今回のワクチン広域接種・殺処分の決断に際し、「ここまで広がっている以上は、ちまちまやってもしょうがないから、そこまでやるかというところぐらいまで踏み込んでやりたいと思ってます」との農林水産大臣の発言がありました。
踏み込んだ対策が必要であるのは当然ですが、「ちまちまやってもしょうがない」という発言については誤解を生みがちですので、この機会に、公衆衛生活動の基本について解説します。
疾病対策は、個々の症例について最善を尽くした結果の積み重ねとして成果が得られるものです。
たとえば結核対策がうまくいったのは、結核患者のひとりひとりを登録して保健所が丁寧にフォローしたからです。
ひとりひとりへのアプローチは人手も予算も嵩みますが、それでも決定的な効果があります。
結核を克服しつつある国とそうでない国とを決定づけているのは、医療インフラの充実度ではなく、患者登録/追跡システムが確立しているか否かです。
すなわち、「ちまちまやる」ことが最重要であり、王道はありません。
現代の日本を悩ましている疾病のひとつに糖尿病があります。
糖尿病対策の必要性から、糖尿病の怖さを周知する広報がたくさん流れています。
多くの予算が投じられて糖尿病の医療体制も充実してきています。
しかし、わが国の糖尿病は一向に克服の気配がありません。
糖尿病(予備軍)の人たちへの「ちまちま」としたアプローチが不十分だからでしょう。
健診等で発見された糖尿病のリスクを抱える人のひとりひとりへ「ちまちまと」糖尿病の怖さを伝え、糖尿病の医療体制へ導くことなしには、糖尿病対策の成果は得られないのです。
わが国の医療・福祉水準を維持している原動力のひとつに、「症例検討会」(ケーススタディ)があります。
関係者が集まって「ちまちまと」事例検討を行う現場習慣です。
口蹄疫対策についても、いろんなことが「ちまちまと」やられてきていますが、決して「しょうがない」ことではないはずです。