‘保健医療の施設経営’ カテゴリーのアーカイブ

大病院志向

2009 年 12 月 27 日 日曜日

「受療行動調査」という調査があります。

10月下旬の調査日(平日)に一般病院(層化無作為抽出500施設)を利用した患者(あるいは家族)が調査票に記入したものを集計したものです。

過日、平成20年調査結果が発表されました。

調査項目のうち、満足度に関する項目を、大病院(500床以上)と小病院(20~99床)とで比較してみます。

※ 特定機能病院、療養病床を有する病院を除く。

「満足」と回答した患者割合(%)は次の通りです。

(外来)                大病院  小病院

全体                   59.3 < 61.2

看護師、その他の病院職員による看護や対応 57.1 < 59.6

医師との対話               56.0 < 58.5

医師による診療・治療内容         55.4 < 57.9

医師に診てもらっている時間        45.8 < 50.2

診察時のプライバシー保護の対応      44.4 < 45.8

痛みなどのからだの症状を和らげる対応   35.8 < 44.1

精神的なケア               34.9 < 40.5

待ち時間                 20.5 < 29.2

診療・治療に要した費用          13.8 < 16.3

外来では、すべての項目について、小病院のほうが満足度が高いという結果ですが、それでも満足度が50%以下の項目が半分あります。

(入院)                大病院  小病院

全体                   70.8 > 69.9

看護師、その他の医療従事者による看護など 77.8 > 72.3

医師との対話               73.0 > 68.0

医師による診療・治療内容         76.7 > 72.5

病室でのプライバシー保護の対応      53.2 < 55.8

痛みなどのからだの症状を和らげる対応   64.6 > 63.0

精神的なケア               57.4 > 55.1

病室・浴室・トイレなど          51.3 < 57.1

食事の内容                41.2 < 50.8

入院では、総じて満足度が高いようです。

大病院では医療・看護の本質的事項ほど満足度が高く、小病院ではアメニティ項目の満足度が高いようです。

近年の患者の受療行動は「大病院志向」だといわれています。

入院医療については頷けるものの、外来医療の大病院志向は必ずしも満足ゆく結果とはなっていないようです。

政権交代と医療(1)

2009 年 8 月 31 日 月曜日

政権が交代することになりました。

今日、8月31日は各省庁から財務省への平成22年度予算概算要求の締切日です。

現大臣が要求しますので、政権交代を前提としたものではありません。

概算要求は6月23日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」等を踏まえて7月1日に閣議了解された「平成22年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」に基づいて行われます。

現政権の閣議で決められたもので、政権交代は想定されていません。

年金・医療等の経費についての概算要求基準は「高齢化等に伴う自然増1兆900億円を認め」「無理のない範囲で節約に努め、節約できた分は社会保障に充当する」というものでした。

次に予定される政権政党のマニフェストは、社会保障への多大な税金投入を前提としていますので、1兆円程度の増額要求では到底足りません。

概算要求に対し、今後、財務省による査定作業が始まります。

査定は、新政権の財務大臣の指揮下で行われます。

マニフェストを実現するためには、厚生労働省予算については概算要求額を上回る査定増が必要となります。

すべての省庁について査定増をするわけにはいきません。

歳出予算は歳入(財源)の範囲内でしか組み立てられないからです。

公共事業を預かる省庁の予算が大幅に削られるかもしれません。

景気が後退すると保険料が伸び悩みますので、医療には打撃です。

産業としての医療

2009 年 8 月 13 日 木曜日

医療がどうなってゆくのかは、日本経済の将来にとっても重大関心事です。

社団法人経済同友会は医療制度改革委員会を設け、6月に中間報告を発表しました。

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2009/090626a.html

厚生労働省が設ける委員会と異なり、報告書の行政拘束力はありません。

また、委員も委員長(髙須武男:バンダイナムコホールディングス取締役会長)はじめ医師や医療関係者ではない人たちが主たる構成メンバーです。

報告書は次のような章立てとなっています。

 

