今月に入ってより頻繁に開催されるようになった中医協や介護給付費分科会に重ね、社会保障審議会の介護保険部会、医療部会、医療保険部会が相次いで開催されています。
24日には医療保険部会も開催されました。
医療保険の課題として最も大きい課題である「高齢者医療制度の見直し」が、この日の医療保険部会の議事でした。
民主党はマニフェスト2010に「後期高齢者医療制度は廃止し、2013年度から新しい高齢者医療制度をスタートさせます」と明記し、それが三党連立政権合意ともなっていますので、見直しを先延ばしするわけにもいきません。
高齢者医療制度の見直しについては「高齢者医療制度改革会議」という厚生労働大臣主宰の会議で昨年末に方針が示されていますが、審議会報告ではありませんので法的効力はありません。
二度手間となってしまいますが、社会保障に関わる重要な政策ですので、社会保障審議会に諮ることが必要です。
高齢者医療制度改革会議が示した構想は、後期高齢者医療制度を廃止し、75歳以上の高齢者は既存制度に戻して保険料は世帯主がまとめて納めるというものです。
これだと、多くの高齢者が国保に戻ることになり市町村国保間の保険料格差が復活します。
そこで、75歳以上については国保の財政運営を都道府県単位とし、75歳以上の財政負担(高齢者自身の負担金1割、現役世代からの支援金4割、公費5割)は現行通りとする構想となっています。
この構想では現役世代からの支援金の多くを請け負っている被用者保険の負担が増しますので、被用者保険においても75歳以上に国保と同じ財政負担が導入されます。
将来的には全年齢を対象に国保を都道府県単位の財政運営とする構想ですが、その実現には利害調整等で多大な困難が予想されますので、改革後も当分の間は75歳以上の制度運用が明確に区分されることになります。
70~74歳の一部負担金については、70歳に達した方から段階的に2割負担となります。
65~74歳については現行の保険者間の財政調整の仕組みが継続されます。
これらの構想に対し、全国知事会は新制度は看板の掛け替えに過ぎず新たな不公平が発生すること、高齢者の受益と負担を明確化し保険料負担の公平化を図った現行制度が定着していることなどを理由に新制度へ移行する必要はないという意見書を提出しています(10月24日)。
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高齢者医療の行方
2011 年 11 月 27 日 日曜日後期高齢者医療制度の廃止
2011 年 10 月 1 日 土曜日29日、辻厚生労働副大臣は後期高齢者医療制度を廃止して新制度に移行するための関連法案を通常国会で提出したいと明言しました。
小宮山大臣も、昨日、同様に法案提出への意欲を示しました。
民主党の政権公約では後期高齢者医療制度を廃止し、年齢で区分しない制度に移行することになっています。
新しい高齢者医療制度については、昨年12月に厚生労働大臣の諮問機関である「高齢者医療制度改革会議」が改革案を取りまとめています。
後期高齢者医療制度を廃止し、75歳以上の会社員やその扶養家族は企業の健康保険組合などに加入し、残り(約8割)は国民健康保険に加入するという改革案です。
紆余曲折の末に75歳以上の保険料負担に不公平がない現行制度が生まれたのですが、元の制度に戻ることにより75歳以上でも保険料を収める人と収めなくてもよい人とが出てくることになります。
また、国民健康保険の破綻回避のために75歳以上を制度から切り離して現行制度が生まれたのですが、元の制度に戻れば多くの国民健康保険は再び破綻の危機に直面することになります。
そのため、改革案では、国民健康保険の75歳以上の運営を現役世代と切り離し、都道府県が別勘定で運営する仕組みを提示しています。
年齢で区分しない、というのは加入制度を区分しないという建前のみで、本質的には75歳以上を明確に区分する現行制度と変わることはありません。
本質が変わらないのに制度を変えるだけというのでは、後期高齢者制度を導入した当時以上のわかりにくさと現場の混乱が予想されます。
新厚生労働大臣の抱負
2011 年 9 月 13 日 火曜日着任早々、たばこ税増税発言が話題になった小宮山厚生労働大臣ですが、その前の着任時記者会見(9月2日)のやりとりが業界各紙に報道されています。
大臣の興味のポイントがどこにあるかは、良かれ悪しかれ、行政の行方に影響を与えますが、着任して何日も経てからの質疑応答では官僚達による集中レクチャーによるにわか知識が答弁を覆ってしまいますので、着任時記者会見の機会は貴重です。
小宮山大臣は菅内閣で厚生労働副大臣でしたので、幅広い厚生労働行政の中での興味の力点を垣間見ることもできます。
冒頭挨拶の中では、総理の認識を次のように紹介しています。
「本当に、厚生労働分野は生活に密着した幅広い分野なので、総理からの指示書というのが大体、A41枚に普通は入りそうなんですけれども、厚生労働分野は2枚にわたっておりまして、それだけの広い分野をしっかりとやるようにというふうにご指示を頂きました。」
小宮山大臣自身が力を入れたい政策としては、被災者支援、社会保障と税の一体改革の具体化(子育て支援、ワーク・ライフ・バランスを強調)、雇用問題を3本柱として掲げています。
社会保障については「この政権になって、自公政権で毎年2200億ずつ削減をしてきたものを、自然増はしっかりと最初に予算編成の時に確保をするという方針をとってきました。これはやはりこの政権の特長、国民の生活第一ということでの特長だと思う」と述べています。
医療については「問題が非常にたくさんあることは認識」「小手先でやっててもなかなか変わらない部分がある」と延べ、「診療科ごとの偏在」「過疎地域」「ドラッグ・ラグ」「デバイス・ラグ」の問題を例示しています。
「医療とか年金、介護、その辺りは『効率化ができていない』っていう言い方を財源のほうを考える人たちからは言われています」が「超少子高齢社会の中で、やはり生活の安心、「国民の生活が第一」と言ってきたこの政権です」ので「効率化のできるところはしていけばいいと思いますけれども、基本的には安心して医療にかかれて、介護を受けられて、そして年金もしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております」と抱負が語られています。
公的病院の存続
2010 年 7 月 19 日 月曜日全国の社保病院や厚生年金病院を保有している年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)は今年9月末に解散することが決まっています。
そうなると、これらの病院の運営主体がなくなってしまいます。
別の運営主体へ引き継がない限り、外来診療を中止し、入院患者を転院させ、従業員を解雇しなければなりませんが、そのような手順をこれからの2月あまりで進めるのは至難のことです。
