報告書では、提供体制における非効率の解消と医療の質の向上のため、次の提言がなされています。
○IT活用の促進によるサービスの効率化と医療の質の向上
「医療サービスを効率化するためには、医療機関間の機能の集約化と役割分担の明確化を行わなければならない。
その前提として、医療サービスの需要と、必要な医療機関や病床数、医師数等についての定量的な把握が必要である。
今後、医療分野では、レセプトやDPCのデータといった業務データを活用した医療統計の整備が求められる。
これにより、各地域に必要な医療機関や医師等の人材をより的確に把握できると考えられる。
わが国では、レセプト、カルテの電子化、オンライン化が極めて遅れている。
ITを活用し、医療機関間でこれらの情報共有を促進することで、重複検査等に
よる医療費の無駄遣いを削減することもできる。
さらに、レセプトデータ等の蓄積は、標準医療の設定にも寄与し、量的供給から質の向上へと評価すべき医療サービスを変えていくことにも繋がる。」
○医療機関間の機能集約と医療の質の向上
「集約化により、医療機関毎の症例数が蓄積されれば、医師の診断能力や技術が高まり、医療の質の均一化や向上が進む。
医療の質の向上については、医師数や病床数を需要に応じて適切に配置することも必要である。
また、診療科別の医師数についても、需要に応じた配置になっているかを精査する必要がある。
医師不足の問題に関しては、必要な医師数の確保とこれからの医師に求められる能力や技術を踏まえた対応が必要である。
必要な医師数の養成にあたっては、メディカルスクールの創設も求められる。
医師としての能力や技術を高め、それを維持し続けていくためには、初期、後期の臨床研修のあり方を検討することに加え、医師免許更新制の導入といった、医師が生涯を通じてその質を確保する仕組みが必要である。」
ITの活用に関する前者の主張は頷けます。
また、医療政策も、その方向で舵取りがなされています。
しかし、我が国でIT化が遅れているのは、IT化のための財源を窮屈な医療費財源に求めているからでしょう。
効率化によって浮く医療費がIT推進の財源になる、というのは机上の空論です。
どの医療施設も、自らの収入(=医療費)が増えることをインセンティブとして、IT導入を検討しています。
後者の医療機関の機能集約も、机上論としては頷けます。
これまでの我が国の医療は、医師や医療機関には自主性を重んじた自由主義的放任を行い、その代わり、経済については社会主義的コントロールを維持することで、比較的バランスよい発展を遂げてきました。
経済同友会の提言は、経済については自由主義的放任を求め、医師や医療機関には社会主義的コントロール(組織間調整)を求めるものです。
競争社会において「集約化」や医師の「配置」誘導は現実的には困難です。高度医療機器や専門医を確保した医療施設には利益も集約します。
どの医療機関だって「集約化」を夢見て過剰投資しているのが実情でしょう。
医師免許更新制も、睡眠時間も削って過労状態にある医師たちに、さらに更新のための試験勉強の時間を確保せよというのは酷な話です。