地域を主体とする医療制度を目指して

~地域医療から考える抜本的改革への処方箋~

はじめに

I. 医療制度の課題

II. 目指すべき地域医療の姿

III.地域医療における改革の方向性(医療サービスの提供体制について)

IV. 地域医療における改革の方向性(産業としての医療の発展について)

V. 地域医療における改革の方向性(診療報酬、医療保険制度について)

おわりに(最終提言に向けての課題)

 

厚生労働省の諮問委員会の報告書と異なり専門用語が少なく、読みやすくわかりやすい文章です。

しかし、読みやすさ、わかりやすさと内容の妥当性とは別問題です。

医療を「社会保障」としてとらえるか「産業」としてとらえるかは、実はそう簡単に割り切れる問題ではありません。

「社会保障」の切り口で論じると、どうしてもわかりにくくなってしまいます。

「産業」の切り口だと、身近な商行為を演繹できるので、わかりやすくなります。

 

この報告書は、ポイントもよく押さえられており、何より非医療関係者の視点で整理されていますので、この報告書を叩き台として地域医療を考えることは意義が大きいと思います。

病院が消える(2)

2009 年 8 月 11 日 火曜日

新たに開設される病院も、毎年百件近くあります。

医療施設調査での病院数の増減は、開設病院数と廃止病院数との差ですので、実際は年に百八十件近くの病院が廃院に追い込まれていることになります。

開設者別の廃止・休止病院数は次の通りです。

 

   (平成19年)(前年から1年間の)

     病院数   廃止数 休止数

医療法人 5702   92  10

個人    533   33   2

その他  2627   50   4

 

個人病院は、1年の間で、十数病院にひとつが廃院しています。

小規模病院が厳しい状況にあることは、病床規模別の病院数の増減の統計からも覗えます。

 

          平成18年 平成19年  増 減

20~ 99床  3482  3391   -91

100~199床  2709  2725    16

200~399床  1911  1913     2

400床以上     841   833    -8

 

※ 200~399床の病院が100~199床に病床数を変更した件数が24件(その逆は8件)、400床以上の病院が200~399床に変更した件数が12件(その逆は2件)あります。病床規模が大きい病院の数のマイナスは必ずしも廃院を意味しません。

病院が消える(1)

2009 年 8 月 10 日 月曜日

病院収入の伸び率が支出の伸び率を下回る状況が長年蓄積すると、いつか単年度収支が赤字となってしまいます。

赤字の状態が長年続くと、やがて資産をすべて食い尽くし、運転資金がショートしてしまいます。

新たな投資によって現状を打破できる見込みがあれば、資金を借り入れることができますが、全国的に病院経営に暗雲が漂っている中、資金を貸す側は慎重にならざるを得ません。

経営陣が頼りない病院への貸付はリスクが大きいので、銀行は貸し渋ります。

当然のことです。

経営陣を強化することで経営が改善しそうな病院であれば、銀行による経営介入を全面的に受け入れることを条件に当座の資金を借り入れることができたりもしていますが、実情は、銀行側も医療経営に明るいわけではありませんので、銀行が経営介入したからといって事態が改善するわけではありません。

どこからも運転資金を借り入れることができなかった病院は、従業員へ給与を払うことすらできません。

これが病院倒産です。

病院がひとつ消えることになります。

病院がなくなることは、地方の一大事です。

「医療施設調査」によると、平成19年10月1日現在の全国の「一般病院」数は7785施設でした。前年調査時より85施設減少しています。

すべてが倒産というわけではないでしょうが、地方の一大事が毎週どこかで数件起きている計算です。

一般病院数は平成2年以降、減り続けています。

平成2年は9022施設でしたので、この十数年で少なくとも千以上の病院が消えたことになります。

医療費の動向(12)

