けたときには診療費の全額を病院窓口で支払い、後日、滞納している保険料を納めてから、保険支払い分の払い戻しを受けます。

健康保険は、病気とは縁が薄い時に保険料を納める社会保障の仕組みです。

保険料を納めようが納めまいが保険診療が受けられるのであれば、保険料を正直に納めている圧倒的多数の人が馬鹿を見てしまいます。

病気になった時だけ保険料を納める、という人が増えれば制度維持が困難なのですが、現実問題、滞納者であっても高額支払いを理由として必要な医療からシャットアウトさせるわけにはいきません。

被保険者資格証明書の交付は、そのような滞納者救済の苦肉の策として行われているものです。

「被保険者資格証明書」の交付対象としない、と答弁してしまった以上、大臣はこれに代わる名案を出さなければ、保険料滞納者が増えて、廃止するまでもなく制度が崩壊してしまいます。

政権交代と医療(53)

2009 年 11 月 1 日 日曜日

中医協委員の内定プロセスについて、日本医師会が「容認できない」という見解を出しています。

日本医師会という組織は、医師への利益誘導を目的とした圧力団体であるかのごとく、世間からは何かと色眼鏡で見られがちな組織ですが、地域医療を担う900近い地域医師会を底辺とした名実ともに医師を代表する組織です。

職種ごとに組織化された団体がその職種への利益誘導的性格を帯びるのは当然のことであり、そういう側面だけで日本医師会という組織を評価するのはフェアではありません。

厚生労働省の数多くの審議会、検討会、委員会には、日本医師会から、それぞれの分野に明るい、医師を代表する委員を推薦していただいており、そこでは医師を代表した立場から建設的な意見が届けられています。

さらに、検討結果の現場へのフィードバックに際しては、採算を度外視してでも国民の健康のために組織的協力を惜しまない、そのような社会貢献的性格が強い団体でもあるという側面も評価しなければなりません。

採算性に乏しいへき地医療や地域保健活動が維持されているのは医師会の協力あっての賜物です。

中医協の設置を定めた社会保険医療協議会法では「医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員」を選ぶことが定められています。

医師を代表する委員の選び方として、日本医師会の推薦を求めなかった今回の任命プロセスに日本医師会が「容認できない」とするのには頷けます。

もちろん、厚生労働大臣が客観的判断として「医師を代表する委員」を選ぶプロセスが許されないということはありません。

しかし、総選挙で応援したからとかしなかったからとか、そういう判断が少しでもあるようなら、「医師を代表する委員」としての客観性が疑われることになります。

政権交代と医療(52)

2009 年 10 月 30 日 金曜日

総選挙の翌日から、政権交代の医療への影響について自分なりの解釈を加えながら動向をレポートしてきました。

まる2か月になりますが、この情報発信に関心を寄せていただいた方より講演依頼がありました。

本日の午後、東京で「政権交代と医療の行方」について講演します。

実は、講演依頼を受諾した時点(9月中旬)では、いくらなんでも10月末には、医療関係予算や診療報酬の行方について、それほど的外れではない予測ができるくらいの進展があるだろうと高をくくっておりました。

しかし、医療に関する政策決断は、ほとんどすべて先送りされてしまい、この2か月の進展はゼロと言ってもいいくらいです。

次期診療報酬改定に関する中医協の開催も遅れに遅れていますので、どちらかといえばマイナスの進展かもしれません。

改定率が確定しないと、各論を詰めることができませんが、そもそも改定率を決定する意思決定がどこで行われるかについてもぼやけてきています。

診療報酬をプラス改定するための財源も見通しが立っていません。

改定率が影響する来年度予算項目については「事項要求」ばかりです。

政権交代と医療(51)

2009 年 10 月 28 日 水曜日

民主党政策集の医療分野の最後の項目です。

長期療養病床計画について言及があります。

 

○日本の将来推計人口と患者調査の入院受療率から、2025年の推計長期療養患者は54万人

○54万人の7割の38万人の病床が必要であり、残る17万人については、在宅あるいは「終の棲家」としての施設としての拡充を図るべき

○38万床は2006年の療養病床数に一致

○現在の療養病床は居住施設への転換を図りつつ、急性期病床から亜急性期病床へ、亜急性期病床から療養病床への転換を図りながら、総枠としての療養病床38万床を維持

○食事、居住も医療の一環として捉え、基本の食事・居住費を含んだ包括払いとし、プラスアルファの部分を選定療養とする

○終生、医療・介護を必要とする患者さんにとっては、個室形態が望ましい

 