地域医療機能推進機構という独立行政法人を新たに設け、そこが運営主体として病院事業を公的に存続させる政権シナリオだったのですが、そのための法案が、6月に閉幕した通常国会では審議時間が取れずに廃案となってしまいました。
臨時国会で最優先で審議しなければ間に合いませんが、行政改革を党是とする政党が大躍進し野党が過半数を占める参議院で、独立行政法人をさらに増やす法案がすんなりと成立するかどうかは不透明です。
地域医療の崩壊を招かないために政権与党は野党との真摯な話し合いが必要ですが、通常国会で多くの法案を数の力で強行採決したしこりが尾を引いています。
政権交代と医療(91)
2010 年 5 月 14 日 金曜日全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の保険料上昇を抑制する「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しました。
不況下での給与減に伴い保険料収入が激減し、中小・零細企業の多い協会けんぽは年収の8.2%の保険料率(全国平均、労使折半)を9.9%にアップしないと財政が破綻(はたん)する見通しとなりました。
保険料率の上昇を抑えるためには協会けんぽへの国庫補助率を高めなければなりませんが、充分な財源が捻出できません。
法改正は、後期高齢者の医療費を支えるために各被用者保険が拠出する支援金の算定方式を3年間だけ変更するものです。
加入者数に応じて組合の負担額を決める現在の「加入者割」が、組合ごとの総報酬に応じた「総報酬割」に切り替わります。
これにより、総報酬の少ない協会けんぽの後期高齢者支援金は850億円減らせます。
しかし、健保は500億円増、共済は350億円増です。
給与水準の高い健保や共済の加入者の保険料負担が増すことになります。
協会けんぽへの国庫補助「率」は13%から16・4%に大きく引き上げられますが、率算定の分母が小さくなっただけなので補助「額」が大きく引き上げられたわけではありません。
事実上、健保と共済が国庫負担を肩代わりさせられたような改正となりました。
3年後はどうなるのでしょうか。
「高齢者医療制度改革会議」では、後期高齢者医療制度に代わる新制度の在り方が検討されている最中です。
政権交代と医療(90)
2010 年 2 月 10 日 水曜日中央社会保険医療協議会での次期診療報酬改定についての審議が大詰めです。
4月1日に改定を実施するためには、できるだけ早く改定案を答申しなければ準備期間が確保できません。
焦点の病院と診療所の再診料統一については、診療所を下げ病院を上げ、660円ぐらいでの統一を主張する支払側委員と、診療所の再診料を710円から引き下げることに反対の姿勢を崩さない診療側委員の折り合いが付かず、公益側委員の裁定に持ち込まれました。
今日(10日)の総会で公益側が案を出します。
50円とはいえ、再診患者が日々60人、年間延べ2万人が訪れている診療所では100万円の減収となります。
在宅医療の主力は診療所ですが、減収で往診の余力が削がれないことを願います。
有床診療所については、急性期病院の一般病床、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、自宅などからの転院(入院)患者を受け入れた場合の「有床診療所一般病床初期加算」が新設され、有床診療所の機能が評価されることになりました。
病院の療養病棟についても、同様に、急性期病院の一般病床、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、自宅などからの転院(入院)患者を受け入れた場合の「救急・在宅等支援療養病床初期加算」が新設されます。
多忙な大病院ばかりに財源が投入されそうだった当初の勢いが、後方支援病床の充実のためにも配分されることとなったことは、医療崩壊回避の一手として評価できます。
政権交代と医療(89)
2010 年 2 月 7 日 日曜日厚生労働省は、「無保険の高校生世代」の救済を7月1日付で始める方針を決め、全国の自治体に通知しました。
無保険の子は、親の国保の保険料滞納で生じます。
保険料を一年以上滞納した世帯には、市町村が健康保険証を返還させ、代わりに資格証明書が交付されますが、資格証明書は保険証ではないので、医療機関にかかった時には全額をいったん自己負担しなければなりません。
無保険の子の救済は、資格証明書を交付されている世帯でも、六か月間有効の短期証(保険証)を交付し、六か月後も市町村が必要と判断すれば更新するものです。
2008年11月に、当時野党の民主党と社民党と国民新党とが、18歳未満の無保険の子を救済する国保法改正案を提出しましたが、与野党協議の末、対象を中学生以下とした改正が2009年4月に行われました。
今回の方針は、昨年度末の協議結果を覆して、当初案通りに18歳未満を対象とするものです。
そもそも保険制度は、皆が少しずつお金を出し合って、もしもの際に多額の出費を強いられないようにする「共助」の仕組みです。
子どものためとはいえ、保険料を納めなくても保険診療を受けることができる制度は共助の趣旨に反していますので、あくまで「無保険の子」対策の基本は、子を持つ親の滞納をなくす対策であるべきでしょう。
経済的な事情で保険料が納められない世帯のためには減免措置があります。
減免措置の審査が厳しいという声もありますが、きちんと毎月の保険料を支払っている大多数の世帯と不公平にならないよう、審査は厳格に行われています。
自動車事故の場合、「共助」システムは自賠責保険の強制加入や任意保険によって運用されています。
保険に加入していなければ、どのような事情があろうと、決して保険は適用されません。
また、自賠責保険に加入しないまま運転した場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
道路交通法上の違反点数も6点が加算され、運転免許の停止・取消処分がなされます。
「無保険の子」救済措置は緊急避難的措置だと割り切るとしても、子どもが「無保険の子」になることがわかっていながら保険料を滞納するようなことにならないような仕組みが必要です。
子ども手当の最優先すべき支出のひとつとして健康保険料を明示することができれば、解決策になるかもしれません。
政権交代と医療(88)
2010 年 2 月 3 日 水曜日厚生労働省ホームページに「平成22年度診療報酬改定の改定率について」と題した新着情報がありました。
「先日、一部報道において、平成22年度診療報酬の改定率に関して、後発医薬品の置き換え効果の精算分約600億円が、改定率の計算に盛り込まれていないことから、実質ゼロ改定である旨の報道がありました。」とあります。