2009 年 8 月 9 日 日曜日

病院の1施設あたりの医療費(収入)の伸びは、病院規模や年度によってばらつきがあるものの、近年は、平均して対前年度比1.6%といったところです。

病院の(常勤換算)従事者数の伸びはどうでしょうか。

平成20年の統計はまだ発表されていませんが、医療施設調査によれば、平成19年は対前年比1.7%、平成18年は対前年比2.0%の伸びでした。

医療費の伸びより従事者数の伸びのほうが大きいので、単純に考えれば、病院の支出構造のうち人件費の占める割合が大きくなってきているということになります。

さもなくば、実質的な賃金カットが数年にわたって行われているはずです。

従事者数の伸びの主な要素は看護師数です。

看護師養成施設が増え、採用も増えています。

近年は大学病院など大病院が好条件で看護師を採用する傾向が強かったようです。

大病院では、医療費(収入)の伸びが大きかったとはいえ、人件費の伸びも大きかったと思われます。

中小病院も、大病院へ看護師を奪われないために、看護師の待遇は落とせません。

人件費の伸びを医療費の伸び程度に抑えるため、看護師以外の職種へのしわ寄せ(給与抑制あるいは労務強化)が年々蓄積しているであろうことが予想されます。

医療崩壊の引き金に指がかかっています。

消費税率の引き上げや診療報酬のマイナス改定など、全国的な医療収支悪化の大波が訪れた途端、あちこちで破綻が相次ぐことになるでしょう。

根源的な解決策を模索しなければなりません。

医療費の動向(11)

2009 年 8 月 8 日 土曜日

1施設あたりの入院医療費を見てみましょう。

入院医療費は1病院あたり約15億円で、病院収入の4分の3は入院医療費に依存しています。

平成20年度の病院あたり入院医療費の対前年度伸び率は2.9%でした。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     3.1%

  公的     2.8%

  法人     2.6%

  個人    -1.0%

伸び率がいちばん大きいとはいえ、大学病院のみが、前回示した施設全体の伸び率を入院医療費の伸び率が下回っています。

1施設あたりの入院外医療費(外来医療費)の伸び率はどうなっているでしょうか。

平成20年度の病院あたり入院外医療費の対前年度伸び率は0.9%でした。

医科診療所の伸び率(0.2%)を上回っています。

病院の設置者別では次の通りです

  大学     5.1%

  公的     0.7%

  法人     0.2%

  個人    -2.8%

外来患者が大病院に集中して本来の専門的医療提供機能が損なわれることがないように、との意図で政策的に診療機能の役割分担が推進されているところですが、むしろ大病院へ外来需要が集中してきているようです。

個人病院では、外来収入も大きく落ち込み、入院収入も落ち込んでいます。

小規模病院は相当に厳しい状況に陥っているようです。

医療費の動向(10)

2009 年 8 月 7 日 金曜日

1施設当たり医療費という指標があります。

医療施設の立場では、施設あたりの収入ということになります。

平成20年度の統計では、病院は、1施設あたり20億3835万円です。

病院といっても規模は様々で、病床数が多い大学病院だと平均して約130億円となっています。

小規模施設が多い個人病院だと平均6億円強です。

医科診療所は、1施設あたり9443万円です。

保険薬局は1施設あたり1億1085万円です。

平成16年以降、診療所と保険薬局とは経営規模が逆転しています。

経営の観点では、施設ごとの伸び率が気になります。

 

対前年度比の伸び率は次の通りです。

病  院     2.3%

  大学     3.7%

  公的     2.2%

  法人     2.0%

  個人    -1.5%

医科診療所    0.2%

歯科診療所    2.3%

保険薬局     3.0%

 

単年度だけでは伸び率に上下があります。

過去8年間の対前年度比伸び率の平均は次の通りです。

病  院     1.6%

  大学     2.5%

  公的     1.0%

  法人     1.2%

  個人     0.9%

医科診療所    0.2%

歯科診療所   -0.8%

保険薬局     5.4%

 

