戦争の話(17)

<橋爪一郎従軍記>
   犬の飯(メシ)の余りはうまいの巻
 兵隊になって、丸一年たてば成績の良い者は三ッ星の上等兵になります。私は別の進み方で行きますので、丸九ヶ月の十月十日に上等兵に進級出来ました。昨日まで一しょだった一等兵の友達も、今日からは号令、命令で連れて行けることになります。上等兵になると、あちらこちらへ自由に行ける事が多くなって楽しみもふえ、また仕事と苦労も多くなります。腹は一等兵なみに減ってペコペコです。
 私と一しょに入隊して、体の調子が悪くて軍用犬係りになった江崎という者がいました。少しはなれた所にいて、会うことがありませんでしたが、上等兵になってやがての時でした、何げなく通ったそこに江崎がいて「敬礼」しています。「おお江崎」「やあ、橋爪・・・・上等兵殿・・・か。」その時、江崎はまるまる肥え太った二等兵でした。その後の話しをしているうちに、犬にかまれた話や犬の飯の話しになり、「犬の飯が余って困る」ということです。配給分を食わせないとたたかれるし、食わせてしまうと腹痛を起す心配があって、毎日自分で無理して犬の飯を食べているということです。「おまや犬の飯を食うて、そんなに肥えとっとばいな。」と大笑いしましたが、「犬の飯はまだある」と言うのです。おかしさこらえて行って見ると、二度びっくり。白飯に大きな牛肉がどっさりです。人間の飯よりも、犬の方がよっぽど大臣食でした。それからは、チョイチョイ行って犬の飯の余りを食べて加勢しましたが、考えて見ればおかしな話です。

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