旧政権によって2006年に成立した医療制度改革関連法により、療養病床を大幅に削減して介護施設に転換させていく方針が示されました。

入院している人の半分は治療の必要が薄いとし、38万床のうち介護型療養病床(13万床)を2011年度末までに全廃し、医療型療養病床を4割減らして15万床にする方針でした。

入院患者を医療の必要度に応じて3つの区分に分け、医療の必要度が低いと判定された「医療区分1」の入院患者を多く抱える施設では病院経営が苦しくなる診療報酬となりました。

その後、高齢者人口の伸びへの対応と、早期のリハビリテーションを重視する観点から医療型療養病床の削減方針は緩和されたものの、医療区分1の入院病床の淘汰による大幅な病床削減は避けられない流れとなっていました。

民主党政策集では、長期療養病床として38万病床を維持するという方針転換になります。

ただし、病床転換により、(亜)急性期病床は削減されます。

また、医療区分が低い人の社会的受入れ体制の充実により、長期療養病床入院患者の医療区分は相対的に高くなります。

急性期病床を削減したほうが長期療養病床を削減するより医療費削減効果は格段に大きいのですが、病院経営が急性期病床の高収益性に依存して維持されている現状から、現実には容易なことではありません。

政権交代と医療(50)

2009 年 10 月 27 日 火曜日

臨時国会が召集され、鳩山首相が所信表明演説を行いました。

マニフェスト同様、大胆な宣言事項が多くちりばめられています。

国会における首相の発言はとりわけ重いので、従来であれば、過度の財政負担が生じないよう官僚の手が入れられていました。

今回の演説原稿は官僚作文ではないようです。

医療については「財政のみの視点から費用を抑制してきた方針を転換する」と言い切っています。

これまで費用が抑制されていたのは、財政圧迫が大きな要因でした。

自営業者や中小企業や高齢者の医療については、医療費をカバーできるだけの保険料が確保できない分を財政出動で賄ってきたのですが、財政逼迫のため、医療費が抑制されるようになってきています。

この方針が転換されるということは、医療費を抑制しなくてもよいほど公費を投入するという方針とも解釈され、大きな意味をもつ発言です。

診療報酬改定、高齢者医療制度の保険料の上昇を抑制する措置等、協会けんぽ国庫負担割合の引上げなどが「事項要求」とされていますが、首相の所信表明演説により、首相の国会発言が軽んじられない限り、これらが実現される公算が強くなります。

政権交代と医療(49)

2009 年 10 月 24 日 土曜日

行政刷新会議が始動しました。

来年度予算の概算要求額(95兆円超+事項要求)を削減するのが当面の使命です。

目標額は92兆円以下ですので3兆円以上を削減しなければなりません。

約20人の国会議員と、民間人十数人での11月末までの短期決戦作業です。

約240事業について3班に分かれて公開の場で精査します。

厚生労働省の事業は、事項要求分だけでも1兆円を超え、全体額が大きいだけに狙い撃ちにされます。

並々ならぬ意気込みでの始動ですが、既存予算の削減は至難の業だと思います。

厚生労働省の場合、毎年の2千億円超の社会保障費削減圧力が、すでに一般会計予算を極限に近くスリムにしてしまっています。

法令に根拠がない事業は既にほとんど淘汰されていますので、予算を削ろうとする事業ごとに法令改正が必要になります。

しかし、年内に開催される臨時国会では、そのような法令改正審議を行うだけの日程は確保されていません。

精査過程が「公開」されるのも、不透明な支出を削るのには威力を発揮できる仕組みですが、定着事業を廃止しようとする場合には利害関係者からのブーイングが押し寄せます。

事業廃止が何もできないようであれば、行政経費の節約くらいしか削減の余地がないかもしれません。

概算要求にあたり、行政経費の節約指針が出されています。

「厚生労働省における行政経費の節約に向けた取組」(抄)