一部報道とは、次の内容です。
・診療報酬の2010年度改定について、改定率は0・19%で「10年ぶりのプラス改定」だとしている。
・しかし、表に出ていない薬価の引き下げがあり、実際の改定率は0・027%と、実質ゼロ改定だったことが分かった。
・薬価部分では、表向きの削減額とは別に、「別途、後発品の置き換え効果の精算を行う」とされ、600億円が削減されている。
・この600億円は本体部分の引き上げ財源に回されず、診療報酬以外の予算にあてられている。
この報道に対する厚生労働省の反論は次の通りです。
「厚生労働省としては、従来から後発医薬品の使用促進、すなわち、「先発品から後発品への置き換え」による財源は、本来的に医療機関の収入とみなされるべきものの減少につながる訳ではないことから、一貫して、診療報酬改定の財源とはしてこなかったところです。
今般の後発医薬品の置き換え効果の精算分600億円についても、後発医薬品の使用促進が進んでいない現状を是正するために実施するものであり、後発品の使用促進と同様、診療報酬の改定財源とはしていないところであります。」
600億円の削減額をどう計上するか、の問題ですが、従来からの慣習とはいえ、医療費の削減分の一部が医療費の財源としてカウントされていないのは事実のようです。
政権交代と医療(87)
2010 年 1 月 28 日 木曜日次期診療報酬改定に向けての作業が急ピッチで進められています。
中でも、再診料の行方が注目されています。
再診料については「病院と診療所の再診料を統一する方向」が決まっています。
病院の再診料は60点(600円)で、診療所の再診料は71点(710円)です。
外来診療医療費に占める再診料のウェイトは大きいので、再診料の上下は経営に大きく影響します。
医師会は診療所の再診料を下げて統一することに反対していますが、診療所経営の立場では当然の主張でしょう。
しかし、外来医療費の改定率はプラス0.31%にすると決まっています。
病院の再診料を診療所の再診料まで引き上げて統一すれば、病院再診料はプラス18.33%ということになりますので、他の外来医療の診療報酬を大幅に引き下げなければプラス0.31%をオーバーしてしまいます。
再診料の統一のためには、病院の再診料を引き上げるにせよ、どうしても診療所の再診料を引き下げざるを得ないでしょう。
仮に660円で統一するとすれば、病院再診料はプラス10%、診療所再診料はマイナス7%となります。
入院医療費改定率のプラス3.03%と併せ、病院経営は改善しますが、再診料のウェイトが大きい診療所では深刻な打撃となります。
入院医療においては、入院基本料が看護職員等の人件費や諸々の経費を反映した診療報酬として機能していますが、外来医療では、初診料、再診料がそれに相応します。
再診料には、医師の技術料のほか、人件費、退職引当金、減価償却費、水道・光熱費、事務経費等が含まれます。
そもそも710円でも安すぎるのではないか、という議論もあります。
社会保障制度概論(33)
2010 年 1 月 25 日 月曜日<医師不足対策>
「医師事務作業補助者」(医療クラーク)について
「医師事務作業補助体制加算」(平成20年度の診療報酬改定において新設)に対応した業務を行う者で、通称、医療クラーク、ドクターズクラーク®(「医師事務作業補助技能認定試験」(日本医療教育財団)による資質証明者)など。
民主党マニフェスト:
《病院勤務医が診療のみならず、診断書や意見書、紹介状の作成など事務手続きをしなければならないことにより、医師不足に拍車がかかっていることから、医師の事務を分担する医療事務員(医療クラーク)の導入を支援します。》
民主党「適切な医療費を考える議員連盟」の決議文「医療崩壊を防ぐための緊急提言」:
《低迷する日本経済の現状において、新たなる「雇用の創出」が喫緊の課題です。私たちは医療分野において、勤務医・看護師等の過重労働を軽減する効果に繋がる「医療クラーク」等の増員を提唱します。具体的には、「医療クラーク」の10万人の増員を目指し、厚生労働省予算である「緊急雇用創出事業」の中で2000億円を確保し、新規医療クラーク10万人分の半年分を手当てする事を要望します。》
平成22年4月の診療報酬改定の論点:
《医師事務作業補助体制加算について、より多くの医師事務作業補助者を配置した場合の評価を設けるとともに、評価の引上げ及び要件の緩和を行う。》
(医師事務作業補助体制加算の診療報酬上の扱い)
医師事務作業補助体制加算(入院初日)
① 25対1補助体制加算 355点、② 50対1補助体制加算185点
③ 75対1補助体制加算 130点、④100対1補助体制加算105点
(対届出一般病床数比での医師事務作業補助者の配置数による)
病院勤務医の負担軽減を図るため、地域の急性期医療を担う病院(特定機能病院を除く。)において、医師の事務作業を補助する職員を配置している場合の評価。
(参考:診療録管理体制加算(入院初日)30点)
<医師事務作業補助者の業務範囲>
1 . 診断書などの文書作成補助、診療記録への代行入力、医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師の教育や臨床研修のカンファレンスのための準備作業等)並びに行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症のサーベイランス事業等)への対応を医師の指示の下に行う。
2 . 医師以外の職種の指示の下に行う業務、診療報酬の請求事務、窓口・受付業務、医療機関の経営、運営のための基礎データ収集業務、看護業務の補助並びに物品運搬業務等については行わないこと。→専従者要件
業務に就くための必須資格はなし。
ただし、医師事務作業補助職を配置してから6ヵ月以上(32時間以上の基礎知識習得研修を含む)の研修期間が必要。
<基礎知識習得研修の内容>
ア 医師法、医療法、薬事法、健康保険法等の関連法規の概要
イ 個人情報の保護に関する事項
ウ 医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等
エ 診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力
オ 電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)
多くの団体が、「32時間以上の基礎知識習得研修」プログラムを提供中。
例:(社)全日本病院協会 医師事務作業補助者研修プログラム
Ⅰ.集合研修プログラム
(60 分)医師事務作業補助業務について
(60 分)医療関連法規
「医療法」「医師法」「保険師助産師看護師法」「感染症法」「身体障害者福祉法」
「高齢者の医療の確保に関する法律」「介護保険法」
(60 分)医療保険制度
