‘保健医療の施設経営’ カテゴリーのアーカイブ

消費税率の引き上げと医療(下)

2012 年 1 月 15 日 日曜日

社会保障・税一体改革素案(平成24年1月6日閣議報告)に、医療と消費税について下記の言及があります。

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第2部 税制抜本改革

第3章 各分野の基本的な方向性

1.消費課税

(2)消費税率の引上げを踏まえ検討すべき事項

今回の改正に当たっては、社会保険診療は、諸外国においても非課税であることや課税化した場合の患者の自己負担の問題等を踏まえ、非課税の取扱いとする。その際、医療機関等の行う高額の投資に係る消費税負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して手当てを行うことを検討する。これにより、医療機関等の仕入れに係る消費税については、診療報酬など医療保険制度において手当てすることとする。また、医療機関等の消費税負担について、厚生労働省において定期的に検証する場を設けることとする。なお、医療に係る消費税の課税のあり方については、引き続き検討をする。

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消費税は(内需が維持できれば)1%の増税で2兆円の税収が増えるといわれています。

2015年に5%の増税で消費税率10%となれば10兆円の増収という皮算用です。

増収分のうち3分の1は地方の取り分ですので7兆円弱が国の増収ということになります。

この7兆円がすべて社会保障目的に使われるとすれば、社会保障給付費のうち医療の占める割合は3割ですので、2兆円が医療のために宛がわれるということになります。

総医療費は年に1.4兆円ずつ増えていますので2015年には43兆円となります。

この43兆円の医業支出のうち半分弱の20兆円が消費税課税される支出であるとすれば、医療機関の消費税負担は、5%の消費税率の引き上げで1兆円の負担増ということになります。

この負担増分が消費税の増収で「手当て」されるとすれば、差し引き1兆円の消費税が医療に回され医療が充実する、すなわち消費税率アップは医療にはプラスにはたらくということになります。

しかし、1%の増税で2兆円の増収はあくまで皮算用で、識者の推計には増収効果は1%あたり1兆円に満たないだろうというものも多数あります。

1%あたり増収が1兆円を切るようだと、医療機関の消費税負担増分の「手当て」の財源すら確保できないということになり、消費税率アップは医療にはマイナスということになります。

消費税率の引き上げと医療(上)

2012 年 1 月 13 日 金曜日

消費税率が引き上げられると、消費者の懐を直撃します。

2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げることが政府の税制改革の柱で、その方向へと国政は向かっています。

物品やサービスを消費者へ販売する事業者は、消費税を消費者から徴収し、消費者が納めた税金を代行して納税しているだけですので、自らへの設備投資等を除いては消費税率引き上げの直接的影響は及びません。

しかし、消費税率の引き上げによる買い控えが起きたりしたら、それは打撃となります。

医療の場合、受診控えが起きたりしたら生命にかかわりますので、医療費(社会保険診療報酬)は消費税非課税となっています。

しかし、医療機関が購入する医療機器や医薬品や給食材料や外注委托業者への支払いには消費税がかかります。

もちろん、建て替えや改修などの設備投資にも消費税がかかります。

消費税率が上がっても診療報酬には変化がなく、従って医療機関の収入に変化がないとすれば、支払いにかかる消費税率アップの分だけ医療機関の経営の打撃となります。

大雑把に、医療機関の収入の半分が消費税が課税される支払いに充てられているとすれば、診療報酬に消費税率の半分相当が上乗せされない限り、医療機関にとって消費税は「損税」ということになります。

消費税率が10%ともなると、医療経営上は大打撃です。

民主党(税制調査会と社会保障と税の一体改革調査会)は、医療機関の高額な投資にかかる消費税負担に関し、新たな一定の基準に該当するものを区分して手当を行うことを検討する方針や診療報酬で手当する方針を示していますが、そのような「手当」に必要となる額は、医療費総額(36兆円)の大きさを考えると「兆円」のオーダーとなり、社会保障目的税化して消費税の増収分を医療に宛がったとしても足りないくらいの額となってしまいます。

政策仕分け(1)

2011 年 11 月 23 日 水曜日

昨日(22日)は「政策仕分け」の3日目で、医療、介護、年金などの社会保障がテーマでした。

イラストや図表を用いて日本の社会保障の厳しい現実が説明され、仕分け人からは、社会保障の分野で効率化できることについて、聖域なく、最後まできちんと効率化すべきとの強い意見が出されています。

社会保障制度については「継続」させること以外の選択肢はありません。

すなわち、現実が厳しいのであれば給付(額、サービス)の削減や保険料や税金の負担増を行うしかありませんが、効率化によって節約できる余地があるのであれば、そちらが先決です。

医療の効率化は、制度上の効率化だけではなく、現場レベルでの効率化の積み上げが必要です。

制度上の効率化は、病床区分の機能分化など、改善の余地がありますが、現場レベルで制度改正によって余剰となった資源(人材など)が有効活用されずに放置されれば、総体として非効率です。