     両面印刷の徹底、集約印刷の活用

     事務用品の一括調達、複数年度のリース契約

     公用車のアイドリングストップ

     昼休み時間の消灯

     20時以降のエレベーター運転数の制限

     近隣階への階段利用

     冷暖房の利用の制限

     割引運賃、パック商品の利用徹底による出張旅費削減

兆単位の削減にはほど遠いようです。

なお、予算執行の自由度が大きい特別会計については、法令改正なしに大胆に切り込むことがある程度は可能です。

特別会計によるサービスを縮小することで特別会計財源を節約することができます。

一般会計予算の削減がままならない場合、特別会計の削減が「成果」としてPRされることになるかもしれません。

しかし、特別会計財源の節約は特別会計の徴収額の低減に反映させるのが筋で、一般会計の財源へ流用するのは、理屈の上で難があります。

やはり一般会計の削減の「成果」で、行政刷新会議は評価されるべきでしょう。

政権交代と医療(48)

2009 年 10 月 23 日 金曜日

民主党政策集によれば「統合医療」を確立し、推進するとのことです。

 

○漢方、健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧、鍼灸、柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療として科学的根拠を確立します。

○アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します。

 

相補・代替医療とされているものの中には、西洋医学に比して、科学的根拠が乏しいものがあります。

医療は生命に関わることですので、科学的根拠のない療法は淘汰されなければなりません。

相補・代替医療について、科学的根拠を確立するという方向性は間違っていませんが、さらに、その科学的情報を正しく広めることがとりわけ重要です。

相補・代替医療に関する最大の問題点は、怪しげな民間療法がもっともらしく広まり、そのために正しい医療を受療する機会を逃している人が夥しいことです。

政権交代と医療(47)

2009 年 10 月 21 日 水曜日

民主党政策集による心身医療の提供体制の整備についての記載です。

 

○不登校、引きこもり、摂食障害等、心の悩みや問題を抱える青少年に対する診療体制を整備

○乳幼児健診への専門スタッフの参加等を検討

○本人だけでなく一緒に悩んでいる家族に対しても支援

○カウンセリングの再評価を行い、カウンセラーの資格、診療報酬のあり方を見直し、薬剤治療を中心としなくとも適切な治療ができるようにする

 

専門的医療の提供体制整備が難しいのは、その領域の専門家を核として整備しなければならないのに、専門家が十分な数、存在していないところにあります。

数少ない青少年の心身医療の専門家は、既に青少年に対する心身医療に忙殺されています。

数少ない乳幼児の心身医療の専門家も、既に健診システムに組み込まれて引っぱりだこです。

心身医療のカウンセラーについても、薬剤治療に頼らずにカウンセリングで問題解決できるような資質の人材は限られています。

心身医療、カウンセリングは1人あたりに要する診療時間が長いので収益性が低く、診療報酬のあり方の見直しがなければ人材が増えないのかもしれませんが、この領域の専門性は長い経験によって培われるものなので、短期間で専門家を増やして体制整備することは困難です。

政権交代と医療(46)

2009 年 10 月 18 日 日曜日

診療報酬改定のあり方についての政府方針が発表されました。

来年度からです。

新方式は厚生労働大臣直属の検討チームが改定の基本方針や改定率の原案を作成して閣議決定するトップダウン方式です。

外部有識者を中心にした検討チームが、診療報酬の重点配分などの基本方針と、診療報酬総額の改定率などの大枠を策定し、これを厚生労働大臣が内閣に諮り、閣議決定する仕組みです。

これまでは、社会保障審議会(厚労相の諮問機関、社保審)の医療部会と医療保険部会が診療報酬改定の基本方針を決め、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)が具体的な診療報酬を決めてゆく仕組みでした。

新方式では、中医協や社保審の両部会は、改定の細部を詰めるだけの役割となります。

総額の改定率に応じて責任を持って政府予算を配分していただかなければなりませんので、あらかじめ閣議決定を求める仕組みには意義があるかもしれません。

しかし、予算編成段階で政府予算案が膨らみすぎた場合には、内閣としては支出増に繋がる改定率アップの閣議決定はできかねるかもしれません。

厚生労働省は、こども手当が満額支給となる再来年度以降には、予算をさらに3兆円圧縮しなければなりません。

(財務大臣の意向にも左右される)閣議決定では、大幅なマイナス改定が決められてしまうおそれもあります。

政権交代と医療(45)