「健康保険法」「国民健康保険法」「保険医療機関及び保険医療養担当規則」
「労働者災害補償保険法」「自動車損害賠償保障法」
(50 分)演習問題 医療関連法規・医療制度
(120 分)薬学一般
「薬事法」「薬剤師法」「麻酔及び向精神薬取締法」等、医薬品の基礎知識、
消化器系・循環器系に作用する薬物
(30 分)医学一般Ⅰ 受診から診断までのフローチャート
(120 分)医学一般Ⅱ 各種疾患と治療法、消化器系・循環器系
(90 分)診療録の記載事項
電子カルテ・カルテ三原則、診療録記載の基本的事項、電子カルテの基本
(50 分)演習問題カルテ作成
(120 分) 各種診断書・証明書・申請書カルテ症例から診断書、証明書を作成
(50 分)演習問題診断書・証明書等作成
(60 分)個人情報保護法医療機関における個人情報の取扱い
(45 分) 安全管理医療安全管理概論
(60 分)確認問題研修全講義の確認問題
(60 分)×8【集合研修レポート】
(60 分)×8【病院内研修レポート】
本学では、これらの内容について、32時間という短時間ではなく、4年間みっちりと教育しています。
政権交代と医療(86)
2010 年 1 月 14 日 木曜日民主党の政権公約では、「医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する」としています。
しかし、むしろ医療従事者が不足している地方に、医療の問題は集積しています。
社会的インフラが整っていない地域では病院経営が成り立たない、ということが起こらないようにしなければなりません。
昨日(13日)の中央社会保険医療協議会総会では「地域の特性を考慮した診療報酬点数について」という議題がありました。
不利な地域の診療報酬を手厚くしたらどうかという議論ですが、地域ごとに異なる診療報酬とした場合、
(1)同一の医療サービスを受けても住んでいる地域により、患者の負担金額が異なる。
(2)診療報酬が高い地域においては、保険者負担も高くなる。
などの問題が生じます。
資料として、一般病床の看護職員数が著しく少ない地域のデータが提出されています。
『一般病床のみで構成される一般病院の1日平均在院患者数100人当たりの看護職員数』が著しく少ない二次医療圏が、少ないほうから9圏選ばれていますが、そのうちの1圏は「佐賀県東部保健医療圏」でした。
隣接医療圏のデータと比較してみます。
一般病床入院百人 人口十万対 人口千対
(医療圏) あたり看護職員数 医 師 数 一般病床数
久留米 80.6 297.4 10.8
八女・筑後 100.8 131.6 7.0
佐賀県東部 54.1 100.8 6.2
全国平均 87.6 224.5 7.1
佐賀県東部は、隣接医療圏より医師数も看護職員数も著しく少ないようです。
医師や看護師が確保できなければ一般病床を収入の少ない療養病床に転換せざるを得ず、その結果か、人口あたり一般病床数も少ないようです。
佐賀県東部はさぞかし医療費も少なかろう、と思われるのですが、実際は真逆です。
全国比較のために医療費を年齢調整した指標(全国平均を1.0とした地域差指数)は、佐賀県東部医療圏は平成17年度は1.345で全国ワースト1位、平成18年度は1.325で全国ワースト2位でした。
全国平均の3割増しを上回る医療費です。
佐賀県東部の医療機関が3割増しの収入を得ているのではなく、近隣医療圏を受診した患者の医療費が指標を押し上げているのだと思われますが、同じ佐賀県東部の住民が、久留米や八女・筑後で受診するより地元で受診したほうが診療報酬が高く、患者負担が高くなるようなら、ますます地元医療が空洞化してしまいます。
地域特性の考慮は、なかなかいい解決策がありません。
政権交代と医療(85)
2009 年 12 月 31 日 木曜日景気後退につれ百貨店の初売り日が早まり、正月休みの返上も当たり前のようになってきました。
百貨店は、開業日が増えれば、その分、売り上げが増えます。
定休日を1日減らせば、年間売り上げは0.3%くらい増える計算になります。
医療機関の場合、入院医療や救急医療には正月休みはありませんが、外来診療については年末年始を休診とするところが多いようです。
年末年始は、確かに医療需要が抑制されます。
軽い病気の人は常備薬で我慢し、正月休養のうちに回復してしまった人は受診しないからです。
年末年始の外来休診日を1日減らせば、年間医業収益が0.2%くらいは増えるかもしれません。
次期診療報酬のアップ率は0.19%です。
0.19%の収益アップで、多忙な従業員の一部に1日の休暇をプレゼントできそうですが、日常的な労働負荷の軽減にはほど遠そうです。
医療費抑制が続けば、経営改善のために正月休診を返上する医療機関が増えないとも限りません。
政権交代と医療(84)
2009 年 12 月 25 日 金曜日診療報酬のプラス改定は平成12年度以来10年ぶりです。
過日、平成20年医師・歯科医師・薬剤師調査結果が発表されました。
それによると、平成20年末現在の医師数は28万6699人、歯科医師数は9万9426人、薬剤師数は26万7751人でした。
調査は2年ごとに行われています。
平成12年の調査結果では、医師数25万5792人、歯科医師数は9万857人、薬剤師数は21万7477人でした。
診療報酬が抑制されている間に、医師は3万1千人、歯科医師は9千人、薬剤師は5万人増えたことになります。
我が国の医療を大きなひとつの企業体にたとえると、収益は伸びないのに高給従業員数を1割以上増やしていることになります。
政権の意思として、これらの職種の増加を抑える考えはなく、むしろ医師数を1.5倍に増やす方針が示されています。
さらに、その他の職種も含め、待遇を充実させる方針が政権公約に示されています。
収益が伸びずに人件費が膨らむ一方の企業体は、いずれ経営破綻をきたします。
今回の改定に見られたように、政権の意思として収益(診療報酬)の伸びを抑制するのであれば、現有人員で効率的に企業経営を行うことに真剣に取り組まなければなりません。
保健医療経営人材の育成が急務です。
政権交代と医療(83)
2009 年 12 月 24 日 木曜日診療報酬の引き上げ幅が確定しました。
23日は祭日ですが、予算編成に休みはなく、診療報酬の改定率について長妻厚生労働大臣と藤井財務大臣との大臣折衝が行われました。
折衝には、両大臣の他に長浜副厚労大臣、野田佳彦副財務大臣、菅副総理、古川内閣府副大臣も同席しています。
結果、診療報酬の0.19%引き上げが合意されました。
診療報酬のプラス改定は2000年度以来10年ぶりのことですが、議員連盟が求めた3%にも、厚生労働省が求めた0.3%にも及ばないわずかな改定率です。
財政事情から予想されたことではありますが、医療関係者は、医療費の総枠拡大の期待が幻想であったという現実に向き合わなければなりません。