現場レベルでの非効率(無駄)が積み重なれば、全国的には大きな無駄となります。

現場レベルでの効率化とは、結局は医療経営をしっかりと行うことに尽きます。

医療経営の効率化には、医療経営の素養が必要ですが、本学は、その素養を身に付けた人材を輩出するために設立されています。

地域連携”新”時代

2011 年 11 月 17 日 木曜日

明日18日(金)午後(12:50~17:00)、「地域連携”新”時代に向けて」をテーマとしたフォーラム(有料)が大博多ホールで開催されます。
全国5都市で開催される「ばんぶう30周年記念フォーラム」の福岡会場です。
http://www.jmp.co.jp/bamboo-forum/
第一部の基調講演は「これからの医療提供体制と地域連携」の演題で、講師は尾形裕也氏(九州大学大学院授 教授)です。
第二部の特別講演は「診療・介護報酬同時改定で進む医療と介護の融合」の演題で、講師は武久洋三氏(日本慢性期医療協会会長)です。
第三部のシンポジウムは「連携新時代~私たちは、こう動く。こう創る」のテーマで、シンポジストは富永雅也氏(社会医療法人財団白十字会(佐世保中央病院、耀光リハビリテーション病院、白十字病院)理事長)、松本文六氏(社会医療法人天心堂 理事長 へつぎ病院 院長)、浜村明徳氏(医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院 院長)、原 寛氏(特定医療法人 原土井病院理事長)です。
富永先生は急性期医療を中心とした取組みについて、松本先生は医療と介護の包括ケアの取組みについて、浜村先生は回復期リハを中心にリハビリ病院の役割について、原先生は地域連携と慢性期病院の方向性について報告されます。
「連携」は、新時代のキーワードですが、具体的にどうしたらいいのか、あちこちで模索中です。
このシンポジウムの座長は私が務めさせていただきます。
このフォーラムが新時代への指針となるよう、力になれたら幸甚です。

病院報告(5)

2011 年 10 月 22 日 土曜日

病院報告には病床規模別の病院あたり常勤換算医師数の統計もあります。
総     数    22.5(人)
 20~ 29(床)  4.8
 30~ 39     4.6
 40~ 49     4.9
 50~ 99     6.6
100~149     9.0
150~199    13.2
200~299    17.9
300~399    34.3
400~499    57.2
500~599    88.4
600~699   162.3
700~799   184.3
800~899   296.2
900床以上   385.1

この表から病床規模別の医師一人あたり病床数を算出すると次のようになります。
病 床 規 模    医師一人あたり
 20~ 29(床)   4~ 6(床)
 30~ 39      7~ 8
 40~ 49      8~10
 50~ 99      8~15
100~149     11~17
150~199     11~15
200~299     11~17
300~399      9~12
400~499      7~ 9
500~599      6~ 7
600~699       4
700~799       4
800~899       3
900床以上       2~

高度な医療の提供体制には多くの医師の配置が必要となります。
大病院ほど高度な医療を提供している実態がありますので大病院ほど医師密度が高いのは当然です。
中規模病院が大病院に近い医療機能を求めるのであれば、医師密度をもっと高めなければなりませんので医師不足の状況が生み出されます。
100床未満の小規模病院でも医師密度が高くなっていますが、入院患者数がどれだけ少なくても病院では医師3人(療養病床数が全病床数の50%を超える病院については2人)以上の配置が義務付けられているためです。

病院報告(4)

2011 年 10 月 19 日 水曜日

平成22年10月1日現在の病院の従事者総数は、常勤換算で186万8256人でした。

日本の15~64歳人口の43人に一人は病院で働いていることになります。

前年同日に比べ4万7921人(2.6%)増加しています。

人件費の伸びの分だけは確実に国民医療費は増加します。

病院の総医療費の約半分が人件費ですので、毎年1.3%の病院の総医療費の伸びを確保しなければ医療従事者の現在の給与水準を維持できないことになります。

186.8万人の職種別内訳は、多い順に次の通りです。

 

         常勤換算数  対前年増加率

看護師      68.3(万人) 3.4(%)

看護業務補助者  19.6     1.3

医師       19.5     2.2

事務職員     17.6     4.8

准看護師     16.1    -3.3

臨床検査技師    4.9     1.9

理学療法士(PT) 4.8    11.0

薬剤師       4.3     0.4

診療放射線技師   3.9     2.2

介護福祉士     3.3     8.3

作業療法士(OT) 3.1    11.5

助産師       1.9     1.8

管理栄養士     1.8     2.6

 

病院数は8670施設ですので、以上の職種は病院あたり平均2名以上が配置されていることになります。

増加実数が最も多いのは看護師(2.2万人)で、次に事務職員(8.1千人)です。

病院あたり平均2~3人の看護師と1人の事務職員が増えています。

理学療法士(4.7千人)、医師(4.2千人)、作業療法士(3.2千人)、介護福祉士(2.5千人)、看護業務補助者(2.5千人)も増加数が多い職種です。

逆に、准看護師は5.4千人減少しています。

 

         常勤換算数  対前年増加率

臨床工学技士    1.4(万人) 7.2(%)

歯科医師      1.0     2.1

言語聴覚士     1.0    11.5

医療社会事業従事者 0.9    -1.6

精神保健福祉士   0.7     4.2

社会福祉士     0.6    15.2

栄養士       0.6    -1.6

保健師       0.5     4.9

歯科衛生士     0.5     2.5

視能訓練士     0.3     6.9

あん摩マッサージ指圧師 0.2 -10.0

歯科技工士     0.1    -1.1

柔道整復師     0.1    -4.7

 

これらの数が少ない職種は、病院の機能に応じて配置されています。

伸び率が大きい職種は、リハビリや社会復帰など退院の促進へ貢献する職種です。

病院報告(3)

2011 年 10 月 17 日 月曜日

平成22年の病院の病床利用率は82.3%で、前年より0.7%上昇しています。
従前より病床利用率が高かった精神病床は0.3%低下して89.6%となりましたが、同じく病床利用率が高い療養病床はさらに0.5%上昇して91.7%となっています。
介護療養病床も0.4%上昇して94.9%と、ほとんど飽和状態です。
一般病床は1.2%上昇して76.6%です。
病院の平均在院日数は32.5日で、前年より0.7日短くなっています。
一般病床は18.2日で0.3日の短縮です。
平均在院日数は年々短くなってきており、一般病床ではこの10年で5日短くなっています。
在院日数が短くなるということは病床の回転が速くなるというですので、新入院患者が増えなければ病床利用率はじりじりと低下してゆくはずですが、実際の病床利用率はむしろ上昇しています。
外来患者数は減少しているのに新入院患者は増えている、という不可解な現象です。