2009 年 10 月 17 日 土曜日

各省庁からの概算要求が出揃いましたが、要求総額は95兆円を超えたようです。

対し、税収は40兆円を下回る見込みだそうです。

政権公約に明記されていた医療関係の予算は概算要求に盛り込まれず「事項要求」とされていますが、収支バランスを考えると、予算の上積みは困難でしょう。

藤井財務大臣は「概算要求で金額を定めない事項要求について断固査定する。ほとんど(実現)できないだろう」と述べています。

政権交代により、税金の大幅な投入で医療財源が拡大することを期待した人は多いかと思います。

マニフェストでは『コンクリートから人へ』のキャッチフレーズが印象的でした。

しかしコンクリートに象徴される公共事業の予算規模は7兆円です。

この一部を削って社会保障や医療に振り向けたところで、社会保障の予算規模(25兆円)には遠く及びません。

マニフェストでは、4年間での公共事業削減目標は1.3兆円にしかすぎません。

1年あたり3~4千億円の一部を振り向けても、総医療費34兆円を拡大するには焼け石に水でしょう。

税収は、本年度予算(歳入)では、所得税が15.6兆円、法人税が10.5兆円、消費税が10.1兆円、その他の税が9.9兆円の見込みでしたが、これらが大きく落ち込んでいます。

公共事業の削減幅より、税収の増減幅のほうが大きいのです。

財源確保の正攻法は、景気を刺激して税収を増やすことでしょう。

景気が良くなれば、保険料も増加します。

政権交代と医療(44)

2009 年 10 月 16 日 金曜日

15日、各省庁は来年度予算の概算要求を再提出しました。

厚生労働省は本年度当初予算(25兆2千億円)より3兆7千億円増の28兆9千億円の要求でした。

増額分から、子ども手当(2兆2554億円)、年金記録照合(1779億円)、雇用保険見直し(2681億円)の予算を減ずると社会保障費の自然増分を賄うのがやっとで、政権公約に書かれた医療関係対策に必要な予算のほとんどは「先送り」(項目要求)されています。

「先送り」というのは、要求予算には計上されていないが年末の政府予算案の確定までには査定増を目指して折衝する、という意味ですが、各省庁の概算要求の総計が90兆円を超えている状況での年末に向けての作業は更なる予算規模の圧縮ですので、査定増は望み薄です。

医療政策に関しては(多大な予算を要する)政権公約は実現されないと予想されます。

診療報酬の増額も保険への国費投入策も「先送り」です。

医療については、補正予算での「地域医療再生臨時特例交付金」(750億円)も財源確保のために執行停止されましたので、厳しい状態が続きます。

15日夜、鳩山首相はマニフェストに盛り込んだ政策について、赤字国債を増発しても実行することに世論の反対が強いと判断した場合は、一部の実施を断念することもあり得るとの考えを示しました。

政権交代と医療(43)

2009 年 10 月 15 日 木曜日

民主党政策集による難治性疾患対策です。

 

○難病患者・家族の切実な声が施策に反映されるよう、難病対策委員会の定例開催等といった環境整備を着実にすすめる

○新規指定や対象年齢拡大を望む様々な疾患の患者が必要な医療が受けられるよう、現行の難病対策及び希少疾病の新薬開発や保険適用の仕組みを抜本的に改革

○難病に関する調査研究及び医療費の自己負担の軽減を柱とする新たな法制度を整備

○白血病等、長期継続治療を要する患者の自己負担軽減

 

現行の難病対策のうち医療費の助成制度(特定疾患治療研究事業)は、保険診療の自己負担分の一部を国と都道府県が公費負担として助成しています。

昭和47年からの制度で、制度としては安定運営されていますが、対象疾患は45疾患のみです。

対象疾患に指定されるか否かで医療費負担が大きく異なりますので、対象疾患拡大の「切実な声」があります。

どんな病気であっても、長引く病気、治らない病気は、当事者にとっては「難病」です。

しかし、旧政権では長期療養疾患をすべて公費負担医療にする考えはなく、公費負担の対象となる「特定疾患」を次のように定義しています。

 