歯科診療所は単年度では伸びているとはいえ、傾向としてはマイナス基調です。

保険薬局は安定して伸びています。

大学病院も着実に伸びていますが、人件費その他の経費の伸びをカバーできるだけの伸びであるかは厳しいところです。

そのほかの施設では従業員のベースアップ分すらカバーできないような所が多かろうことが類推されます。

このような状態が、破綻せずに向こう何年も続くとは到底思えません。

情報管理

2009 年 7 月 28 日 火曜日

情報管理の「実際」は、個人情報の保護を例として講義しました。

医療機関には、時に有名人(タレント、街の有力者)が受診します。

カルテには病名や家族構成など個人情報がたくさん記載されています。

しかし、決して、そのことを友人や家族にも漏らしてはなりません。

院内でも、業務に関係ない同僚にも漏らしてはなりません。

有名人であろうとなかろうと、自分の個人情報を他人に知られたくない方はたくさんいます。

医療機関には、その方の思いを命がけで守る責任があります。

PCや情報媒体紛失などで受診者情報が大量に流出してしまう事件もしばしばあります。

匿名やイニシャルであれば問題ないだろう、ということはありません。

人口が密集していない小地域では、同一生年月日の人は数名しかいません。

性別や住所などの情報が加われば、一人に絞れてしまいます。

某地区の何年何月何日生まれの男性が○○病で受診した、という情報があれば、たまたまその地区の集会で出会った男性から生年月日を聞いただけで、「あなたは○○病ですね」と言い当てることができます。

クレジットカード、携帯電話、タスポなどの利用情報が、刑事訴訟法に基づいて捜査当局から照会されることもありますが、医療機関に対しても、患者情報について捜査当局から照会されることがあります。

個人の病気に関する情報は、あらゆる情報の中でも秘密を保護すべき度合いが高い情報ですので、たとえ捜査当局からの照会であっても、照会事項を慎重に検討し、提供情報の範囲を吟味する必要があります。

接遇

2009 年 7 月 27 日 月曜日

保健医療の業務は人を相手にする業務です。

経営者いえども例外ではありません。

駆け出しの頃には日常的に患者応対がありますし、裏方に回っても医療従事者との接触は欠かせません。

帳簿とコンピュータを睨んでばかりでは経営はできません。

人材管理の「実際」としては、接遇の重要性を題材にしました。

 

        身だしなみ

表情

態度・動作

言葉使い

気配り

 

学生たちには、これらの重要性について理解し、実践できる人材に育ってもらいたく思います。

しかし、「実際」は、これらだけでは足りません。

患者や医療従事者との応対で最も重要なことは、応答内容の正確さです。

現場では、窓口支払いのこと、公費負担医療の適用の可否、退院の見込み ・・・等々、様々な具体的な質問が寄せられます。

これらの質問に、ひとつたりとも、間違った答えをしてしまったら、どんなに愛想よく応対したとしても、組織全体の信頼は失墜します。

接遇の現場は、接遇研修で簡単に身に付くようなものでなく、日常的な学習を裏づけとした真剣勝負の場であることを理解してもらいたく思います。

5S(ファイブ・エス)

2009 年 7 月 26 日 日曜日

明日は、保健医療経営学概論の最後(15回目)の講義です。

オムニバス方式で、複数の教員がそれぞれの専門領域について導入講義を行ってきました。

最後の授業は、保健医療経営「学」という学問の導入ではなく、保健医療経営の「実際」を具体的にイメージしてもらうことが達成目標です。

これまでの講義で、施設管理(設備管理、物品管理、在庫管理 ・・・)、情報管理(医事情報管理、個人情報管理、情報公開 ・・・)、危機管理(事故防止、事故時対応 ・・・)、人材管理(人材採用、人材育成 ・・・)などについて学んできた学生たちに、それらの具体的なイメージを把握してもらうには、実践の実例を示す必要があります。

施設管理の実例としては、5Sを題材にしようと思います。

5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾のローマ字の頭文字を並べたものがオリジナルですが、少し強引に「S」を並べた感があり、それぞれに補足的な語釈を加えなければ真意が誤解されがちです。