病院報告(2)

2011 年 10 月 16 日 日曜日

平成22年の病院の一日平均外来患者数は141万2245人でした。
昨年より4600人(0.3%)減っています。
人口構造の高齢化により病気を抱える人の数は年々増加しているはずであるのに、外来患者数が減少しているというのは不可解な現象です。
この減少傾向は10年前の平成12年から続いています。
平成12年までは増加基調であったのが、この年から減少基調に転じています。
平成12年の1日平均外来患者数は181万990人でしたので、10年間で40万人(22%)も減少しています。
病院病床も減少を続けていますので、外来の40万人が入院に転じたというようなことはありません。
病院と診療所の役割分担が広がり、病院外来の40万人が診療所外来へとシフトしたのでしょうか。
平成12年は介護保険制度が始まった年です。
訪問看護、訪問介護、訪問リハビリの普及・定着にともない外来へ通う頻度が少なくなってきたのでしょうか。
処方薬の14日処方から30日処方へのシフトが進んで再診頻度が減ったのでしょうか。
健康増進活動や予防活動が功を奏して患者の絶対数が40万人も減ったのであれば喜ばしいことですが、糖尿病や高血圧症や高脂血症の患者数がそれほどまでに激減しているとは聞いたことがありません。

病院報告(1)

2011 年 10 月 12 日 水曜日

病院報告では1日平均の患者数の動向がわかります。

平成22年の病院の1日平均在院患者数は前年より0.4%増加しています。

病床数は0.8%減少しているのに在院患者数が増えているということは、病院病床の稼働率が高まっているということです。

病床数の減少(ピーク時より5万床の減)以上に在院患者数も減少(ピーク時より約10万人の減)してきた近年の傾向にブレーキがかかったようです。

1日平均在院患者数の延びが大きいのは一般病床在院患者数で、1.3%の増です。

なお、一般病床数は0.9%減少しています。

1日平均新入院患者数、1日平均退院患者数は、ともに前年より2.7%増加しています。

病床回転率が高まっているということです。

病床回転率を高め、かつ、病床稼働率を高めることは病院経営改善の肝ですので、この一年については、経営改善が進んでいるといえるでしょう。

しかし、介護療養病床については、1日平均在院患者数は7.6%の減、1日平均新入院患者数は9.1%の減、1日平均退院患者数は8.2%の減と、まったく逆のことが顕著なレベルで起きています。

経営的には相当に苦しい事態となっているはずです。

医療施設調査(2)

2011 年 10 月 11 日 火曜日

1年間のうちに病院の1.7%は廃止または休止に追い込まれていますが、病床規模別には中小病院ほど廃止・休止率が大きいようです。

(病床規模)  廃止・休止率
有床診療所    2.1%
20~49床   3.7%
50~99床   2.4%
100~149床 1.5%
150~199床 1.1%
200~299床 0.8%
300~399床 0.8%
400~499床 0.5%
500~     0.4%

病床規模が小さいほど病院経営が困難であることが覗えます。
しかし、病床過剰医療圏では病床規制のため増床は容易ではなく、増床した病院は123施設(1.4%)しかありません。
対し、減床で看護師密度を高めて1床あたりの収益性を高める経営戦略や介護保険病床への転換が加速してきており、減床した病院が287施設(3.3%)もあります。
病床数が半減した例もあります。
施設の新規開設や増床の例があるものの、施設の廃止・休止や減床によって総病床数は13076床(0.8%)も減少しています。

医療施設調査(1)

2011 年 10 月 6 日 木曜日

平成22年10月1日現在の医療施設の状況を調べた「医療施設調査」と「病院報告」が発表されました。
全国の(活動中の)医療施設は17万6878施設で前年より407施設増加しています。
一般診療所が189施設増加(増加率0.2%)、歯科診療所が287施設増加(増加率0.4%)していますが、病院は69施設減少(減少率0.8%)しています。
都道府県ごとに平均1施設以上の病院が消えていることになります。
病院の閉院はすべてが倒産というわけではなく、療養病床を有する病院が介護老人保健施設へ転換する事例もありますが、消えた病院の近隣住民にとっては大きな医療拠点が無くなることになり、地域の一大事です。
施設数の増減は、新規開設(または再開)した施設数と廃止(または休止)した施設数との差が統計上の数字となりますので、閉院数はもっと多いことになります。
病院は、開設数が75、再開数が4、廃止数が141、休止数が7でした。
病院の経営環境の厳しさが窺われる数字です。
一般診療所は開設数が4632、再開数が204、廃止数が4086、休止数が561です。
施設数の増減には影響を与えませんが、有床診療所から無床診療所に転換した診療所が349あります。
一般診療所の経営環境も厳しそうです。
増加率が大きい歯科診療所も過当競争の最中です。
歯科医師数の増加に伴い開設数が1760、再開数が42ありますが、廃止数が1392、休止数が123もあります。
一年間の間に6310もの医療施設が廃止・休止に追い込まれています。

