被爆者と放射線被曝(直接被曝)

被爆者へは被爆者健康手帳が交付されます。
医療の給付や手当の支給は被爆者健康手帳の交付を受けていることが条件です。
被爆者対策は、大空襲ほかの一般の戦争被害者とは異なる特別の対策です。
それは、放射線被曝による障害が戦後いつまでも発生し得るという特別の状況があるためです。
原爆の熱線の影響や爆風の影響は遥か遠方まで及んでいますので原爆による被害の範囲は広いのですが、法的に被爆者を定義する場合は、原爆放射線を「被曝」した可能性がある範囲の人に限定されます。
被爆者援護法における被爆者は、次の4つのいずれかです。

一 原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在っ者
二 原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内に在った者
三 前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者
四 前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であった者

第一号の被爆者は、爆心地から数キロ以内で原爆放射線(ガンマ線、中性子線)を直接被曝した可能性がある人と、やや遠方で放射性降下物(黒い雨)によって被曝した可能性がある人です。
放射線は、湿度の高い日本の夏においては大気中の水分に吸収されて急速に減衰し、2キロ以遠まで到達した放射線はわずかですが、それでもゼロではありません。
放射線の到達は物理現象ですので、爆心地からの距離や遮蔽条件により、理論的に被曝線量を推定することができます。
放射性降下物による被曝線量についても、不確定要素が多いとはいえ、多くの研究者が推定被曝線量を算出しています。
これらの推定に数十%前後の誤差はあり得ますが、数十倍、数百倍の誤差ということはないでしょう。
被爆者健康手帳を交付された被爆者であっても、遠方の被爆者の推定被曝線量は自然放射線や医療放射線の被曝線量以下なのですが、わずかでも原爆放射線を被曝しているのであれば、一般の人よりもその分だけ発がんリスクが高いということができます。
被曝線量が近距離被爆者の1000分の1で自然放射線量以下の被曝だとしても、近距離被爆者の1000分の1の確率で発がんの可能性があります。
実際に遠距離被爆者が発がんした場合、それが原爆放射線の影響であるか否かを見極めることは困難ですが、健康管理手当は支給されます。
被曝線量が多いと推定される場合は原爆症と認定されますが、審査会の判断と裁判所の判断とは異なっています。

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