限られた財源の中でいかに医療を効率的に運営するか、医療のありとあらゆる局面において、医療経営改善に真正面から取り組まなければなりません。
政権交代と医療(82)
2009 年 12 月 18 日 金曜日中医協の議事は公開です。
傍聴希望者が多く、早朝から行列ができている状況です。
インターネットラジオによる生中継方針が発表されましたが、委員から賛否両論が出て、実現できませんでした。
16日の中医協では再診料が議題になりました。
「論点」は次の4つです。
1 病院と診療所の再診料について、一物二価となっていることをどう考えるか。
2 同一日に病院の複数の診療科を受診した際の再診料の算定についてどう考えるか。
3 各診療科が担う役割と、初・再診料、外来管理加算における診療科間のバランスについてどう考えるか。
4 前回改定において、再診料の点数を引き下げる代わりに、外来管理加算について患者への懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等を評価するものとして5分という時間要件を導入した。
外来管理加算の時間要件を見直す場合に、懇切丁寧な説明等を時間以外の何をもって担保するか。
また、一定の処置や検査を行わない場合に加算されるということで、患者にとって分かりにくいという指摘に対し、どのように答えるか。
病院の再診料は600円です。
診療所の再診料は710円です。
同じ再診なのに価格が違う“一物二価“はおかしいということで、統一される方針となりました。
高いほうに統一するのか、低いほうに統一するのかは決まっていません。
2番目の論点は議論が尽くされていません。
3番目の論点は、収支の根拠データが不足しており、議論するのかしないのかも合意に至っていません。
4番目の論点である、懇切丁寧な説明の対価であるところの外来管理加算については、政権公約どおり、5分要件を用いないことが決定されています。
懇切丁寧な説明を行ったということを、時間を5分以上かけましたという以外の何をもって簡潔かつ客観的に記録に残すことができるかは、哲学的難題です。
政権交代と医療(81)
2009 年 12 月 16 日 水曜日15日、厚生労働省の足立政務官は、診療報酬の「本体」部分で6300億円程度の増額を求めて財務省と交渉に入る考えを示しました。
救急、産科、小児科などの赤字を補うために4500億円、リハビリや終末期など後方機能の支援に1000億円などが必要ということです。
診療報酬は「本体」と「薬価」の合算で決まります。
薬価部分は5000億円程度引き下げる見通しが示されていますので、薬価との差し引きで1300億円の引き上げ方針ということになります。
1300億円のアップは、0.3%のアップに相当します。
3%の大幅アップというわけにはいかないようです。
財務省からは、協会けんぽなどの保険料引き上げを抑えるために、診療報酬の4000億円~5000億円(約1%)の引き下げを求められているのだそうです。
こちらも3%の大幅引き下げの勢いではなくなりました。
着地点のぶれ幅が、プラス0.3%からマイナス1%の間に狭まりました。
政権交代と医療(80) 患者調査(4)
2009 年 12 月 16 日 水曜日調査日に在宅医療(往診、訪問診療など)を受けた推計外来患者数は10万人です。
内訳は、病院が1.1万人、一般診療所が6.2万人、歯科診療所が2.5万人です。
病院による在宅診療は前回調査より減っていますが、診療所では大きく伸びています。
量的にも、在宅診療の主力は診療所であるといえるでしょう。
高齢化が進み、入院病床数が抑制される中、在宅診療はしっかりと伸ばしてゆかなければなりません。
事業仕分けで、診療報酬配分を診療所から病院へとシフトさせる見直しが評決され、ほぼ既定路線となってしまいましたが、診療所から在宅診療の余力を奪ってしまうような荒療治だけは避けてほしく思います。
日本の医療は、(勤務医が疲弊している)病院だけではなく、地方の診療所も支えていることを忘れてはなりません。
政権交代と医療(79)
2009 年 12 月 12 日 土曜日平成22年度診療報酬改定について、大臣諮問の各種の委員会が意見を表明したり、意見集約できずに意見書提出を見送ったりしている中、厚生労働省としての見解が、9日、報道発表されました。
厚生労働省の政務三役の見解が、厚生労働省の見解として対外的に明らかにされたもので、次のように発表されています。
○ 医療は国民の生活を支える最も重要な社会基盤の一つである。我が国の医療費(対GDP比)は国際的に見ても低水準であるが、医療現場の努力により、効率的かつ質の高い医療を提供してきた。
○ しかしながら、高齢化の進展による患者増などにより、医療現場は疲弊しており、特に救急・急性期の入院医療は危機的な状況にある。前回の診療報酬改定においても、厳しい勤務環境におかれている病院勤務医の負担軽減や、救急医療や周産期・小児医療の充実などを重点課題として取り組んだが、必ずしも十分な効果が出ていない現状にある。
○ 例えば、有識者の研究によれば、急性期の入院医療を担うDPC対象病院の年間の赤字は総額3,500億円にのぼると推計されている。また、平成21年度医療経済実態調査によれば、年間の緊急入院患者受け入れが200名以上の病院の経営実態は、補助金等による補填を行った後の総損益差額ベースで見ても、1施設当たりで年間約1億円の赤字となっている。
○ こうした状況の下、三党連立政権合意では「医療費(GDP比)」の先進国(OECD)並みの確保を目指す」ことが、また、民主党のマニフェストでは「医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する」ことが示されている。平成22年度診療報酬改定においては、これらを踏まえ、「国民の安全・安心を支える医療の再構築」に取り組んでいく必要がある。
○ 具体的には、救急医療の充実など喫緊の課題に対応するため、急性期を中心とする入院医療に優先的かつ重点的に配分するとともに、急性期後の受け皿としての後方病床・在宅療養の機能を強化する。さらに、手術等の医療技術の適正評価、医療の高度化への対応、医師補助業務の充実等を通じた勤務環境の改善、医療安全への取り組みなど、我が国の医療をめぐる課題に対応していくことが求められている。
○ これらを総合的に勘案すれば、薬価改定と医療材料価格改定により捻出される約5,000億円を全て診療報酬本体の財源として充当するとしても、これを超える規模の財源が必要であり、全体としては10年ぶりのネットプラス改定を行うことが必要である。
プラス改定を明言していますが、具体的な数値はありません。
遅くても7日には具体的な目標数値が発表されるだろうとの観測もあり、関係機関は首を長くしていましたが、肩透かしでした。