日本診療情報管理学会

2011 年 9 月 30 日 金曜日

29日と30日、福岡国際会議場で第37回日本診療情報管理学会学術大会が開催されています。
http://jhim37.umin.jp/
特別講演は
「ヒューマンエラーと情報管理」(演者:河野龍太郎)
「韓国における診療情報管理システム」(演者:南銀祐)
「診療録記載と医療従事者の役割」(演者:吉田晃治)
シンポジウムは
「IT化時代に診療情報管理士は何を担うか」(座長:大道久)
「DPCのデータ精度改善とデータ活用」(座長:阿南誠)
「東日本大震災の被災地における診療情報管理」(座長:冷牟田浩司)
「死亡診断書の精度向上」(座長:大井利夫)
特別シンポジウムは
「診療情報管理士の現状と未来」(座長:三木幸一郎)
学生シンポジウム(28日)は
「未来の診療情報管理士像」(座長:柴田実和子 保健医療経営大学講師)
学会関連行事として、生涯教育研修会は
「クニカル・インディケーターと診療情報管理士との関わり」(講師:福井次矢)
ランチョンセミナーは
「DPC最近の話題」
「禁煙治療の推進とそのメリット」
「レセプト分析により変革する情報基盤」
「病院経営と電子カルテについて」
です。
一般演題では、本学の中村康寛教授も座長を務めています。
学生セッションの一般演題では、本学4年生(第1期生)の赤松誠彦君が「自治体病院の収益率低下の問題点把握およびマーケティングによる経営改善の検討-ICD10およびDPCの検討-」という演題で発表しました。
本学も4年生になると、社会人に引けを取らない発表ができるまでに成長しています。

宇宙飛行士と経営人材

2011 年 8 月 24 日 水曜日

本学一期生の求職活動を支援する中、人事採用に関する情報には敏感になります。

日本経済新聞の日曜日サイエンス欄に宇宙飛行士の採用基準についての記事がありました。

記事によると、JAXA(日本宇宙航空研究開発機構)の採用担当者が宇宙飛行士に求める最も重要な資質は「人間性」なのだそうです。

「一緒に仕事をしたい」と思わせる雰囲気を持ち合わせていない人は採用されないとのこと。

苦しい訓練の直後であっても見学の子どもたちへ笑顔を見せているかどうか、といった何気ない仕草も試されます。

日本経済新聞出版社からは『宇宙飛行士の育て方』という本も出版されています。

この本の帯書きには「不測の事態にも動じない! チームワークとリーダーシップ、リスク管理が求められる“究極の人材” 彼らはどのように選ばれ、その能力を磨かれるのか。 日本人宇宙飛行士、選抜・訓練担当者への取材からその秘密を明らかにする。」とあります。

本書によると、JAXAの重視する採用基準には、人間性以外にも”リーダーシップ=leadership”(指導力)と”フォロワーシップ=followership”(リーダーに従い、支援する力)があるそうです。

これらについて、JAXAの評価ポイントは以下の5つだそうです。

(1)時間内に決められた作業を、きちんと達成できるように、集団をコントロールできるか。

(2)チーム内に意見の対立があっても、それをまとめて、課題を遂行できるか。

(3)チームに目標を示し、それに向かって作業を進めることができるか。

(4)チームからの指示を正確に実行できるか。

(5)必要な場合、リーダーに対して適切に意見を述べることができるか。

宇宙飛行士は医療経営とはまったく世界が異なりますが、経営人材に求められる資質とまったく同じ資質が求められているところが興味深く思えます。

なお、政治家は、日本という国家を経営するという観点では経営人材に求められる資質と共通のものがありますし、危機管理適性という観点では宇宙飛行士に求められる資質と共通のものがあります。

日本では今、新しい首相が選ばれ、新しい内閣が編成されようとしています。

新しい首相と閣僚には、「一緒に仕事をしたい」と思わせる雰囲気を持ち合わせている人間性と、リーダーシップ適性、フォロワーシップ適性を兼ね備えた人材が選ばれてほしく思います。

施設経営と地域経営

2011 年 8 月 12 日 金曜日

先日、福島原発の作業員の日当に関するニュースが流れました。

「東電支払110万円、現場では8000円 原発作業員のすさまじいピンハネ実態」というセンセーショナルな見出しでした。

東京電力が10万円の日当で下請けに出した危険労働について、現場の作業員の実際の日当は8千円だったということです。

被曝線量の法定限度を超えた労働者は、その後、放射線を取り扱う労働に就くことができません。

1年間のほとんどを何もさせない労働者を直接雇用するのは経営上マイナスなので、経営者は常勤職員でなく派遣労働者に危険労働を担わせようと下請けに出します。

危険労働に相応の日当を予算化し、下請け企業と請負契約を交わします。

ところが、大企業の仕事を請け負うグループ企業でも、常勤職員は出せないので孫請けに出すことになります。

この際、手数料を引いた予算で孫請け企業と請負契約を交わします。

しかし、孫請け企業も大手グループ企業との取り引きがあるような中堅企業なので・・・と、5次、6次、7次と下請けに出され、各段階で手数料が引かれていった結果、実際に支払われる作業員の日当が低くなってしまうのです。