5Sは、英訳されて海外でも普及しています。

どちらかといえば、英訳のほうが真意が素直に伝わります。

 

        整理(sorting):要るものと要らないものを区分します。

        整頓(set):何を、どこに、どのように置くかを決めて実施します。

        清掃(shine):ゴミをなくすこと。異常(ゴミ)を発見(点検)し、早期に解決します。

清潔(standardize):すべてを最高の状態にします。

躾(sustain):上記4Sを維持します。維持管理のためのルールを確立します。

 

整理から躾に向かうほど、実施の難易度が上がります。

5Sがどのくらいできているかは、施設管理がうまくいっているかどうかの尺度となります。

競争に勝つか、競争を避けるか(5)

2009 年 7 月 23 日 木曜日

医療機関が経営改善(収支差を拡大)するには、患者数を増やすか、患者ひとりあたりの収入を増やすか、経費を削減するか、これらの組み合わせで対処します。

地域内の医療機関がどこもかしこも患者数を増やすことはできません。

ほとんどの患者が既にどこかの医療機関を受診しているとすれば、患者数を増やした医療機関の近くに患者数を減らす医療機関がでてくるはずです。

まだ受診していない潜在患者をターゲットにすれば、他の医療機関から患者を奪うようなことはせずにすみます。

患者ひとりあたりの収入を増やすことも、すべての医療機関がそれを行えば、日本の総医療費が膨らんでしまいます。

総医療費の伸びは政策的に抑制されるのが実情なので、次回の診療報酬改定でリーズナブルでない診療報酬がカットされる調整がなされます。

出来高払いで診療報酬を積み上げれば患者ひとりあたりの収入を増やすことができますが、近年は、同一病態の患者についての診療報酬のばらつきが少なくなる“まるめ”が拡大しています。

限られた財源の制約下で日本全国の医療機関を共存共栄させる方策は、経費の削減を推進するしかなさそうです。

医学医療の進歩に対応するための必要な投資は常に必要ですが、投資ばかりだと財源がもちません。

投資に見合うだけの経費削減を、どこかで同時に実現してゆかなければなりません。

競争に勝つか、競争を避けるか(4)

2009 年 7 月 22 日 水曜日

どうも同一地域(医療圏)内の医療機関と患者獲得競争をするのは得策ではなさそうです。

競争の結果として地域外から受診者が押しかけるようになれば共存共栄がはかれますが、患者が遠くから通ってくることを前提とした医療体制は健全とはいえません。

地域内で飽和している診療機能で競争するのではなく、地域内で欠落している診療機能を探し出し、その診療体制を充実すれば、着実な患者増を期待することができます。

遠くへ通わざるを得なかった患者が、地域内へ戻ってきます。

競争を避ける、という選択です。

競争を避ける、を言い換えれば、特色を出す、ということです。

たとえば急性期疾患のための一般病床が多く療養病床が不足しているような地域では、療養病床が特色になります。療養病床の中でも、短期滞在を特色としたり、専門療養を特色としたり、あるいは長期療養を特色としたり、地域内で特色を打ち出すことが、生存「競争」という、目に見えない敵と闘い生き残るための第一歩となります。

打ち出す特色によっては採算性が低い選択ともなりますが、患者が獲得できないために経営が悪化してゆく悪循環からは解放されます。

現在の診療報酬は急性期医療に手厚くなっていますが、急性期医療は投入コストも大きいので、特色が示せず患者が確保できなければ経営は悪化してゆきます。

競争に勝つか、競争を避けるか(3)

2009 年 7 月 21 日 火曜日

特定の傷病の患者がすでに地域内のどこかの医療機関を受診しているとすれば、その傷病に関する診療体制を充実(専門医の確保、高額医療機器の購入等)し、コスト投入に見合うだけの患者数の増を実現するためには、地域内の他の医療機関と競争をしなければなりません。