長妻厚生労働大臣は11日の記者会見で、基本方針に具体的な数値を盛り込まなかった理由について、「まずは基本的な考え方を示した」「(財務省との)交渉の中では、数値を示した上で話を進めることになる」と述べています。
改定率の決定を急がなければ、予算編成スケジュールにも診療報酬改定作業にも支障が生じます。
来週が山場となるでしょう。
政権交代と医療(78)
2009 年 12 月 9 日 水曜日病院へ配られている「Lohas Medical ロハス・メディカル」というフリーマガジンがあります。
充実した取材と独自の視点での医療記事が満載で、中医協の議事録なども、いち早くロハスメディカルのホームページで知ることができます。
単なる議事録ではなく、重要な発言に記者のコメントが添えられた署名記事となっているのが特徴です。
12月6日にアップされた中医協の議事録には「差別医療か、平等な医療か」というタイトルが付けられていました。
新政権が主張する後期高齢者医療制度廃止にかかわる診療報酬が議論された4日の中医協に関する記事です。
一部引用します。
《すべての病人を救うか、優先順位を付けるか。すべての命を平等に扱うのか、“無意味な延命措置”があると考えるのか。医療サービスに優先順位を付けるなら、「医療費全体の底上げ」は矛盾しないか。平等な医療提供を求めながら、「医療費のメリハリ」を口にするのは矛盾しないか。(新井裕充)》
《もし、医療財源に限りがあると考えるなら、余命わずかな高齢者よりも未来ある若人の医療に適正配分すべきとの考え方もあるだろう。もし、すべての人に対して無制限に医療サービスを提供すべきと考えるなら、年齢によって区別せずにすべて等しく医療が受けられるようにすべきだろう。
もし、医療資源に限りがあると考えて、提供できる医療行為に一定の制限を加えるなら、「アルコール依存症」や「摂食障害」の治療よりも優先する疾患があると考えるべきだろう。もし、すべての病気やけがに対して等しく医療サービスを提供しようと考えるなら、脳卒中の後遺症がある患者がリハビリを受けられずに寝たきりになってしまうような状況を直ちに改善すべきだろう。
もし、「医療費全体の底上げ」を主張するなら、あらゆる疾患に対して医療を提供すべきと考えるべきだろう。もし、「限られた財源の効率的な配分」という“メリハリ”を主張するなら、100%完璧な医療や医師の献身的な応召義務を求めることはできないだろう。
助かる命と、諦めなければいけない命との間に優先度の違いがあると考えるなら、「医療費全体の底上げ」ではなく、「限られた財源の効率的な配分」を主張するほうが一貫するだろう。》
公的な立場にある者は「平等な医療」の追求というスタンスからしか発言できないことが多く、後期高齢者医療制度の廃止も、高齢者と若者を平等に扱うべきというスタンスからの主張です。
しかし、ロハス記者の提起した視点には、議論を深める価値があります。
政権交代と医療(77)
2009 年 12 月 6 日 日曜日後期高齢者医療は現役世代による支援によって支えられています。
必要な医療費の約4割は現役世代の保険料で賄われており、各健康保険から「後期高齢者支援金」として拠出されます。
ところが、協会けんぽの財政が悪化し、支援金の負担が重荷になっています。
厚生労働省は、4日、支援金の負担額を、加入者数ではなくそれぞれの財政力(総報酬)に応じて負担する提案を社会保障審議会医療保険部会へ行いました。
提案が実現すれば、協会けんぽの負担は2500億円減り、健保組合の負担が1400億円、共済組合の負担が1000億円増えます。
確かに、加入者割では財政力が弱い健保組合の負担が相対的に重くなりますので、総報酬割の導入で組合間の公平を図ることができます。
しかし、健保組合の今年度の赤字は6150億円もあり、追加負担を求めることができる財政状態ではありません。
協会けんぽの財政悪化への対処は、厚生労働省の22年度予算概算要求で「事項要求」とされた「協会けんぽ国庫負担割合の引上げ」しかありません。
長妻厚生労働大臣は、後期高齢者医療制度の廃止後の制度設計を検討する「高齢者医療制度改革会議」で話し合うべきだと主張していますが、事態は喫緊です。
景気が回復して健康保険組合や協会けんぽの収益が改善しさえすれば財政危機は解消します。
小手先の制度改変より、即効性ある景気浮揚策が期待されるところです。
政権交代と医療(76)
2009 年 12 月 5 日 土曜日臨時国会が終了しました。
臨時国会で成立した医療関係の主な法律は、新型インフルエンザワクチン副作用被害救済法と肝炎対策基本法と原爆症基金法でした。
新型インフルエンザワクチン副作用被害救済法については、衆議院では委員会での37分の審議を経て本会議でも質疑が行われました。
参議院では本会議質疑は省略されたものの、委員会審議に2時間20分が費やされました。
ところが、肝炎対策基本法と原爆症基金法については、委員会審議も本会議質疑も省略され、委員長が提出した法案の採決がなされたのみでした。
最大野党が欠席しての事態だとはいえ、法が議会制民主主義のルールのもとで成立するはずの国家運営としては危ういものがあります。
国会審議というのは、出来レースの法案をそのまま法律に仕立て上げるような通過儀礼では決してありません。
法案審議を通じて法の執行上の留意点が浮き彫りにされ、議事録に残ります。
野党の意見も配慮した修正が加えられ、より多数の国民の意志を反映した法へと昇華してゆきます。
法案審議は、国権の最高機関における真剣勝負の舞台なのです。
原爆症基金法については、国の健康対策予算のかなりの割合を被爆者対策予算が占めていることから関心があり、提出された法案の本文を見てみたかったのですが、インターネット上の一般向けニュースでは法案の本文は流れていませんでした。
広く公開された法案に国民が目を通すことができ、国民の意思を集約して国会の場で十分な審議や質疑がなされた上で、必要な修正や付帯決議が加えられて法律が成立するのが理想です。
たとえば、旧政権下の先の通常国会で野党の民主党が反対した海賊対処法では、委員会審議は衆院で25時間半、参院で21時間45分が費やされ、衆参両院で本会議質疑が行われています。
重要法案の場合には、数十時間の審議がなされるのが通例です。
政権交代と医療(75)
2009 年 12 月 4 日 金曜日「適切な医療費を考える議員連盟」の民主党国会議員数は日ごとに増え、160人になりました。
議員連盟は次期診療報酬改定でプラス3%以上の改定を求める模様です。
診療報酬改定は2年ごとに行われます。
政権公約(医療費の対GDP比をOECD諸国並みにする)を4~5年で実現するためには、診療報酬改定は3回しかありませんので、3回連続で1回3%の改定が必要だろうという考えのようです。
