放射線、放射能と健康被害(1)


放射線は目に見えませんので、恐怖心が煽られがちです。

目に見えないものについては正確な知識で状況を把握しなければなりませんが、残念ながら、知識のもととなる「情報」が整理されないままにメディアに流れていますので、混乱に拍車をかけています。

まず、基本的なことですが、放射線と放射能との違いについての知識が、健康被害を考える上で重要です。

「放射線」については、昨日午前の時点において、各地で計測されている線量については、福島第一原発のごく周辺を除いては、「健康影響はほとんどない」という政府発表を信じてもいいくらいの少ない線量です。

(昨日午後、別の計測値を文部科学省が発表しましたが、それは慎重な評価が必要な値です。詳細は後日記載)

それでは、なぜ30キロ圏に退避などの制限をかけるのでしょうか?

なぜ30キロより遠方を飛行していたヘリコプター乗務員の「被曝」を問題視しているのでしょうか?

それは「放射能」についての警戒が必要だからです。

「放射能」と「放射線」との違いは、「蛍」と「蛍が放つ光」との違いで例えてみます。

「放射能」=「蛍」で、「放射線」=「蛍が放つ光」です。

蛍には光を放つ能力が備わっており、蛍がいる所では蛍の光を見ることができます。

蛍がたくさん集まっている所は、蛍の光で明るさが増します。

放射性物質(放射性同位元素)には放射線を放つ能力があり、その能力のことを「放射能」といいます。

放射能を備えた物質がたくさん集まった所では、放射線量が多くなります。

福島原発が今どういう状況にあるかといえば、

(1)  非常に強い「放射能」を備えた核分裂物質が原子炉内で暴れており、「放射線」をたくさん放出している。

(2)  (1)の放射線の影響で「放射能」を帯びた放射性物質が、少量、大気中に放出されている。

という事態です。

(1)  については、その「放射線」はあまり遠くまでは到達しません。

原発正門で中性子線が検出されていますので原発敷地の外には漏れていますが、住居地域までは到達していないだろうと思います。

原爆放射線の場合も、爆心から2キロ以遠まで到達した放射線量はわずかでした。

(2)  については、「放射能」を帯びた物質が原子炉周辺の大気を漂っています。

水素爆発とともに比較的上空へ放出された「放射能」は、風下をずっと遠方まで拡がってゆきます。

この遠方まで到達した「放射能」から放たれた「放射線」が遠方の測定器で計測され、200キロ以上離れた東京や神奈川などでも通常の数倍の測定値が出ているのです。

遠方では「放射能」もかなり薄まっていますので、それらから放たれる「放射線」量は健康影響を過度に心配するほどの量ではありません。

チェルノブイリやスリーマイル島の過去の事例からの類推では、「放射能」を帯びた放射性物質は、ヨウ素、キセノン、セシウムといった空気より重い元素が主ですので、ほとんどは原子炉周辺の地域に沈降するはずです。

また、たとえばヨウ素の半減期は8日、キセノンの半減期は3.8分ですので、遠方へ運ばれてゆくうちに放射能は弱まってゆきます。

ただ、風に乗って遠方まで「放射能」が運ばれていることは間違いありませんので、少量の「放射能」がたまたま人に付着するおそれがあり、その点について警戒が必要となります。

蛍の例に戻れば、ずっと遠くで蛍を鑑賞している人の掌に迷い蛍がたまたま停まったら、掌は蛍の光で明るくなります。

放射性物質もたまたま人に付着してしまったら、そこで放射線を放出し続けることになるのです。

「放射能」も目には見えませんが、放射性物質の原子が数十個付着しただけでもガイガーカウンターで検出することができます。

少しの付着では、放たれる放射線量は健康影響を心配するほどの量ではありませんが、肌に直接付着したり吸入したりすることはなるべく避けたほうがよいので、微量の「放射能」の付着のリスクがあり得る半径30キロ圏に政府は注意を呼びかけているというわけです。

スリーマイル島事故の時には16キロ以遠での付着例があったようです。

半径30キロ圏内を外部換気を遮断して車で短時間通過するだけなら付着リスクは限りなくゼロに近くなりますので、被災者救援のための通行まで制限するのは行き過ぎかもしれません。

Comments are closed.