戦争の話(5)

<橋爪一郎従軍記>
 到着・・・・・四月八日(おしゃかさまの日)、満州、牡丹江(ボタンコウ)省、第三〇六部隊、第五中隊三田隊荒川隊入隊・・・(東寧(トウネイ)のすぐ近くです。)
 はじめて見た朝鮮は、家の形、住んでいる人の服装、くわえている長いきせる、店のかまえなど、日本内地とは全くかわっていました。何もかも珍しく、キョロキョロしながら、半日間を釜山で過ごした私たちは、昼食頃から動き始めて、朝鮮の汽車に乗りこみました。汽車は日本海の方を、闇の中をあまり速くもない速さで通って行きます。時々、がたごと音を立てると、疲れ切った私たちは、あくびをしながら、沈む心配の代りに、脱線のことなど話し合っていました。脱線した方が良いと言う者もいます。私はどうなっても良いような気持ちでした。どうせ死に行きよるような気がするのです。一晩、うつらうつら眠っている中に、汽車は元山を過ぎて、清津(今の羅津?)につき、日は高々と上っています。窓から見渡す山々は、どこもまっ白の雪、いよいよ満州との国境に到着、一時下車した時は、駅までまっ白でした。久留米でやっとこさ、寒い冬に別れを告げて来た私たちは、満州の入り口で、同じ年に二度目の冬を迎えたのです。朝鮮の北端から、宮城と、故郷の八女郡に、お別れの捧げ銃(ささげつつ)をすまして、再び汽車へ、そして満州へと進みました。どこかで汽車を降りた時、その地満州の第一歩は氷るような寒さ、何も見えない雪の銀世界でした。
夕暮れに、待つはきびしい我が兵舎。

コメントは受け付けていません。