報告書では、地域主体の医療制度に向けた国の役割について、次の3点を述べています。
○レセプト完全オンライン化の実施
「地域が医療機関間の連携強化やネットワーク化に取組むためには、医療におけるIT活用の促進や、診療データに基づいた標準医療の設定等の環境整備を国の主導により進めなければならない」
レセプトの完全オンライン化は、2011年度に実現することが閣議決定されています。
○医療への個人番号制度の導入による個人勘定での医療費の把握
「医療においても個人番号制度を導入することで、個人勘定での医療費の把握が可能になる。
個人の所得捕捉と合わせれば、所得状況を踏まえたより適切な医療政策の展開にも役立てられる。
わが国では医療政策について、より広く国民の間で、定量的な分析に基づいた議論が行われることが必要である。
レセプト、DPCのデータを活用した医療統計の整備や、個人勘定での医療費の把握により、医療に関する需要を定量的に掴むことができる。
これらのデータが、個人情報の保護等を踏まえた上で、行政のみならず、民間のシンクタンクや研究者等にも共有されるように情報公開が進めば、医療政策について国民的議論を行う素地を作ることができる」
ここに書かれているようなことは技術的には近未来に実現可能でしょう。
しかし、医療費統計の透明性が高まることは、個々の医療機関の収支が丸裸になることでもあります。
銀行からの融資が受けにくくなるかもしれません。
個人勘定での統計は、生命保険会社が喉から手が出るほどほしい情報でもあります。
加入者の条件如何による生命保険料の格差が大きくなることでしょう。
○医療の質をめぐる競争でのルール規定
「医療機関間で機能を集約化していく段階では、医療の質をめぐり医療機関が競い合うという方法もあり得る。
こうした競争が健全に行われるとともに、それが地域住民への医療サービスの提供に影響することがないように、国が競争のルールを厳格に定める必要がある」
医療の質で競争が成立するためには、地域住民に「質」が見えなければなりません。
医療法の広告規制を緩和して、誇大広告にならないように「質」をPRできるようなルールを規定することになりますが、具体的にはどのような指標が質の評価指標となりえるでしょうか。
たとえばある病気の死亡率が高いからといって、その病院の質が低いとはいえません。
質の高い病院へは重症患者が集まり、死亡率が高くなります。
他の指標(剖検率、手術件数・・・)も然りで、質とは直接関係ない要因で高くなったりも低くなったりもします。