このほか、議員連盟は、医療クラークを10万人雇えるようにすること、「事業仕分け」で削減方針が出されたへき地・離島や産科・小児科などの医師を確保するための「医師等人材確保対策の推進事業」について予算をむしろ倍増すること、漢方薬の保険適用の継続についても求めています。
3日に開催された社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の医療部会でも、基本認識として医療費全体の底上げの必要性を指摘する意見が続出しました。
社会保障審議会は、診療報酬改定の点数配分を決める上での基本的な方向性を基本方針として示します。
これらの動きを受け、年末に内閣が診療報酬改定率を決定します。
年が明けたら、中央社会保険医療協議会(中医協)は厚生労働大臣の諮問を受け、基本方針と改定率に沿って具体的な点数配分を議論します。
政権交代と医療(74)
2009 年 12 月 3 日 木曜日厚生労働省は1日の政務三役会議で、具体的な数値を盛り込んだ診療報酬改定率の方針を7日までに示すことを決めました。
この方針で、マイナス改定を主張する財務省との折衝がなされることになります。
民主党の国会議員120名からなる「適切な医療費を考える議員連盟」も、3日に開く会合で診療報酬の引き上げ幅や税金投入額、メディカルクラークの数など協議し、国会が閉会する4日までに、厚労省と財務省の政務三役に対し、医療費の増額を要望する方針だそうです。
財務省が診療報酬のアップに難色を示す拠り所は行政刷新会議の「事業仕分け」ですが、仙谷行政刷新担当大臣は2日の講演で、事業仕分けで診療報酬の配分が「見直し」と結論付けられたことについて、「医療費全体を減らすこととイコールではない」と述べています。
医療は「産業として大きく伸ばさなければならない」とし、診療報酬については、全体的に点数を引き上げなければ「医療水準を維持できない」と述べています。
政権交代と医療(73)
2009 年 12 月 1 日 火曜日肝炎対策基本法が成立しました。
法の目的が第一条に、基本理念が第二条に明記されています。
第一条 この法律は、肝炎対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師等の責務を明らかにし、並びに肝炎対策の推進に関する指針の策定について定めるとともに、肝炎対策の基本となる事項を定めることにより、肝炎対策を総合的に推進することを目的とする。
第二条 肝炎対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 肝炎に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、肝炎の予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。
二 何人もその居住する地域にかかわらず等しく肝炎に係る検査(以下「肝炎検査」という。)を受けることができるようにすること。
三 肝炎ウイルスの感染者及び肝炎患者(以下「肝炎患者等」という。)がその居住する地域にかかわらず等しく適切な肝炎に係る医療(以下「肝炎医療」という。)を受けることができるようにすること。
四 前三号に係る施策を実施するに当たっては、肝炎患者等の人権が尊重され、肝炎患者等であることを理由に差別されないように配慮するものとすること。
肝炎に限らず、いかなる病気であれ、研究が推進され、検査や医療が受けられ、人権が尊重されなければならないことは共通のことですが、この法律によって、特に肝炎については、法制上、財政上、特別の措置が講じられることになります。
第八条 政府は、肝炎対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第十五条 国及び地方公共団体は、肝炎患者が必要に応じ適切な肝炎医療を受けることができるよう、肝炎患者に係る経済的な負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとする。
また、国民にも新たな責務が生まれます。
第六条 国民は、肝炎に関する正しい知識を持ち、肝炎患者等が肝炎患者等であることを理由に差別されないように配慮するとともに、肝炎の予防に必要な注意を払うよう努め、必要に応じ、肝炎検査を受けるよう努めなければならない。
ところで、条文中に「インターネット」も登場します。
そういう時代になったということです。
第九条の4
厚生労働大臣は、肝炎対策基本指針を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
政権交代と医療(72)
2009 年 11 月 28 日 土曜日「適切な医療費を考える議員連盟」が26日に発足しました。
議連会長は櫻井充参院議員で、約110人の民主党議員が賛同しているのだそうです。
財務省が、次回改定で診療報酬全体を3%程度削減する方針を打ち出し、厚生労働大臣も上昇幅を抑える方針を示すなど、政府の動きが民主党政権公約と異なる方向へ向かっていることに対するものです。
政府の動きに真っ向から対立する与党議員連盟の発足は、政権交代後、初でしょう。
これを政治主導と官僚主導の対決の構図としてとらえると、医療費だけの問題ではなく、国政全般にわたる、政権交代後の国家運営の実態が透けて見えてくると思います。
現時点においては、官僚中の官僚である財務省が圧倒的な強さで主導権を握っているように思えます。
旧政権よりも財務省主導が強まった感さえあります。
ここで、政権与党がどれだけ主導権を発揮できるかが、政治主導を旗印にして国民の信を勝ち取った新政権の真価の見せ所だと思います。
診療報酬改定の行方に注目です。
保険料負担や患者負担を上げずに診療報酬を上げる方法は税金の投入しかありませんが、子ども手当の財源確保問題を抱える厚生労働省予算に、政権公約通りに診療報酬のアップ分を大きく上積みするという「政治主導」ができるか否かが、新政権の試金石となるでしょう。
政権交代と医療(71)
2009 年 11 月 27 日 金曜日行政刷新会議の事業仕分けでの評決事項のひとつに、一般用薬類似医薬品(漢方・ビタミン剤・湿布薬)を保険給付からはずすというものがありました。
財務省が出した案ですが、ワーキング・グループ15名のうち11名が賛成しています。
これらが保険の対象外となるだけで、ずいぶん保険財政の負担は軽くなりますが、一般用薬に類似している医薬品は漢方やビタミン剤や湿布薬だけではなく、風邪薬や鎮痛薬や水虫薬などたくさんあります。
今後、保険財政がさらに厳しくなれば、漢方が突破口となり、その理屈の延長線上で、これらの医薬品も保険の対象外となる可能性が高くなります。
保険診療を受けている人の数割は、これらの一般用薬類似医薬品(一般用薬より薬効がやや強い医薬品)で治療されている患者さんです。
これらが保険適用外となってしまうと、患者の多くは、保険料を納めているのに、いざ病気になった時に保険がきかないということになってしまいます。