経営者の論理では、職員の労働条件を良くすることが労働者管理のイロハとして求められますが、それを突き詰めると、条件が悪い労働は外部化することになります。

外部化するにあたってのコスト設定は不当であってはなりません。

東京電力が10万円の日当を設定したのは、その危険労働が日当10万円に相応するという経営判断によるものでしょう。

しかし、日当10万円に相応する危険労働に日当8千円で従事している労働者の出現を許しているという現実があります。

原発作業員に限らず、危険労働を最後に請け負うのは、小さな事務所で携帯電話で労働者をかき集めるような、待遇改善を訴えれば潰れそうな零細事業所が多いそうです。

危険労働従事者こそ法的にしっかりと守られなければなりませんが、零細事業所ほど労働者の法的保護が不徹底です。

それぞれの企業が施設経営の論理だけで経営努力を行っても、地域全体では健全な経営が行われているとは限らないことの実例です。

医療分野の施設経営と地域経営との関係にも同じようなことがいえます。

保健医療経営大学は医療の「地域経営コース」を設けている全国唯一の大学です。

卒業生たちが就職先の施設経営に邁進することがそのまま地域全体の利益となるような、地域経営のセンスも兼ね備えた経営人材を育てたく思います。

九州医療・病院管理研究会サマーセミナー

2011 年 8 月 4 日 木曜日

九州医療・病院管理研究会のサマーセミナーが以下の要領で開催されます。
テーマは資金調達です。
病院だからといっても将来展望なしには銀行はお金を貸してくれません。
パネルディスカッションのコーディネーターは本学の白木准教授です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日 時 : 平成23年8月20日(土) 13:00~17:00
場 所 : 天神ビル11階 会議室   福岡市中央区天神2-12-1
主 催 : 九州医療・病院管理研究会
会 費 : 研究会会員  5,000円 、研究会非会員  6,000円
学生 2,000円

テーマ 「病院の未来を拓く金融のあり方」
~九州から中央への発信~

13:00~13:10 会長挨拶  福岡市医師会成人病センター院長 信友 浩一
13:10~14:10 基調講演1 「病院再生を可能とする資金借入のあり方」
独立行政法人福祉医療機構 筆頭理事 瀬上 清貴
14:20~15:20 基調講演2 「病院の資金調達におけるポイント」
藤田保健衛生大学医療科学部 教授 福永 肇
15:30~16:30 総合討議  「医療型金融円滑化は果たして可能か?」
コーディネーター  保健医療経営大学保健医療経営学部 准教授 白木 秀典
パネリスト1   独立行政法人福祉医療機構 筆頭理事 瀬上 清貴
パネリスト2    藤田保健衛生大学医療科学部 教授 福永 肇
パネリスト3   福岡銀行 ソリューション営業部 副部長 實藤 和浩
パネリスト4   医療法人泯江堂 副理事長 三野原 信二
16:30~16:50 会長総括・提言

【申込み先】
九州医療・病院管理研究会事務局(福岡市医師会成人病センター内)
TEL:(092) 831-1211  FAX:(092) 842-4066

医療経済

2011 年 2 月 21 日 月曜日

本日の午後、大分大学医学部の学生へ医療経済の講義(90分×2)を行います。
医療経済=医療(人の命を救う)+経済(お金を動かす)
なので、命を救うためのコスト負担について、正面から向き合って考える時間です。
人の命を救うためにはお金を惜しむべきではない、という論理は、国家が経済的にゆとりがあるときのみに通じる論理であり、経済的制約の中では命も制約されるのが現実です。
ある1人の患者の命を救うのに1億円かかるが、1億円あれば1000人の患者の命が救えるとき、使えるお金が1億円しかなければ、1000人の命を救って1人の命を失う選択をせざるを得ないかもしれません。
1億円の診療報酬を、1人を診療するだけで得られるのか、1000人を診療しなければ得られないのか、という経営者のモノサシでは、1人の命を救って1000人の命を失う選択をしてしまうこともあり得ます。
お金は無尽蔵に天から降ってくるものではありません。
医療にかかるお金は誰が負担しているのか、について医師の卵たちは知っておく必要があります。
それを知ることで、そのお金の使い方のルール(保険診療のルール)を遵守することの重要性がわかります。

リーダーシップ論

2010 年 11 月 6 日 土曜日

昨日、「病院経営・財務管理」の国際研修でリーダーシップ論の講義をしました。
受講者は、コートジボアール、エジプト、パラオ、セントルシア、ソロモン、スリランカ、ウガンダ、バヌアツ、ベトナム、イエメン、韓国からの医師や病院経営者でした。
昨年も同研修コースで同タイトルの講義をしましたが、今年は、チリの鉱山事故におけるリーダーシップの力についての話題が加わりました。
また、昨今、日本では「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」がミリオンセラーになっていることを紹介し、ドラッカーが好む例え話を導入にしました。
煉瓦を積んでいる人たちに「何をしているのか」と尋ねた。
一人は「煉瓦を積んでいる」と答えた。
一人は「壁を作っている」と答えた。
一人は「寺院を作っている」と答えた。
リーダーは、部下が自分の仕事の位置付けを心得るようにすべし、というものです。
「煉瓦を積んでいる」と答える部下ばかりだと、リーダーの思い通りに組織を動かすことができるかもしれませんが、リーダーの思いを超えた成果を得ることはできません。
「寺院を作っている」と答える部下たちであれば、リーダーの期待以上の成果を得ることができるかもしれません。
また、部下たちに「できること」をさせるのか、「すべきこと」をさせるのか、「やりたいこと」をさせるのか、その意思決定をするのもリーダーの役割です。
「できること」をさせるのは無難で、大過なくリーダーの役目をこなすことができます。
「すべきこと」「やりたいこと」をさせようとすれば、予算の獲得、上部組織の説得、障害の除去、組織の強化など、リーダー自身がやるべきことが増えてきます。
リーダーシップとは、より高い目標へと組織を導く力です。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読まず、「できること」にとどまるチームづくりしかしなければ、チームが甲子園へ行くことはできなかったでしょう。

日本医療経営学会学術総会in福岡

2010 年 10 月 5 日 火曜日

11月26日(金)・27日(土)に福岡市で第9回日本医療経営学会学術総会が開催されます。

学会長は社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院の井手義雄理事長です。

本学はじめ聖マリアグループが後援です。

日本医療経営学会は、日本の医療の歴史と文化を踏まえた医療経営学の確立を目指して活動を重ねている学術団体です。

26日は、一般演題の発表と招待特別講演です。

韓国カトリックメディカルセンター、韓国カトリック大学校医科大学ソウル聖母病院の鄭秀教(ジョンスギョ)教授による「理念の追求と地域活動」についての講演があります。

27日は、

平成22年度診療報酬改定の検証(診療報酬改定による病院機能・財務の変化、改定影響事例)報告、

国土交通省道路局高速道路課森昌文課長による「少子高齢化社会と地域」についての特別講演、

九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座尾形裕也教授による「地域再生と医療」についての基調講演、