「原因不明、治療方法未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾病」として調査研究を進めている疾患のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く患者数が比較的少ないため、公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療方法の開発等に困難をきたすおそれのある疾患

 

難治度、重症度が高くても、患者数が多かったり、原因・治療法が解明されている疾患は特定疾患には指定されません。

より多くの難治性疾患を対象とするには、制度を抜本的に改革する必要がありますが、難治性疾患治療には高額医療費が集中していますので、相当の予算を必要とします。

政権交代と医療(42)

2009 年 10 月 14 日 水曜日

民主党政策集では、過去に政府あるいは企業が引き起こした健康被害の救済についての言及があります。

 

●アスベスト健康対策

石綿被害者救済法による救済レベルを、労災保険給付と同レベルに引き上げ

悪性中皮腫の全数調査を行い、中皮腫登録制度を発展

石綿肺などアスベスト関連疾患を救済制度の対象疾患に追加

家族や周辺住民への影響については、無料健診など健康管理体制を確立

業務災害については、時効期間が過ぎても請求できるようにする

健康管理手帳制度を改善

●カネミ油症被害者対策

ダイオキシン類による健康被害の全体像を国の責任で把握

医療の自己負担分の支援や健康管理手当、特別遺族給付金の支給等

●肝炎総合対策

肝炎医療費助成法(肝炎患者支援法)を制定し、総合的な肝炎対策を実施

抗ウイルス剤治療の自己負担額の上限を月額1万円に

肝炎対策の調査研究を促進し、予防体制を確立

治療のために休業・休職する患者の生活の安定

感染症に関する正しい知識の教育、広報を拡充し、差別や偏見をなくす

 

政府による認定のあり方がしばしば問題とされている原爆症や水俣病の救済についての言及はありません。

政権交代と医療(41)

2009 年 10 月 13 日 火曜日

10月7日に予定されていた中央社会保険医療協議会(中医協)が中止になりました。

10月1日に任期切れを迎えた委員の改選人事案も決まっていません。

中医協は次回(来年4月予定)の診療報酬改定の大方針を決定する場です。

年明けには細かい詰めの作業に入りますので、10月、11月のうちに論点を整理しておく必要があります。

この時期の開催中止の影響は大きく、次回改定は、慎重な合意形成過程を省いた、政治的意向を色濃く反映するものになる可能性があります。

病院と診療所との医療費配分が見直されそうです。

病院勤務医の労働条件の改善のためです。

診療所の医師のほうが勤務医よりも経済的に恵まれているので診療所の配分を削って病院に回そう、というものです。

診療所の代弁者としての性格が強い日本医師会の代表委員が改選で外されてしまえば、この流れが決定的になるでしょう。

このほか、新薬の開発資金の確保のために新薬の価格を一定期間引き下げない「薬価維持特例制度」も、医療費の配分が病院、診療所から製薬業界に大きくシフトすることから日本医師会が導入に反対していました。

日本医師会の代表委員が外れれば、この制度も導入されるかもしれません。

我が国の医療が欧米諸国と比して低コストで維持できてきた要因のひとつに、医療需要の多くを診療所が吸収してきたことがあります。

同じ病気でも、重装備の病院を受診するほうが、軽装備の診療所を受診するよりもコスト高となります。

医療の効率化推進の決め手は、病院と診療所との役割分担です。

大局的には、病気が軽いうちは診療所を受診し、また病状が安定すれば診療所のかかりつけ医がフォローする、といった体制を指向した制度設計をしなければなりません。

診療所の機能を軽視して、診療報酬を病院や製薬業界へとシフトすれば、将来的には相当の医療費増加が避けられないことを覚悟しなければなりません。

長妻厚生労働大臣は10日、かかりつけ医への診療料の定額払い方式(75歳以上が対象)の診療報酬を廃止する方針を固めたそうです。

後期高齢者医療制度で導入された定額払い方式で、患者負担を少なくすることで病院と在宅治療の連携を狙いとしたものでした。

廃止になれば出来高払いとなり、これも医療費の増大を招きます。

政権交代と医療(40)

2009 年 10 月 12 日 月曜日

民主党政策集による新型インフルエンザ対策です。

 