そういうことになれば、保険制度への信頼は崩れてしまいます。
いかなる病気になっても、誰でも安心して保険診療を受けることができるからこそ、国民皆保険が定着しているのだということを忘れてはなりません。
政権交代と医療(70)
2009 年 11 月 24 日 火曜日診療報酬改定の議論があちこちで活発になってきました。
財務省サイドはマイナス改定を示唆していますが、民主党の政権政策集に「マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました」と明確に記載してありますので、政権維持上、マイナス改定は考えにくいのではないかと思います。
診療報酬総額はゼロ改定で、報酬配分を診療所から病院へシフトして勤務医の負担を軽減するという決着シナリオが考えられますが、病院の診療報酬を一律にアップするのではなく、病院間の報酬配分も救急医療など地域医療へ貢献している病院にシフトするようです。
救急医療に貢献している病院の診療報酬を手厚くする、というのは聞こえがよく、それによって救急医療の問題が解消するように思えますが、具体的にそのような報酬配分を行うとすれば、救急医療が行える職員配置の病院の入院基本料等のみを上げるような方策になります。
救急医療の問題点は、軽症の患者が救急医療対応病院に集中して勤務医が疲弊し、重症患者の医療に集中できないことにあります。
これ以上機能分化が進んでしまえば、勤務医の疲弊が限界を超えてしまいます。
むしろ救急医療対応病院ではない病院・診療所の入院基本料をアップして、それらの時間外医療対処の余力を生み出すことが、解決の近道かもしれません。
救急医療には、重症度に応じた医療機能の分化は必要ですが、時間外診療のための「救急」医療体制が重症度と関係なく機能分化してきたために、結果として軽症患者の時間外対応に救急医療対応病院の勤務医が追われることになりました。
対し、入院基本料が抑えられた病院・診療所では、時間外対応ができるだけの経済的余力が奪われてしまっています。
診療報酬誘導による機能分化がここまで進む以前は、地域の診療所や小さな病院が、時間外診療にも融通を利かしてくれていました。
近視眼的な診療報酬改定にならないことを祈ります。
政権交代と医療(69)
2009 年 11 月 23 日 月曜日診療報酬は低すぎるので上げるべき、という意見がある一方、高いので下げるべきという意見もあります。
どちらが真実なのでしょうか。
たまたま、20日の中医協(中央社会保険医療協議会)の診療報酬基本問題小委員会で、入院基本料に関する議論がありました。
入院基本料というのは、看護人員配置の多寡に応じ、また、入院日数に応じ、段階的に定められた入院1泊あたりの診療報酬です。
ホテルにたとえれば、人件費込みの宿泊料みたいなものです。
ホテル経営では、従業員数が多いほどサービスが良くなるかわりに宿泊料金は高くなります。
また、長期宿泊割引料金を設定しているホテルもあります。
中医協では、有床診療所の入院基本料が例として取り上げられました。
有床診療所は19床以内の入院病床を運用している診療所ですが、病院がない地域では、地域医療を担う重要な役割を担っています。
高齢者の療養拠点となっている場合も多く、31日以上の入院が多い実態があります。
入院基本料1(看護配置10人以上の場合)
7日以内 8100円
8~14日 6600円
15~30日 4900円
31日以上 4500円
入院基本料2(看護配置5人以上の場合)
7日以内 6400円
8~14日 4800円
15~30日 3200円
31日以上 2800円
19人までしか宿泊できない小さなホテルが、比較的高給の客室担当従業員を5人以上抱えて、一泊2800円の料金設定で安定経営が可能でしょうか。
政権交代と医療(68)
2009 年 11 月 22 日 日曜日協会けんぽも健保組合も国保も赤字です。
これらの赤字に対しては、蓄えを切り崩したり、税金で補填したりと、これまでは何とか凌いでこれましたが、限界が近づいてきています。
現実的な赤字解消策は、保険料を上げるか、支出を抑制するかしかありません。
保険料を上げることができなかったら、支出が抑制されます。
無い袖はどうしても振れないのです。
支出を抑制するというのは、医療機関からの診療報酬請求額を値切るということです。
すなわち、査定を厳しくし、理不尽な査定もどんどん行うということです。
診療報酬がどれだけプラス改定されても、支払いは財源の範囲内でしかできません。
プラス改定であればあるほど、査定はより厳しくなってゆきます。
プラス改定で糠喜びしても、結局は期待しただけの報酬が得られず赤字経営に転落するということになります。
医療機関も赤字が続くと経営破綻をきたします。
健康保険も医療機関も赤字が許されないという論理を突き詰めれば、医療への税金投入を増やし、さらに保険料を上げるしかありません。
そのためには景気を良くして、国民の税金や保険料の負担能力を高めるしかありません。
景気浮揚のためにはコンクリート(公共事業)も重要です。
コンクリートから人へ、というより、コンクリートで人へ、という着眼もしてほしく思います。
政権交代と医療(67)
2009 年 11 月 21 日 土曜日財務省が19日に明らかにした平成22年度予算概算要求の査定方針に診療報酬の3%程度の引き下げが盛り込まれています。
3%削減は、国家予算要求額ベースで3千億円、医療費ベースで1兆円の減額になります。
医療費引き下げの伏線は行政刷新会議の事業仕分けの時点で仕組まれていました。
こういうやりとりがありました。
仕分け人「この概算要求額は診療報酬を何%上げるという想定か」
厚生労働省「プラスマイナスゼロということで要求している」
仕分け人「ゼロだと、ここからもっと引き上げたいという話だと思うが、物価が2%下がったら、事実上お医者さんの購買力は上がったことになる。実質的に診療報酬は増えていると理解しているか」
医療費は、医療需要の増加に対応するために医療従事者数が増加したり設備投資が増えたりという要素で増えています。
プラスマイナスゼロだと、医療従事者の給与を実質的にマイナスにしなければ医療需要に対応できません。
こういう医療費の構造の理解を抜きに、デフレ経済の中での据え置きは増額と同じ、という論理が押し通されていたのが事業仕分けでした。
20日、経済財政大臣は、日本経済の現状について「デフレ状況という認識だ」と述べ、日本経済がデフレ状態にあると正式に表明しました。
デフレだから診療報酬も下げろ、という雰囲気が着々と作られつつあります。
確かにデフレ経済下では医療費の伸び相応の健康保険料のアップは難しいでしょう。
そうであれば、保険料の必要増額分を国費で肩代わりする必要があり、その分、概算要求額を大幅に増額するのが筋でしょう。