環境省総合環境政策局環境保健部(前厚生労働省保健局医療課)佐藤敏信部長による「平成22年度診療報酬改定と今後の展望」についての特別講演、

特別講演の演者と聖マリア病院島弘志病院長、竹田総合病院竹田秀理事長、小倉リハビリテーション病院浜村明徳病院長、今村病院今村英仁理事長による「地域再生と医療機関の対応」についてのシンポジウム

が行われます。

私は一般演題で医療の地域経営に関する発表を予定しています。

社会医療法人

2010 年 7 月 22 日 木曜日

本学の設立母体、雪の聖母会(聖マリア病院)は社会医療法人です。
社会医療法人は第5次改正医療法で創設されました。
社会医療法人になると税制上の優遇などがありますが、公的使命が強まり、運営の透明性も要求されます。
今月、社会医療法人の数が100法人を超え102法人(109病院と2診療所)となりました。
認定条件の業務では、
「救急医療」が81法人(89病院)
「精神科救急医療」が12法人(12病院)
「小児救急医療」が10法人(11病院)
「災害医療」が7法人(7病院)
「へき地医療」が5法人(3病院、2診療所)
「周産期医療」が4法人(4病院)
です。
複数の業務で認定を受けている法人は少ないのですが、聖マリア病院は「救急医療」「災害医療」「小児救急医療」「周産期医療」の4業務で要件をクリアしています。
岩手、宮城、茨城、山梨、静岡、福井、富山、奈良、徳島、熊本の10県には、まだ社会医療法人がありません。

企業再生支援機構のチャレンジ

2010 年 7 月 20 日 火曜日

企業再生支援機構が、病院と介護老人保健施設を運営する医療法人への支援を決定しています。

企業再生支援機構は企業の事業再生・活性化のための支援組織として、昨年10月に設立されました。

5年間で業務を完了するよう努める時限的な組織です。

これまでに日本航空、ウィルコム、セノーへの支援を決定しており、4件目の支援対象に医療法人が選ばれたわけです。

企業再生支援機構は「地域での医療法人の事業再生のノウハウ蓄積に貢献することを目指す」としています。

このたび支援を受けることになった医療法人は100年以上の歴史を持つ病院で、地域に不足する診療領域を担っていますが、病棟建て替え工事の支出や医業収入の伸び悩みなどで経営が悪化していました。

事業再生計画の概要によると、病床機能を転換し、地域連携と救急診療による入院患者の受け入れから一般病床での治療、療養病床と老健での在宅復帰支援、介護施設や在宅への退院までの診療サイクルを確立するのだそうです。

経営管理機能の構築に向け、院内から新たな理事長を立て、企業再生支援機構から理事として2人を派遣して経営改善に取り組むのだそうです。

公的病院の存続

2010 年 7 月 19 日 月曜日

全国の社保病院や厚生年金病院を保有している年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)は今年9月末に解散することが決まっています。

そうなると、これらの病院の運営主体がなくなってしまいます。

別の運営主体へ引き継がない限り、外来診療を中止し、入院患者を転院させ、従業員を解雇しなければなりませんが、そのような手順をこれからの2月あまりで進めるのは至難のことです。

地域医療機能推進機構という独立行政法人を新たに設け、そこが運営主体として病院事業を公的に存続させる政権シナリオだったのですが、そのための法案が、6月に閉幕した通常国会では審議時間が取れずに廃案となってしまいました。

臨時国会で最優先で審議しなければ間に合いませんが、行政改革を党是とする政党が大躍進し野党が過半数を占める参議院で、独立行政法人をさらに増やす法案がすんなりと成立するかどうかは不透明です。