○日中韓を中心に、東アジア全体で新型インフルエンザに対応できる体制をつくる。

○新型インフルエンザ発生時の官邸・各省・国立感染症研究所・国立医療センター・大学・地方自治体等の連携を強化し、危機管理体制を再構築し、診断・相談・治療体制の実態を速やかに把握。

○発熱相談センターを強化し、感染症対応の隔離個室確保・整備を進める。

○各医療機関の診療マニュアル策定、陰圧個室設置、治療用テント、医療資器材、施設整備を国の予算でその十分な額を支援。

○徹底した情報開示を恒常化し、新型インフルエンザ行動計画ガイドラインを全面的に見直し、検疫法のあり方を検討。

○ワクチン開発製造・備蓄・流通体制の拡充及び海外との連携。

○新型インフルエンザ対策によって従来の病院機能が低下しないよう、病院や医療従事者に対する支援等を充実。

○高病原性鳥インフルエンザが発生した養鶏場に対する経営支援策を強化。

○強毒性新型インフルエンザのプレパンデミックワクチンを希望者全てが受けられる体制を整備。

○輸血を介した感染防止のための新技術を導入。

 

盛りだくさんですが、新型インフルエンザ対策は焦眉の急ですので、官僚への指示を急いでいただかなければなりません。

国の予算による支援策が必要な事項が多いので、補正予算を組みなおす機会に多額を確保する必要があります。

政権交代と医療(39)

2009 年 10 月 10 日 土曜日

政権が国を動かす主たる手段は予算です。

今年度補正予算の見直しや来年度予算概算要求をまとめるタイムリミットが近づくにつれ、俄然、動きが慌ただしくなってきました。

これらの動きの中で医療に予算がどのくらい配分されるかで、医療の(当面の)行方が予測されます。

報道によりますと、厚生労働省は、子ども手当(2兆7000億円)のほか、雇用保険の対象者拡大、診療報酬の増額などにかかる費用を計上し、今年8月の要求額26兆4000億円より約4兆円上積みした30兆円超の概算要求を提出する方針だとのことです。

診療報酬への国費投入の増額により、医療に若干のゆとりが生まれますが、それは増額の規模によります。

高齢化の進展など、毎年1兆円規模のコストの自然増要因があるのが医療費です。

自然増分未満の国費の投入では焼け石に水かもしれません。

同じく報道によりますと、財務省は、各省庁に提出を求めている来年度予算の要求について、本年度当初予算(厚生労働省は25兆円)より減額での要求を依頼しており、厚生労働省についても、例外なく増額を認めない考えを表明しているのだそうです。

30兆円の確保が叶わない場合、診療報酬の増額は多くを望めないかもしれません。

なお、医療費の増減に影響する、具体的な診療報酬を決めるのは中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)です。

8日、長妻大臣は、中央社会保険医療協議会の委員から日本医師会の代表委員(3人)を全員排除する方針を固めました。

荒療治です。

予防接種事業や健診事業など、厚生労働省は日本医師会の協力なしには進まない施策をたくさん実施しています。

政権交代と医療(38)

2009 年 10 月 9 日 金曜日

欧米では承認されて医療現場で使用されているのに日本では未承認となっている薬剤があります。

承認は、有効性と安全性が従来薬より勝っている場合に与えられます。

従って、欧米で承認されている医薬品は、欧米で有効性・安全性が確認されています。

しかし、薬剤の生体に及ぼす影響は個人差が大きく、人種差も無視できません。

欧米で承認されていても、日本では重大な副作用が発現する場合もあります。

日本で承認を得るためには、日本人に有効で、かつ日本人に安全であることを確認しなければなりません。

確認は臨床試験によってなされます。

臨床試験には相当の厳密性・客観性が要求されます。

日本には、国際水準の臨床試験基準を遵守できる医療機関が比較的少なく、そのため、必要数の臨床試験を完了するのに相当の期間を要します。

日本と欧米との間に承認のタイムラグが生じる理由のひとつです。

しばしば社会的に問題とされる国内未承認薬は、抗がん剤など薬理作用の強い薬剤です。

薬理作用が強いからこそ、慎重に有効性と安全性を確認しなければなりません。

厳密な臨床試験の実施には多大な経費を要します。

補正予算で、臨床試験を推進する「未承認薬等開発支援事業」として753億円が確保されていましたが、今般の政治主導による見直しで100億円に削り込まれました。

学会や患者団体から要望を募り、関係企業とも調整して具体的に予算を充当する候補品目も決定していたのですが、仕切り直しです。

政権交代と医療(37)

