戦争の話(27)

<橋爪一郎従軍記>

   田植えの巻

 国道から眺めた辺春の田んぼは緑一色にぬりかえられて秋の実のりを夢みています。いかにも科学の国らしく、行儀よく、きちんと植えられた日本の田植えを見る度に思い浮べるのは支那の田植えです。

 支那も、ここは暖い南支での見聞ですが、年に三回の稲刈りには、私もちょっと驚いた者の一人でした。田植といっても苗代は作らないので、田んぼに直接、米の種、モミをまきます。この時は田んぼ一面に十文字に、たて、横、つなを張って、その四角の中にモミをチョンチョン置いていきます。やがて芽が出て、花が咲いて、米の実がなることは日本と同じです。ちょっと違うのは、米の木が五〇センチ位にふとった頃に、その稲の間々に二度目の種まきがあることです。いよいよ最初の稲刈りが始まる頃には、二度目の稲が青々とふとっています。そして二度目の稲が実のった頃には、初めの稲の切り株から青い芽が田植えのように茂っています。この切り株からの稲の穂にもやがては米がみのって三度目の稲刈りが始まるわけです。田の草取りもめったにしないで自然の恵みだけで結構に暮して行ける支那の生活は、戦争で殺し合っている兵隊の私にはうらやましいものでした。

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