地域医療の崩壊を招かないために政権与党は野党との真摯な話し合いが必要ですが、通常国会で多くの法案を数の力で強行採決したしこりが尾を引いています。

公立病院の新たな動き

2010 年 7 月 18 日 日曜日

千葉県病院局が病院局の経営管理部門や県立病院の医事担当者を民間から公募(8月6日から23日)するそうです。

幹部候補職員の公募は昨年度に続き2回目だそうですが、今回は民間病院での勤務経験がない一般企業の経験者へも門戸を広げています。

民間ならではの経営感覚で、業務の効率化や経営改善を図るのが狙いで、民間の経営感覚を持った病院経営の専門家を育てる方針だとのこと。

募集職種は県立病院医事事務統括担当で、県立病院経営の管理・分析や診療報酬請求業務などを行います。

年齢は35歳から55歳程度で、募集定員は若干名。

将来的には病院局の主要ポストへの起用も想定しているそうです。

千葉県病院局では、過去の民間病院経験者採用で、未収金の縮減などの効果が上がっています。

民間経験者が事務局長に就いた県立佐原病院では、赤字が大幅に縮小されています。

公立病院も、経営改善に本腰です。

大病院志向

2009 年 12 月 27 日 日曜日

「受療行動調査」という調査があります。

10月下旬の調査日(平日)に一般病院(層化無作為抽出500施設)を利用した患者(あるいは家族)が調査票に記入したものを集計したものです。

過日、平成20年調査結果が発表されました。

調査項目のうち、満足度に関する項目を、大病院(500床以上)と小病院(20~99床)とで比較してみます。

※ 特定機能病院、療養病床を有する病院を除く。

「満足」と回答した患者割合(%)は次の通りです。

(外来)                大病院  小病院

全体                   59.3 < 61.2

看護師、その他の病院職員による看護や対応 57.1 < 59.6

医師との対話               56.0 < 58.5

医師による診療・治療内容         55.4 < 57.9

医師に診てもらっている時間        45.8 < 50.2

診察時のプライバシー保護の対応      44.4 < 45.8

痛みなどのからだの症状を和らげる対応   35.8 < 44.1

精神的なケア               34.9 < 40.5

待ち時間                 20.5 < 29.2

診療・治療に要した費用          13.8 < 16.3

外来では、すべての項目について、小病院のほうが満足度が高いという結果ですが、それでも満足度が50%以下の項目が半分あります。

(入院)                大病院  小病院

全体                   70.8 > 69.9

看護師、その他の医療従事者による看護など 77.8 > 72.3

医師との対話               73.0 > 68.0

医師による診療・治療内容         76.7 > 72.5

病室でのプライバシー保護の対応      53.2 < 55.8

痛みなどのからだの症状を和らげる対応   64.6 > 63.0

精神的なケア               57.4 > 55.1

病室・浴室・トイレなど          51.3 < 57.1

食事の内容                41.2 < 50.8

入院では、総じて満足度が高いようです。

大病院では医療・看護の本質的事項ほど満足度が高く、小病院ではアメニティ項目の満足度が高いようです。

近年の患者の受療行動は「大病院志向」だといわれています。

入院医療については頷けるものの、外来医療の大病院志向は必ずしも満足ゆく結果とはなっていないようです。

政権交代と医療(1)

2009 年 8 月 31 日 月曜日

政権が交代することになりました。

今日、8月31日は各省庁から財務省への平成22年度予算概算要求の締切日です。

現大臣が要求しますので、政権交代を前提としたものではありません。

概算要求は6月23日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」等を踏まえて7月1日に閣議了解された「平成22年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」に基づいて行われます。

現政権の閣議で決められたもので、政権交代は想定されていません。

年金・医療等の経費についての概算要求基準は「高齢化等に伴う自然増1兆900億円を認め」「無理のない範囲で節約に努め、節約できた分は社会保障に充当する」というものでした。

次に予定される政権政党のマニフェストは、社会保障への多大な税金投入を前提としていますので、1兆円程度の増額要求では到底足りません。

概算要求に対し、今後、財務省による査定作業が始まります。

査定は、新政権の財務大臣の指揮下で行われます。

マニフェストを実現するためには、厚生労働省予算については概算要求額を上回る査定増が必要となります。

すべての省庁について査定増をするわけにはいきません。

歳出予算は歳入(財源)の範囲内でしか組み立てられないからです。

公共事業を預かる省庁の予算が大幅に削られるかもしれません。

景気が後退すると保険料が伸び悩みますので、医療には打撃です。

産業としての医療

2009 年 8 月 13 日 木曜日

医療がどうなってゆくのかは、日本経済の将来にとっても重大関心事です。

社団法人経済同友会は医療制度改革委員会を設け、6月に中間報告を発表しました。

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2009/090626a.html

厚生労働省が設ける委員会と異なり、報告書の行政拘束力はありません。

また、委員も委員長(髙須武男:バンダイナムコホールディングス取締役会長)はじめ医師や医療関係者ではない人たちが主たる構成メンバーです。

報告書は次のような章立てとなっています。

 

地域を主体とする医療制度を目指して

~地域医療から考える抜本的改革への処方箋~

はじめに

I. 医療制度の課題

II. 目指すべき地域医療の姿

III.地域医療における改革の方向性(医療サービスの提供体制について)

IV. 地域医療における改革の方向性(産業としての医療の発展について)

V. 地域医療における改革の方向性(診療報酬、医療保険制度について)

おわりに(最終提言に向けての課題)

 

厚生労働省の諮問委員会の報告書と異なり専門用語が少なく、読みやすくわかりやすい文章です。

しかし、読みやすさ、わかりやすさと内容の妥当性とは別問題です。

医療を「社会保障」としてとらえるか「産業」としてとらえるかは、実はそう簡単に割り切れる問題ではありません。

「社会保障」の切り口で論じると、どうしてもわかりにくくなってしまいます。

「産業」の切り口だと、身近な商行為を演繹できるので、わかりやすくなります。

 

この報告書は、ポイントもよく押さえられており、何より非医療関係者の視点で整理されていますので、この報告書を叩き台として地域医療を考えることは意義が大きいと思います。

病院が消える(2)

2009 年 8 月 11 日 火曜日

新たに開設される病院も、毎年百件近くあります。

医療施設調査での病院数の増減は、開設病院数と廃止病院数との差ですので、実際は年に百八十件近くの病院が廃院に追い込まれていることになります。

開設者別の廃止・休止病院数は次の通りです。

 

   (平成19年)(前年から1年間の)

     病院数   廃止数 休止数

医療法人 5702   92  10

個人    533   33   2

その他  2627   50   4

 

個人病院は、1年の間で、十数病院にひとつが廃院しています。

小規模病院が厳しい状況にあることは、病床規模別の病院数の増減の統計からも覗えます。

 

          平成18年 平成19年  増 減

20~ 99床  3482  3391   -91

100~199床  2709  2725    16

200~399床  1911  1913     2

400床以上     841   833    -8

 

※ 200~399床の病院が100~199床に病床数を変更した件数が24件(その逆は8件)、400床以上の病院が200~399床に変更した件数が12件(その逆は2件)あります。病床規模が大きい病院の数のマイナスは必ずしも廃院を意味しません。

病院が消える(1)