2009 年 10 月 8 日 木曜日

厚生労働省が10月6日に発表した今年度補正予算の執行停止額4359億円の内訳です。

「緊急人材育成・就職支援基金」(7000億円)のうち3534億円

「未承認薬・新型インフルエンザ等対策基金」(2074億円)のうち679億円

※新型インフルエンザワクチン購入費に充当する1279億円は停止しない

特別養護老人ホームなどへの整備転換などに対する財政支援8億円

女性の健康支援対策事業委託費6億円

日本社会事業大の施設整備費6億円

病院施設の地上デジタル放送対策4億円 など

 

医療・介護関連では執行停止を免れた予算が多かったようです。

「介護職員処遇改善等臨時特例基金」4773億円

「地域医療再生基金」3100億円

「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」2495億円

「医療施設耐震化等臨時特例基金」1222億円

レセプトオンライン化推進事業291億円

 

項目名を見る限りでは、執行停止されたものも免れたものも、いずれも必要性が頷ける予算ばかりですが、本来、必要性が高い予算は補正予算ではなく本予算に計上すべきものだと思います。

概算要求基準の制約のために本予算に盛り込めなかったのだとすれば、概算要求基準を撤廃した新政権に理があります。

政権交代と医療(36)

2009 年 10 月 7 日 水曜日

行政刷新会議の担当官に厚生労働省の官僚が抜擢されました。

村重直子課長補佐で、5日付での異動です。

医学部卒業後、日米で内科医として7年の臨床経験を積んだ後、平成17年から厚生労働官僚(医系技官)として働いていた人です。

必ずしも官僚の代弁者ではなく、対外的にも歯に衣着せぬ情報発信を続けていたところが舛添前厚生労働大臣の眼鏡に適い、省改革メンバーに抜擢されました。

大臣側近(大臣政策室政策官)としての活躍の様子が、行政刷新会議の仙谷大臣の眼鏡にも適ったものと思われます。

http://video.aol.com/video-detail/-1/1223385/?icid=VIDURVENT01

(村重氏の講演映像)

舛添前大臣の打ち出した医療政策には村重氏が影響を及ぼしています。

仙谷大臣へも少なからず影響を与えることでしょう。

官僚としての立場を離れた発言を繰り返す官僚は、通例、官僚組織から爪弾きされるものですが、村重氏は「官僚を改革する」という時流に乗って、医療改革の中枢に遡上することができました。

村重氏は官僚の代弁者というより医療現場の代弁者としての意識が強い方です。

官僚経験が短いから、というわけではなく、官僚経験の多くを官僚組織を敵に回すような職務で過ごされたからでしょう。

仙谷大臣と同じく医療費抑制政策への反発が強く、医療現場としては力強い人事ですが、日本の医療を守っているのは医療の現場だけではありません。

財源を確保する現場や過疎地の交通アクセスを確保する現場など、さまざまな現場の声に耳を傾けて、行政刷新にその手腕を発揮していただきたく思います。

政権交代と医療(35)

2009 年 10 月 4 日 日曜日

民主党政策集による歯科医療政策です。

 

○歯の健康の保持の推進に関する法律を成立させる

○そしゃく機能の障害については申請手続に歯科医師の診断書を認めるよう、身体障害者福祉法を改正

○寝たきりの高齢者や障がい者も含め、すべての国民が歯科検診・医療を受けられるようにする

○歯科疾患の予防法や治療について調査研究を推進

○歯科技工物(義歯)のトレーサビリティーの基準を定める

○歯科技工士の評価等、技術料や歯科基本料の見直しを検討

 

歯科医療の経営危機は医科に先んじて訪れています。

上記は、歯科医療の経営改善にプラスとなる政策ですので、歯科関係者には朗報です。

本年の歯科医師の新規参入(国家試験合格者数)は2383人で、医師の新規参入は7668人でした。

年々、診療領域の割にはアンバランスに過剰な数の歯科医師が生み出されています。

さらに歯科技工士の養成数は歯科医師の養成数を上回っています。

歯科医療政策としては、個々の歯科医師や歯科技工士の収入を増やす方策はさておき、養成数を適正化することが重要ですが、その記載はありません。

政権交代と医療(34)