地域内の他の医療機関が診療体制を充実したために患者が奪われそうになり、対抗して診療体制を充実する、といったケースはよく見られます。

結果として、地域内のあちこちの病院がMRIやCTを設置し、採算ライン以下の稼働率で苦労するという現象が出ています。

せっかく確保した専門医が、患者数が増えずに専門性が発揮できない場合もあります。

地域内で競争が生まれることは、その傷病に関する診療体制があちこちで充実し、患者にとっては良いことかもしれませんが、個々の医療機関にとっては消耗戦となる可能性もあります。

特定の傷病にかかる地域のトータルコストが膨らみすぎれば、他の傷病の診療体制にひずみが生じてきます。

地域医療を運営するための財源には限りがあるためです。

医療は、限られた資源(特に保険財源と専門医人材)を全国に偏りなく配分して運営することが求められる分野なので、本来は競争(競争に勝つための過剰投資)が馴染まない分野なのです。

地域内に大成功している病院があるとして、そっくりそのまま診療機能を模倣した病院を作れば、競争による質とサービスの向上効果が出る以前に、共倒れのリスクが生じ、経営悪化により質もサービスも低下します。

質やサービスの向上のためにはある程度のコストが必要ですが、その余裕が奪われます。

競争に勝つか、競争を避けるか(2)

2009 年 7 月 20 日 月曜日

経営の取っ掛かりとして、市場調査があります。

商圏内の顧客層の詳細を調査して経営戦略の基礎資料とします。

医療経営の場合、近隣地域の患者について、病気の種類ごとの数などを調査することがそれに相当しますが、プライバシーの壁などに阻まれ、独自の調査で実態を把握することは困難です。

 

厚生労働省が3年ごとに行う「患者調査」という調査があります。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/05/index.html

性別、年齢階級別、傷病分類別、都道府県別に人口あたりの入院患者数・外来患者数(受療率)がわかります。

医療機関が多いほど医療へのアクセスがよくなりますので受療率は高くなりますが、近年の患者調査では、外来受療率の地域差が何十%も違うことはありません。

(入院受療率は病床数の地域差がそのまま受療率の地域差になっています。)

外来受療率が均質化してきているのは、日本全国、おしなべて医療アクセスがよくなっていることのあらわれでしょう。

全国統計が均質化しているのであれば、性別、年齢別の病気ごとの患者の発生率は、全国どこにでも当てはめることができます。

従って、近隣地域の性別、年齢別の人口分布がわかれば、地域の患者数を推計することができます。

性別、年齢別の人口分布は役所が発表する統計資料で入手できます。

 

「患者調査」に限らず、保健医療に関しては市場調査に相当する様々な調査が公の力で実施され、公開されています。

独自の調査をしなくても市場調査結果がわかるというのは、非常に恵まれた条件です。

普通の企業であれば、自ら行った市場調査結果については、とことん活用します。

医療機関の経営者は市場調査結果を活用しているでしょうか。

競争に勝つか、競争を避けるか(1)

2009 年 7 月 19 日 日曜日

医療施設は生存競争の時代に突入したといわれます。

赤字(収入より支出が多い)病院が増えています。

その状態が何年も続いたら、その病院は倒産します。

実際、毎年、どこかで病院が倒産しています。

この倒産は、「競争」に負けた結果でしょうか?

おそらく、どこかと「競争」している意識などないままに赤字経営に陥ったのではないかと思います。

企業間の「競争」は、それぞれの組織の経営改善を生み、提供商品の質の向上や顧客満足度の向上などの副産物が生まれます。

「競争」を経て新たな顧客層を開拓し、結果として共存共栄している例も数多く見られます。

真剣に「競争」をすれば、病院は医療サービスの質の向上や患者満足度の向上をアウトプットとした経営改善を余儀なくされるはずです。

そのような経営改善が実現できた病院は、きっと赤字体質から脱却できていることでしょう。

病院赤字の原因の多くは「競争」の結果ではないでしょう。

経営改善を怠り顧客から見放された企業は、競争するまでもなく脱落し、経営悪化の悪循環へと陥ってゆきます。