2009 年 8 月 10 日 月曜日

病院収入の伸び率が支出の伸び率を下回る状況が長年蓄積すると、いつか単年度収支が赤字となってしまいます。

赤字の状態が長年続くと、やがて資産をすべて食い尽くし、運転資金がショートしてしまいます。

新たな投資によって現状を打破できる見込みがあれば、資金を借り入れることができますが、全国的に病院経営に暗雲が漂っている中、資金を貸す側は慎重にならざるを得ません。

経営陣が頼りない病院への貸付はリスクが大きいので、銀行は貸し渋ります。

当然のことです。

経営陣を強化することで経営が改善しそうな病院であれば、銀行による経営介入を全面的に受け入れることを条件に当座の資金を借り入れることができたりもしていますが、実情は、銀行側も医療経営に明るいわけではありませんので、銀行が経営介入したからといって事態が改善するわけではありません。

どこからも運転資金を借り入れることができなかった病院は、従業員へ給与を払うことすらできません。

これが病院倒産です。

病院がひとつ消えることになります。

病院がなくなることは、地方の一大事です。

「医療施設調査」によると、平成19年10月1日現在の全国の「一般病院」数は7785施設でした。前年調査時より85施設減少しています。

すべてが倒産というわけではないでしょうが、地方の一大事が毎週どこかで数件起きている計算です。

一般病院数は平成2年以降、減り続けています。

平成2年は9022施設でしたので、この十数年で少なくとも千以上の病院が消えたことになります。

医療費の動向(12)

2009 年 8 月 9 日 日曜日

病院の1施設あたりの医療費(収入)の伸びは、病院規模や年度によってばらつきがあるものの、近年は、平均して対前年度比1.6%といったところです。

病院の(常勤換算)従事者数の伸びはどうでしょうか。

平成20年の統計はまだ発表されていませんが、医療施設調査によれば、平成19年は対前年比1.7%、平成18年は対前年比2.0%の伸びでした。

医療費の伸びより従事者数の伸びのほうが大きいので、単純に考えれば、病院の支出構造のうち人件費の占める割合が大きくなってきているということになります。

さもなくば、実質的な賃金カットが数年にわたって行われているはずです。

従事者数の伸びの主な要素は看護師数です。

看護師養成施設が増え、採用も増えています。

近年は大学病院など大病院が好条件で看護師を採用する傾向が強かったようです。

大病院では、医療費(収入)の伸びが大きかったとはいえ、人件費の伸びも大きかったと思われます。

中小病院も、大病院へ看護師を奪われないために、看護師の待遇は落とせません。

人件費の伸びを医療費の伸び程度に抑えるため、看護師以外の職種へのしわ寄せ(給与抑制あるいは労務強化)が年々蓄積しているであろうことが予想されます。

医療崩壊の引き金に指がかかっています。

消費税率の引き上げや診療報酬のマイナス改定など、全国的な医療収支悪化の大波が訪れた途端、あちこちで破綻が相次ぐことになるでしょう。

根源的な解決策を模索しなければなりません。

医療費の動向(11)

2009 年 8 月 8 日 土曜日

1施設あたりの入院医療費を見てみましょう。

入院医療費は1病院あたり約15億円で、病院収入の4分の3は入院医療費に依存しています。

平成20年度の病院あたり入院医療費の対前年度伸び率は2.9%でした。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     3.1%

  公的     2.8%

  法人     2.6%

  個人    -1.0%

伸び率がいちばん大きいとはいえ、大学病院のみが、前回示した施設全体の伸び率を入院医療費の伸び率が下回っています。

1施設あたりの入院外医療費(外来医療費)の伸び率はどうなっているでしょうか。

平成20年度の病院あたり入院外医療費の対前年度伸び率は0.9%でした。

医科診療所の伸び率(0.2%)を上回っています。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     5.1%

  公的     0.7%

  法人     0.2%

  個人    -2.8%

外来患者が大病院に集中して本来の専門的医療提供機能が損なわれることがないように、との意図で政策的に診療機能の役割分担が推進されているところですが、むしろ大病院へ外来需要が集中してきているようです。

個人病院では、外来収入も大きく落ち込み、入院収入も落ち込んでいます。

小規模病院は相当に厳しい状況に陥っているようです。

医療費の動向(10)

2009 年 8 月 7 日 金曜日

1施設当たり医療費という指標があります。

医療施設の立場では、施設あたりの収入ということになります。

平成20年度の統計では、病院は、1施設あたり20億3835万円です。

病院といっても規模は様々で、病床数が多い大学病院だと平均して約130億円となっています。

小規模施設が多い個人病院だと平均6億円強です。

医科診療所は、1施設あたり9443万円です。

保険薬局は1施設あたり1億1085万円です。

平成16年以降、診療所と保険薬局とは経営規模が逆転しています。

経営の観点では、施設ごとの伸び率が気になります。

 

対前年度比の伸び率は次の通りです。

病  院     2.3%

  大学     3.7%

  公的     2.2%

  法人     2.0%

  個人    -1.5%

医科診療所    0.2%

歯科診療所    2.3%

保険薬局     3.0%

 

単年度だけでは伸び率に上下があります。

過去8年間の対前年度比伸び率の平均は次の通りです。

病  院     1.6%

  大学     2.5%

  公的     1.0%

  法人     1.2%

  個人     0.9%

医科診療所    0.2%

歯科診療所   -0.8%

保険薬局     5.4%

 

歯科診療所は単年度では伸びているとはいえ、傾向としてはマイナス基調です。

保険薬局は安定して伸びています。

大学病院も着実に伸びていますが、人件費その他の経費の伸びをカバーできるだけの伸びであるかは厳しいところです。

そのほかの施設では従業員のベースアップ分すらカバーできないような所が多かろうことが類推されます。

このような状態が、破綻せずに向こう何年も続くとは到底思えません。