2009 年 10 月 3 日 土曜日

新政権が予算編成作業に本格的に着手します。

10月15日が平成22年度予算の新たな概算要求締め切りですが、年内編成のためには2か月しかありません。

行うべき作業は次の4つです。

  新規事業を予算に盛り込むこと。

  事業財源を確保するため、既得予算を削ること。

  予算支出・削減の根拠となる法令等を整えること。

  予算執行に齟齬をきたさないため、制度間調整と省庁間調整を行うこと。

昨年までも、この時期、官僚たちは上記作業を4か月がかりで行っていました。

今回は新規事業の数が桁違いに多くなります。

それを半分の期間で実現するとなるとたいへんです。

困難が予想されるのは、②の既得予算の削除と③の法令の整備でしょう。

社会保障費については、この数年、毎年2200億円の削減を迫られ、厚生労働省予算には削減の余地がほとんどなくなっています。

過去の財務省とのやり取りを通じ、法的根拠のない予算については情け容赦なく査定されてきましたので、今後、大胆に予算を削減するためには、法的根拠をなくすための法改正を余儀なくされます。

他省でも事情は似通っていることと思います。

予算関連法は年明けの予算審議国会で年度内に成立させれば間に合いますが、制度廃止や制度創設など十分な周知期間や準備期間を要するものについては、年内成立を目指さなければなりません。

今月下旬から12月上旬までの40日間程度の臨時国会が予定されていますが、法案が煮詰まっていなかったりすると審議が紛糾するのは必定です。

政権交代と医療(33)

2009 年 10 月 2 日 金曜日

産科医療について唐突な方針変更がありました。

お産の費用がかかることが少子化の一因ということで出産育児一時金(38万円)が支給されてきましたが、退院後しばらくしてから産婦へ支払われる制度だったため、妊婦は手元に多額の現金を準備しておく必要がありました。

10月1日より一時金が42万円に増額されることになり、同時に、医療保険から医療機関へ直接支払う制度になる予定でした。

妊婦は手元に多額の現金がなくても出産できるようになります。

ところが、制度開始2日前の9月29日、長妻厚生労働相は10月からの全国一斉の開始を見送り、医療機関に半年間の導入猶予を設けると記者発表しました。

新制度では医療保険からの支払いに時間がかかるため、医療機関側の資金繰りが悪くなることが理由です。

唐突な意志決定であったため、急遽、厚生労働省は29日付けで関係機関へ事務連絡通知を出しました。

問い合わせが殺到したため、1日、妊産婦や医療機関向けの相談電話窓口(03・3595・2224、平日午前9時半~午後6時15分)を開設しました。

当面、新制度に切り替えるか否かは医療機関に委ねられることになりましたので、医療機関によっては窓口で全額の支払いを要求されることがあります。

厳しい経営状況の産科医療機関に配慮した意志決定は理解できないわけではありませんが、新制度に切り替わることを織り込み済みで安心して臨月を迎えられている多くの妊婦に不安を与えるような唐突な方針変更はいただけません。

政権交代と医療(32)

2009 年 10 月 1 日 木曜日

民主党政策集による産科・小児科医療の記述です。

 

○周産期母子医療センターのもつ機能を明確化・再分類・整備拡充し、産科病院のネットワーク化を推進

○都道府県の責任で救急本部業務と連携させながら周産期情報システムおよび搬送先照会システムを改善

○医師・助産師・看護師の業務範囲の見直し

○共同体制(スキルミックス)を促進

○現在の出産一時金を見直し、国からの助成を加え、出産時に55万円までの助成

○開業医が地域小児科センターで時間外外来を担当する共同化

○小児救急医療のシステム化

○小児医療診療報酬引き上げ

○小児医療の自己負担軽減

○新生児特定集中治療室(NICU)を現行2000床から当面2500床へと増床し、後方支援病床を拡充

 

少子化対策のためには母子医療への投資が必要です。

出産一時金を13万円増額するのに、年1400億円を要します。

NICUを運営するのに1床あたり年間4千万円近い経費を要しますので、500床の増床には年200億円を要します。